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ありふれた報告書  作者: マンボウ紳士
第四章 それぞれの立場
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報告書61枚目 罠と資金の量は比例する

フォンブルク伯は代官から上がってきた報告書をまじまじと眺めていた、この半年で一気に拡大した町があるとの報告書である。運がいい、ゴールドラッシュを引いた理由は幾らでもあるがこの町に至っては特に報告は上がっていなかった、なのにいきなり首都を奪い取って第一位の街になったと言う。


「・・・・・・さて、適当に処理せねばならないかもしれん」


珍しく苦虫をかみつぶした顔をしながら辺境伯三人衆の緊急会議を秘密裏に行う事をこの時点をもって決定したのであった。こののち彼はアースライトからは割と恨まれ、その他の人間からは感謝を捧げられ続ける選択肢を選んだのである。


「割と忙しんだがねぇ旦那がらみで」

「あの方の捜索をしないと圧力が厳しいのですが」


辺境伯の二人組が会議室に現れて愚痴をこぼしながら椅子に座る、当初二人ともコンソールで終わらそうと言う発案だったのだが、フォンブルク伯が今まで見たことのない深みのある顔で良いから来いと言うので根負けしてくることにしたのである。実際彼は色々調べた結果今までで一番深みのある顔でこの会議に出席する事になっていたのだ。


「この写真を見て欲しい」

「・・・・旦那だねぇ」

「あの方ですね」


提示された写真をまじまじと二人が手に取ってみるとアースライトであると即断する。因みに昔の写真見せてどうするという突っ込みが入っていたのだが、日付を見ろとぽそりと呟くと二人そろって時間が止まる。


「え?・・・一週間前・・・・・だと」

「・・・・・・直ぐに迎えに行きましょう」

「今動くと絶対に逃げられると思うのじゃが」


だよなぁと全員で考え込むように頭を抱える、ほかの人間に知らせれば間違いなく辺境の惑星滅亡一歩手前まで行くだろう、さらに悪い事にマーリンやマオ女王に知られた場合は考えうる限りの最悪の斜め上を確実にかっ飛ばす結果になる。


「相変わらず旦那は厄ネタだねぇ」

「・・再びお目に掛かれるとは私は・・・・」

「三人衆の一角ですらこれだ、騒ぎは恐らく偉い事になる」


はらはらと写真を握りしめて泣いてるメリアを一瞥すると、アルゲインに苦笑しながらもう一度、今のところ打てる手が全て壊滅していると述べる。当然アルゲインもそれを受けて少し考えては見るがどの手段を講じても良くて最悪、悪くて斜め上を全力でかっ飛ばす結果しか想像がつかない。


「・・・・・・・・積んでるねぇ」

「・・・・・・・・積んでるのだ」


お互いに疲れ切った深みのある顔をしながら手元の珈琲を流し込む。恐らく一基に捕縛しなければ確実に逃げるだろう。となると現在自分が進めている公共事業が罠になるかも知れないと、アルゲインが珍しく笑顔を見せてパンフレットを差し出す。


「・・・・これは?」

「ライリーフ宙運が辺境の為に開発した浪漫の塊ライリーフ鉄道だ」

「・・・・・お・・おう」


目をきらめかせ力説するアルゲインを少し引き気味にフォンブルク伯が相槌をうつ。相転移エンジンを使用したバリアによりほぼ攻撃を無効化、エンジンは元より燃料コストも安いので大量輸送が可能。辺境の為の鉄道と言う訳だ。今まで見せたことのない表情で、さらに浪漫の結晶である装甲列車もちゃんと用意してると断言すると此方もパンフレットをテーブルの上に取り出す。


「・・・・とりあえず作戦のつながりを頼む」

「おう」


アースライトの写真に何かを熱心に話しかけているメリアを目に入れないようにしつつ、アルゲインに作戦を話すように促す、フォンブルク伯も流石にこれは失敗かも知れないと思っていても表情に出すほど若くはなかった。


「辺境にこれを開通させれば当然最初の試運転がある」

「あるだろうな」

「これを公募制と銘打って客を集める、客は全て捕縛の為のエージェントだ」

「・・・・・・・居場所が解っているなら一気にとらえる方が確実か」

「旦那には時間を与えれば与えるだけ不味い」


鉄道の方は出来ているので路線を急ピッチで建造せねばならない旨と辺境伯三人衆での利権の分配と、安全確保のための調印をすれば一週間もあればフォンブルク伯の辺境周辺には鉄道網を引けると豪語する。少し驚くも今のライリーフ宙運の力を使えばその程度なら簡単だと先ほどと同じように豪語する。


「その一週間後が勝負か・・・」

「逃がさない為にもマリス、メイファ、フォルナス様とメルティア様をお客として招いておく」

「・・・・・最善か」


どうする?乗るか反るか選べとアルゲインが計画書を叩きつけるとフォンブルク伯は娘の婚期があるのだ、協力しようと静かに計画書に丸を付ける。メリアはアースライト閣下に合えるぞと言ったら三秒で署名した、普段の冷静は何処に行ったかは謎であるがここにライリーフ鉄道開通捕縛計画が莫大な賃金をもって仕掛けられることになった。


「と言う会談がフォンブルク伯主体で行われたそうでありますな」

「ご苦労、しかしライリーフ鉄道か・・・・浪漫だな」


やはり昔夢見た、鉄道で宇宙を渡り歩くのは浪漫の塊である。アルゲインに連絡を取れるならまず第一に盛大に褒めてやりたい気分になった。それと同時に一週間が最低猶予となる事も同時に解った訳である。しかしなぜこの情報が手に入った?と聞くと辺境三人衆のメイドに御主君の威光は届かないはずないのですな!とかなり力説されたところを見ると確実に各方面にスパイをぶち込んでいるのだろう。


