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ありふれた報告書  作者: マンボウ紳士
第二章 消えた玉座と継ぐ者達
39/110

報告書31枚目 腐った果実の中身

バラまきの一週間と呼ばれる大量献金の日々を終えた現在のアースライトの肩書は参謀省トップである参謀首席、メイファとマリスはちゃっかり参謀首席補佐に就任する事になった、結果的には莫大すぎる金品を使用したが現在順調に?汚職を重ねそれらの金品を取り返しまたばらまきを繰り返し強固な立場を築き上げる事に成功した。


「しかしまぁ、右から左程度でこれほどとは」

「人間腐りますねアース様」

「すでに使用した金額が小惑星の国家予算程度かと」


あきれ顔で参謀省トップの部屋でふんぞり返っている。メイファとマリスはアースライトの愛人という設定なので言い寄る人間は居ない。テラにおいて自分の上の人間の顔色を窺うというのは必須スキルらしい。


「部屋も無駄にでかいし金もかかるよなぁ」

「結果的に私たちも愛人と言う噂は認知されてますしね」


今いる部屋にしても豪華である、執務室、執務準備室、執務応接室と三つに分かれておりアースライトが居るのが一番奥の執務室である。次いで応接室、準備室と順番になっており秘書が控えているのが準備室ととにかく無駄に広い。


「参謀首席お電話です」


短く報告用コンソールから呼びかけがあるのでつなぐように指示するとすぐに相手の顔が現れる。


「流石は我が友人もうトップであるか」

「おお、ゴートフ閣下ではありませんか、感謝しております」

「能力がある人間がトップに立つ、資本主義の結果だのぉ」

「いえいえ、ゴートフ閣下のお力添えです」


形式美のごとくの謙遜の応酬、それからの用件要請という無駄でしかない手順が存在する。


「ところでアース殿、非常に申し訳ないのだがお願いしたいのだ」

「何でもおっしゃってください、ゴートフ閣下の為ならお力添えいたします」

「ありがたい、次の会議で是非我々に協力願いたいのだ」

「お任せください、参謀省は全てゴートフ閣下の支持に回ることをお約束いたします」

「おお、このゴートフ百万の味方を得た心境だ」


用件要請、茶番、大げさに感謝も流れとしては一連の形式美らしい、無駄でしかないがここは信用を得るためにはその舞台に乗るしかない。


「参謀省には大幅な予算を約束しよう、ぜひ辣腕をふるって欲しい」

「ありがとうございます、ゴートフ閣下は律儀であります」

「なぁに友人を助けるのは当然の事、また食事でも」

「是非にご一緒したく予定を開けておきます」


お互いに笑顔であいさつを交わすとコンソールが消える。


「・・・どぶ水と腐肉でも食らっとけ」

「アース様口調が」

「アース閣下口調が」


マリスとメイファがほぼ同時に苦笑しながら窘める。お互いの服装は割と際どい服装になっており、形式的にはアースライトの目を楽しませるための服という認識を周りに与えている。


「莫大な支配惑星からの税金、資材使っても使いきれないわなぁ」

「書類の金額の桁も見たことない桁ですからね」


偶に来る報告官の前でマリスのお尻を撫でたり、メイファの胸をもんだりと俗物アピールも忘れていない。


「その先も良いんですけど」

「まだ続けても私は宜しいのですが・・・」


名残惜しそうに二人に言われて苦笑しながらテラの書類に目を通して行く、実際に目的は生産ラインがどこにあるかを把握する事、権限を誰が持っているか調べる事、小細工が出来るかが現状最大の目的だ。


「軍事に関しては会議で信用を得て権力拡大を狙うとしますか」

「それが一番の近道ですね」

「では今回は順番的にマリスがお留守番ですね」


メイファが嬉しそうに腕を絡めてくる。それを見て面白くなさそうにマリスがしているが前回は逆だったのでそこはあきらめているようだ。どちらにせよ腕を組んでも行く場所はテラ中央会議場なのだから。



テラ中央会議室にはまずお飾りの国王が玉座に座る。そして会議卓の上座にゴートフ総議長、参謀省、軍務省、人事省、内務省、科学技術省、総合生産省と議長一人に各省主席が座る。周りには各省の職員が聴衆として座っている、発言権は因みに存在しない。


「ではまず最初に今後のセルフィアム帝国との対応を国王陛下から発言いただきたい」


ゴートフ総議長が国王に発言を促す。


「朕は民草が苦しむのを良しとしない、現状の不戦条約を継続すべきだと考える」


最早下手な芸人よりもたちの悪い棒読みで発言する。


「流石陛下の御英断であります、このゴートフも陛下の意見に賛成で有り下手に戦争をすべきではないと愚考いたします」


ゴートフ総議長が自分の意見を発表し、各省代表の御意見はと当然の様に水を向けてくる。


「技術省としては戦って技術を上げるべきかと」

「おや技術長官殿書類が落ちておりますぞ?」


ゴートフの顔色を察したアースライトが周りの気を逸らすと、素早くメイファが書類を叩き落とすと技術長官の書類を拾うふりをして小切手を握らせる。


「・・ですが陛下の民草を思う気持ちを鑑みて不戦で宜しいと思います」


受け取った小切手を素早く懐にしまいながら何事もなかったかのように発言し座る。それを見ると満足そうにゴートフが目配せをしてくる。


「軍務省といたしましては軍費の拡大、戦死した将校などの保証、戦艦等の維持費のコスト悪化を考え不戦を訴えます」

「内務省としても戦死者の抜けた穴の補填、一度は落ちてしまった経済の景気回復を狙った内需拡大を議題にしておりますゆえ不戦で」


これで三票は獲得した、後は私が賛成すればこの会議も終わる、が、当然格式美があるのでもう少し会議はもめるのである。


「さて、参謀省は如何であろうか?」

「わが参謀省は短期決戦、テラによる宇宙統一を掲げ徹底抗戦を訴えるものであります」


当然この参謀省の意見も茶番劇である、ゴートフに会議においての見せ場を作り、もう一つゴートフが狙っている本当の目標を達成させ、さらに華を持たせなければいけないのである。


