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ありふれた報告書  作者: マンボウ紳士
第二章 消えた玉座と継ぐ者達
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報告書30枚目 亡命のアースライト

最近アース卿の周りが騒がしい、解っているだけでも不正と思われる取引に相当数関わって居るし、会社がらみの不正も賄賂を取って見逃している状況が見える。さらに港の管理を大手の会社に委託するのは良いが利益の何割かをキックバックさせているとも聞いている。


「流言にしては証拠があるし、策にしては荒い」

「でも報告は上がってきてるんだニャ」


アトリとネコヤはお互いに顔を見合わせて報告書をチェックする。


「今更アース卿がお金に執着するとも思えませんし」

「テラ当たりの策略だと思うんだけどニャ」

「それにマリス、メイファ両提督もおられますし」

「あの二人ならその手の話は斬捨てそうだニャ」


上がってくる報告の数々に目を通しながら何かの間違いで有ろうと一時保留の棚に書類を置いて仕事に戻ろうとしたところ、入り口からメリアとアルゲインが入ってくる。


「ちょっとどういう事だ?旦那の周り胡散臭いのだらけじゃねぇか」

「アース卿の考えと思えない位の失策が多いのですが」


お互いに多分アトリが情報を掴んでいるのだろうと言う事で、乗り込んできたらしいのだがお互いに顔を見合わせてため息をついている。全員揃ったところでどうせ何かの策略だろうという考えに落ち着いたらしいのだ。


「申し訳ないアース閣下は何を考えておられる、手抜き工事を賄賂で見逃すとか」

「丞相はいつから暗愚になられた?」


全員が揃ったところでさらに前線を支えているマールとマリーが、怒りながら現れた事によって部屋全体に動揺が走る。誰もがひょっとしての可能性を捨てきれず顔を見合わせて思案に耽る。


「ちょっと~あーちゃんどうしたのよぉ、勝手に関税変えるなんてぇ」


止めとばかりにフィーナ内務卿が現れた事によって、事件の真実味が一気に増すことになった。


「と・・・とりあえずアトリが確認すると言う事で良いかニャ?」

「「「「「賛成」」」」」


解らないことは一番わかる傍仕えに押し付ける事で全員一応の決着としたのであった。



・・・丞相執務室・・・


今までと違って煌びやかな装飾品、大量の宝石や貴金属を所狭しと並べてあるガラス張りの棚、周りにある者すべてがグレードアップしている執務室で今まさに悪だくみが行われていた。


「と言う訳で閣下、今回の事を見逃していただいたお礼に此方を」

「ほほぅ、なんだねこれは」


マリスが一礼して受け取ると扇子を広げて笑っているアースライトの傍に持ってくる、手をかけるとずっしりと重い。


「巷ではやっている洋菓子でございます、お口に合えばと」

「・・・そうかそうか、ありがたくいただこう」


蓋を開けると金の延べ棒がぎっしりと詰まっている、それを見てにこやかに微笑むと傍にいたメイファにしまうように命令する。本来止めるはずのメイファも一礼するとそれを受け取り静かに棚にしまう。


「私はこういう洋菓子に目がなくてねぇ、それにほら、女にも色々掛かるだろう?」

「それはもう、存じております閣下、これからもお力になれればと」


マリスとメイファの二人を引き寄せて解るだろう?と目の前の男に言うと、男の方も卑しい笑いを浮かべて御尤もでございますと頷く。これからもごひいきにお願いしますと一重二重にもお辞儀をすると男は退出していった。


「・・・・・・・つまらん」

「アース様解りますがね」


マリスが苦笑しながらまだ来ませんねと呟く、メイファの方もそろそろだと思うんですけどねぇと首をかしげながら紅茶をアースライトに差し出した。


「アース卿宜しいでしょうか」


荒々しく執務室の扉がノックされるので入っていいぞと許可を出すとかなり憤慨した様子のアトリが入室してくる。同時に人払いをというので関係者以外を全員部屋の外に追い出すといきなり詰め寄ってきた。


「父上、一体どういう事ですか、散々賄賂を取ったり利殖にはげんだりと」

「ん?それはほら、引退した後必要であろうが」


絶句しながらアースライトをアトリが見つめる。


「それにな、テラと戦争も起きないしそろそろ引退を視野に入れて動いてる」

「マリス、メイファ両提督は止めないのですか?」

「「え?贅沢したいし」」


何言ってんですかと言わんばかりにアトリの意見を一蹴する。後頭部を殴られたような衝撃を受けアトリがふらつく。


「父上、このままではいつか裁かれますぞ?」

「誰が裁く?私を裁ける人間などいない」

「マーリン元帥が居ます、唯一父上に」

「そうだな、出来ると良いな」


大声で笑いながら手元の宝石を見つめてさも邪魔の様にアトリに下がるように命令する。憤慨しながらアトリはそのままマーリン元帥の部屋に駆け込んだ。


「申し訳ありません、父上に一言」

「あ、悪い、嫌われたくないから無理だ」


女性の顔をしてあっさりと拒否される。なんでも最初の方に散々忠告したのだが嫌なら別に来なくていいぞと言われて、今となっては寵愛を失うのを恐れて言うのを辞めたそうだ。


