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ありふれた報告書  作者: マンボウ紳士
第五章 不平等な時計
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番外編 黒幕様のグングニルゲート

全員が戦いの為に準備をしている中ディア局長とローフル少将は豪華な部屋の主に呼び出しを食っていた。正確に言うと『勅命』と書いた紙が使者によって投げつけられたと言うのが正解に等しい。その為誰に言うでもなく隠れてこそこそと二人そろって部屋の主にの元にやってきたと言うのが正解である。


「よく来てくれたの、私が呼び出した黒幕仮面なの」

「陛下・・・・」

「陛下ぁ・・・」


不思議な仮面をつけた現在皇国のトップが二人を出迎えた、そのリアクションを二人そろって同じような感想を述べ何してるんですか貴方はと突っ込む。すると慌てたようにマオではないの黒幕仮面なのと手を振って必死にアピールする。


「まぁそれでお呼び出しの向きをお聞きしたいかと」

「ですな、こう見えて準備が忙しいのですな」

「うう・・黒幕仮面なの・・・・」


マオじゃないのと必死に取り繕っているがもう結構なので本題をお願いしますとローフル少将が冷めた目で促してくる、ディア局長もそれに続いて御主君の為の準備があるので手短にお願いしますですなとそっけない。


「うう・・・・・まあいいのそれでローフル少将に聞きたいの」

「御随意に」

「今回の勝率は実際どのくらいなの」

「それはもう針の穴を弩級戦艦一隻通す程度でしょうなぁ」


比喩表現を交えて大真面目にそう語るとその程度かと思われますがそれが何かと首をかしげる、ディア局長も大体その程度でありましょうなとそれに続く。マオは首を横に振って比喩ではなくて戦力比と敵の規模を考えて数値化して欲しいのと断言した。


「ですなぁ・・・・・0.3%でしょうか」

「うむ、近似値ですな」

「・・・・やっぱり」


やはりあの時目をまっすぐ見ながら平然と嘘をついていたのとマオは溜息をつく。恐らくはこの二人が今回全てのキーマンであるとマオは正確に見抜いているのであった。それだけでも聡明帝と言われるだけはある観察力であると驚嘆すべきことではある。


「さて、色々あるけどドックの件は不問にするの」

「警備上の不備は我等の責任」

「心よりの感謝を申し上げるのですな」


深々と頭を下げるた二人を見ながらこのタヌキ二人組がとマオは思った。恐らく今のアースおじちゃんよりもよっぽどこの二人の方が曲者であると感じる。アースおじちゃんは必要最小限以外の腹芸はしないがこの二人は腹芸しかしないのだ、きっと本心はずっと心の底に眠らせているのであろう。


「・・・腹芸は良いのこの帝国にはまだまだアースおじちゃんは必要なの」

「王は王たる役目がございますゆえなぁ掛け替えのない方と存じます」

「御主君は象徴でありこの国の礎でありますな、御主君が志半ばで沈むときはこのティアお供する所存でありますな」


概ねマオの意見には賛同してくれる、まぁディア局長に関しては最近狂信者を通り越している可能性すら捨てきれないのだが、ローフル少将に関しては無理やり抜擢されたから恨んでいる可能性があると思ったのだが違うのであろうか、話した感じではおおよそ好感を持っていると感じる。


「さて、アースおじちゃんに内緒で作るとしたら何が必要なの?」

「左様ですなまずどこまで行っても資金」

「それと全員に口止めできる権力ですな」


これらもマオが考えていた通りの答えが返ってくる。満足げに頷くとそれらは全てマオが用意するので心配ないのと断言する。その代わり二人には頼みたいことと聞きたいことがあるのと駆け引きを投げ捨てて本心を相談する事にする。きっとそれくらいなら答えてくれるであろうから。


「マオは・・・失いたくないの、だからその為の手段を丸投げするの」

「それを我等にですか・・・むぅ」

「御主君の敬愛する皇帝陛下に頼られると言うのも変な感じですな」


ディア局長は少しの時間を置いたのちに御心に副える様に、全力をもって尽くしましょうと跪いた。もう一人ローフル少将は眼鏡をはずしてその眼鏡を拭きながら思案顔で考え込んでしまっている。駄目だったのだろうかと感じ少し項垂れるとローフル少将を見つめる。


「さて、私の様な非才の身に出来る事がありましょうか・・・・」

「マオは人の見る目だけは自信があるの」

「しかしですなぁ、元木っ端役人に何が出来るかと」

「ローフル少将はまだ何か隠しているの、解らないけど隠しているの」


じっとローフル少将を見つめるとそうだよねと儚げに微笑む。それをマオに話して欲しいのと頭を下げると絶句して傍の椅子に座り込んでしまう。ディア局長はそれを見ると自分はやることがあるので失礼するのですなと部屋を後にする。何故か部屋を出る時には嬉しそうな笑顔であったのは誰も知らない。


「私はですなぁ・・・立身出世をさせて頂いた恩が」

「違うよね」

「違いませんとも」

「う~ん難しいなローフル少将の癖は中々見破れないのでも右手は偶に動くの」


ぎょっとしたように自分の右手をローフル少将が押さえると、それをてにへらっと笑って引っかかったのと嬉しそうに微笑んでみせる。ローフル少将は諦めたかのように傍に合ったお茶を手元に運ぶと他言無用ならばと念を押すので、マオの名前に書けて約束すると断言する。


