番外編01枚目 ある海賊の航海日記
●月×日 晴れ
今日から宮仕えか、親父やお袋には悪いがこれからは権力を背景にしないと海賊稼業もやっていけない。
部下たちを食わすためにも長い物には巻かれろってわけだ。
何にせよ最初が肝心だからな、びっと決めて舐められないようにしねぇとな、私掠免許をかっさらえれば俺たちも安泰ってわけだ。
しかし宮殿に上がるとなると少し言葉を覚えないとなぁ、面倒だけど副官のメッシャーもうるさいし勉強するとしよう。
最近部下たちも結婚まだですか姉御?、とか余計な事もうるさいし面倒だからとりあえず目先の事を変えてごまかすことも大事だな、うん。
さてと、俺を迎え入れてくれる国の女王とやらは果たしてどんな器なのやら楽しみだな。
●月▲日
なんだあいつ、ムカつく、すっごいムカつく何が立場をわきまえろだ何が喧嘩を売って欲しければだ、上から目線で偉そうに・・・・・・・。
でもその後、使いのネコヤとかいうやつが礼服と礼節一式を書いた本をもってきて差し入れて行った。勉強なさい、恥をかかない程度にと忠文付きで、あ~~~~すっごいムカつく。
・・・・・・・・・・ムカつくんだけど・・・・・・・なんだろう、今まで自分の立場を悪くしてまで俺をかばってくれたやつって居たかな。
部下は違うし・・・・親父やお袋はそうだったけど・・・・・。
ああ、すごくモヤモヤする、胸のあたりがギュっとする、最終的に老朽化した戦艦や巡洋艦の改築もしてくれた。しかも巡察任務に出るときにも宇宙港まで見送りに来た。
絶対忙しいはずなのにわざわざ・・・・・・・何が無事に帰ってくるのが仕事だ・・・・、危ない仕事を押し付けてるくせに・・・・しかも駄目だと判断したら逃げろとか・・・・。
ああ・・・・やっぱりおかしい、顔が火照る熱があるみたいだ・・・今日はもう寝よう。
●月■日
今日も目に付く個人海賊や闇商人を捕まえ没収や鉱山送りにする毎日、反撃してくるやつらもいるけど改築された戦艦や巡洋艦に傷一つつかない。
最近仕事の最中に外を眺めることが多くなった。たまにある定時報告であの人の声を聴くのが待ち遠しくなってきた。
報告終了後に傍で悪態をついた部下をボコボコにして見せしめに営倉にぐるぐる巻きで投げ込んだ。メッシャーにもやりすぎだと止められたけど我慢できなかった。
何だろう、イライラする、気持ちがはっきりしない、胸が苦しい。
そうだ、こういう時は船医に聞こう、あの人に体調管理も船長の仕事と言われて船医を押し付けられたのが幸いした。
そう思って医務室にいる女医に症状を報告すると、あらあらと苦笑された、一体何だったんだろうか。
最後に素直が一番のお薬ですと言われた。
さっぱりわからないが胸がギュっとする・・・・・・ああ辛い。色々思い出して考えると、また顔が火照ってきた、やっぱり体調が悪いらしい、さっさと寝よう・・・ああ・・・胸が苦しい。
●月◆日
今日で最後の宙域になる、巡察も無事終わった。おそらく成果にしても結果にしても今までで最大の結果を上げたと思う。報告に行く時が楽しみだ。
やっと気づいた、俺としたことがあの人に借りがあるから罪悪感で苦しかったんだ。
さっさと功績をあげて借りを返せばこの胸の苦しみがなくなるに違いない、そうすればあの人の顔も見なくて済むし・・・・・・嫌だ・・・・・あの人に見て欲しいし俺もあの人の顔を見ていたい。
解らない、もう全然わからない、心がぐちゃぐちゃだ。
(以下滲んでいて読めない)
●月●日
あの後号泣しているところをメッシャーに連れられて医務室に連れていかれた。女医さんがメッシャーを追い出すと真面目に聞いてきた。あの人の事をどう思いますかと。
だからごまかすのを辞めて素直に話した、親以外で初めて心配してくれて、守ってくれた人だと、そして自分の立場を危うくしてまで俺を助けてくれたし、無償で戦艦や巡洋艦を改築してくれた、あの状態なら巡察失敗で死んだ方が、あの人の負担にならないのに最後には危なければ逃げろとまで言ってくれた。
声を聴きたい、顔を見たい、自分を見て欲しい・・・その、自分を求めて欲しい、最後のほうはもう情けないくらい素直になっていた。
真剣に聞いていた女医さんが否定しないし後悔しないならという条件で教えてくれた。それは恋心ですと、あの人の事があなたは好きなんですよと。微笑んで教えてくれた。
ああ、全てがすとんと落ちた・・・・そうか・・・・・俺は、いや、私はあの人の事が好きなんだ。
そう思うと胸の苦しみがすっと楽になって顔が真っ赤になった。
なら、勉強しないといけませんねと女医さんに苦笑された。
そうだな、あの人のためなら私は頑張れる。この日から巡察時間以外は勉強に充てることにする。
●月〇日
とうとう帰還できた、ああ、あの人に会うのが待ち遠しい、成果を褒めて欲しい。報告の為に事前にアポを入れる。
メッシャーには自分の気持ちを打ち明けた、すると笑って言ってくれた。お嬢が惚れた相手なら間違いないでしょうよと。
あの人は私を見てくれるだろうか、ちゃんと変われてるだろうか、女医さんからお化粧も身だしなみも習った。
礼儀作法もしっかり勉強したし服装も前よりしっかりとしたものを選んだ。ああ、報告の時が楽しみだ。
報告書をまとめながら今から胸が高鳴る。
この結果は明日書けるだろう、きっと今以上に素晴らしい気持であることを願ってやまない。