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ありふれた報告書  作者: マンボウ紳士
第三章 錆びた揺り籠
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報告書33枚目 目盛りと水面下の殴り合い

惑星テラの一等地に構えられた邸宅で男はのんびりと目を覚ます、来客が多いためわざと大きい家を買ったのだがそれでも引っ切り無しに来客が途切れない。地位に比例して来客が多いというのはどの世界でも同じなのであろうが、テラにおいてはなおさらであった。


「おはようございますアース様」

「おはよう」


大きな鏡台の前で髪をとかして整えているマリスが、起きた私が鏡に映ったのであろう此方に向き直ってニッコリと挨拶をしてくる。


「・・・・・・ふむ」


右手がまだ重いのでそちらを見ると右手をしっかりと抱き寄せて寝息を立てているメイファが居た。


「そろそろ全員一緒で寝るのは・・」

「やめませんよ?」

「朝から色々大変なのだが・・・」

「私達二人はアース様の物なのですから為さりたい様に為されば宜しいのです」


メイファが一瞬だけぴくっと動く、どうやら狸寝入りをしているらしい、マリスはそれに気付いて今の発言をしたのであろう。


「で、今日は?」

「はい、何度も何度もしつこいのであきらめてください総合生産省トップとの会食です」

「・・・・・やんわり断ったのだがなぁ」


めんどくさそうに立ち上がるとメイファ御終いと言って右手を引き上げる、名残惜しそうに此方を眺めているが着替えを手伝い出す。


「因みにアース様、塵掃除ですが昨日で三ケタ超えました」

「・・・・・・・・相変わらず暇だな」

「程度が低いのですぐわかります、セルフィム見習って欲しいですね」


屋敷のメイドと執事の何人かはとぼそりと報告してくるがマーリンがらみで有ろう、無視しろとのんびりとあくびを噛み殺しつつ指示を出す。


「憂鬱であるな」


鏡の前に座るとメイファとマリスがせっせと身繕いを行ってくれる、二人とも何故か嫌がるどころか零れんばかりの笑顔でお互いに何をやるか決めて動いている。


「仕方ない、向こうのお招きに応じるか・・今日はどっちだ?」

「ご安心ください、マリスです」

「たった今、相手が心配になったわ」


苦笑しながら最後に軍服にそでを通して立ち上がる、寝室の扉を開け応接室に向かうとすぐ後ろをマリスとメイファが続く、途中メイドや執事に挨拶され手で挨拶を返しながら向かうのであった。



テラの本当に一部の上流の人間しか使えない料亭の個室に通されていた。相手は総合生産省のトップ、エンディ長官である。


「いやぁ、何度も何度もお誘いして申し訳ない、是非に話を詰めたくて」

「此方こそ大変申し訳ない、予定が埋まっておりましてな」

「何をおっしゃる、割り込みでお願いしていますので当然ですよ」


お互いに社交辞令で会談が始まる。似たような内容とつまらない話を要約すると、現在の生産ペースを落としたくない、余ったものはポケットに入れている、民間に払い下げて莫大な利益、どうせ戦争は起きないのだからラインは換金率のいい艦を作りたい、なのでご協力を、キックバックは当然。


「成程、若輩の私でお力になれるでしょうか?」

「発言と影響力が今や各省にとどろいておられるアースライト殿の言葉とは思えませんな」

「周りに合わせるだけで精一杯ですなぁ」

「御面倒でしょうが是非にアースライト殿にこの案を参謀省で通して欲しいのです」


目の前で繰り広げられる茶番にマリスはあきれながら意訳を考えているとメイファがコッソリと近づいて訳しますねと微笑んでくれる。


「成程のくだりは~面倒だから嫌だ」

「発言と影響力のくだりは~解ってるからやれ」

「周りにのくだりは~見返り無しでは」

「御面倒のくだりは~参謀省で通したら出す」


と言ったところですねと苦笑しながら教えてくれる。成程偉い人は面倒ごとが好きなんだなぁとアース様を見つめる。


「取り合えず参謀省に持ち帰って検討させていただきます」

「感謝しますぞ」


エンディが満足そうに握手をすると貸し切りにしておりますのでごゆっくりどうぞと言うと立ち上がり笑顔で去っていく。


「アース様、盗聴器が二桁、塵も二桁掃除いたしますか?」

「別にどうせ私がこの後何をするか気になるだけだろ」


大した問題でもないしと笑うと残っている食事を食べ始める、一緒に食べるか?と誘ってくるのでマリスと二人でご相伴に預かることにした。


「さて、この後は省内に戻って建設畑と会社と合わないとなぁ」

「ああ、例の建設の便宜を図るというやつですね」


食事を食べている間中、たわいもない金もうけの話を振ってくる、恐らくはお金で動くと思わせる為なのであろう、それに乗っておくことにする。


「アース様そろそろ新しい指輪が欲しいです」

「私はカバンや服が欲しいです」

「解った解った、金がかかって仕方ないなぁ」


笑いながら二人を抱き寄せてゆっくりと時間をかけてキスをする、ただそういう趣味はないのでそれだけで終わらせて立ち上がるが、二人は別に続きを~と何時もの感じなので苦笑して行くぞと促す。


