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ありふれた報告書  作者: マンボウ紳士
第三章 錆びた揺り籠
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報告書36枚目 持っている歯車の大きさ

最終的にはもみくちゃにされたものの無事に使節団を送り出して友好関係をアピールは出来た。その後始末が終わる前にわざわざ来てくださったお偉いさんを空気が読めない人間とみるべきなのか、空気が読めるから顔を出したとみるべきなのか意見が分かれるところだろう。


「アース様、ゴートフ総議長がお見えです」


短く告げるマリスが仕方なさそうに報告をしてくる、扉の傍で本日の護衛官役のメイファも目を伏せて此方を見ない。ため息をつきお通ししてと言うとすぐに扉が開かれる。


「使節団の対応お見事だったと聞きさっそくねぎらいに来ましたぞ?」

「これはゴートフ閣下、お帰りでしたか」


立ち上がり白々しい演技を行い、相手の元に駆け寄る。


「わざわざ変装して煙に巻いて追い返したと聞きます」

「当然でしょう、もう私はテラの人間ですからな、未練などありません」

「やはりアース殿の忠誠は疑いないですなぁ」


信じてましたぞと言って握手をしてくる。諜報三ケタ送り込んできた人間は言う事が違うなぁと言いかけるが飲み込むことに成功する。


「向こうは現状の最大の人間で迎えて来ましてな」

「ほう、元帥が此方だというと・・・マオ女王ですかな?」

「ええ、それと参謀長が一緒でしてな、盛大な歓迎でしたなぁ」

「それは結構な事で、我等の目的の為には平和でなくては」


扇子を広げて口元を隠しいやらしく笑う。ゴートフもそれに気付き頷いてお互いに笑いあう。


「戦争気分を煽って軍事費を徴収政策を強行する」

「税を上げても目線は敵国ですね」

「左様、で上がった金は」

「お互いの懐を潤すと言う訳ですな」

「流石アース殿、良く解っておるのぉ」


お互いに高笑いをする。意見などございませんと目を伏せながらマリスがお茶を置いて静かに下がる。


「そういえばゴートフ閣下」

「なんじゃね?」

「セルフィアムより問題が例の総合生産省」

「何か掴んだのかのぉ?」


戦艦製造と払い下げの一連の錬金術をそっと密告する、どうせいつかは潰すラインだ精々忠誠を誓っていると見せるために役に立ってもらおう。


「やはりそのラインか」

「因みにこちらが其の払い下げ会社一覧です御収めを閣下」

「アース殿は本当に有能ですなぁ」


上機嫌で一覧の資料を懐にしまい込む。後で一覧の会社に脅しをかけるんだろうが私には知ったことではない。


「いっそ生産ラインを取り上げてはいかがですか?」

「ふむ、と言われると」

「取り上げて閣下の息のかかった省に管理させれば」

「錬金術事懐に納められると」

「ええ、会社の方も取引相手が変わるだけでしょう」

「成程のぉ」


ゴートフの底抜けの欲だけは尊敬に値する。今の発言ですでに自分の最大の利益を計算し出しているのだから。


「さりとて大義名分がないのぉ」

「そうですな、私にお任せいただければ少し騒ぎになりますが閣下のお望みどおりになるやもしれません」

「ほう、策があるとでも?」

「勿論ですよ閣下、閣下が富めば零れてくるものも大きい」

「引いてはアース殿の懐も富むと」

「いやぁ、閣下には勝てませんな」


お互いに向き合うと、再び卑しい笑顔を突き合わせ後ろ暗い握手をする。


「必要なものは何だアース殿」

「そうですなぁマスコミ関係と司法関連の権利を一時お貸しいただきたい」

「ほほぉ、総合生産省のトップが変わりそうじゃのぉ」

「閣下の損にはならないかと」


お茶に口をつけながら此方を値踏みする様に静かに目を閉じている。どうせ心の中では最大利益と損益を量りに掛けているだけなのに御大層な事だ。


「成功した場合のアース殿の望む物は?」

「参謀省と総合生産省のトップがベストですな」

「ほぉ、打ち出の小槌を握っておきたい思惑かのぉ」

「御明察です、閣下にお渡しするお零れを直接頂きたいかと」


何やら思案顔になっているがマリスがそっとメモとペンを持ってくる。メモに数字で8:2と書いてゴートフに渡す。


「ふむ、謙虚な数字じゃな」

「全てはゴートフ閣下の御威光ですから」

「相変わらずアース殿は利を考えてくださるなぁ」

「ゴートフ閣下の長期政権こそが私の利益に直結いたします、援助は当然かと思います」

「アース殿の爪の垢をほかのぼんくらに飲ませたいほどじゃよ」


全部お任せしますぞと握手を求めてくる、此方も微力ですが閣下の為ならば全力で挑ませていただきますと伝えると握り返す。


「では朗報期待しておりますぞ?」

「お任せください閣下から権利をお借りいただければ直ぐにでも動きます」

「うむ、戻り次第すぐ連絡しよう」


出て行くゴートフにマリスが玄関まで見送る、当然車に乗り込むときにお車代と称した賄賂を渡すのを忘れてはいない。


「さて、これで一個目の手はずは整ったな」

「欲ボケですね」

「後は画像編集と音声データの加工だが」

「すでに終わっております、指示があり次第マスコミ各社にリークできます」


メイファがメモリースティックを静かにテーブルの上に置く、後はいつでも動けるという姿勢を相手に見せておかなければいけないのが面倒であるが仕方がない。


「因みに盗聴器はゴートフが出る時に全て潰してあります」

「あの御仁も懲りない方だなぁ」


苦笑して残ったお茶を飲み干し苦笑する。マリスが表から帰ってくると無言で其のまま手を洗いに直行する。


「どうかしたのか?」

