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ありふれた報告書  作者: マンボウ紳士
第四章 それぞれの立場
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報告書65枚目 凱旋?籠の中です

ライリーフ鉄道が惑星テラの駅に到着し始めると一斉に吹奏楽隊の演奏が響き渡る。駅には立つ場所すら無い程の人々で埋め尽くされている。そんな中、レッドカーペットが引かれ護衛部隊が周りを警護し綺麗に一本だけ開いている道が出来ている。その道の先にマオ女王とマーリン元帥、マール、マリー、ファーナ大将とアトリ、ネコヤ中将が揃って出てくる人間を待ち構えていた。


「なんでネコヤ身構えているの?」

「何となくですよ」


全員が歓迎ムードで旗を振り手を掲げ駅に入りきらない人々はその周りで列車に対して歓声を挙げ続ける。要約止まった列車の扉が開いた時に今までとは比べ物にならない大歓声が巻き起こる、だがネコヤだけは軍刀に手をかけて身構えていた。周りが吉報に沸くこの空間で一番敏感に身構えて、これから起こる事の想像に身を振るわせているのはこの男だけであろう。


「来る・・・」


マリスとメイファがまず列車から降りると扉の両脇を固める。何時もの様に軍刀に手をかけ何時でも何かあれば動きますと言う構えを見せる。続いてアルゲイン、フォンブルク、メリア辺境三人衆が現れて左右に分かれ配下の礼を取る。近衛兵が列を作り剣を捧げて道を作る。ゆっくりとマントをたなびかせ男が現れた時それは起こった。


「天誅ぅぅぅぅぅっ!」


突然走り出し、細身の軍刀を抜き放ちネコヤに向かって飛び込んでくる。娘を取られた嫉妬で武神の域まで足を踏み入れたアースライトが必殺の一撃をネコヤに振り下ろす。用意してたんだよと呟いてネコヤが其の一撃を捌いて軍刀を構えたまま対峙する。一瞬の瞬きの間に何回斬撃が飛んだか解らないがマーリンだけがぽつりと12回かと呟くのであった。


「やるのぉ、安心して娘を任せられるな、だが死ね」

「矛盾だらけです義父様、貴方を倒して添い遂げる」


何度も刀を叩きつけながらお互いに支離滅裂な言い合いを続ける、止めればいいのだが既に達人の域の戦いになってしまっているので、生半可な実力では止める人間が大怪我をしてしまう。アースライトが懐に手を入れ護身用の銃を取り出したのを確認すると、誰もが大惨事を予測し慌てて止めようとした時に、それを止めたのは切れたアトリの投げるフライパンであった。何も言わずに無言でフライパンを二個全力でブン投げると、アースライトの後頭部とネコヤの顔面に見事にめり込んだのである。


「・・・・・・無念」


ごふっと咳き込むとその場に崩れ落ちる、慌ててマリスとメイファが支え起こしあらあらと苦笑しながら支え起こして両腕を肩で担ぐと、マオ女王の元へと連れて行く。そんな光景を周りの民は見ながらやっぱりアース大宰相だなと大歓声をもって迎え入れるのであった。因みにネコヤはアトリに大分乱暴に引きずられて退場した。


「さて、長らく放浪した挙句にやらかしてくれて嬉しいの」


マオ女王が何時もの事だからと言いつつ壇上で錫杖を構えてびしっと指を突きつける。右を見るとマーリンが軍刀に手を添えて笑顔でこちらを見ている、左を見ると目元を隠して微笑んでいるファーナが立っている。何だろうかこの謁見の間はいつの間にこんな危険な世界になっているのだろうか。


「一度祖国を裏切っておりますからな、如何様な罰もお受けいたします」


諦めて深々と頭を下げ如何様にもと手のひらを上に向ける。背後の左右にはマリスとメイファがいつも通り直立不動で動こうとしない。そばで見ている民衆たちも一体どのような動きになるのだろうと誰も口を開かず事の推移を必死に見守っていた。


「アース大宰相が祖国を裏切った記録は無いの」

「ですが私は一度テラに」

「私が無いと言ったら存在しないの」


ハッキリともみ消しを示唆したぞこの女王、とうとう年齢を経て権力の正しい使い方を覚えたと見える。マーリンとファーナの教育のたまものであろう、これで安心して私も身を引けるなと勝手に納得して頷く。


「陛下に置かれましては成長著しくこのアースライト心底安心いたしました」

「それはよかったの」

「ですので正式に息子に後を譲って引・・・」


全力で飛んできた錫杖が頬を掠めて床に刺さる。恐る恐るマオ女王を見ると言わせるか!という気迫と共に肩を鳴らしていた。周りをよく見るとマリスとメイファ以外は全員何かしらのアクションを起こそうとしている。マーリンは軍刀半分抜いてるし修羅場をリアル体験中である。


「・・・年寄りの私にはこれから輝く帝国では厳しいと思い引・・・」


今度は反対側に軍刀が三本刺さる。見やるとマーリン、ファーナ、マールがしっかりと目線を合わせて言わせませんよと微笑む。味方は、誰か私の味方はいませんかと久しぶりに崖っぷちである。


「それにこれから責任を取る仕事がございますので帝国の仕事に手が回らないかと」

「責任を取るのは大事なの」

「ええ、ですので暫くは」

「マーリン、マール、ファーナ、メリア、マリー、アースライト大宰相が帰還を機に責任を取って合同結婚式してくれるって言ってるの」


そっちかぁとがっくりと首を落とすと、マリスとメイファが責任ですので諦めてくださいと抑え込む。ディア局長はとそっと見ると既にマーリン&ファーナ一派に抑え込まれていた。何時もながらに早いが今回に限りは疾風すらも超えたような気がしないでもない。


