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ありふれた報告書  作者: マンボウ紳士
第三章 錆びた揺り籠
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報告書37枚目 道を間違えた研究所

膨大な量の資料を片手に製造ラインとそれに伴った場所、金額を手に入れせっせとゴートフに謙譲し続ける、実際一つのラインさえ動かしておけば献金として十分な船が作れ、さらに自分の懐も今以上に潤う。打出の小槌といっても過言ではないのだが・・・・。


「やっぱりこれに手を出していたか」


深いため息とともに遺伝子操作とクローンの研究、進化人類、戦闘特化人類の開発と実験についてという報告書に目を留める。


「潤沢な資金と潤沢な実験相手がいればするよなぁ」

「完全に狂気の沙汰だと思われますが」

「アース閣下としてはありえない判断だと?」


マリスとメイファが報告書をまとめながら質問をしてくる。一般的に考えれば確かに先頭の強化にもなるし、使い捨てという言い方は好きではないが人的資材としては最上の部類に入るであろう。


「これに手を出した時点で敗北と同じだ」


何処かで潰さなきゃやってられんなぁと呟くとシュレッダーに投げ捨てる。子気味よい音とともに裁断される書類を見守りながら視察を行うと宣言する。


「では明日にでも視察をいれますね」

「警備はお任せいただければ幸いです」


どうせろくなことにならんなと苦笑しながら任せると小さく呟いた。


「さて、で、視察に来たわけだが・・・・・・・」


テラ生命科学研究生産局は朝からありえない人数が動員されていた。車が乗りつけドアが開かれる。ドアから入り口までは赤いじゅうたんが引かれ右に参謀省の重役が並び左に総合生産省の重役と研究員が並ぶ。


「「アースライト閣下に敬礼!」」


大声で号令がかけられると一斉に全員が敬礼をし前を通るのを待つ、これは何の拷問なのであろうかと軽いめまいを起こしながらマリスとメイファを引きつれ赤いじゅうたんの上を歩く。通った後ろの重役たちは列の後ろに続き長い行列となり局内に向かう。


「無駄だろこれ」

「アース閣下の威光の賜物と考えれば素晴らしい事かと」

「アース様ならば当然かと」


この手のことに関しては護衛の二人すら当てにならないとやはりめまいを起こしながら研究所に向かう、よく見るとマスコミやら見物客やら結構目に付く、どうやら一大イベントとして認知されているようである。


「研究局長だけ残して後は解散しろ」


中に入ると後ろからついてきた人間たちに解散するように命令を下す、全員綺麗な敬礼とともに自分の職務に戻っていく、まともな人間もいるといえばいるのだろうが重役連中は相変わらずお車代を受け取って去っていく、帰りに事故に会うように軽く怨念を送っておく。


「私がディア・メチル研究局長でありますぞ閣下」

「ご苦労、Dr.ディア、報告書においての説明を頼む」


白衣に度の強い眼鏡、スレンダーな体でぼさぼさの長い髪を適当に後ろでまとめた、黒髪の女性が適当な礼をして報告書を取り出す。


「強化兵士とクローン技術、選ばれた人類の作成についてでありましたな閣下」

「そうだ、明確なものを提示しない限りは金食い虫として廃止する予定である」

「閣下に置かれましては今までの投資を無駄になさる阿呆であられると断言してよろしいですかな?」


もはや理解が置けないという目でこちらを見下すと不敬罪を斜め上に走る勢いで発言する、あまりの事にマリスとメイファが停止するも一拍の後軍刀を構える。


「・・・・・阿呆の断言の理由を聞こう」

「すでに一定の研究は終わり形になっているものもあります、全てを悪と見なすなら化学は全て悪かと」

「詭弁であるが続けろ」

「クローン技術、強化兵士、新人類もサンプルとして生体実験を行っております、おそらくそちらの成果をお目にかけたほうが早いと思いますな」


胸を張ってこちらでございますと奥の部屋に案内される、厳重なロックを何個も抜けるとかなり広い研究室に通される。回りには多数のガラスの水槽が立ち並び異形の者達が立ち並ぶ。醜悪としか言いようのない景色の中うっとりとした表情でディア局長が立ち止まり演説を始める。


「クローンに関しましては永遠の命を得るための最初の一歩、次の強化兵士はクローンによって得た技術を使い拒否反応の出た部分を取替え、今まで以上の進歩を促す、その得た最後のデータは来るべき新人類の誕生の技術に流用されるのです閣下。我等の手で人類の進化たる時計の針を数倍の速さで回すのです、これほどの科学者としての本望はございません」


大仰に身振り手振りを交えてどこからそんな声がと言わんばかりの大声で言い切る。科学者たちは一様にその話を聞いた後に静まり返り、どこからともなく拍手が巻き起こると万雷のような拍手に研究所が包まれる。


