報告書13枚目 長期戦の構えと防衛ライン
ライオス皇国との初戦は、アースライトの全方位土下座で辛くも勝利を収めた、相手の物資と艦隊を完膚なきまでに叩き返し回廊の出口付近の要塞も三つのうち二つは奪ったのである。それでも地形的に敵に有利な為、にらみ合いが要塞を通して続いているのであった。
「アースライトは現在留守にしています、後で出直してくださいと言うか出直せ」
通信に対して居留守を使っている。侵攻軍旗艦弩級空母戦艦フェザー・ノートでは今日も立場が微妙に弱いアースライトが船長室に立て籠もっていた。
「・・・・・・やぁ、連日連絡来るわぁ、キッツいなぁ」
部屋の主は、ライオス皇国侵攻艦隊総司令の立場であるのにため息をついて、扉のロックを厳重にしてベットに不貞寝していた。
「奇跡的に勝利を収めたのに・・・・まぁ・・・色々謀ったけども」
壁にブツブツ言いながら自分自身に言い訳を続ける。マリスとメイファは張り付いた笑顔で迫ってくるわ、アトリは前以上に纏わりつくわ、ネコヤは・・・変わらんな。アルゲインとメリアは三日に一回は報告入れてくるわ、最近はマーリンまで報告よこせとか・・・・。
「うう、私居なくても絶対大丈夫だろうがこいつ等」
定時連絡をパンドラ女王とマーリンに入れつつロックを解除しようとする音にびくつく、完全に引きこもりであった。
「やっぱりロックしてありますね」
「アース卿は外出中なのでは?」
しかもマリスとメイファのタッグか・・・たちが悪いな。さて、こんなこともあろうかと船長室には隠し部屋に通じるドアを作っておいたのだ、ベット脇のボタンを特定回数押して回すとドアが開く、避難ドアを開けると滑り込むように逃げ込む。
「ほら、やっぱりいないじゃないですか」
「部屋に居た形跡もないし外出中みたいですね」
隠し部屋から様子をうかがっていると、ロックをどうやって解除したかわからないが部屋に入ってきている。間一髪だったと胸をなでおろした。
「定時連絡と定時会議には出席してるからしばらく私の事はほっといて欲しいものだ・・・」
小さくつぶやきながら隠し部屋の簡易ベットに腰かけると傍にあったコンソール電源を全て落としておく、色々あったがとうとうテラの見える位置までもう少しになった・・・・・あとはどこまで此方の戦力比を出せるかにある。
「弩級戦艦クラスと弩級空母戦艦は用意できた、後は超弩級戦艦と超弩級空母戦艦、それと各艦のランクアップをせねば物量で押し負けてしう・・・・・分間巡洋艦、時間巡洋艦、日間空母&戦艦とか訳の分からない製造スピードだからな」
相手はやる気はないが戦力と資源は宇宙最大、指揮官の質は悪いが物量は正義と言う状況で押し負ける・・・・・・ライオスさえ併合できればあるは・・・最悪反テラも吸収してしまえば勝てる見込みも修正できる・・・・。
「それらを計算して確実に勝てる算段を出さなければ埋められない物量に負ける・・・」
メモ用紙に計算し、電子計算機を取ろうと手を伸ばすとむにゅっとした柔らかい感触が手に当たった、さらにそのまま柔らかい感触を押し付けるように手が引っ張られる、慌てて目を上げるといつの間にか緑のチャイナドレスが目に入る。
「馬鹿な・・・・・・」
「マリスは騙せても私は騙せませんよ閣下」
恐る恐る目線を上に上げてくと自分の手を胸に押し付けて微笑むメイファ提督が立っていた。
「閣下、あまり思いつめないでください。また極端な作戦に走られると大変困ります」
「うむ・・・・・・それは済まない、ところでそろそろ手を放してくれないか?」
「え?私の貧相な体ですけど落ち着きませんか?人の心音を感じると」
「・・・・・・・・・貧相?」
三度くらい思わず見直して首をかしげる。
「・・・・全女性に謝った方がいいぞ?」
「え?」
「え?」
不思議な反応をされ思わず顔を見合わせる。どうやら本当に自分の体が貧相だと思っているらしい。とりあえず全身鏡を見せてきっちり説明したのだがその間ずっと手は握られて胸に押し付けられたままだった。
「と、言うわけだ、あまり謙遜も過ぎると嫌みになる」
「理解いたしました、ご迷惑をおかけしました」
「ところでそろそろ手を放してもらっていいかね?」
説明が終わりしっかり理解したところで手を放して欲しいと言うと、にこやかに拒絶される。仕方ないのでこのままその状態だといい加減揉むなり襲うなりするぞと冷やかしのように言うとむしろどうぞと目を輝かせて居た。
「とりあえず私はしばらく考え事が多いので引きこもる」
「はい、では相談などはお邪魔してよろしいですか?」
「まぁ・・・・マリスと上手な事調整してきてくれ」
ありがとうございます、この部屋の事は内緒にしておきますねと微笑むと一礼して出て行った。
「とりあえず暫くはここで足場を固めつつ圧迫侵攻するしかない・・・向こうからリアクションがない限りはこの回廊の出口さえ押さえておけば動けない」
命令書にそれぞれの作戦を書き込み残り一つの要塞を何時落とすかが勝負のカギになると最後の一文に全て付け加える。自分の部屋に戻り命令書を報告官に持たせ全員に配る。
「マリスに繋いでくれ」
オペレーターに個人会話と秘匿通信で頼むというとコンソールが開かれる。
「すまないがマリス、手が空いたら部屋に来てくれるか?」
「今直ぐに何をおいても参ります」
通信が一方的に切られると数分後に部屋に駆け込んできて思いっきりダイブされた。