「責任は取りますが・・・・・・・その私でよいと言う者だけ娶りたいと思います、それと合同ではなく一人一人としっかり上げようと思います」

「言質取ったの!!」


諦めたように溜息をつくと陛下の御採択にお任せいたしますと頭を下げる。少し悔しかったので私でよいと言う者の選別と順番はお任せしますと軽めの爆弾を投げ込んでみる。が、しかし成長したマオ女王は笑顔でもう順番も作ってあるのと順番を書いた紙を渡してきた。


「・・・・・・・・近年で此処まで負けたのは初めてかと」

「マオも成長するの!」


ぐうの音も出ない位に平伏している私を横目に全員の前でガッツポーズをして勝ったのと宣言し、周りから盛大な拍手をもらっている女王が居るのであった。因みに引退は撤回してないのでいつかそのまま押し切ってやろうと思っていると、しっかりと結婚条件に引退したら楽しい事になるの!と一文書いてあったので本当に成長したようだ。当然周りの民はお祭り騒ぎとなっていたのは書くまでもない事であろう。


「・・・・・解りました、ですが一つ問題があります」

「ほう、言ってみるの」

「殆どの女性上級士官がレアスフィアになってしまいますね、それは独断政治ですので責任を取って・・・」


ほぼ同時に床に五本の軍刀と錫杖が突き刺さる、既に処刑場ではないだろうかと錯覚するほどに私に優しさが感じられない。全員渇いた笑顔で此方を見ているのは大変心に良くない、そっと目をそらしながら一党独裁はほら、不味いですからねと言葉を濁す。


「安心するの、全員名前よりも一緒に住むことを選んでいるの」

「・・・・手回し済みと」

「おじちゃん昔言ったの、奥の手は見せないから奥の手、見せるならさらに二枚くらいは用意しろと」


再びびしっと指をこちら側に向けて差すと胸を張って大笑いし始める。さて、空気が緩んだすきにそろそろ懐の煙球を使って逃走をとしようと試みると、そっと右手を誰かに抑えられる。恐る恐る右手をたどっていくとマーリンが本当に穏やかに微笑んでいた。


「どうした?アース何かあったか?」

「ナニモアリマセン」


思わず反論すれば死ぬと察すると、ハンカチを取り出して汗をぬぐう。よく見れば何人かは既に動く準備をしているのを察する。諦めるように微笑むと流れに身を任せる事にした。逃げと言うか保身と言う行動だと今でも思っている。


「さて、色々終ったところで全員おじちゃんを残して下がるの」


民衆と一般将校たちが退出していく。当然残りますよと言わんばかりの数名に対してもマオが退出する様にと珍しく厳しくもうしつける。しばらく無言で睨みあったのち、仕方がないと言わんばかりにマーリンを残して退出していく。


「・・・・・・マーリンもごめん・・・」

「今回だけです」


はいはい、仕方ないなぁと手をひらひらと振ると周りの付き人を引き連れて退出していく。全員が出て行って暫くした後ゆっくりとマオが下りてくる。


「・・・ずっと探したの」

「五年間は流石に保証できません」

「その後は有罪なの」

「・・・ま、反論いたしません」


つかつかと近寄ってくるマオに対してあきらめたような笑顔で答える。一方マオは段々話しながら顔を俯かせてくる。きっと今まで張りつめていたものが切れ始めているのだろうと思う。足取りもよろけ始めているのでこちらからも近寄る。


「・・・本当は半分諦めていたの」

「でしょうなぁ」

「でも・・がんばったの・・・」


よく頑張りましたとそっと抱き留めると其のままマオは胸に顔をうずめると肩を震わせ出した。ずっとおじちゃんに言われたことを学んで勉強して頑張ってきたの、おじちゃんが見たときに褒めてもらえるかなって・・・・泣きながら今まで頑張ってきたことを切々と語る。


「大変頑張ったと思いますよ・・・良い主君に仕えられて私は幸せです」

「・・・違う」


首をぶんぶん振りながらその台詞じゃないと泣き続ける。頭を撫でながら五年間頑張ったんだなぁと思うと、本当は自分が言ってはいけない台詞が頭をよぎる、おそらくこれが望んでいる言葉なのであろうとは解っている。


「・・・マオずっと頑張ったよ」


涙を目にいっぱい貯めながら見上げて必死に言葉を待っている。


「・・・・よくできました・・・マオ・・お父さんとしては嬉しいですよ」

「うん!」


諦めたようにそう言うと本当に嬉しそうに抱きしめてくる。マーリンが居たらそれこそ何を言われるか解ったものではない。苦笑しながらマオの頭を撫で続けているとなぜか視線を感じてそっと後ろを振り向いた。


「・・・(ニッコリ)」


すごくいい笑顔で扉の隙間からこっちを見ているマーリンと目が合った。後で絶対色々な意味で泣かせてやると心に誓いながら見なかったことにする。結局この後マオ女王が泣き止むのと満足するまでずっと抱きしめられた。それは別に良かったのだが、取り合えず終わった後にマーリンの部屋に殴りこんで色々あった後翌朝マリスとメイファがやっぱり苦笑しながら迎えに来て引き摺って帰っていく大宰相が見受けられたとだけ。

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