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ありふれた報告書  作者: マンボウ紳士
第一章  群雄割拠と獅子身中
3/110

報告書03枚目 人は変わるもの?!

目の前で提示される新型艦の報告書と新兵器の報告書の山に目を通す。傍には技術士官が控え此方の反応を待っている。一様に報告書に目を通し終わったのを確認すると、兵器の説明の為に書類を取り出しコンソールに表示しながら発言を始める。


「現在の開発状況ですと従来の戦艦よりはと言った感じであります」


お抱え技術士官のフェイザーがずれた眼鏡を治しながらコンソールに表示された新しい報告書を差し出す。静かにそれをアトリが受け取り簡潔な報告書に書き直していくのを眺めながら窓の外のドックにて開発が行われている建造途中の戦艦に目をやる。


「でだ、技術の底上げをするために資金投資をしているわけであるが・・・結果が伴わないと言うのは」

「お言葉ですが技術力の底上げは一両日中というのは流石に難しいものがあります」

「さりとてこのままでは陛下に対して報告を上げることもできないではないか・・・・・・」


渋い表情で現状確認を行い、同時に進行しているはずのプロジェクトのほうはどうなのだとせっついてみることにする、それにしてもここ最近胃の痛みが治まらない、落ち着くための良いニュースはどこかに無い物であろうか。


「もう一つの本土決戦防衛兵器でありますが、お望み通りの威力と射程距離を達成しております、射程距離に関しては大幅に伸びており威力もまた増大しておりますが・・・・・・」

「が?」


最初の勇ましい発言からだんだん言葉が小さくなっていく発言に嫌な予感がよぎる。思わず聞き返す声も大きくそして力のこもったものになる。


「卿、此方を」


アトリがまとめ終わった報告書を差し出しいつも通りのメモを構え右後ろに控える。報告書を読みながら防衛兵器の長所と欠点を見入ってから再び深いため息をつく。完成して試射もしているが、発射直後にオーバーヒートからの周りを巻き込み爆破四散と記入してあった。


「高価な使い捨て兵器を作れと言った覚えは記憶にないのであるが」

「現状の技術であれば冷却装置が追い付かないのであります、無い物ねだりの状態でありまして・・・」


何とも困ったと言わんばかりに再びフェイザーの眼鏡がずれる。どちらも同時に開発できるほどは資金が足りませんで、ほかの部分に開発を回すことが出来ませんと情けない声で報告をしてくる。


「・・・・・・・底上げのための資金か・・・・ううむぅ・・・回せるか?」

「多少お待ちいただければ計算いたします」


アトリが電卓を片手に静かに計算し始める、いつ見ても手際がいいと思うのだがそれは言わないことにする。実際研究という物は日進月歩であり、どの国でも行っているものである。ただそれは明確な技術力の差によって戦力比すら変わると言う最悪の結果も計算に入れなければならない。


「卿の領土と鉱山収入の50%を使用すれば可能となりますが・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・私の個人的な資金を投入したら?」

「可能になります」


こめかみを抑えながら小さく直ぐに手配しろと絞り出すように呟くと少しこわばった表情で技術士官に向き直る。


「というわけで技術の底上げと成果を急がせろ、資金は回す、口も出す、問題は?」

「き・・・期日さえいただければ確実にやって見せるであります」

「追加の注文だ、AIの自動操縦防衛機能構築を作れ、俗にいうオート戦闘機能だ」

「防衛特化で宜しければこちらは簡単に作れますが・・・・・」

「やれ」


予算が下りると聞いて活気づいた研究所を後にするとアトリがドアを開ける車に乗り込む。まったく、どこまで行っても私は胃が休まることがないらしい。早く後継者を育てて楽隠居したいものである。夢のためには今現在の仕事を全力で行わなければならない。


「卿・・・・顔色がよろしくありませんが」

「いつも通りだ、問題ない」

「・・・・・この後ネコヤ様からの内政報告と周辺近況報告がございますが」

「構わん」

「後・・・・・・え?・・・・あ、いえ」


アトリが若干慌てたように報告用コンソールを再度確認する。どうやら何か胃に悪いことがまた書いてあるようだ。不機嫌そうに窓の外に目を向けるとちょうど入港する高速戦艦と巡洋艦数隻がが見えた。戦艦の側面の文様を見るにマリス少佐の旗艦であることは確認できる、あのじゃじゃ馬も最近はおとなしくなっており非常に胃に優しい。


