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ありふれた報告書  作者: マンボウ紳士
第五章 不平等な時計
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番外編 ローフルの受難 2

今日も今日とて書類の山と内政の仕事に追われる、最もここで決まった仕事がその上の大宰相に行くのだからもっと大変なのだろうと思う。問題はまだ若くはないがキャリアの無い私ごときに重要な仕事を押し付けてると言うあたりがどうかと思うのではあるのだが。


「・・・昨日より増えてないか?」

「喋っていてもへらないよ」

「手を頑張って動かされては如何でしょうか」


今日も辛らつな二人の秘書から刺さるような言葉を投げかけられがっくりしながら手を動かす、一応部類分けと種類分けはしてくれているようだが、根本的な最後の判子と承認のサインは自分で行わなければならない。せめて飲み物をと思って探すと今日は珍しくお茶が置いてあったのでどちらかの機嫌が良いのだろうと思う。


「先越された・・・・・」

「昨日のお返しです」


後ろでは火花を散らす二人が視線でやりあっているのだが当然気付くことはなかった、補足ではあるがお茶は毎朝何方かが淹れようとするのだがお互いがお互いで動くことが出来ないので淹れることが出来ないだけである。実際は毎日淹れようとするアクションは起こっているのである。


「気が遠くなるなぁ」

「午後から大宰相がお呼びです」

「諦めて出頭為さるようにとのお言葉です」


午後からと言うと絶対に厄介事であるのは間違いない、そっと机の胃薬に手を伸ばすと淹れてあるお茶と共に飲み干す。傍には何時の間にか来たディア局長がそろそろ出発の時間ですなと言ってスタンバってる。今日もどこまで行っても逃げ道をふさぎに来るスタイルであることは間違いないようだ。


「閣下そろそろ移動なさらないと本当に遅れるよ?」

「流石に大宰相を御待たせするのは宜しくないかと思いますが」


二人ともコンソールを片手に何時でも移動できますと移動を促してくる。前には白衣の一団とディア局長が急ぎ足で執務室に向かっている。出来れば前の集団と一緒と思われたくはない物だと思いながら足取り重く呼び出しがあった執務室に向かうのであった。


「ローフル入出いたします」


短くどうぞと言う答えと共に重苦しい執務室の扉が開かれる。机の上には書類の山、隣を見ても書類の山、後ろを見ても書類の山と書類に囲まれた書類の国の大宰相とその後ろに何時もの様にマリス中将とメイファ中将が控えている。もっとも此方はうちの秘書と違ってかいがいしく大宰相を支えているのであるが。


「呼び出して済まないな、なぁに大した要件ではない」

「此方を」


マリス中将が差し出した書類を速やかに目を通す。内容は間近に迫った大高生の後方輸送とその総責任者に任命すると言う内容であった。すいません艦隊の数がおかしいのですが、防衛含めて80万超えてるような気がするのは目の錯覚だろうと遠くを見る。諦めるように二度見をしつつ目をこすりもう一度書類を見るが現実であったようだ。


「現状の動かせる最大戦力を投じた解放戦になるのぉ」

「指揮はマーリン大元帥が執られます」

「防衛線はアース閣下が執る予定です」


現在の帝国二大巨頭が指揮と言う時点で今回の戦いが帝国を挙げての本気の奪還戦だと思い当たる。さらに見ていくと最後の名前に思わず書類を落とす。


「・・・・・・すまん事実だ」

「・・・」


マリス、メイファ両中将が申し訳なさそうに頭を下げる。改めて書類を見ると自分の補佐にフォルナス大尉とメルティア大尉の名前が載っている。恐らく実戦経験をつけさせる為であろうが最早これは拷問に等しい。大宰相の御子息を補佐で補給任務をなせと言うのははっきり言えば、火薬を満載した倉庫の前でBBQを度数の高い酒を飲んで無礼講をするよりも危険である。


「・・・流石に拒否を申請いたしますなぁ」

「マオ皇帝陛下の勅命である・・・・」


眉間を押さえて苦悶の表情で部下がいなければ土下座も辞さない空気を醸し出しながら辛そうに命令をする。隣に居るディア局長はローフル殿は誉れですなと羨ましそうにつぶやいて此方を凝視している。替われるなら即座に変わってやるぞこんなもの。


「・・・・・預かりますがその・・・命令系統は」

「むろんローフル少将の命令は絶対だ、逆らえば懲罰も許す」

「指揮系統の混乱は重罪です、言い聞かせてあります」

「わきまえない場合は軍法会議も勿論です」


大宰相と中将のお墨付きとか何処まで本気なんだろうか此れ、取り合えず胃薬を飲まないと胃が死ぬ。胃の辺りを押さえていると流石に何かを思ったらしくアーニャとメーニャがそっと胃薬と水を用意してくれたので急いで飲み下す。


「で・・・では会議を後日開くので両名に出頭命令を・・・」

「うむ、今後はローフル少将の指揮下に入るのだ問題なかろう」


そっとマリス中将が書類の追加を渡してくるのでよく見ると一瞬で気を持って行かれる。書類には最終的にはマオ皇帝陛下も出撃する準備があるので皇帝専用戦艦の準備もするようにと明記してある。


