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ありふれた報告書  作者: マンボウ紳士
第五章 不平等な時計
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幕間 歴史に埋もれた真実

統一国家だったテラは各国の王家の姫を次々と手に入れ、その血と子供達を人質のような扱いをすることで権力を集中していた。セラフィアム姫もテラの何人目か解らない子供と結婚しこの周辺国家を収めている。いつも何かに憂鬱そうな姫は傍に居るのんびりとした執事とはよく話していた。


「アース本日あの方は?」

「他の方に御渡りとの事です、本日もこのまま暇かと」


ゆっくりとため息をつくと蒼い髪が揺れる。実際に王は子供を望んでいない、姫が産んだ子供はその・・・・恥ずかしながら私の子だ。王はもともと私と彼女が付き合っていたのを知っていた、だからこそそ別に怒るでもなく良い人質が出来たと喜んだ。私の家も其れなりの貴族だったからと言う事もあるだろう。


「まぁ、私としては来なくてもアースと話しているのが楽しいのだけどね」

「光栄ですな、姫の話し相手で宜しければいつでも致しますよ」


子供はそれぞれ長女で蒼髪がアトリ、次女で黒髪がパンドラ、最後の子が黒髪でマオ、全員女性というのは残念だが可愛くて仕方がない。いつもちょろちょろと姫の周りにいてにぎやかに遊んでいる。このままこの光景がずっと続けばと願ってやまなかった。其れだけだったのに・・・・・・・・・・・


「・・・アースごめんね・・・」

「・・・・・・・・馬鹿な事を・・・・・・・」


燃え落ちる王宮を背景にそこら中から怒号と悲鳴が響きわたる、王宮の主はとうに扇動された民に殺された。そして姫は民たちの旗印として担がれるのを良しとせずに毒を煽った・・・・・。全ての場所から火が出てそして略奪が吹き荒れる、どうせ明日には鎮圧されるだろう。


「アースに・・・お別れ言いたかったから遅効性の毒・・・・飲んじゃった」

「・・・・・・・馬鹿だろ・・・セルフ・・・馬鹿だろう・・」


扉の外にはマーリンとタケシが守っている、簡単に突破できるものはいないだろう、ファーナは治療薬を探しているが首を横に振っている。倒れたセルフに縋り付いて泣いている三人の娘が助けてと懇願する。力のない父ですまない・・・・・・落涙しながら娘三人を抱きしめ、計算を始める。どうすれば関係者は助かる、娘は逃げ切れる・・・ただそれだけを考える。


「アース、どうする?もう時間がないぞ」

「・・・・マーリンこの部屋の隠し扉から済まんがパンドラとマオを連れて逃げてくれ」


一番確率のある方法を選ぶ、娘を分けて逃がすと言うのが最も効率的だと嫌でも気付くのだ、ネコヤとタケシにマーリンについていってもらう様に頼むと貧乏くじだと愚痴をこぼしながら周りにいたメイド達を連れて本棚の後ろの隠し扉に消えていく。


「・・・・死ぬなよ?また会おう」

「さてな、一番しぶといのは私だぞ?」


苦笑し泣いて居るパンドラとマオをわきに抱えるとマーリンが扉の中に消えていく。傍に合った本棚を蹴り倒し扉を破壊しそのまま封鎖する。さて、これで私が逃げ切れなければ全部の計算が狂う。


「ファーナ、悪いが付き合ってもらうぞ?」

「はぁ・・本当にとんでもない人の補佐官になったわね」


アトリを抱えると残った兵士達を引き連れ扉を勢いよく蹴破る。なるべく当たらない様に銃を乱射しながら民を蹴り飛ばしながら進む。ファーナは溜息をつきながら先頭を走り扇動された民たちを投げ飛ばしている。恐らく軍港はもう閉鎖されている、ならば公的機関を押さえればいい。


「貿易港だ、貿易港に走れ」

「ああ・・・・・もう、いつか借りは返してもらうからね?」


逃げ続けていくも後ろから次第に数を増して追いかけてくる民に少しだけ焦りをおぼえる。仕方なしに追いすがる民をなぎ倒しながらアトリをファーナに投げ渡す。一瞬だけビックリしたような顔をしたものの先に行くからねと呟くと後ろを振り向かずに十数名の兵士と共にまっすぐに走り抜けていく。


「さて・・・・・・・アースライト・レアスフィア参る」


セルフからもらったマントをたなびかせ民の前に仁王立ちする。この先を通りたければ犠牲を強いてもらうぞと脅しながらそっと後ろの開閉スイッチに目をやる。その隙に突然殴りかかってきた民を仕方なく軍刀を抜き放ち斬り捨てる。


「どうする?やるかね?」


口々に不平不満を叫ぶ民たちを威嚇するかのように右手に軍刀、左手に小刀を持ち狭い通路を通せんぼする。途中銃を撃って来るも訓練されていないものが当てるのは難しい、大げさに回避行動をして見せたら勝手に勘違いしてにらみ合いに発展している。


「・・・・と言ってもじり貧だな」

「アース、貿易船鎮圧したよ、何時でも行ける」


焦れたようにとびかかってくる民を斬捨て、開閉ボタンを叩き割る。慌てたように押し寄せる民を再び数名斬り殺し威嚇する。歩みが止まった拍子に落ちてきているシャッターの後ろ側に滑り込み走り出す。途中あるすべての開閉シャッターのボタンを叩き割るのを忘れない。


「しっかり生きてたわね?」

「ボロボロだがな」


ファーナがアトリを連れてタラップまで迎えに来る。泣きながら縋りついてくる我が子を抱きしめると貿易船に乗り込み周りの船を全て破壊するように命じ実行に移してから逃げる。これで何とかこちらに目が向くだろう、まったくとんだ貧乏くじである。


「・・・・・だぞ?・・・・責任・・・」

「ええ、それで結構ですよ、その代わり」

「・・・・・許可する」

「結構です、ではすべてを闇に」


最後の交渉が終わり疲れ果てたように座り込む、テラ側はこの事態を重く見て完全鎮圧をもくろんでいる、結果的にレポートをでっち上げたことによって交渉としては認められた。そしてもう一つ用意してある、大虐殺を我等が行ったと言う事にしたのだ。


「・・・・仕方ないわね」

「まったくだ・・・・とんだ荷物を背負わされたものだ」


表向きはテラ軍の蛮行、裏では大虐殺の主導者は若手将官。ただすべての大元のスキャンダルは全て隠される。中立港で残った者達に多めの給金を払い口止めを行う。そしてここでファーナ達とも別れる。


「さて、私は契約通り二度と表には出んよ」

「どうかしらね、きっと・・・いや、必ず出るわ」


意味ありげな笑顔でファーナが人の眼鏡を奪って去っていく。そしてすべての出来事はレポートで覆い隠され、そして残った人間の口からはアースライトが暴走したと言う事実が流布される、大本だけは事実、その先は全てが欺瞞。


「罪滅ぼし・・・・・・と言ったらただの自己満足でしょうなぁ」


苦笑し片田舎で隠遁生活を送る、全てのかかわりを断ちながら彼女の醜聞を表に出さないためにだれとも交わらない。アトリにも何も教えずただ権力闘争に敗れたからとしか教えない。そしてそのまま埋もれるはずだった歴史は自分の娘たちが真実にたどり着くまで眠りにつくのであった。

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