「このままでは父上を止める人が・・・・・」

「陛下に奏上しては如何どうだ?」

「それでも・・・」

「証拠をもっと集めればあるいはと思う」


その手があったかと慌ててアトリが諜報部に戻る、それを見てまだまだこの国は捨てたものでは無いし、若い人間が育っているのだなとマーリンは微笑んで見送った。


「・・・・・・・・なんだこれ」


数々の証拠を集めた結果ありえない量の証言が集まった、どれもこれも直接アースライトが出向いて指示を行い多額の献金を受け取ったり賄賂でもみ消したりと、かなりの苦情ももみ消しているという証拠が集まった。もはや内部でもみ消せる状態ではないのを悟ると、諦めてマオ女王陛下に全ての資料を届けるのであった。


「直ぐにアースライト丞相を捕縛なさい」


資料を見たマオ陛下は直ぐに命令を下すが警察、秘密警察、暗部が一斉に乗り込んだ時にはすでに全ての金品と共に脱出していた。激高するアトリがさらに置いてある手紙を見て血管が切れんばかりに激高する事となった。


『あ~そろそろばれそうだから逃げるわ、テラに行くからよろしく』


父の汚名を逮捕して私が雪ぐと大絶叫したとかしないとか。



・・・惑星テラ主席議員邸宅・・・


テラの一等地に立つ邸宅にアースライトと護衛のマリスとメイファは訪れていた。当然ここに来るまでに派手に金品をばら撒き金で動く人間と印象付ける事を忘れてはいなかった。


「お久しぶりですなゴートフ閣下」

「おお、久しいですなアースライト殿」


笑顔で差し出された手を握り返す、ゴートフにしてもかなりの金品をくれる人間を無下にするわけにもいかないので時間を取って合う事になったのである。


「いやぁ、テラとの友好も確実なので利殖に励んでいたら妬まれまして」

「それは災難でしたなぁ」

「なのでテラの方にお世話になりたく参上しました」

「それはそれは、急にですな」


此方は手土産ですがとそっと金塊が入ったトランクを五つゴートフに差し出す。帰る場所がなものでして何卒と頭を下げる。


「これは結構な手土産で」

「あ、勘違いしないでいただきたい、会っていただいた手土産でして就職を斡旋していただいた場合はさらに二倍ご用意いたします」

「なんと・・・二倍ですか」


ゴートフが頭の中で算盤をはじく。同時に諜報部に電話する事も忘れない、電話先の諜報部では確かにセルフィアムではアースライトを指名手配している旨を報告し、理由も賄賂、斡旋、もみ消しであると判明していると報告をする。


「それはそれは、お困りでしょう、ちょうど此方の参謀省が人が足りておりません、私の紹介状をお渡ししますので伺われるとよろしいでしょう」


疑う余地が消えたので、笑顔を浮かべ遠慮なく手土産を受け取り紹介状をアースライトに手渡す。


「おお、ありがたい、私も此れが居ますのでお金を稼がないと」

「綺麗な方ですな、護衛兼愛人ですか?」

「ええまぁ、偉くなったら当然でしょう金と女は」

「当然ですな、権力とはかくありたいものです」


お互いに顔を見合わせると高笑いをする。マリスもメイファもアース様は目が笑ってないなぁと二人そろって顔を見合わせてため息をついていた。


「では、無事に就任したらまた手土産をもってご挨拶に伺います」

「アースライト殿は私の友人も当然、何時でもお待ちしておりますぞ」


ほくほく顔で玄関まで見送るとマリスとメイファが用意した車にアースライトが乗り込むまでしっかり見送っていた、余程手土産が気に入ったのであろう。


「成功しましたね、しかしかなり腐敗してますねぇ」

「そうでなければこの計画自体を立てなかったわ」

「流石の慧眼だと思います」


参謀省に向かう車の中で車外の景色を眺めながら面白くなさそうに話し始める。


「この後の計画は・・・・・」

「参謀省でも現金を派手にばら撒いてさっさとトップになる」

「後は適当に汚職をしながらゴートフを補佐ですね」


残りの現金はこの程度御座いますとメイファが計算してアースライトに差し出す、あまり興味なさそうにそれを見るとどうでもいいなと呟いてまた目をつぶる。


「金など所詮目盛りにすぎんわ」

「信用を得るためには使わないといけませんからね」

「目盛りを増やして減らして増やしてを繰り返すしかないな」


まずはゴートフの信用を得るのが一番の目的だと呟くと、精々マネーゲームごっこを楽しむとするかと不貞腐れたように呟いた。


「アース様到着いたしました」

「さて、では派手にばら撒くぞ?」

「トランクの準備はいつでも」


マリスが車から降りるとアースライトが座っている席のドアを開ける。面倒くさそうに無駄に大きく威圧感のある建物にマリスとメイファの二人を引き連れ入っていく。


「此方は参謀省になりますが面会でしょうか?」

「一応は紹介になるのかな?」

「ではそちらの書面はございますでしょうか?」


受付の女性にゴートフから受け取った紹介状を渡してトップと会いたいと話すとすぐに応接室に通される事となった。この後大量の金品をばら撒き続ける事になり、わずか一週間後には参謀省のトップに君臨しアースライト中将とマリス、メイファ大佐としての地位を獲得する事になる。また、ゴートフ派閥としての旗色の鮮明化も同時に行う事になった。なお、セルフィアム帝国は丞相のを空席とし、マール外務卿、アトリ内務卿の人事を発表しアースライトを事実上の居なかったものとしての扱いを表明した。

一応の第二章完結となります。

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