報告書75枚目 陥落劇
大規模不明艦の出現によりマヒした物流を迂回ルートと鉄道で無理やり復旧させる、計算より早い侵攻に眩暈を覚えながらその報告をマオ女王へと知らせるために謁見の間にアースライト及び首脳陣はそろっていた。その揃っていたと言うのが第一の幸運と言うのは皮肉なものである。
「タケシの指揮により飽和攻撃を行い無理やり敵の行動を奪った模様」
「そろそろ隠し切れなくなってきたの」
「今回は何とか沈められましたが・・・」
マオは報告を受けながら報告のあった場所の地図を眺める、敵がいたなら旨く考えたものだ、皇国の物流の中心地であるところに現れたのであるから。若手達将官達もメモとコンソールを叩きながら色々話し合っている。
「この状況においては完成している超弩級戦艦を出すしかないかと」
「現在三隻完成しているのですな」
アースライト支配地域の工場ラインを三交代制でフル稼働させ完成までこぎつけた三隻は現在出航準備を行っている、実はこれが第二の幸運であったのは後々解る事である。
「さらに今回効果のあった艦隊のデータを元に改修工事も進んでいるのですな」
「相転移砲はむしろ使わない方が効果が高い、実弾兵器の方が威力があったみてぇだなぁ旦那」
報告書をめくりながらアルゲインが渋い顔をして手元の紅茶を飲み干す。
「ここにいない者達は全員超弩級戦艦の出航準備に回ってもらっておりますのぉ」
「それは気にしてないの、それよりもこれは侵略と捉えて良いの?」
マオ女王が地図に置かれた今までの不明艦の出現位置を確認しながら最終決定の意思を問う。それに対して腕組みをしていたアースライトが重い口を開けてその可能性が一番高いと思われますと奏上する。
「ならば皇国の総力をもって」
マオが立ち上がり宣言するかしないかの刹那、王宮が振動に包まれ盛大に各場所が爆発する。
「何事だ」
「襲撃・・かと思われますが解りません」
「ええい、直ぐに全軍を動か」
ひときわ大き爆発が起こり会議室が崩落する。周りが見ている中でマオの上に大きな瓦礫が降り注ぎ周りが駆け寄るかどうかのタイミングでさらに誘発されて会議室が光に包まれた。
「・・・・・・・え」
目を瞑り全てを覚悟していたマオは自分の最後の時を待っていた、だがそれは自分の上から落ちる赤いしずくで現実に戻される。マオを庇う様にアースライトがマオを抱きかかえていたのだ。
「間に合い・・・ましたなぁ」
ニッコリ微笑むアースライトの顔には酷い傷が残っている、そこから止めどなく血が流れ落ちている。顔面蒼白でアースライトの頬をマオが撫でる、アースライトの血で自分の手が上手く動かない。頭が真っ白になり声にならない声で周りに助けを求める。
「・・・・全員動けるか」
アースライトの呼びかけによろよろと周りの人間が立ち上がる、不幸中の幸いか周りの将官は怪我をしていないようである。マリスとメイファが体が痛むのを無視しアースライトに走り寄る。ディア局長は半狂乱になりながらも急いで治療を行い始めた。
「御主君、御主君、御主君」
「アース様」
「マオ様を逃がせ・・・フォンブルク、プランDだ」
「我等の責務を全うしましょう」
フォンブルクが立ち上がり直ぐに住民も避難させるように檄を飛ばす、秘密通路の緊急列車にマオや若手将官を乗せるようにあらかじめ命令してある。住民に関しては子供たち優先で逃がすように言ってある。全てはアースライトの名のもとに厳命として通達されておりマオ女王が恨まれることはない。
「マリス、メイファ・・・子供達と陛下を逃がせ、護衛はお前達だ」
「・・・拒否は」
「認めない、私にはマーリンとファーナが居る・・・行け・・失望させるな」