「いえ、手が汚れたのと耳が汚れたのと気分が害しただけですアース様」

「大事だろ・・・」


大体の想像がつくが思いのほか不機嫌で手と耳を洗い続けるマリスを見つめる、洗い終わったと同時に憮然とした表情で隣に座ってもたれかかってくる。


「手を握られて愛人になって欲しいと言われた上に断ったらアース様の情報を売って欲しいだそうです」

「素晴らしいな、そこまで徹底しているならもはや妖怪のたぐいだ」

「災難でしたねマリス、タオルをどうぞ」


自己保身能力は最大級であるなと、笑っているのを恨めしそうにタオルで顔と手を拭きながらマリスが不貞腐れた。


「事が終わったら細切れにしないといけませんね」

「その時は手伝いますよ」

「物騒な事だ・・・」

「参謀首席お電話です」


二人に感想を言う前に報告官にさえぎられる、ゴートフであろうなと想像して電話に出るとやはりそうであり、今の時点をもって権利を一時預けるから動いて欲しいと言われるのであった。


「金のにおいに敏感な方だ」

「拝金主義者としては素晴らしいですね」

「まぁいい、やれ」


そう言い放つのとマスコミ各社に身元不明でリークする為の作業が開始されるのはほぼ同時であった。数時間後あっという間にトップニュースでひたすら加工された動画が流し続けられる。


『払い下げた艦の差額を懐に入れるわけだ』

『しかし民を騙してはいませんかね?』

『民など愚物の集まり、我らの利益の為には使いつぶすものだ』

『承服しかねますな』

『莫大な金が入るのだぞ?協力したまえ』

『私は一応国家の守護者の一人としてのプライドがあります、お断りします』

『若造が!後悔するぞ参謀首席』


と一連の話なのですがどう思われますか?としたり顔の司会が知識層に質疑応答をし全局でネガティブキャンペーンを無償で行ってくれる。出所が怪しいというのにマスコミ各社はニュース番組で盛大にこの問題を取り扱う、しかも悪の総合生産省のトップと最近売り出し中の参謀首席と言う事もあり勝手に流れ続ける。


「笑いが止まらんな、出所不明だろうと怪しかろうと」

「明確な勧善懲悪は皆さん大好きですから」

「しかも正義はこちら側、雪崩れるように各民間会社から密告の嵐だそうです」


早々にこれは偽造だと総合生産省から発表されるが報道の自由、報道しない自由の後者が発動、そちらはまったく相手にされることはなかった。むしろ毅然として、話すことはありませんと発表した参謀省の潔い態度が素晴らしいと称賛される始末である。


「私としましては国家の礎としてこの問題を、全て司法にゆだねる所存であります」


画面の中でしたり顔で私がインタビューを受けている。全ては予定調和であり結果論なのだ。メイファとマリスがコッソリ出ている番組を録画しているのはみなかったことにしておこう。


「後はタイミングを見て司法を動かせばおしまいだな」

「タイミング的にはもう少し自爆していただいてからがよろしいですね」


今のところ総合生産省からかかってくる電話は全てシャットアウトしてある、もう少し怒らせれば完全に爆弾となってくれるだろう、楽しみだ。


「さて、第二弾を流す準備だ」

「加工終ってます、何時でも」

「演技の準備終ってます、何時でも」

「じゃぁ、やれ」


直ぐに第二弾と称した音声データが各マスコミにバラまかれる、出所の怪しさは間違いないが今の状態では信用される事だろう。


『貴様、このままでは済まさんぞ』

『何を言ってるか解りませんが脅迫には屈しませんよ?』

『貴様の周りの人間が被害を受けても同じことが言えるかな』

『他人を巻き込むとは恥を知れ恥を』

『貴様が招いたことだ、精々悔やめ』


間髪入れずにテレビモニターに緊急速報としてテロップが流れた後、各局の司会が動きがあった事を伝えるとこの音声データを勝手に加工して流してくれる。画面内では悲鳴と共に総合参謀省の悪辣さに非難が上がる。


「データ送信からわずか三十分か、気合入り過ぎだろ」

「いやぁ、もう一つがどうなるかですね」

「マリス頑張りましたからね、褒めてくださって良いんですよ?」


頭を撫でて欲しいと突っ込んでくるマリスを受け止めながら、画面ではおぼれる犬は叩いて沈めるの如くの勢いに流石に可哀そうになってくる、まぁこの程度で済むとは思ってもらっては困るが、明日が楽しみである。もう一つの演技の方が炸裂するのだからな。


・・・翌日・・・


『・・・帰り道で襲われて・・・』

「大丈夫ですよ、もう言わなくても」

『散々(ピー)されて・・なのにアースライト様は責任を取らせて欲しいと』

「お辛かったでしょう、それにしても良い方なのですね」

『手を取って涙ながらに済まないと』

「今時珍しい政治家なんですね」

『責任は全部私にあるって両親にも土下座していただいて』

「まさに政治の明暗がくっきりとした今回の事件、国民は・・・・」


画面上では被害者?マリスが涙ながらにレポーターにインタビューを受けているシーンが再生される、此処までそろっているのに疑いすら持たないというのがもはや不思議でならない。


「さて、司法に電話だ」

「二日で終わるなら楽な話ですね」

「すごいですね、今の半分くらいしか話してませんよ?」

「半分もあれば勝手にストーリーテラーが作ってくれる、それがマスゴミだ」


結局数々の汚職の証拠と今回の事件が決め手となり総合技術長官は緊急逮捕、異例のスピードでの裁判が行われ、国民感情も絡んだ結果国家反逆罪が適応され速やかな処刑が行われた、処刑に立ち会った参謀首席を見て血を吐かんばかりに叫んでいたというがそれは刑場の人間しか知らない事である。

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