番外編03枚目 女子会
大戦争前の休暇でとりあえず女性全員で集まり、人口惑星の喫茶店(高級)を貸し切りにしてのんびりと女子会に興じていた。出席者はマリス、メイファ、マリー、マール、メリアの五人である。
「そう言うわけで大きい戦の前にはっきりしておきたいのです」
「大事なことですね」
メイファとマリスは二人そろって意味ありげにうなずいていた。周りにいる給仕が身の危険を感じて速やかに距離を取る。
「簡単な話です、アースライト様が好きな人間はどれだけいますか?」
「上司的にとか人間的にとか要りません、ハッキリとあの方の子を宿したいクラスの思いを持つ方はいますか?」
メイファが言い切るとマリスは当然と言わんばかり手を挙げる、言い出した私も当然そうですよ?と言うとメイファも手を挙げた。
「私は・・・その・・・閣下が・・・うう」
顔を真っ赤にしながら恐る恐るマールも手を挙げる。
「上官としても好ましいし男性としても好ましい」
ズバッと言い切るとマリーも手を挙げる。
「皆さんライバルだらけですわねぇ」
紅茶を飲みながらメリアは手を挙げてないがゆえにまとめを務める。もっとも机の下で小さく手を挙げているのをマリスとメイファはしっかり見ている。
「昔に比べればライバルだらけですね」
「正々堂々で負けるなら問題ないんだが」
「そこで考えたのですが・・・・別に全員でいいんじゃないですかねぇ」
さらっとメリアが爆弾を投下すると、全員が一斉に説明をと言わんばかりに食ってかかった。
「簡単な話です、子を宿した場合閨を共にできません、他の人間がお慰めするのがよろしいと思うのです」
「そ・・・・それは」
「ライバルを増やすよりはここにいる人間で囲ってしまうのが一番です」
「うむ、正々堂々ではある」
「あの方は無自覚にナンパしてますから・・・・」
眉間を抑えながら鼻掛け眼鏡をはずしやれやれと首を振る。自分はモテないと完全に思い込んでいるから無自覚で口説くのでしょうねぇと首を小さく振る。とマール准将に向き直ってそうですわよねと微笑む。
「あ・・・うん・・・・その・・・格好良かったです・・・はい」
乙女のように顔を真っ赤にさせてもじもじする。裏切りをしておいて許すからもっと私を信じろと言われたら落ちる、私でも落ちるわとマリー大佐が茶化すとさらに真っ赤になった。
「で、結局あれから妹さんは?」
「今後の事も考えて私付きの付き人になりました、それも差配されたのは閣下でして・・・・・」
えへへと今まで見せた事のない顔で照れているマール准将を唖然としながらマリー大佐がこりゃ駄目だと首を振る。
「不思議なのですが、アース様にマリー大佐が惚れる理由が解りません」
「敵陣に三人で乗り込んで敵の心配するお人好しだぞ?さらに裏切った人間を理由があるからと見逃してさらにその原因を潰しておく、普通出来ないな」
「確かにできませんね」
「それでいて身を捧げると言った相手に対して忠誠で十分、あとはもっと信じろと言えるあたり人間として最上の部類と思うが?」
淡々と述べるが微妙に顔が赤いのでとりあえず本人は照れているらしい、マリスとメイファは顔を見合わせて結局無自覚で口説いているんですねと苦笑した。
「さて、ところでメリア殿がなぜ閣下を好きになったか解らないのだが」
「そうですね、メリア准将なら相手も沢山いると思うのですが・・・」
「そうね、私自身を見てくれる人はいないわ・・・・階級の私を見ていて私個人を見てくれる人はいない・・・少なくともあの人しか私は知らないわね」
少し寂しそうに紅茶を飲むと自分でお代わりを入れて飲み始める。
「知ってるかしら?恋愛において本当に辛いのは拒絶ではないのよ」
「拒絶以上があるのですか?」
「無関心よ・・・一切気にされない、アプローチも見てくれない・・・」
寂しそうにメリアが紅茶を飲み干して微笑む、きっと此処に来るまでに色々あったのであろう女性は静かにカップをテーブルに置いた。彼女たちがいろいろ相談を凝らしてる間に、外を歩いていた士官はメンバーに気づいてそっとウェイトレスを外に呼び出した。
「申し訳ございませんお客様、本日は貸し切りでして」
「うん、状況は解りますよ、会計を済ませておこうと思ってね」
「畏まりました、どういたしますか?」
「そうだな、この程度で足りるかな」
男は財布から結構な金額を取り出しウェイトレスに持たせる。
「これでは余りますが・・・」
「じゃぁその分彼女たちにケーキや紅茶を出してあげて、余ったら迷惑料と言う事で」
「しかし・・・」
接客業の為、譲らないウェイトレスに自分はアトリ中佐だと告げて、有無も言わさず納得させると、その男は何もなかったかの様に一緒にいた士官と共に街の雑踏に消えて行った。
「失礼いたします、追加の紅茶とケーキです」
話が一段落したのを見計らった様に、ウェイトレスが紅茶とケーキを人数分もって現れる。
「ありがとうございます、こっちにおいてください」
受け取りながらそれぞれケーキと紅茶を受け取り自分の前に置く。ウェイトレスが下がった後に、当然の様にそう言えばだれか頼んでくださったんですか、と言う会話になる。全員誰かが頼んでいたものとして、誰も気にしなかったのだがどうやら誰も頼んでいなかったらしい。
「すいませんウェイトレスさん」
「はい、何でございましょうかお客様」
「えっと誰も頼んでないんだけどサービスかな?」
全員を代表してマリスがウェイトレスを呼んで質問をした。
「えっと・・・先ほどアトリ中佐が来られまして、皆様の分のお会計をされて帰られまして・・・・」
「アトリ中佐が?」
「ええ、所属も階級も問い合わせるとそのままでしたので信用いたしましたが・・・」
マリスが首をかしげて考え込むと、何かを考えたマール准将が声をかけた。
「申し訳ありません、どのような感じの方でしたか?」
「このような口髭を蓄えておられまして、扇子を片手に持っておられました、あと獣人のような方が一緒におられましたね」
全員で顔を見合わせてやっぱりあの人だよねと苦笑する。なんだかんだであの人は部下思いだからなぁと全員一致で納得すると共に、さらにどの部分に自分が惚れたのかと言う、ディープな会話が繰り広げられる事になるのだが、それはその場に参加した女性たちの共通の秘密になる事になった。
「な~ネコヤ、バレたかな?」
「バレないと思う方がおかしいのニャ」
「メイファとマリスが居たから、そのなんだ?釣った魚にだな」
「餌をやると言う訳なのは分かるニャ」
「後の女性には少しでも好感度を稼がないと私の命令聞いてくれないだろう?」
「・・・・・アース卿本気かニャ?」
「本気も何も・・・・・普通そうだろ?冴えないおっさんの言う事なんか聞きたくないだろうが」
「・・・・・アース卿と結婚する相手は大変そうだニャ」
「相手は・・・飽きられない限りは居るだろうけど、そのうち私より良い人が出来ていなくなるんじゃないかな」
ネコヤはこの人は天然なのか理解して行動しているのか本気で解らなくなったが、暫くゆっくりと考えると、まぁアース卿だからなぁ、きっと女性に関してはかなりずれた考え方をしたんだろうなぁと自分を納得させるので精一杯だったとの後日談である。
追加の蛇足としてはその後、もう一度しっかりとマリスとメイファが告白し、続いてマール、メリア、マリーと順番に告白されて盛大に首をかしげている外務卿が居たと報告がある。どこまでも自己評価が低いというのが周囲の結論であった。