「御意・・・です」
「アトリとネコヤも頼む・・・・愛しているぞ」
力なく微笑むアースライトを見て唇をかみしめすぎて血が滴るメイファと握り過ぎて血の出る拳でマリスが声にならない叫びをあげるマオ女王を連れて走り出す。ディアは必死に止血と治療を御主君を連呼しながら行い続けている。
「アルゲイン、ローフル・・解っているな」
「・・・・・旦那ぁ・・・」
「閣下、然らば」
ローフルが二人の秘書に命令するとメーニャがディア局長に手刀を落とす。崩れ落ちるディア局長をアーニャが受け止めると走り出す。ローフルとアルゲインは凄まじく苦みのある顔で敬礼すると軍帽を深めにかぶり地下に走り出す。
「フォンブルク・・・頼む」
「・・・適切に処理いたしましょう」
残った近衛兵がマーリンとファーナに近付き羽交い絞めにする。暴れる二人にマオを頼むわぁと笑顔で微笑むと二人に有無を言わさず口付けをし即効性の睡眠薬を飲ませる。ぐったりとした二人を抱えると敬礼し近衛兵達が地下に走り出す。
「・・・全員行ったか」
「御指示通り後は敵の姿だけでも見たいところかと」
「安心しろどうせもう来る」
外で銃撃戦の音が響く、此方の武器の音はするもののあっという間に音が消えていく、恐らく武器の差で鎮圧されているのだろう。命を粗末にするなと命じてあったのになぜ投降しないのやら。
「・・・・・・さて玉座に座って相手を待つか」
「閣下が最後に王になられますか」
「浪漫あるだろ」
「成程・・・ではその役目替わりましょう」
フォンブルクがそう呟くとスタンガンをアースライトに当てる、いつの間にか背後にいたマリスとメイファが崩れ落ちるアースライトを支える。閣下は今後の為に必要な方、殿は私めがいたしますそれと娘をくれぐれもとお伝えくださいと二人に伝言すると敬礼し走り去る二人を最後に隠し通路を完全に爆破する。
「~~~~」
何かを叫ぶ訳の分からない兵隊が玉座になだれ込む。銃みたいなものを構えフォンブルクを囲む、廊下を見ると血の海になっている。恐らく大宰相を守る為に最後まで近衛兵達は戦ったのであろう。目頭が熱くなるのを気力で抑え玉座に座り相手を睨む。
「~~?~~~!」
相変わらず叫び続ける人間かどうかも解らない兵士に苦笑しながら睨むのを辞めないとそのうち立派な装備らしいものを付けた者が現れる。何かのどの部分を操作しながら発言しているとようやっと聞き取れる声になった。
「スベテセイアツシタコウフクシロ」
「このフォンブルクに下げる頭は無い」
あの方以外にはなと心の中で思いつつ前にいる者を睨みつける、思わず後ずさる者達をリーダーらしいものが睨みつけもう一度声を出す。
「オマエイガイハモウシンダコウフクシロ」
「全員ヴァルハラに行ったか・・ならもういいな適当に処理しよう」
そう言うと右手に隠し持っていたスイッチを押す、刹那に大きな爆音が響き王宮が今までないくらいに揺れ始める。
「ナニヲシタ」
「残念だな適当とは適切に処理をすることじゃ」
うろたえる者達をさも愉快そうに高笑いをするフォンブルクを指揮官らしい者が銃を乱射する。被弾しながらも大笑いを続けるフォンブルクを恐怖の目の色で慌てて撤退を行なおうとするがもう遅い。あのディア局長が用意した自爆装置だ逃げれるはずがない。
「閣下・・・悪くない人生でしたぞ?孫だけが心残りですじゃ」
フォンブルクが呟きゆっくりと玉座に倒れ込むと、同時に王宮は閃光と轟音の中大爆発を起こし全てを飲み込み統一国家の象徴は消滅した。幸いな事か其れとも反撃戦の為の始まりなのかフォンブルク以外の将官全ては逃げ切ったのが最大の功績と後世には語られる『名老将失いて奇貨逃げ切る』の一幕であった。
