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ありふれた報告書  作者: マンボウ紳士
第一章  群雄割拠と獅子身中
26/110

報告書19枚目 決戦ライオス皇国 後始末編

膨大な量の資料と書類に埋もれながら判子を押す。あの後、正式にパンドラ女王が降伏宣言を受諾し戦争は終結した。生き延びたものは全員武装解除を受け入れ、帝国内の新たな地位につきまた動き始めている。


「とりあえずライオス領土は全部マーリンのでいいだろうが」

「それをするにも移動に伴う~とか一式書類が~とかがあるそうです」


マール准将が書類を追加で持ってるく。何度目かのやり取りか忘れてしまったがいい加減疲れてくる。国は三つ潰れ、残りはテラ惑星連合本体、こちら側は反テラ連合の首魁とうち、これでもまだ向こうのほうが戦力も物資も段違いに多いというのがおかしい。


「そういえば閣下、父が明日会いたいそうですが」

「・・・・・・・時間あったっけな」


錆びた歯車が出すような音を出しながら首をかしげて見せる。微笑みながら調整しておきました、と答えるマール准将を見て諦める。


「アトリ、ネコヤ、明日任せる」

「卿、死んで来てください」

「アース卿医療班は手配しておきますニャ」


この他人事を決め込む二人組に微妙に怒りを覚えながら傍にあった書類にまた判子を押すのであった。


・・・・翌日・・・・


「初めましてで宜しいかな?アースライト宰相兼任外務卿殿」

「此方こそ初めましてフォンブルク暫定領主殿」


マール准将がニコニコしながら父ですと紹介する。私の胃的には既に大ダメージを受けているのだがそれは顔に出せない。


「さて、此度の厚遇大変感謝しております・・・が娘は如何でしょうか?閣下の機嫌など損ねることをしておりませんか?」

「優秀で大変助かっている、此度の勝利の半分はマール准将とマリー大佐のおかげと言える」


お互いにまずは手札を隠した殴り合いから始まる。残念ながら今回は相手の方が圧倒的に手札が多いという絶望的な殴り合いではあるのだが。


「娘を持つ親としてはまず勤め先が大丈夫かが非常に気になるところでして、親ばかと言われればそれまでですが」

「良く解りますとも、無事務めてられるかなどやはり気になるでしょう」

「後は・・・娘が嫁入り前に世間様に顔向けできないことにならないか、やはり軍隊では心配でしてな」

「・・・・・・・御尤もかと」


まさか告白されてその後流れで、涙目で迫られたのでついつい、傷物にしてます御免なさいなど口が裂けても言えない。


「もっとも、現在飛ぶ鳥を落とす勢いのアースライト外務卿の派閥ですのでそれはまず大丈夫と思っておりますが・・いかがでしょうか?」

「私がしっかりとみている間は大丈夫だと言えるでしょう」


大丈夫じゃ無い、絶対大丈夫じゃ無い、人が居なかったら土下座もやむなしの状況です。本当にごめんなさい。


「さて、本題に移りたいかと思います」

「ええ」

「どうなさるおつもりで?」


やっぱり来たよ、剛速球だよ現状まったく撃ち返せる手札がないよ。


「最悪でも責任は取ります」

「・・・明言は出来ないと」

「こればっかりは・・・不徳の致すところです」


立ち上がったフォンブルクが勢いをつけて右ストレートを打ち込む。避ける資格がないので其のまま受け、よろめいて倒れる。


「避けませんか・・・・・・」

「その資格が今の私には見当たりませんので」

「・・・やり返してくれれば無理やり引き取る気だったんですがね」

「申し訳ない、悪い男に引っかかったと思って欲しい」


何かを言おうとしたフォンブルクであったが、娘であるマールが目に涙をためながらアースライト外務省を必死に介抱しているのを見て諦めたように座った。


「娘が貴方じゃ無ければ駄目だと言う・・・父親は損ですな」

「・・・・・・」

「一つだけお願いしたい、もし娘が泣くような事になったら・・・反旗を翻してもぶん殴りに来ます」

「心して」


最後まで頭の上がらなかった私と違って、マール准将のほうはお父さんとはもう口きかない発言をし、フォンブルク暫定領主が涙目だったのは何と言うか流石に申し訳なさでいっぱいになった。