「マリス少佐より宙域清掃の完了報告があるそうです」

「・・・・・・・・」


訂正しよう、胃に悪い。静かに飲んでいたお茶が気管に入り派手に咳き込む。


ああ・・・・・私の安息はいったいどこにあるのだろうか・・・・・・・。




「さて、報告は以上か」


山積みの書類を半分ぐらい目を通し片付けながらネコヤ中佐の報告を聞く。要約すると税収は例年通り、鉱山収益は上方修正、交易収入も上方修正であると言う結果で言えば最良に近い報告を受け取ることになった。


「最良に近い結果であるな」

「はいニャァ、珍しく最良の結果をお届けできましたニャァ~、周辺状況も現在はおとなしく、隣接している惑星連合共和国も静かでしたニャ」


惑星連合共和国。大小の国家がまとまって強国に立ち向かうために作られた共和国である、基本姿勢は中立で貿易等で国家間との橋渡しをしているのが現状であるが中には危険思想や強硬派の国も当然ある訳で、国境が面している我が帝国では一応の仮想敵国の一つである。


「結構・・・次の・・・・・報告であるなぁ・・・・」


深いため息とともにアトリに指示をすると、連絡コンソールを叩いてアトリが報告をどうぞと告げる。同時に扉がノックされる。


「どうぞ」


手短にアトリが言うと静かに扉が開いて赤髪の小さな海賊と筋骨隆々の副官が入室してくる。配置が逆じゃ無かろうかという言葉を飲み込むことに何とか成功する。


「失礼いたします、アース卿、お時間をいただき幸いです」


誰だ?と言わんばかりの違和感と共にマリス少佐が丁寧に跪き臣下の礼を取ると報告を始める。


「ご命令いただいた、周辺宙域の警戒と清掃終了いたしました。闇商人と個人海賊はすべて捕縛、もしくは壊滅させております、報告書はこちらになります。」


副官が報告書を取り出すとマリス少佐に手渡しそれを再び私の元に静かに持ってくる。いや、まて、誰だ?本当にマリス少佐か?おかしいと自問自答と困惑が頭の中を駆け巡る。同時に凄まじく渋い顔をしていたらしくアトリとネコヤが同時に深刻そうな顔になる。


「アース卿?お受け取りを」

「あ・ああ」


不思議そうな顔で報告書を差し出すマリス少佐から受け取り目を通す、そこには完璧に近い報告と召し上げた財産の数々、さらには関わって居る者たちは全員捕縛後、鉱山送りと非の打ちどころのない処置が施されていた。


「あ・・・・うん・・・ご苦労様」

「お褒めいただき光栄です」


ニッコリと微笑むとここにきて初めてマリス少佐の顔をまじまじと見る。赤髪で目の色も緋色、顔だちも整っていて美人と言えよう、少々幼くは見えるがそれも愛嬌と言える。何故か若干顔が赤いのが不思議であるがそれでも整ったスタイルで十人中九人は美人と答えよう。


「今後もこの調子で頼む、それと前回預かった罰はこれで相殺処分の報告を上げておく」

「感謝いたします、今後もアース卿の力となる事をお約束いたします」


今まで見た中で最大の笑顔を見せ微笑む。おかしい、胃に優しい展開が続いている、今までだとここ等辺で確実に私の胃を殺しに来る展開があったのだが・・・・・・・。このまま終わるのであったら本日は胃薬を飲まなくていいのかもしれない。


「下がってよろしい」


そう声をかけると一礼し入ってきた時と同様に静かに退出していく。付き人が扉を閉めると同時に三人で一斉に顔を見合わせる。


「誰だあれ?」

「いや、マリス少佐かと思われますが」

「別人だニャァ」

「おかしい、何かおかしい」

「え・・あ・・諜報、諜報いたします」


慌てたようにアトリが携帯通信機を取り出し何かを指示しはじめる。それを横目にまだ信じられないとネコヤと共にぶつぶつ呟いていた。


「卿、二日後に諜報の結果が出ます」

「いや、身内を疑うのはどうかと思うが」

「卿、これは今後のためにも必要な事と思われます、承認を」


何時もと違う雰囲気で、作り上げた書類を押し付けてくるアトリに押され気味に承認の判子を押す。一瞬微笑んだと思うとその書類を凄まじい速さで処理してしまった。ああ、これか、結局こうなるのかと諦めた眼差しで眼下の自領を眺めていた。

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