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ありふれた報告書  作者: マンボウ紳士
第四章 それぞれの立場
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報告書66枚目 結婚行進曲

統一セルフィム皇国歴6年、のちの教科書にしっかりと書き記されることになる当事者曰く全部の歴史の教科書を火にくべろと語られる激動の一日、皇国大結婚式が行われようとしていた。


「最初がマーリン、次がファーナ、マール、メリア、マリーの順番で行われるとの事ですアース様」


マリスがしっかり頑張ってくださいと微笑みながら礼服を取り出して着替えを手伝ってくる、本人に嫌じゃないのかと聞いてみたら、まぁアース様だから仕方ありませんよと心からの笑顔で答えられた。きっとマリスはいい女という奴になっているのだろうと思う。


「さ、アース閣下急がないとマーリン元帥の準備ができますよ」


補佐官として礼服を着込んだメイファがせかしてくる、此方も昨日話した結果幸せは全員で分けた方がいいと、自分もそうだったので仕方ありませんときっぱりと笑顔で言われてしまったのでそういうものなのだなと諦める事にした。


「これでアースおじちゃんを縛り付けたの」

「マオねぇさまやりましたね」

「マオ様は策士ですね」


こそこそと影でフォルナスとメルティアがマオ女王に引き連れられて親族席で内緒話をしている、何時の間にやら仲良くなっているらしく確かに兄弟と言われたところで遜色は見当たらないであろう。いつか全員にしっかり説教してやるからなと思っていると、ウェディングドレスに身を包んだマーリンに腕を掴まれて一日がスタートした。


「誓う」

「誓います」


怒涛の結婚式の連打で疲弊しきっている、宣言もだんだん短くなってくるし教皇も疲れ果ててきていると見える。最後のマリーの結婚式で元気だったのはマリーと観客たちだけで、後の参加者たちは流石に死屍累々の状況であった。恐らく結婚式の様子は後世の歴史書の方が細かく書いてあると思うので忘れる事にする。もっとも全員のドレスは綺麗だったのでしっかり覚えておく事と褒める事は今回に限りやっておいた。それぞれ反応が違いビックリしたのではあったが。



・・・嵐の後の執務室・・・


ぐったりと椅子にもたれかかって倒れている後ろで、マリスとメイファが今後の立ち位置の相談をしている。執務室の机の上にうず高く所狭しと並べられている久しぶりの書類の山と、飽くなき陳情の書類を目を細めて眺めながら溜息をつく。


「有能な部下を増やそう」

「殆ど発掘しつくしたかと」

「佐官クラスにも目を向けてみてはいかがでしょうか」


マリスとメイファが書類を纏めながら何枚かの書類と証言を持ってくる。何人かはそこそこの人間がピックアップされているがこれと言う綺羅星はやはりいない。今まで発掘し過ぎたと言うのもあるが、人材自体が宝庫であったと言うのが正直な処であろう。


「今後の為に少し補強を入れておきたいのだがなぁ」

「そうですね」

「そういったことに詳しい方は知っていますよ」


メイファがふと思いついたように知り合いの名前を挙げるとマリスと思わず顔を見合わせてため息をつくのであった。背に腹は代えられないので直ぐに呼びだすように命じると、数分後には白衣をたなびかせ最敬礼と共にディア局長が部屋に召喚されるのであった。


「御主君に置かれましては私に御用とお聞きし速やかに参上いたしましたのですな」

「ご苦労様、質問であるが・・・・人材が欲しい」

「御主君クラスが渇望する人材でありますと・・・・」


懐から何かの端末を取り出すと操作を始める、此れでもないこの程度では推薦もできない等呟きながらせわしく操作を続ける。十分ほどあれでもない此れでもないと繰り返していたところ、一人の人間が見つかったらしく少し考えた挙句に、癖が強くてよろしいのでしたらば推薦できるのですなと胸を張った。


「構わんよ、今後の為に才がある人間は癖があろうと欲しい」

「・・・ですがその・・・癖が問題があるのですな」

「女癖か?ギャンブルか?それとも嗜好品か?」


大体こんなものだろうというあたりの駄目な癖を挙げていく、だがどの癖にも反応せず少し困ったような反応を珍しくディア局長が見せる。しばらくいろいろ言ったものどれも当てはまらなかったので答えを求めると何と言いますか~と非常に歯切れの悪い回答が帰って来る。


「えっとですな、その優秀なのですな、ですが・・・サボることに全力でして」

「・・・・・・・・・俗にいう頭のいい怠け者か」

「頭の良さが凄まじいと言う事だけで首を免れているうえ大尉ですな」


才能に関しては間違いありませんとズレた眼鏡を掛けなおしながら、やはり具合が悪そうに頬を掻きながら如何いたしますと聞いてくる。その話を聞きながら問題なかろう教えてくれとあっさりと聞く。


「総合輸送省兼任代官ローフル大尉ですな」

「仕事は完璧、仕上げた時間で残りはサボると、合理的ではあるな」


体形は太り気味でのんびりとした性格、書類や本などをずっと見ているので目が悪くなって分厚い眼鏡の優しそうな顔をした男ですな、仕事を期限を決めて頼むと直ぐにやり遂げて後はサボるか、時間いっぱい引き延ばして最後に仕上げるかのやり方をしているのですなと説明をしてくれる。