「これはですな、流石に臣下として命を賭して直言すべきかと・・・」

「・・・・・・・」


無言で陳情書類を見せると遠くを見ている、大宰相と大元帥連名の陳情書に対しての返答が、臣下が命を賭して反撃の狼煙を挙げようとしているのにその象徴がのんびりと国でしているわけにはいかない、今回は督戦以外に皇帝として臣下と臣民に報いる手段を持たないと、大変まっとうな意見が書いてある。


「私が五回、マーリンが三回、大将全員が二回だ・・・・・・・」

「全部はじかれたと・・・・・・・・」

「・・・・・・重ねて済まない」


深々とそれはもう申し訳なさそうに深々と今できる最大角度で詫びてくる。ディア局長に至ってはその光景に絶句するほどである。これを断ったら明日がないなと思ったので諦めたようにお受けいたしますと言うとフラフラと退出する。慌てたようにその後ろからアーニャとメーニャが支えるために走って退出していった。


「・・・・・私もああなるな」

「私達がそれでもお支えいたします」

「アース様の苦労は私達の苦労です」


苦笑するアースライトをメイファとマリスが胸を張ってお任せくださいと頼もしく答える。それを見てゆっくりと立ち上がると準備に取り掛かれと命令しローフルがよろよろと出て行った扉を静かに見つめる。立ち上がった時にふと思い出したようにディア局長にメルティアとフォルナスをローフルの元に出頭させるように命令するとそのまま奥の部屋に消えていくのであった。


「フォルナス大尉とメルティア大尉は何とかなる・・・・皇帝専用艦か・・」

「既にディア局長が建造していると聞いてるけど」

「確認を直ぐに取ります」


其のままアーニャがコンソールを片手に失礼しますと部屋を退出する。それを目で追いかけながら溜息交じりで天井を見つめていると、ふっと頭を抱きしめられた。


「ま・・まぁ?辛いなら少しくらいは手伝ってあげるからさ頑張ろうよ」


メーニャが珍しく優しい言葉をかけてくることに驚くがどうやら、慰めないといけないぐらいに疲弊しきっているようだ。苦笑して済まないな、いつか甘える事もあるからよろしく頼むと抱きしめられた手を撫でてみる。


「あ・・あたりまえだからね、大宰相や局長からも補佐するように言われてるから・・・か・・・勘違いしないでよね」


顔を真っ赤にして慌てて否定しているのでそれは解っているから大丈夫だと答えると、何故か本気でそのまま頭にエルボーを落とされた、解せぬ。


「ローフル少将失礼します」

「ローフル閣下入出許可願います」

「どうぞ」


エルボーの痛みを押さえながら入出許可を出すとディア局長に連れられたメルティア大尉とフォルナス大尉がコンソール片手に敬礼して入出してくる。


「今回の反抗戦で私の旗艦に乗船してもらう事になる」

「承っています、よろしくお願いします」

「補佐と言っても未熟な私達をご指導お願いいたします」


丁寧に二人そろってお辞儀をする、大宰相の御子息たちと思えない位の素直さである。ディア局長やその他の人間たちが可愛がるのも良く解るのであるが、問題は今回私の船に乗ると言う事にある。


「私の船は俗にいう超弩級戦艦でもあるが超弩級空母でもある」

「空母戦艦ですね」

「昔の父上の旗艦と同じつくりと聞いています」


単艦で200機の無人戦闘機を艦載しさらに主砲も普通の戦艦の数倍の威力を持つろくでもない設計の戦艦空母である。防衛艦隊もほとんどが戦艦空母で組織されておりその後ろに大量の輸送艦と輸送列車が並ぶこととなる。


「私達は初陣となります、如何様にもローフル少将の御命令のままに」

「父母より上官の命令は我等の命令と思えと釘を刺されております、御存分に」


敬礼を崩すことなくはきはきと答える二人をまぶしいものを見るかのような目で見つめる、敬礼を崩して楽にするようにと言うと初めてやっと敬礼を解く。まるで素直が服を着ているかのような御子息たちである。


「さて、メーニャ二人を旗艦に案内して色々説明してきてくれ」

「・・・畏まりました」


ちょっと面白くなさそうな顔をして二人を連れて地下のタラップへと向かっていく。ディア局長もそれに続いていくのを見ると再びため息をついて椅子に寄りかかる。将来の大宰相と皇帝陛下とか背負いきれんなぁと天井を見つめているとまた誰かに頭をふっと抱きしめられる。


「あまり難しく考える事は無いかと思います、出来る限り私も補佐いたしますので」


今度はアーニャが抱きしめてくれているらしい。この二人が揃って同じような行動をすると言う事は本気で弱っているように見えると言う事なのであろうなと思い当たる。


「・・・・出来る限り頼らんようにはしよう、駄目な時は頼むかもしれん」


そう言うと恐る恐るであるが抱きしめている手を撫でてみる。


「・・・色々な方に期待を乗せられてらっしゃるのですから偶には頼る相手がいてもよろしいとおもます」


メーニャと違った反応をするので思わず双子と言ってもやっぱり反応が違うのだなぁと呟いてしまう。その声を聴いたアーニャが何も言わずに何かあったか教えて頂けますかと抱きしめる力がだんだんと強くなって頭がミシミシと音を立てる。


「あ・・・あのアーニャさん?」


この後ミシミシ音が鳴るのを必死に宥めながら何があったか説明してアーニャの機嫌を取ることに時間を費やす事になる。なんだかんだでこの後何かしらのアクセサリーを買う事を約束させられたのだが何度も言う事になるのであろうが、解せぬの一言に集約されることになった。

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