「私の母が・・・初代セルフィアム陛下の御付きのメイドでして」

「・・・・・・母様の」

「事件の折、アース様はお忘れでありましょうが母上も逃がしていただきまして」

「ちょっと待って欲しいの、アースおじちゃんは暴走して大虐殺の音頭を取ったはずなの」

「え?」


あれ、此れ言っちゃダメなやつだったかなとローフル少将が派手に目を泳がせる。ひょっとするとマオは今歴史の真実を突き止めたかもしれないの。絶対話してもらうの。語気を強めローフル少将を追い詰める、これを逃したらきっと真実は二度と掴むことが出来ないの。


「続けるの」

「は・・はぁ、セルフィアム陛下が御崩御された折にパンドラ様、マオ様はマーリン大元帥がもう一人のお子様をアースライト閣下が」

「ちょっと待つのもう一人って」

「セルフィアム陛下の美しい蒼い髪を受け継がれた御子でありますな」


おかしい、アースおじちゃんが見せてくれた母上の写真は髪は黒色だったの、でも当時の生き残りの証言では蒼髪というの・・・・黒髪はアースおじちゃんで蒼髪が母上で・・・・・あれ・・・まさかなの。父上の・・母上の旦那様の髪の色がまだ黒の可能性があるの。


「一つ聞きたいの、父上の髪の色は覚えているの?」

「はぁ・・・それはもう見事な金の髪であったと母上は語っておりました、残念ながら私はぎりぎり生まれていなかったので伝え聞く程度でありますが」


やっと全て繋がったの、事変は本当に起こった事なの、でも暴走後の大虐殺も、テラ側が用意した偽のレポートのでっち上げも全部この大スキャンダルを隠すためだけに作られたものだったの。タケシもマーリンもネコヤもファーナも口をそろえて大虐殺しか語らないのは本人がそれを全く望んでいないからなの。母上の名誉だけしか本人が守る気がないからなの。


「それで・・・大虐殺・・・馬鹿なの」

「全ての恩を必ず返せが一族の悲願でありまして」

「失踪も全て帝国とマオの為だったの、事実を風化させる為だけに」

「臣下の命は純金より重く自分の命は羽毛より軽い」

「・・・・ローフル少将お願いなの・・・父様を守って欲しいのお願いなの」


躊躇なく傍に居たローフル少将に縋り付いてお願いをする。ずっとおじちゃんは見守ってくれた、それはそうなの。アトリ姉様も本当のお姉ちゃんだった、だからこそそれを表に出さずいっつも話し相手になってくれた。パンドラお姉ちゃんが亡くなってからもマオはずっと守られ続けてきたの。


「マオは・・・・マオは・・・・甘えすぎてたの」

「御子に甘えられるのは父親冥利に尽きるかと愚考しますが」

「どうすればいい・・・どうすればいいの」


目まぐるしく考えが頭をめぐるが纏まるはずはない、ずっと涙が目から溢れ続ける。父様は不器用なりにずっとマオを守ろうとしてくれていた。ほかの臣下もそれを知って居ながらそれをマオに悟らせることなく過ごさせてくれた。全部マオの心を考えてみんな辛いのにマオに気を使ってくれ続けていたの。


「ローフル少将お願いなの・・・父様を・・・父様を」

「し・・・しかしですな」


縋りつきから綺麗な土下座に移行する。扉の外で涙をすする音がするけどもう関係ないの。ローフル少将は今後間違いなく父様の傍で重用されるはずなの、だから彼を逃して父様の命を守る人間を減らしてはならないの。


「お願いよぉ・・・何でもするから・・・マオ何でもするからぁ」

「陛下」

「我儘も言わないから・・・お願い・・します」


涙でぐしょぐしょになったディア局長が完全装備をした近衛兵に近辺を固めさせながら入室してくる。土下座しているマオの傍によって手を握って必ず御主君の命は守って見せるのですな、だから陛下は心安らかに命令をして下さるのですなと顔を拭いてくれる。


「ローフル・・」

「・・・ローフル・イルゲート謹んでご命令を拝領いたします」


ローフル少将が跪いて泣いている私の手を握る。遅いか早いかでありますからなぁ、陛下に泣かれては私の方が悪人になってしまいますと苦笑するともう一度恭しく跪く。


「・・父様を・・お願い」

「承りました」

「任せるのですな」


ローフルは何故か眼鏡を深く掛けると深々と頭を下げる、ディア局長はやっと涙が止まったらしくハンカチで拭きながらまぁ何とかするんですなと微笑んでいる。この後泣き止むまで暫くかかったのだが二人とも深々と頭を下げたまま待っていてくれた。まだまだダメダメさんだなと思う。


「父様を守るためには」

「この際陛下の力を借りるので大々的に工作いたしましょう」

「このディア全力を尽くすのですな」

「つきましては資金でありますが・・・・・」

「マオに二言は無いの青天井なの」

「「速やかに」」


再び二人とも頭を下げると後日の細工をお楽しみに下さいと、退出していく。最後にローフル少将に今日聞いた事と知った事は何時か必ず本当のことを語ってくれる日が来るまで、マオ陛下の心に留め置いてくださいと釘を刺されたの。解っているの、父様はちゃんと見ていてくれたの、だからマオももっともっと頑張ってアースライト父様を安心させるの。だからこそ黒幕仮面を頑張るのと微妙に違う方向に気合を入れているのであった。

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