「アース様、お召しいただき幸せです」
「あ・・・・うん、ちょっと痛い」
胸元で甘えるように頬を擦り付けるマリスを撫でながら声をかける。
「一度技術部に戻る、フェンウルフで送って欲しいのだが護衛も頼みたい」
「はい、マリスの命はアース様のものです、よってフェンウルフもアース様の為さりたい様にご利用ください」
「一番足が速い戦艦がフェンウルフなのだ」
「どちらの技術部にお戻りなさるので?」
「最前線だな」
コンソールを開いてマリスが副官に命令をし、何時でも動けるように準備するよう指示を出す。副官のほうは少し考えると補給とステルス幕の補充で四時間かかると報告すると、直ぐにとりかかりやすと敬礼して画面が消える。
・・・・時間経過・・・・
四時間後、フェンウルフの指令室にマリスの護衛と共に乗り込んだ。因みに割と無茶をしたので体中痛いのだが、マリスのほうは上機嫌でツヤツヤしている、まぁ、察しろと言うやつだ。
「メイファ少佐、暫く防衛は頼んだ。戦力増強とライン強化の陣頭指揮を執りに一度戻る」
「畏まりました」
「すれ違いでネコヤとアトリが着艦するように手配してある、三人いればまず落ちることはないし、私の旗艦であるフェザー・ノートも置いていく、暫定的にメイファ少佐の旗艦にするといい」
「必ず御期待に副えて見せます」
敬礼するメイファ少佐に手で合図をしてコンソールを切ると、マリスに全速力でスノーホワイトの前線技術部に向かうよう指示を出す。フェンウルフと配下の護衛艦が全速力で宙域を離脱する。途中ヴェイルノートとすれ違う、恐らくアトリとネコヤが乗艦しているのであろう。
「アース様通信です」
「繋いでくれ」
「卿、お急ぎでどちらに?」
「細かくは命令書に書いてある、三人で前線の維持を頼む、用事が終わり次第すぐに戻る」
「アース卿は・・・・今度は護衛が居るんだニャ?なら従うニャ」
ネコヤとアトリが周りを確かめると満足したように敬礼して通信が消える。最近護衛無しで動くというと本気で怒るし、張り付く、自由がなくなって非常に困ったものである。
「しばらく眠る、マリス、頼んだ」
「はい、御心のままに」
椅子に座り静かに仮眠を取ろうとすると、ふと周りの視線に気づいた。そっと細目を開けてみるとマリスが顔を覗き込んでちゃんと呼吸をしているかを心配そうに確かめている、呼吸を確かめると安心したように周りにあまり揺らさない様にかつ、急ぐように命令していた。
「心配性め・・・」
小さくつぶやくと、ゆっくりとそれでいて安心して意識を手放した。
「アース様、到着いたしました、アース様」
ゆっくりとゆすり起される、眠い目をこすりながら手を引かれタラップに向かう、すれ違う人間は全員足を止め必ず敬礼するので構わず作業する様に指示をする。技術部の扉をくぐると書類と実験資料で埋まっているフェイザーに声をかける。
「おお、アースライト様、ご無事で何よりであります」
「弩級戦艦及び超弩級戦艦と超弩級空母戦艦の開発は・・・・どうだ?」
「はい、弩級戦艦は何とかラインに乗せるところまでは進みました、プロトタイプも実験が終わっております。」
受け取った資料に目を通しながら積み込んである武器と装甲などの数値を確認し説明を受ける。大分無理をしたであろう周りは技術者と研究者が倒れてそのまま眠っている。
「超弩級戦艦アース・ライトの建造でありますがプロトタイプは一応完成しております」
「・・・・・名前がおかしいだろうが」
「陛下がそう名付けるようにとご命令が・・・・・」
「・・・・・解った、つづけてくれ」
「三連大口径粒子キャノンを五門、三連粒子キャノンが二十五門、対空系統、光子魚雷、決戦兵器粒子波動砲も全て使用可能であります」
「超弩級空母戦艦のほうはどうだ」
「こちらの方もプロトタイプは出来ております、名前のほうがヴァルキュリアとなっておりこちらも・・・・・」
「陛下か、解ったつづけてくれ」
「此方は艦載機を250機積むことに成功しております、さらに火力も三連大口径粒子キャノンを転用することにより前線での活躍が期待されます、装甲に関しても戦艦とほぼ同等の強度を持たせてあります、ただ速力が遅いというのだけはどうしようもありません」
「おおむね問題ない、そのまま進めてくれ」
「畏まりました、後は技術の費用は・・・・・・・」
「アルゲインとメリアにバンバン回せ、払うように指示はしてある」
その台詞と共にフェイザーは眠っている仲間を起こして回り直ぐに研究を再開させる、技術はやはり銭の道なのである。
「必ず御期待に副えるものを開発いたします、プロトタイプのアース・ライト級とヴァルキュリア級はそのまま前線に向かわせます」
「今回の戦いは前よりも確実に勝たなければならない、後これも頼む」
何かの設計図を差し出すとフェイザーはそれを見て三日頂ければ直ぐに開発し実装した艦載機を回せますと力強くうなずいた。
「さて、マリス戻るぞ旗艦は不本意だがアース・ライト級になる」
「いえ、アース様のお名前を冠した戦艦ですので私は大満足です」
何処までも許容されるというのもある意味辛いものであるな。苦笑するとラインで完成している他の船を引き連れ再び前線に戻る為に、新型艦に乗り込むのであった。乗り心地は良いのだが広いわ、威圧感あるわ、で戦争以外は使えないなぁとマリスと顔を見合わせて苦笑した事は付け加えておく。