「ディア、珍しく命令だ」

「御主君、お待ちしておりましたな!!」


最敬礼でコンソールの向こうから感涙と共に画面いっぱいに顔が広がる、本当に彼女たちは行動の一つ一つが怖い。だが現状最大の味方であるのでそれを言わない分別も当然ある訳だ。なるべく目線を合わせない様に現状できる最善の手段を伝えていく。


「三つだ、ライリーフ鉄道の制服を手に入れろ、明確な航路と人数を調べろ、マリスとメイファの錯乱の為の影武者護衛を用意しろ、五日以内だ」

「万難を排してご命令を達成するのですな!者ども取り掛かるのですな!」


コンソールの向こう側から凄まじく派手な靴を鳴らす音が聞こえると一斉にどこに居たという数の人間が走り出していた。宗教は怖いな、いつかこの宗教を解散させねばならない。そう心に決めるも現在は逃げるために使うので最大限利用させてもらおうではないか。


「ディア、信じて待っている」

「御期待に!!!!!」


最早発言すら怪しくなりながら画面が唐突に切れる、恐らく感情が上回った結果であろう。消えた画面を眺めながら感慨に浸る。今までの生活でなかなか街の発展も楽しかったが時間切れの様だ。深く溜息吐くとをゆっくりと立ち上がり服を着替えモットさんの元に向かう。


「助役さんこんにちわ」

「今日は歩いて大丈夫ですか」


街を歩くと顔なじみになった人々が次々と挨拶をしてくる。居心地がよくこのまま発展に携わりたかっなと少しだけ寂しい気持に襲われる。ただ正体がばれてそのせいで迷惑がかかる方が数倍嫌なので仕方ないであろう。考えがまとまらずに歩いているとモットさんの家に到着した。


「モットさんいるかのぉ」

「ああ、アートさんか~空いてるからどうぞ」


許可が下りたので扉を開けてモットさんの家にお邪魔する。昔に比べると物が増え少し生活水準が上がったように見受けられるが、現在街の三人のトップの一人とは思えない質素な生活である。


「病院から聞いたのだが辺境ライリーフ鉄道がこの街に開通するそうだ」

「は~とうとうそんなものまで来るのかねぇ」


大きくなったからな、補給や運搬の拠点上必要になったのだろうと辺境の地図を広げながら説明を行う。説明をしている間中モットさんは頷いていたがいつもと違ってまっすぐに此方を見つめてくる。


「で~アートさん本題は何だねぇ」

「・・・・・・お判りですか」


思った以上に鋭い指摘に苦笑をもって返す。この御仁は結局私がしてきたことを何個かは見通していたのであろうが、それらはすべて街の為と解っていたから目を瞑ってくれていたのだろう。モットさんの顔を見るとやっぱりいつもと変わらないように微笑んでいた。


「・・・鉄道が開通しますと追手が来ますのぉ」

「・・・・・・」

「説明すると私は」

「テラ宙軍の人間だと言うんだろぉ?」


娘は気付いて居なかったけど私は何度も見たからねぇとお茶を飲みながら笑顔で答える。やはり食えない御仁であったのぉ。その後このままだと街に迷惑がかかる事と、大量の追手が街に来ることになるので鉄道開通と同時に姿をくらますと説明する。


「アートさんは最後まで忙しい方だったのぉ」

「・・・貧乏性なだけですよ」

「アートさんは・・・いや閣下はここに居たらばれるからねぇ」


閣下の発言に思わずお茶を噴く、恐らくここ数年で一番派手に噴いたかもしれない。むせて咳き込んでいる背中をモットさんが撫でながらまぁまぁと相変わらずの笑顔で話を続ける。


「命の恩を返すと言ってもまさか大宰相がここにいるなんて思わないだろうなぁ」

「・・・・・人違いじゃないかな」

「一応ジンさんもウィンさんも知らない振りをしようと相談したんだねぇ」


彼等は彼らなりに気を使ってくれていた。いくら楽しいからと言ってそれに気付かないあたり、私も年を食ったのかもしれない。しばらく話を聞いていると申請にそれぞれ行ったときに代官所の壁に貼ってあったのを見て気付いたそうだ、いくら辺境だからと迂闊すぎだろ。


「まぁ、そう言う訳ですのぉ、タイムアップのお時間となりました」

「感謝している、娘達や子供たちに未来が作れた、本当にありがとう」


此方が照れるような丁寧なお礼をモットさんが行う。そんなお礼を見ながら自分も隠れるために手伝ったのでそんなにお礼を言われると照れると苦笑してお辞儀を止める。


「逃げなきゃだめかねぇ」

「・・・割れたものを元に戻す手段はないですのぉ」


寂しそうに微笑むのを見たモットさんが少し諦めたように微笑むと立ち上がり手を差し出してくる。


「今までありがとう、ご無事で」

「我儘に付き合って頂き感謝している、必ずいつかお礼はするからのぉ」


差し出された手を両手で受け取りゆっくりと握手を行う。鉄道が来たと同時に消えるので探さないで欲しいと言う事と、もし咎められたら全力で脅されていたと必ず証言する様にと約束を執り行う。こんな時の為にちゃんと脅迫文を作っていたのでそれを握らせた。この日二人して深酒をし、翌朝二日酔いで仕事にならなかった。

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