「卿、顔がはれてますが」

「アトリ埋めるぞ」


執務室に戻った第一声がそれだったため思わず此方の対応もそっけない対応になる。ネコヤも突っ込みそうになったがその後が想像できたので何も言わずに笑いをこらえながら肩を震わせお茶を飲んでいた。


「私の事はどうでもいい、戦後処理はどうなった」

「正式にテラ惑星連合からの使者が来ます」

「・・・・・・え?宣戦布告じゃなくて?」

「なんというか・・・・その・・・・・・選挙があるらしいです」


ネコヤとアトリの目が遠くを見ている。恐らくだが同じ考えに至って突っ込むのを放棄した目であった。そうか、選挙か・・・・・ん?選挙・・・・・・うまくやれば・・・・・・。


「卿がすっごい悪い顔してるニャ」

「あれは駄目な顔ですよ」

「え?素敵な顔じゃないですか」

「閣下らしくて素敵だな」


ネコヤとアトリがぼそぼそ呟いているとまったく正反対の発言をするマリスとマールに本気か?と言う顔で向き直すが、二人の顔を見て諦める。のちアトリは恋は盲目だと言い切っていた。


・・・・数日後・・・・


「これは御使者殿、わざわざ辺境にようこそ」

「・・・・テラ惑星連合議長ゴートフである」


驚いた実質トップが来るとはと顔色を見せない様に扇子で一度蔽い、いつものお仕事の顔に変える。


「此度の侵略に対する見解を伺いに来たわけだが・・・・・」

「侵略などとんでもない、いきなり戦争を仕掛けられてそれを受けただけです」

「む、資料と違うが?」

「悪意のある資料ですな、此方の資料を見ていただきたい」


資料と資料の間に我が国よりあなたの手柄になるように貴金属50t程度の寄付を予定しておりますというメモを混ぜ込む。しばらく資料をにらめっこしていた議長であるがメモに気付き読むと、目に静かな光をたたえる。


「ふむ、確かに資料に相違があるな」

「パンドラ女王はあくまで専守防衛であり攻められない限りは主義が違おうと手を取り合う方です」

「しかし、この資料ではまだわからない部分がありますな」


ああ、お代わり要求かと察すると傍にいるマール准将に追加の損害資料をと提出させる、当然こちらにもメモは挟まっている。


「拝見しよう」


受け取り資料に目を通しながらメモを探す、挟まっているメモには世論操作も協力します、次いで貴金属を非公式で貴方に30t差し上げたいと思うのですが如何でしょうか?と署名付きで書いてあった。


「ふむ、成程、敵意がないのは良く解りました」

「おお、お判りいただけましたか」

「国に帰り開戦派を抑え込むだけの証拠も得ました」

「ありがたい、是非に良い関係を築きたいですな」


お互いに立ち上がり握手を交わす、選挙期間中であろうと貴重な戦力増強時間を金で買えるなら安いものだ。議長が帰るときにここまでの経費ですとそっと懐に小切手を忍ばせておいた。恐らくこれで相当の時間稼ぎになるはずだ、民主主義(笑)のおかげだな。


「うわぁ・・あくどい顔してるニャ」

「ああ・・・国の為に平然と出来る素敵です」


ネコヤは隣にいるマール准将の事はあきらめる事にした。恐らくアース卿の事に関してはよほどではない限り勝手に好感度が上がるのであろうから。後日テラ惑星連合の名で正式な不可侵条約期間と相互理解にあてるための使節団の派遣が決定された。