「陛下の御心を無にする気ですかな?アースライト参謀首席」

「何をおっしゃいますか御心を惑わせない為にも、我らテラによる宇宙統一をすべきだと申し上げておるのです」


さも興奮してますと言わんばかりに扇子を持った手をテーブルにたたきつける、それを見て周りは亡命組なので手柄を立てて忠誠を示したいのであろうと邪推する。この場合においては邪推は最終的には目的を覆い隠しそこにしか目が行かなくなる為の誘導の餌である。


「人事省としてはこのまま戦争ムードを続けて、悪戯に予算を消費するよりは、不戦をしていただいた方が予算が減ってよい」

「わがテラが宇宙統一をすれば、その予算の心配も民草の安寧も一切合切、今我々が頭を悩ませている問題が消えます」

「総合生産省としてはゴートフ殿が何でも決めるのも問題があると愚考し、軍需を望むので参謀省に賛同し戦争をすべきだと思います」


これでゴートフが望むお膳立ては終った、要は自分に本気で逆らう勢力をあぶり出したい為に、参謀省に協力を要請している。科学技術省においては毎回会議では日和見を決め込んでいるので金品で片が付く、ゴートフにしてみれば味方みたいなものである。


「アースライト参謀首席、貴殿の忠誠曇りないのは周知の事、まずは陛下の御心を察し民草の為に内需に力を入れて欲しい、このゴートフに免じてこの通りだ」

「や、私の様な若造にお止め下さい」


慌てたように反応すると此処でゴートフは、全員の見ている前で深々とアースライトに対して頭を下げる。


「ぐむむむ・・・・解りました、陛下の民草の為の御心と、ゴートフ総議長の熱意に敬意を表し参謀省も不戦を支持させていただきたいと思います」


仕方ないと言わんばかりにもう一度だけテーブルを叩いて、面白くなさそうに着席する。親ゴートフ派にすれば茶番だと思い、反ゴートフ派にしてみれば恥をかかされて可哀そうにとなるのである。


「参謀首席殿が不満ではあるが陛下の為にと手を引いたならば、私が其の面子を潰す訳にもいかないので総合生産省もアースライト殿に免じて、今回の採決では不戦を支持いたします」


此方も面白くなさそうに椅子に座ると傍にいたメイファに何かのメモを渡している。多分後でのお誘いであろうなと思いつつゴートフ総議長に目線を戻す。


「陛下、今回は陛下の御心を全員がくみ取り不戦条約を支持いたしました、どうぞご採択を」


ゴートフが茶番劇の最後の幕引きに取り掛かる。


「うむ、朕は嬉しく思う、そなた等の忠節、朕は幸せであるぞ」


再び棒読みの言葉を紡ぐとさっさと退場してしまう。


「では今期の御前採択会議を終了する事にする、各員ご苦労であった」


ゴートフが茶番劇の終了を宣言すると、周り居た各省の職員が立ち上がり拍手をする。その後各省代表は一礼し退出していく。こうして今期の茶番劇は無事に各役者が役割を果たし幕が下りる事となった。


「流石アースライト殿我が友人」


顔を綻ばせたゴートフが執務室に戻るや否やコンソールで通信を行ってくる、よほど嬉しかったのであろう。


「いやいや、私の役割が無事に済んでホッとしております、もし本気にされたらどうしようかと不安で不安で」

「何をおっしゃる、貴殿との友情このゴートフ微塵も疑っておりませんでしたぞ?」

「おお、身に余る光栄ですゴートフ殿にここまで信用されるとは」


お互いに利用できるうちはこの奇妙な友情と呼ばれるものは続くのであろう。一応総合生産省から会いたいという報告があったのも伝えておくが、返事は貴殿を信じているのでいかようにもして欲しいとの事だった。


「では三日後くらいに食事でも」

「解りました、今から楽しみにスケジュールを開けておきますぞ」


再びお互い笑顔でコンソールを切る。


「滅べ」

「ですからアース様ほら、笑顔」

「アース閣下お疲れですか?また胸でも揉みますか?」


気を使ったようにマリスとメイファが左右から心配そうに近付いてくる。とりあえずお茶をくれというのとメイファの胸を揉んでおく。我ながら大分毒されてるなぁと苦笑する。


「で、総合生産省はなんて?」

「はい、今夜にでも食事をしたいと」

「・・・・・・・・大分腹に据えかねてるようだな」


総合生産省とつなぎをつけておけば今後のラインを調べる時に役に立つなと考え、メイファとマリスに今日の夜の予定を確認させすぐに返事をさせる。まったく、議会というのはまともに機能すれば素晴らしいが、このような腐敗の温床では無駄の塊であるな。結局最後はこうやって個人会談や密談、買収、圧力で結果が決まってしまうのだから。面白くもなさそうに二人を引き連れて指定された料亭に赴くのであった。

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