報告書82枚目 決戦グングニルゲート 後編
ローフルの乾坤一擲、マーリンのひるまない突撃により前哨戦、中盤戦は勝利をもぎ取り何とかこちら側に天秤を強引に傾ける事に成功した。超弩級空母『アース・ライト』(命名マオ・セルフィアム)の艦橋で深々と椅子に座り必ず来るであろう敵の別動隊を待ち構える。パイプ煙草を咥えて目を細め来るべき時間に備えて遠くを見る。
「本当に来ますかね閣下」
「まぁアース様の計算は今のところ的中しておりますから」
「私ならやるのぉ、負けを引っ繰り返すにはこれしかない」
マリスとメイファがいつも通りの立ち位置で報告書とお茶を差し出し疑問を口にする。敵が馬鹿ならこれで終わるであろうが、多少の知能があるなら負けを引っ繰り返すにはこの手段しかない事くらい明白であろう。
「ですが確実にここを通ると言う保証がないかと」
「わざわざこんな堅牢なグングニルゲートラインを通るのは馬鹿では?」
「・・・敗北を塗りつぶすには大きな功績が居る、此処は最大の防衛ラインとなっている、私なら此処を落とすなぁ」
扇子を広げ何事もなかったように仰ぐ、既に色々盤外戦の用意もしてある。ディア局長の報告だとローフルはダイヤの原石どころかもう磨かれ切ってダイヤ以上との報告も上がっている、フォルナスとメルティアはあの男の下ならまぁ現状間違いあるまぃ。
「ですが・・・要塞二つに衛星反射砲、その周りに艦隊30万ですよ?」
「隠し玉も多く、大口径長距離列車砲も配備、よほど馬鹿ではない限り避けるかと思いますが」
「賭けるか?」
扇子を仰いだままマリスとメイファに微笑み賭けるどうかを持ち掛ける。二人とも来ない方に流石に賭けますと断言して微笑みを返す。ならば私は必ず来る方にかけようとまた扇子を閉じてもう一度開きのんびりとお茶を飲み干した。
「王、磁力反応が増大します」
「・・・・馬鹿でしたか」
「・・・・馬鹿でしたね」
「賭けは私の勝ちの様だのぉ」
報告官が敵のワープアウトを知らせる報告を行うと珍しくマリスとメイファが天を仰いだ。自分達が考えれば考えるほど此処を落としに来るのは馬鹿の所業だと解っているからだ。それでも相手が来たと言う事は秘密兵器が来ると考えて間違いあるまぃ、報告官が知らせてくる敵艦隊は55万、うち超巨大戦艦が3隻と報告が伝えられた。
最終戦 アースライト本土防衛艦隊30万&防衛要塞VS別働攻撃艦隊55万&巨大戦艦3隻
見た感じ今までよりもはるかに巨大で精神的不安をあおる形をした巨大戦艦らしいものが3隻、その周りに55万の艦隊を引き連れての登場である。威圧感はあるが並大抵の装備ならそのままお帰り頂く結果になるのだが、恐らくだがそうはならないのだろうのぉ
「全艦隊斉射、つづけて衛星反射砲もプレゼントして差し上げて」
「ちゃっちゃと沈めるよ、無人攻撃機オールスクランブル」
「要塞防衛砲台&大口径長距離列車砲斉射」
アースライトの命令を皮切りに流れるようにマリスとメイファが自分の部下たちに命令を下す。命令が行われると同時に一斉にすべての火力が敵艦隊に向かって襲い掛かる・・・・・・・が、巨大な戦艦3隻が全ての攻撃を受け止め、そしてその攻撃を飲み込んだ。
「ほらな、絶対こうなるんだよのぉ」
「・・・予測を立てないでください」
「閣下の台詞はほぼこうなります」
相手はゆっくりと攻撃を開始するがこちらも要塞の防壁に阻まれ此方に攻撃を当てる事は出来ない。巨大戦艦3隻はトライアングル上に配備され恐らくではあるがその中心部は攻撃が届くことが無いようになっているのだろう。お互いに攻撃はするもののダメージはゼロ、エネルギーだけ消費し続けると言う意味の解らない戦争が続けられる。
「お互いににらみ合いしかできないとかなんじゃろうなぁ」
「アース様如何いたしましょうか」
「攻撃吸収艦とか斬新ですよね」
扇子を手元でへし折りながらどうしたものかと少し思案に暮れる、マリスとメイファは思い思い二人で相談し始める。相手側も進むことも引くことも行わず此方に対しての足止めのように艦隊がその場に存在し、偶に攻撃してくると言う不思議な光景が再び繰り返される。不審に思い情報を集めるがどうやらマーリンが向こうの惑星を全て解放したと言う情報が手に入る。
「仲間が撤退するための時間稼ぎ・・・かものぉ」
「では私達の足止めの為だけの艦隊でしょうか」
「足止め兼牽制兼出来れば破壊だと思います」
再びマリスが差し出した扇子をへし折りながら、どうにも動きようのない状況をパイプ煙草を咥え苦々しく睨む。攻撃成り撤退なりしてくれれば手の打ちようがあると言うのにただいるだけというのが一番困る。実際ただいるだけに関しては手を打っていないのだからなおさら困る。
「時間潰しならこのやる気のない攻撃も理解できるのぉ」
「此方は攻撃しようにも無駄ですし」
「あの戦艦を落とす方法を考えればとなりますね」
悪戯に時間が過ぎ貴重ともいえる時間を浪費させられる、ある意味攻撃されるよりも最大限に手痛いダメージを受けていると言っていいだろう。攻撃しても吸収される、そのエネルギーは何処に消えたかも解らない、貯めて最後に反射などやられたら馬鹿みたいな結果しか残らない。飽和攻撃をそのまま返されたらどれ程防御があろうとも全滅必至である。