「うむ、金で殴るが最大の効果を発揮したな」

「しかし相当の金額を動かしてますので追及があるかと」

「え?手持ちはまったく動かしてないぞ?」

「は?あの膨大な量はどこから」


アトリが湯呑を置きながら暫く考えを巡らせる、それを見つつお茶を飲んで書類の何枚かをダメ出しを行い判子を押す。


「・・・・・まさか」

「全部ライオスの輸送船から強奪したものだ、記録になど残っていない」

「卿、横領っていうんじゃ」

「どこに書類があって誰が証言する?」


強奪の責任者はマリス少佐とその配下、間違っても卿に不利な発言をするはずはない、むしろ発言する人間を普通に事故処理するだろう。


「あまり褒められた手段ではないかと」

「開戦しないためには仕方のない手段だ」

「で、これからうまく付き合えば戦争も始まらない」

「隠居できるはずないですけど?」


次の台詞を先読みして釘を刺される。馬鹿な、もう私はいらないだろ、どれだけ無能でも現状維持くらいはできるはずだと言うと、後任がムツだったらどうしますと言われて机に突っ伏した。


「やっぱり事故処理しとけばよかった」

「追加報告であと数日でマーリン元帥が此方に到着するそうです」

「やっと元の領土に戻れるな」

「向こうは向こうで先に帰ったメリア閣下やアルゲイン閣下がおられます」


問題はそうそう起きないなと笑うと我等も帰り支度をとアトリに命じて引継ぎの荷物などを運び込ませ、自分たちのものを艦隊に積み込ませる。


「将官は全員ついてくるのかね?」

「基本全員ついてくる予定です」

「元ライオス官僚たちも?」

「ええ、閣下の下なら働けると父が扇動しておりまして」

「・・・・・え?」


恐らく娘の立場可愛さに援護射撃のつもりなのだろう。微笑ましい事である。ネコヤとアトリ達が帰還業務に追われている中、今まで蚊帳の外にいた獅子身中の虫がとうとう動き出した。


「本当にご命令が?」

「これが閣下の命令書だ」


偽造した書類をアースライト配下の遊撃大隊に見せる。この程度の書類で信じるのだからおめでたい。


「しかし、マーリン元帥を事故に見せかけて殺せなど閣下が命ぜられるとは」


無言で反論する士官を撃ち殺す。


「なっ」

「これはひいては女王陛下の御命令でもある、疑う者は処刑する様にも私に命令を下されている」


狂気に似た何かを感じた他の士官たちは命令書にもう一度目を通し諦めたように発艦する。後は事が終わればこちらから駆け付けたように見せて全て殺せばいい・・・・老害ども、とうとう俺の時代だ。



「大変です閣下」

「どうした、海賊でも出たか?」

「ニュースを・・・ニュースをご覧ください」


『我々は偉大な元帥を失った、卑劣にも内部の犯行と言うのも判明している。まだ犯人を発表するわけにはいかないが証拠はそろっている。我々はこの卑劣な犯人を許してはならない!祖国の事を思い散ったマーリン元帥の為にも』


「・・・・・・・・冗談か?」

「事実です、此方に向かうおり・・・・その閣下の配下の遊撃大隊が襲撃、轟沈させてます」

「アース卿、パンドラ様から至急出頭する様にと」

「全員ついてくるものは直ぐに領土に帰る、残るものは残れ、急げ!!」


直ちにと言うと命令が交付され動揺はあったもののほぼ全艦隊がアースライト領土に逃げ帰る。主星に戻り出頭命令を受けるべきか否かで大揉めする中、何故か当事者じゃないどこか冷めた目で見ている自分が居た。


「付いてきたものは前からのマリス、メイファ、メリア、アルゲイン、アトリ、ネコヤ、マリー、マール、さらにフォンブルク伯か・・・・・・ありがたい事だ」

「他の配下も閣下の無実を信じ草の根運動を行っております」

「無駄だな、手際が良すぎる、恐らく次は私に反逆罪がかかるぞ」


冷笑しむしろ読めたと言わんばかりに扇子を開き仰ぐ。


「・・・閣下、たった今全ての権限凍結及び国家反逆罪適応の公布がパンドラ女王の命で下されました」


やられたか・・・・・順風満帆の時ほど足元をすくわれ易いと自分で解っていたはずなのだが、見事に救われ過ぎて実感がわかない、がなぜ信じてくださらなかった女王陛下・・・・・・・・・泣きながらセラフィアム帝国の旗を居合抜きで斬り捨てる。その場にいた人間は気持ちを推し量りだもれ何も言えないのであった。

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