報告書46話目 その次へ・・・・
今回短めです、次回に続くための幕間と考えて頂けると幸いです。
爆発し空間に飲み込まれる戦艦の中で一人微笑み続ける男は帽子を前に置き勲章や身分証を全て帽子の上に乗せた。周りの景色は既に黒一色になっている、眺める風景は全て爆散して消えていく艦隊の残骸が飛び交っている。
「さて、終わったのぉ迎えにだれも来ないのは不思議であるがな」
炎すらも掻き消え黒い空間の中に飲み込まれ、周りを道連れにする自分の旗艦をその指令室から眺めてゆっくりとお茶を飲む。パイプ煙草を手に持ち目を閉じてその時を静かに待つ。
「覚悟は決めた・・・・・あとは時間までゆっくりさせてもらおうか」
今まで自分の心を押さえつけて走り続けてきた、目的と約束を守るためだけに走り続けてきた。そしてやっと立ち止まることが出来る。
「実りが最後に多い人生であった・・・我が子も得た、私を支えてくれる女性達もいた・・・なんと恵まれた人生であったか・・・・」
アトリとネコヤを思い浮かべてせめて正式に結婚許してやるんだったなぁと苦笑する。ひときわ大きな爆発が起こり頬を爆炎が焦がす。
「さて・・・時間か・・せめて最後はセルフに迎えに来て欲しいものだ」
「駄目です、まだあなたの仕事はあるんですから」
誰かにきっぱりと答えられた気がしながら男は目を閉じたままゆっくりと意識を手放すのであった。
・・・統一国家セラフィアム帝国・・・
惑星テラの王宮で自分の趣味ではない玉座に座った幼い女帝は、前に引きずり出された初老の男性を珍しく憎々しげに睨んでいた。
「で、敗軍の将の言葉を聞くの」
「マオ女王下に置かれましては」
「要点だけ言うの」
イライラしながら錫杖を叩きつけて言葉を遮る、周りにいるマーリン達将官達まで何も言わずに自分達に類が及ばない様に目線を合わせない。
「アースライトが全ての元凶で私は戦争など」
「元凶は全部居ない者にかぶせるの流儀と言う訳なの?」
「事実でありますれば、全部彼の者に唆されて・・」
「言語道断なの、マオの名に命令するこの者は極刑しかない連れて行くの」
無慈悲に言い放つとゴートフの周り居た衛兵が両脇を抱えて退出する、その間中聞くに堪えないアースライトへの罵詈雑言と、マオ女王に命乞いをし続ける男は其のまま広場に引きずり出されて速やかに銃殺に処された。
「で、マーリン元帥、マリス大佐とメイファ大佐の救助ご苦労様なの」
「・・・・・・・・」
「さて、アースおじちゃんをもったいぶらずに出して欲しいの」
「それが・・・」
「戦死は認めないの」
「・・・・・・・」
「大丈夫、生きているの」
結末を報告書で受け取っているものの、このころから無に飲まれた艦隊の破片がいろんな場所から見つかっていることから、完全な絶望から何とか立ち直った女王はゆっくりと立ち上がった。
「アースおじちゃんは何処かで生きてるのだから其のまま統一国家の大宰相の席はアースおじちゃんの場所なの」
「誰一人意義を挟む者はいないかと」
「捜索は本気出すの、マリスとメイファを捜索官筆頭で予算は惜しまないの、ついでにそのまま捜索省を作るの」
「直ぐに行動に移します」
マオを探し出してくれたんだから今度はこっちが探す番なのと全員の前で笑顔で宣言する。マーリン一人だけは彼女の悲壮な決意と本音を知っているので無言のまま跪いているだけだった。
「大丈夫、マオは強い子なの、おじちゃんに笑われるような事はしないの」
「誠心誠意我らお支えいたします」
「あと、おじちゃんの子供は男でも女でも暫定宰相だから補佐お願いね」
「当然我等忠誠を誓いますとも」
傍に控える今回の立役者たちを目を細めて眺めながらゆっくりと頷く、大丈夫だ、マオはまだ大丈夫と自分に言い聞かせる。きっとおじちゃんが見たら苦笑して息抜きしろと言うに決まっているのだろうが、マーリンやみんなが居るからマオは頑張るよおじちゃん。
「マリスは・・・・・」
「お嬢はずっと横になったままでして・・」
メイファが病室の扉の前でメッシャーに問いかけると、首を横に振ってため息をつく。話題になっている緋色の髪の女性は、ずっと懐中時計を握りしめていた。数時間前にはあの方は確かに自分に触れてくださった、なのにその方は今は居ない。
「子供を頼む・・・ですか、ずるい言葉だよね」
マーリンから男なら~女なら~のくだりを聞いて何とか自決を思いとどまったもののまだ納得がいかない女性はずっと不貞寝をしていた。今の自分の立場ならよっぽどの人間が来ない限りは扉は開くはずもない。
「嘘は海賊の専売特許なのに・・・とられちゃった」
懐中時計の淵をなぞりながら静かに時計の蓋を開けると紙切れが一枚落ちてきたのに気付いた。何だろうと思ってその紙切れを拾い上げるとずっと見続けていた人間の字で一言だけ『愛している』と書いてあった。
「私も・・・愛していました・・・・愛し・・・て・・・」
あの方を失ったと気付いた時から今まで実感はわかなかった、だけど今ようやっと泣けた、声を上げて大声で号泣した。外にいたメッシャーやメイファは何も言わずにそっと耳をふさいだ。そんな二人を廊下の向こう側からマオ女王とマーリン元帥もそっとも目元を抑えて眺めているのであった。
・・・???・・・
全宇宙と言っても当然人が住んでいても人が住むのに厳しい星もある。そんな星に住む人間は当然少人数であり住める場所は限られてくる、最もそんな星程レア資源がありどうしても人が住まなければならない場所も多い。この惑星もそんな場所に値する星であった。
「・・・・・・誰か倒れているな」
「父さん、生きているなら助けてあげようよ」
「だが・・・・・・」
「軍人さんみたいだしボロボロだから逃げてきたのかもしれない、かわいそうだよ」
マントをかぶって砂の風を防ぎながら親子らしい二人組は遠くで倒れている軍人を助けるかどうかで話していた。言い争いをした結果どうやら娘が勝ったらしくボロボロの軍人を男が背負って連れて行く、その軍人が歩いてきた元の場所には何かの残骸と戦艦らしい何かが砂に埋もれていた。
「村長いいのか?」
「ひょっとしたら拾い物かもしれんしなぁ、娘が頼むから流石にな」
「相変わらず娘には甘いな」
家に運び込む男に住人らしい男が声をかけるが、苦笑しながら村長と呼ばれた男は背負って家に入っていった。この村長と娘のおかげでこの村が発展する事になるのだがこの時はまだそんな事を知ることもなかった。
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