「私は・・・無力だ・・・無力だぞフォンブルク!!!!!!!!」
怪我の治療をディア局長にされながら飛び出しそうな勢いをマリス、メイファ、マーリン、ファーナの四人に抑え込まれ地の底から響かんばかりの声でフォンブルクに語り掛ける。王宮の消滅は列車からも確認できると同時に港もすべて爆破炎上する。これで敵といえどそうそう追跡はできない。
「市民80万のうち助かったものは・・・・・その・・・・10万に満たないであります」
「構わん正確に」
「未成年・・・・8万人を逃がすために大人は・・・」
ローフルは肩を震わせながらメーニャとアーニャに支えられ必死に読み上げる。既に眼鏡に隠れた瞳からは大きな涙が零れ落ちている、おそらく自分の無力が彼も許せないのだろう。
「・・・ご苦労すべて私の罪だ」
「史上まれにみる大虐殺であります、私は・・・死ぬまでこれを忘れません」
ローフルの流す涙はいつの間にか血涙に代わっている。メーニャとアーニャが必死に慰めている、良い秘書になるであろう。報告を終えるとすぐさま次の仕事がございますのでと血涙を流したままゆっくりと消滅し始めている惑星テラをにらんでいる。
「・・・・・人口がいなくなれば滅ぶように設定しておいたのですな・・・」
ディア局長もいつもの口調だが今回ばかりは下を向いて悔しそうにつぶやく、私は無力なのですなと珍しく号泣し泣き崩れる。周りの将官も悔しそうに無言で壁を叩いたり茫然自失になったりとだれもまともな反応をできないでいた。
「まだだよ・・・終わってないんだよ」
そんな中自分の手をいまだにアースライトの血で真っ赤に染めたままのマオ女王が立ち上がる。錫杖を手に持ち崩れ落ちそうな体を必死に支えそれでも立ち上がる。けなげを通り越して無茶の域に達している、それでもマオは立ち上がった。
「忠臣フォンブルクを失ったのは大きいよ、でもまだやり返せる能力はあるのに・・・今折れたら誰にマオは詫びればいいんだよ、子供たちを託して散った民のためにもマオは止まれないんだよ」
この土壇場で覚醒したのかそれとも自分を必死に鼓舞しているのか、それでも全員の心の支えとなるべくまだ幼さの残る女帝は必死に全員を鼓舞する、本当に立ち上がってほしい人間を必死に励まそうと、本当は自分が一番最初に泣きたいのにそれすら自分に許さず女帝は鼓舞した。
「・・・・・スノーホワイトを拠点として・・・・・全部取り返す」
「アースおじちゃん」
「おそらくすべて抑え込まれる、だがのぉこのアースライト意地がある、マリス、メイファ、マーリン要塞はすべて自沈させろ、ローフル、タケシに連絡すぐに動かせろ、アルゲイン、すべての物資を私の領土に運び込ませろ、むろん民も運べるだけ運べ、ファーナは内政全部任せた抑え込め」
治療がまだ終わってないはずなのに立ち上がり全員に矢継ぎ早に命令を飛ばす、命令を受けた人間たちは一斉に立ち上がりすぐさま行動に移す。これより5年間泥沼の攻防戦を繰り返し、スノーホワイトとその周辺領域だけは謎の艦隊をすべて押し戻し力を蓄える。全ては平和を取り戻すためにとそして幼い女帝の勇気を無駄にしないために顔に傷を残させたままアースライトは雪辱の年に大宰相から全てを握る王座に就いた。当然マオは皇帝としてゆるぎないというのだけは宣言したが・・・。ともかく逃げ道を用意していた男はとうとう退路を完全に断った。そして戦乱の幕が再び上がる・・・・・・・
第四章これにて終了となります。
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