「ふむ、で、ディアどこら辺が有能だ?」

「彼が担当した方面で輸送が不足したことがないのですな」


今や大軍勢となった軍隊の補給を不足させたことがない、一見聞いただけでは大したことがなさそうであるがそれは違う。マニュアルだけでは必ず不足が出るし、現場から苦情が上がる。それが無いと言う事はそこら辺をすべて織り込み済みで動くことが出来ると言う事だ。


「ふむ、凄いな、が一押し足りない」

「・・・あまり見せたくないのですが此方をですな」


ディア局長が何かのメモ書きを見せてくるので目を通すと、大体ではあるがこういったものがあれば便利と言う雑多な案であった。問題は殆どが現在の輸送マニュアルと艦隊の備品になっていたりという事であろう。雑多なメモと言う事は暇な時間にこれが書かれていると言う訳で軍事、輸送方面では確実に使える事は解った。


「軍事畑か」

「どちらかと言えばメイファ様に近いですな」


ローフル大尉の担当している区域の状況ですと何処から手に入れたかは聞かない方がいい評価ファイルが出てくる、苦情は数件出ているが概ね優秀、苦情に関してはのんびりすぎるだけ。後は移動されては困るので形式的な苦情を挙げてますと馬鹿正直に書いてある苦情が殆どであった。


「上司が無能かもしくは評価が雑かのどちらかになったな」

「本人が全部辞退しておりまして・・」


流石にこのクラスの人材を地方放置は、昇進軽重の要が疑われるレベルになるので眉間に手を置いて深くため息をつく。さて、スカウトにしても今動かせる人材が居ないのでどうしたものかと考えていると扉の前をフォルナスとメルティアが通っていくのが目に入りふと考えが浮かぶ。メイファに合図を送ると近寄ってくるので、影の護衛付きでメルティアに行かせると発案すると御随意にと回答が返ってきた。


「ではディア段取りを頼む、合わせるだけでよい」

「御主君の御命令通りに取り計るのですな」


ディア局長が最敬礼を綺麗に行うと直ぐに実行に移すのですなと、数名の護衛と共にメルティアを追いかけるために退出するのであった。私を見破った直感能力を少し信じてみたいと言うのは親馬鹿だろうかと問いかけると、親馬鹿ですと即座に帰って来るのであった。



・・・ローフル視点・・・


「申し訳ありません、宜しいでしょうか」

「はいはい、なんでしょうか」


何時もの調子で振り返るとそこにいる子供を見て思わず変な声が出そうになった。そこにいる子供はメルティア・レアスフィア、すなわち雲の上のさらに上の上司の子供である。お忍びで来るにも突然すぎるので無礼が無いように返しておくに限るね。


「ちょっと質問がありまして、ローフル大尉が詳しいとお聞きしましたのでお時間を戴きたいのですが」

「私で宜しければお伺いいたします」


断れない頼みと言うのはいつ振りか忘れたが仕方がない、これを断ったら首とかいうのが優しいレベルになるはずだ。この前の結婚式でアースライト大宰相は帝国重鎮のほとんどが、自分の嫁とかいう凄まじい権力を持っている人間になっている。逆らえば明日が危ない。


「此方のシステムと納税ノウハウが見ていてピンときませんでしたのでお願いします」

「・・・・・此方はですね」


何で私が考案した担当区域の納税方法とシステムが漏れているのだろうか、と言うか何処で目に留まったか謎なのだが。帝国の大尉、程々の地位で結構な金額を貰ってのんびりした生活。それを得るために努力して考えたのだが何か不味かったのかと思いつつ説明をする。説明に対して頷いたり質問したりとかなり才気にあふれている様には感じた。


「納得いたしました、考えられているのですね」

「考案した先輩に頭が上がりませんよ」


よし、この前結婚した先輩に手柄を投げておこう、昔世話になったからな。決して自分が逃げる為ではない、恩を返すためだ。自分自身に言い聞かせると何事もなかったかのようにさらりと言ってのける。目の前の子供は少し首をかしげると何かを察したように微笑んで此方を見上げてくる。


「良く解りました、お時間をいただきありがとうございます」

「私でお力になれたなら幸いです」


丁寧にお辞儀をして無事にやり過ごしたと安堵感が体を支配する。そこら中に潜んでいる気配があるしもうこれは帰って寝ても許されるレベルだ。これが終わったら理由をつけて早退して寝る事にしよう。


「最後に質問なのですが」

「何でしょうか」

「貴方の両手で持てる物が今よりも多いとしたら、その場にいるのは怠慢と言うお考えはありますか?」

「適材適所であるかと愚考します」


何やら失敗したら危ない質問であるが仕方がないので上手くかわす会話に力を入れる事にする。失敗した場合は身の危険があると体が教えてくれるのでとにかく逃げる回答を選ぶことにしよう。


「良く解りました、ありがとうございます」

「つたない回答で申し訳なく、失礼いたします」

「またすぐお会いしますよ」


そう言い残すと雲の上の上司の子供は悪戯っぽく微笑むとそのまま去っていった。多分大丈夫だと思うのだが最悪の結果だけは避けたいなぁと頭を抱えながら帰宅する。もっともその翌日速やかな呼び出しと共に首都星テラへの出頭命令が届いて頭を抱える事となる。

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