「申し訳ございません、忘れておりましたゆえエンディからこれを渡すようにと」


部屋を出るとエンディの秘書と名乗る人間から車代と称した小切手を渡される。金額を見ると5億とあるので先行投資としては頑張った金額だと思う。


「まぁ、これはこれで仕方ないと言えるな」


小切手を苦笑しながら懐にしまうとマリスとメイファを伴って車に乗り込む、運転席にはメイファが、横にはマリスと前回とは逆である。


「アース様車にも盗聴器が・・・」

「それは不愉快だな潰せ」


こっそり耳打ちしてくるので流石に車の中は違反であろうと苦笑し全て盗聴器を取り外させる、数にして5個仕込んでいるのでなかなかこちらも頑張っているのであろう。


「ふむ、五個か・・・」

「はい、ですが本命はアース様の袖口のそれかと」


先ほど握手した時に付けられたと思われる軍服のボタンについている、小さな半円の機械であった。


「流石と言えば流石だがばれたときの印象は最悪であるなぁ」


そういうと右手で思いっ切り機械を真っ二つに割って投げ捨てる。


「さて、これでエンディはどう出るかな・・・しらをきるか謝るか」

「良い面の皮なのでしらを切るで」

「私は部下が先走ったを」


車の中で高性能探知機を作動させほかにないのを確認するとマリスとメイファがお互いの考えで賭けを始める、それを頼もしく思いながらそろそろ妨害が来る頃ではないかなぁと思案を始める。ある程度足場は固めた、金品で完全に省内は把握した。こうなると出てくるのは派閥攻撃だが現状ゴートフ一強政治だ、此処に所属しているうちを攻撃するのは恐らく馬鹿のやる事だ。


「間接的にでも攻撃してくるか・・・バレたらすさまじく不味い事になると思うのだが」

「相手の畑を荒らすことまでしますかね?」

「金と権力の為なら自分は大丈夫という根拠の元にやる馬鹿は居る」

「ではそろそろ伸び放題の草を刈って塵掃除をする時期ですかね」

「・・・ま、よかろ、セルフィアム以外の草はきれいに掃除すると良い」

「御心のままに」

「多く塵掃除が出来た方に一日付き合うというのはどうだ?」

「死ぬ気で」

「やらせていただきます」


二人の目の色が変わったので取り逃しはないだろう、むしろ相手に同情するな。さて、どれ程のごみが掃除されてどこから種が飛んできたかの集計が楽しみだ、少なくとも殆どの省が送ってきているだろうからな、後は金でどれだけ転ぶかである。せっせと目盛りを増やす作業に私はいそしむとするか。


「ふん、また金を増やさねばな」

「得意の悪巧みごっこですね、楽しそうですよね」

「まぁなぁ、なりきりでやるのは演劇みたいで楽しくはある」


マリスの突っ込みに苦笑しながら扇子で口元を隠し困ったような表情を浮かべる。いっそマリスは手籠めにされる可哀そうな女性士官の役でもやるかというと凄い速さで喜んでと言われたので外を向いて誤魔化すことにする。


「取り合えず塵掃除は帰ったらすぐに頼む」


もう一度誤魔化す意味を込めて車内の二人に言い放つと諦めたように外を向いてため息をつくのであった。



「と言う訳で参謀省の方には」

「うむ、では既定の通りの形で頼みを通しておこう」

「流石はアース参謀首席、おお、忘れておりました此方が今回のお礼でして」

「何だね?私は受け取らんぞ?」

「いえいえ、茶菓子でございます」


いつも通りの茶番を繰り広げ茶菓子と言われる賄賂を受け取るまでがワンセットである。仕事とはいえ馬鹿な話である、陳情という名の賄賂受け取り作業が給料を貰えて出来るのだからそれはもう腐敗一直線だ。


「ほほぉ、気を遣わせたねぇ」

「いえいえ、アース参謀首席にはお手を煩わせましたゆえに是非にと」


ほくほく顔をした男が其のまま退出すると部屋の扉を閉める、本日の仕事は終了と言う訳だ、それを見計らったようにマリスとメイファが書類を差し出す。


「ふむ、大体満遍なくみんな送ってきているな」

「しっかりむしっておきましたので当分無事です」

「盗聴器なども全て破壊しておきました、残骸は送り付けておきましたので」


やり過ぎであろうと笑うとさらに二人が此方が追加の報告になりますと、顔を少し伏せ気味に書類を差し出す。


「・・・・・・え?」

「事実ですアース様」

「まぎれもなく事実でありますアース閣下」


手に持たれた書類には今季締結の、不可侵条約締結におけるセルフィアム帝国使者の名前が書いてあった、総代表マーリン元帥、主補佐マール中将、副補佐アトリ大佐以上の三名が記されていた。


「・・・・・・・・・・・・」

「何が言いたいかはわかりますが」

「ゴートフ総議長より対応する様にとの命令が出ております」


深々と申し訳ありませんと頭を下げる二人を横目に、楽しんでやっているのかそれとも踏み絵なのか、要領を得ないまでも確実にこれは厄介事の気配がする。眉間を抑えて突っ伏すとしばらく頭を上げることなく偏頭痛に苦しめられる事となったのである。

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