「最強の盾があるならルールで矛も用意せぇよ」
「アース様如何いたしましょうか」
「閣下・・・・・・」
流石にぼそっと呟いた台詞に不安を覚えたマリスとメイファが再び扇子とお茶を差し出し本意を伺ってくる。現状動くことは愚策というのぐらいは解っているのだがそれ以外は切っ掛けが無い限り相手の動きを見て、それを計算して裏をかいて撃破くらいしか希望がない。
「時間は無いが無理をする場面でもないのぉ」
「解析も急がしていますが現状・・・」
「様子見が最善手ですか」
ジリジリとゆっくり焼かれる鉄板の上で我慢比べをしている様な時間が流れる。それでも何かを見つけようと恐らくは両軍ともに様子をうかがうしか現状ではやりようがなかった。
・・・???・・・
「あの方はこれからの為にも完全無欠でなくてはならん」
「その点は賛成ですな」
白衣を纏った女性と太った眼鏡を掛けた男性が高感度グラスで戦場を眺める、彼らがいる場所は戦場からかなり離れたアース王ですら知らない特秘特殊反射兵器『ミラージュ』の指令室であった。もっとも黒幕はアース王ですら逆らえないさらに上の人物であるのだが。
「大丈夫であろうな?」
「我等の関与は最小限ですな」
「違う口止めだ」
「あの方の為なら全員数秒で自決しますな」
「・・・大した忠誠心だ」
「私は貴方の妄信的な忠誠心も尊敬しますな」
どうせあの方は昔のことなど覚えておらんよと太った男は呟くとミラージュのシステムを全て作動させる。ミラージュの全ての反射ミラーが焦点を合わせ始める。膨大なエネルギーが反射ミラー上で集約されその時を待つ。
「で、薙ぎ払えるのだな?」
「理論上は確実ですな」
「・・・期待しよう」
集約されるエネルギーの膨大さに反射ミラーが暴走を起こし各所で熱暴走を起こし炎上し始める。眼鏡の男はそれを冷静に眺め集約率が限界まで高まるのを待つ。隣の白衣の女性は理論上は500%まで集約できるのですなと自信満々で語っている。
「では倍だ」
「その無謀素晴らしいですな、その賭け乗ったのですな」
殆どのミラーが炎上しながら集約を続けとうとうアラームと共に計器が降り切れる。スポンサーが金持ちだと使い捨て兵器ですら豪華な事だと眼鏡の男がレンズを拭いて静かにグラスに目をやる。一進一退で動かない戦場を眺めると静かに右手を上げ・・・・・・・そして下ろした。
「集約反射兵器ミラージュ照射」
「「「照射」」」
全ての反射ミラーが炎上し煙を挙げながら集約したエネルギーを送り込む、巨大な砲台は連鎖爆発しながらもその膨大なエネルギーを、さらに集約ミラーにより細くなったエネルギーに変え遠い戦場の巨大戦艦に向けて照射するのであった。その光を眺めた後に現場にいた白衣の女性と眼鏡の太った男性は満足げに頷くとその場を部下と共に立ち去る。発射後ミラージュはエネルギー暴走を起こし爆発と共に永遠に沈黙するのである。
・・・グングニルゲート・・・
計器類を眺めていた事務官から高濃度のエネルギー帯接近しますとの報告の後、極小のそれこそ気付くか気付かないかの小さな光の線が敵の巨大戦艦を薙ぎ払う。何事も起こらないように一拍置いたのち三隻とも突然不気味に揺らぐと大爆発を起こし周りを巻き込み轟沈していく。
「作られた勝利・・・か」
「アース王の切り札ですよね?」
「何でもない、全艦隊総攻撃じゃのぉ」
頼みの綱の巨大戦艦を失った敵の艦隊は一気に崩れ始める。潰走するもの我先に撤退するもの、踏ん張ろうとして周りに巻き込まれ自沈するもの。多種多様の阿鼻叫喚の渦に落ち込んだ。それを見越したかのように無人攻撃機が殺到し相手を沈めていく。
「敵の逃げ道を残せ、そのまま追い込むように攻撃をし続けよ」
「左右と前からの圧迫攻撃急げ」
「要塞砲全て斉射」
こうなると準備していた分強い、あっという間に敵の大部分を轟沈させると一か所だけ開けてある逃げ道に敵が殺到する。その逃げ道に殺到した敵はその後訳も解らないまま沈むことになるのだがそれは流石にアースライトの手のひらの上だったと言える。
「本当に来たねぇ」
「来ましたな」
ディア局長が眼鏡を押し上げながら唖然とし、その光景を見て流石に此処までとはとローフルが慌てたように無人攻撃機を全機突撃させる。それにしても補給武装艦隊を後詰に使うとかどれ程人使いが荒いのやらと苦笑すると目の前で沈んでいく敵の戦艦を眺める。
「少将、先ほど何方に?」
「マーリン元帥と通信していたが?」
「??そのマーリン元帥から通信がきて探しておられましたが」
メーニャとアーニャに突っ込まれてすれ違ったのだろうと苦笑すると目の前の光景に目をやり慌てて逃げる。これで黒幕様にもご満足いただけだろう。誰も死なせず勝利をもぎ取る方法を考えそして述べよとか無茶ぶりがアース王より酷い。難儀な方が上司になったものだと苦笑すると全滅した敵を一瞥すると、普段と同様に平身低頭に戻りアース王にご機嫌伺いに向かうのであった。
最終戦 アースライト本土防衛艦隊30万&防衛要塞VS別働攻撃艦隊55万&巨大戦艦3隻
決まり手 黒幕様大勝利




