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ありふれた報告書  作者: マンボウ紳士
第三章 錆びた揺り籠
48/110

報告書39枚目 右から左に

テラに亡命してから大分立つのだが不思議な事にお金だけは勝手に増える、使って回して散々浪費しているにもかかわらず、回りまわって手元に帰ってくるときは殆ど倍になって帰ってくるのだからたちが悪い。


「いい加減本当に目盛りになってきたな」

「金額がもうどれくらいでも驚きませんよ」

「既に国家予算超えてると思いますからね、大金持ちですよ閣下」


ため息交じりに決算報告書をメイファとマリスが提出してくる。一様に目を通して手元の隠し帳簿に記入してゆく。最初の方は赤い字で出費が大量にあったものの、最近は赤い字よりも黒い字が増え金額もそろそろ桁数がおかしい額になってきている。


「面倒だからゴートフに少し献金しておいて」

「畏まりましたいつも通りの通路で献金しておきます」


増えすぎた金を処分するのに献金とか意味が解りませんとメイファに苦笑されるが仕方ない、何分多すぎるのだ。バラまけばバラまいた分だけ利息と言う名のおまけを連れて帰ってくるのだ、来なくていいのにしっかり帰ってくるのだ、権力は恐ろしい。


「何かをするにも賄賂、させても賄賂、便宜を図ると賄賂」

「黄金色の菓子やらカステラやら言い回しも多いですよね」

「この前は確か季節の御挨拶でしたよね」


よくもまぁ言い回しを考えつきますよね~とマリスが金塊を整理しながら笑みをこぼす。メイファも献金措置が終わりましたと報告しつつ傍にある宝石類を無造作に袋に詰めていく。ある意味目盛り以外の呼び方が見当たらんのぉと呟くと大量の白金貨幣を積み上げて全て流し込む。


「これだけあったらあれだな研究資金なんか個人で出せるな」

「そもそも研究施設ごと買い取れますよ?」

「会社でも設立しますか?こっそりセルフィアムに物資を流すための」


仕舞っても仕舞ってもなくならない貴金属を面倒くさそうに地下の隠し金庫室に運び込む作業を繰り返しながらメイファがぽつりと愚痴をこぼす。ただ実際問題、地下室もそろそろ溢れんばかりにたまってきているので本当に何かしら消費しなければいけないだろう。


「会社か・・・マリス、海賊の隠れ蓑に会社でもやるか?」

「え、ですが・・・」

「物資も流せるし貴金属も密輸できるしのぉ」

「アース様がおっしゃるなら直にでも」


取り合えず運送業を営ませるか、許可は直ぐ下せるから後はもう少し献金を掻く方向にバラまけばよかろう。メイファにそれとなく指示を行うとすぐに行動に移す。考えついた数分後には莫大な金額か各方面にバラまかれ誰も文句が出ない状況になっていた。


「マリス社長として頑張ってくれ」

「会長はアース様なので問題ありません」

「なぜ私が副社長なのでしょうか」


一時間後にはアースライト会長、マリス社長、メイファ副社長による運送会社『ライリーフ宙運』が立ち上がる。構成員はマリスの配下の海賊衆を基に一般公募の後面接を行いそこそこの規模の会社を建業する事になる。因みにちゃっかり前回のディア局長は技術顧問として名を連ねている。


「ゴートフにかなりの献金を送りテラ御用達の旗を貰え」

「セルフィアムの方はマーリン元帥に一報入れればいただけますね」

「これで座っていても金が増える生活に」

「表向きはですね」

「うむ」

「ディア局長には資金援助の口実の為に名を連ねさせた、風当たりも防げよう」

「万事うまくいきましたね」


この後ゴートフに地下室の三分の一を献上しあっさりと御用達を受け取り再びコンソールの前でお互いに高笑いをする事となった。ただしゴートフはさらなる献金の拡大を思い描き、アースライトは自分の野望を達成するための一歩を得た事によるお互いの意図がまったく違った高笑いである。


「此方からは表向きは高級嗜好品、美術品等、裏は私が稼いでいる貴金属だ」

「了解でさぁボス」

「セルフィアムからは表はレアメタルとレア鉱石を輸送してもらう、裏は当然密書が入り乱れる、解っているが責任は重大であるのぉ」

「解っていると思いますがばれたら・・・ね?」


輸送部門総責任者メッシャーに笑顔で首をゆっくりと傾けながらマリスが念を押す。一斉に運び込み作業を行っていた、周りにいる海賊衆と共に顔色が真っ青になると直立不動で動きを止める。


「と、当然でさぁお嬢」

「アース様に迷惑をかけることが合ったら・・・楽に死ねると思うなよ?」

「「「イエスマム!!」」」


今までで一番良い笑顔でマリスが脅しをかけると全員が一糸乱れぬ敬礼と共に返事をする。メイファもさり気無く暗器を仕込むのを辞めなさい、マリスは脅しすぎて昔に戻りかけているので落ち着きなさい。突っ込みが追い付かないので全員一度深呼吸する様に。


「宇宙港の傍の土地をこの金で買い上げて建物を建ててしまえ、最悪建物自体を買い取って本社にしてしまえばよい」

「畏まりました、直ぐにでも行動に移します」

「メイファはそこら辺の手を打つように、マリスは私と一緒に近辺の根回しと地上げだな、目盛りで頬を叩きに行くぞ」


苦笑するとともに銀行を呼び出しついてくるように指示する、この日空港近辺の土地に地上げの嵐が吹き荒れる事になるがそれは物騒な手段ではなく、金額をもって相手を殴り倒すという荒事になった。後ろに控えている銀行は金額を見るたびに青い顔をしていた事は付け加えておく。