「・・・・・・・狂ってるな」

「「御意に」」


どうしようもないものを見る目ではき捨てる、声が届いた二人も何か別のものを見ているような目で軍刀を握りなおす。


「そのご大層な夢に研究資金の三分の二を取られている」

「研究とはお金であります閣下」

「そんな金があるくらいなら軍備にまわしたいのだがね」

「ならばこその強化兵士であります閣下」


ディア局長は間髪要れずにお見せいたしますと合図をすると、奥の扉から軍服に身を包んだ男が一人連れてこられる。


「このものは能力は全て平均以下でありましたが強化兵士の施術により能力を数倍にする事に成功しております」

「白兵が強いだけならゴミだが?」

「頭脳に関しましても閣下と同レベルくらいはあると思われますが?」

「はっはっはっはっは、面白い冗談だな局長」

「事実であります、アースライト閣下」


扇子を開いて高笑いでごまかしはしているがマリスとメイファは既に軍刀を抜き放っている、とめなければおそらく切り殺していたであろう。


「ふむ、では少し確かめてやろうかなぁ」

「こちらをどうぞ」


戦場シュミレーションがコンソール上に立ち上がり五回勝負で能力をお見せいたしますと自信満々にけしかけてくる。メイファが憮然としてアース閣下が出るまでもありませんと相手を申しでる。


「これで終わりです」

「・・・・・ま・・参りました」


メイファが冷や汗をかきながらがっくりと崩れ落ちる、確かに流れるような戦術と技術であるのは間違いないようだ。ディア局長は勝ち誇ったようにアース閣下もどうぞと進めてくる。


「ふむ、ではちょいと相手してやるかのぉ」

「手加減はしません、お願いします」


深々と相手がお辞儀をしてくると同時にシュミレーションが開始される、回りの研究者たちやメイファとマリスが見守っている中静かにこまが進められる。


「さて、これで方位殲滅および主力の背後で反乱勃発、どう対応するかね?」

「・・・・・・・・・・」


無言で動きを止める相手とディア局長を見ながら扇子で扇ぐ、かれこれ五回とも奇策、手回し、経験で壊滅させている。メイファとマリスは当然ですよねとなぜか誇らしげに胸を張っている。


「局長、私と同レベルであるという進言を受け楽しみにしていたのであるがこのざまは何だね」

「あ・・いえ・・その」

「期待外れもいいところだな、経験も足りなければ臨機応変もできない、ただのゴミだ」


ゴミといわれた瞬間に顔をゆがめ下唇を思いっきりかみ締めるディア局長にさらに畳み掛ける。


「クローン技術は医学転用ができるが強化兵士がこの程度なら予算の無駄だ、直ちに打ち切る」

「お待ちください白兵の能力を・・・・・・」

「艦隊戦において白兵戦はほぼありえん、いらん能力だ・・・それにな」


後ろを指差すとマリスが軍刀を鞘に納めているのが目に入る、足元にはぼろぼろに倒された強化兵士が転がっていた。


「既に私の愛人兼護衛にすら勝てない兵士に何の価値が有るか説明を求めたいのだがね」

「・・・・・・・・・・」


下唇を噛み過ぎて血が流れ出ている状態のディア局長に答えを促す。無言で此方を睨んでいるのを無視し話を続ける。


「さらにこの程度で新人類を誕生させるというが劣った新人類などいらん」

「そちらは是非に見ていただいてから判断していただきたく伏してお願いいたします」


先ほどとは打って変わって縋り付くような懇願をする。


「まぁよい、現状クローン技術は医学転用においては認めるがそれ以外は停止、強化兵士計画は全て白紙の上破棄とする」

「し・・・しかし」

「どうしてもやりたければ自分たちで予算をやりくりするんだな、此方に回す無駄金など無い」


きっぱりと宣告すると廃止と停止の書類にサインをし判子を押す、これにより正式な命令となり逆らえば研究員全員を罪に問うと宣言する。ディア局長を見るとこちらを射殺さんばかりに睨んでいる。


「さて、では局長が言い続けている新人類とやらを見せてもらおうか」

「此方です」

「精々企画倒れでないことを願いたいものだな」


嫌味に対してディア局長は小さく舌打ちをすると、さらに厳重なロックをといて此方ですと案内する。後ろから付いていくが余程悔しいのか足音が所々大きくなっている。


「まず概要と説明からさせて頂きます」


資料と報告書を際奥の研究室で手渡され目を通す。同時にかなりの素材とかなりの金額がつぎ込まれているのがわかる資料が大量に挟まっている。


「まず生まれた子供たちは全員平均以上の知能を持ち、手先、行動も同じ年代よりもはるかに進んだ結果が残っております」

「・・・ふむ」

「現在実験体は01~10まで手がけられており、01は既に年齢的には20代として働いております」


資料をめくり説明してくる、資料によると実験体01は女性タイプであり子孫を残せるかどうか、知能はどうであるか、感情はどうであるか、細かく現在進行形で集められており監視対象となっているようである。


「この結果実験体01に関しては問題ないとわれらは判断を行いさらに実験体を増やしました」

「・・・子孫が残せるかどうかについては不明とあるが?」

「新人類同士で無ければ意味がないと考えまず保護者であるべきという判断のコンセプトであります」


再び資料をめくり細かく目を通していく、現状の結果からほぼ病気にならない、怪我の直りが異様に早い、発達した知能と手先、同年代の数倍のスペックを有していると判断される裏打ちなどがつづられている。


「現状この点については問題は無いな」

「では此方の継続は認めていただけるのでしょうか閣下」

「資料にある実験体全てを見てからであるな」


お任せくださいと言うと不適に笑って歩き始める、ディア局長が最後のロックをはずし此方の奥ですと先導し進む。メイファとマリスは臨戦態勢をとっており一応無効に何者か入るのであろうとは予測できる。私としては大体の予測と結果は見えてきているのだがさて、どうなることやら。奥の部屋から誇らしげにディア局長の呼ぶ声がむなしく響いた。

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