「広大な土地、速やかに建築作業に移らせられるほどの資金、交代制で突貫作業を行い建築させるのだ、なぁに期限はあるが資金は無限に近い、各社健闘を祈る、どのような手段どの様な行動であろうと期限さえ守れば資金は無制限を約束する」


アースライト号令の元、テラ大手建設業者に大規模発注が行われそれに伴った業種すべてに莫大な恩恵がバラまかれた、のちにテラの歴史に残る岩戸景気と呼ばれるライリーフバブルのスタートである、高層ビル、ドック、大規模倉庫、社宅、流通施設、下部組織の工場などその土地に大量に立てられ流通が一気に活性化する。これにより資金面に劣っているが技術のある会社が大量に台頭し技術発展すらも促す事態になる。


「宜しいですか皆さん、常に拡大し建造するのです」

「アース会長の為に働くのです、労働の対価に見合った潤沢な給料を約束いたします」


拡大政策を潤沢な資金で推し進め、最終的に一惑星に一社はライリーフと歌われる超巨大産業に成長するのだが、それはまた別の話であり現在はスタートを切ったばかりである。


「おかしい、大量に湯水のごとく資金を使っているのに不可思議に献金が増えている」

「アース様、また建設会社からの手土産だそうです」

「・・・ゴートフに回せるだけ回して」

「それでもかなりの金額が余ります」

「よし、ディア局長の方にもエンジン開発資金援助で投げれるだけぶん投げろ」


マリスとメイファの悲鳴を聞きながらとにかく資金を分散させる命令を急いで下す。不自然なくらい増えた手土産に目をやった後ため息をつく、後々考えれば使用すればするだけ経済が周りさらにお金の流れも強化される。そうなれば当然出た量も増えるのだが、帰ってくる量も増えて自分の首を絞めてると気付くのは帳簿に押しつぶされた後の事であった。




・・・セルフィアム帝国・・・


マオ女王の前に平伏しメッシャーが手紙を差し出す、マーリンがそれを受け取り中身を改めずにそのままマオ女王に手渡す。受け取った手紙を開き、中に書かれている目録と手紙を目を細めて眺めるとさも愉快そうに笑う。


「へぇ、流石アース卿だね莫大な資金を役に立てて欲しいと献上してきたよ」

「今回の交易で国庫の半分が埋まりました、流石アースと言ったところです」

「名目としては両国友好と支社建設の為か」

「名目が確かなら受け取っても問題ないと愚考いたしますな」


両国友好の推進とライリーフ宙運のセルフィアム支店を作る代わりに資金を献上いたしますと言った内容であったが、資金はもとより詳細なテラの現在情報をマーリンはメッシャーを通して手に入れている。表向きの貿易の許可と裏の情報流通の許可を手紙一通で取りに来たという事実はアースらしいと少し可笑しくもあった。


「うん、アース卿の目的も明確だしマオとしてはこの陳情を受け入れようと思うけどどう思う?」

「陛下の御心のままで構わないと思います」

「ではメッシャー、ライリーフ宙運の支店建設を認めます、今後も道を違えない限りは良き付き合いを望みます」


丁寧に臣下の礼を取りメッシャーが退出する。扉が閉まるのを確認するとマオ女王はマーリンを呼んで奥の部屋に消えていく、付き人もこうなるとついていくことを許されないので扉を閉めると誰も通さない様に扉の前で待つのである。


「相変わらずすごいねアースのおじちゃん、敵国にいても貢献してくるなんて」

「もともとがテラ大嫌いですからな」

「それでも倒すためには自分の身をチップにできるんだからすごいよねぇ」


誰もいないのを確認するとベットにダイブしながらマオが素直な感想をマーリンにぶつける。お行儀悪いですよと目を細めて注意しながら苦笑する。


「情報だけではなく経済を回してくるとは思いませんでしたな」

「停滞気味だったしアルゲイン少将に潤沢な資金を与えて、領内発展を促せばいいかな?」

「アースならもう一声足りないと言うでしょうな」


マオの答えを紅茶を飲みながらマーリンが採点する。辛めの採点に思わずえ~っと非難を上げながらマーリンの方に向き直る。


「え~マーリンお姉ちゃん厳しい~」

「アースが居たら同じように言うと思いますが?」

「おじちゃんが言いそうな事・・・・え~なんだろうな~」


女王として民草の生活も大事ですがアースが何を言っていたかを思い出した方がよいのではと紅茶を飲みながら助言をする。助言を受けておじちゃんが言っていた事?と首をかしげながら錫杖を弄びながら考えると恐る恐るマーリンの方を向いて発言する。


「多分だけど領内発展と技術促進だと思うんだけどどうかなぁ」

「二回目なので正解で宜しいでしょう」

「やっぱり厳しい~」


とほほとため息をついてベットにうつぶせになる、気丈に頑張ってはいるがやっぱりアースが居なくて寂しいのだろうなぁと目を細める。最近女王私室に呼ばれることが多くなっている、取り合えずたまにはアースに顔を出すように言い含めておくとしよう。テラの地で起きたバブルは両国間を好景気に押し上げ、しばらくは流通が強化される本来の目的と違った置き土産をすることになった。

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