表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼神殺し―リリアと十六夜の物語―  作者: 水彩月子
―第一章―リリアの野望編
12/84

契約編―鬼と契約しよう12(終)

 ルーシアは合流した十六夜を輝く瞳で見ていた。


「かっわいいわね~」

「え?え?」

「ルーシア、十六夜が引いてるぞ」

「えーひかないでよ~」


十六夜にしがみつきそうになるルーシアを、浅葱が引き離す。


浅葱は崖の下でがれきの撤去と補強のための指示を飛ばしていた。誇り高い鬼たちは、己の主の言うことしか聞かないのである。そして例外が浅葱であった。


「もっとまとまれよ」

「仕方ないよ、鬼だもん」


劉輝は特段作業を手番うわけでもなく、浅葱の隣に立っているだけだ。浅葱はため息をついて、視線は現場を見ながら少女の名を呼んだ。


「リリア」

「なんだ」


リリアも特段視線は合わせずに答える。


「長がまだ何か悪だくみを考えているらしい。早く里を出たほうがいいと鉄斎が言っていた」

「そうか、鬼の追っ手をかけられては面倒だな」


十六夜にはまだ早い、とつぶやかれた内容が怖いと思わないでもなかったかが、浅葱は触れないでおいた。


リリアは十六夜用に外套も購入したようだ。十六夜はそれがお気に召したのか、フードを目深にかぶっている。


「ああしてるのが落ち着くらしい」

「そうか」


浅葱の視線に気づいたリリアが十六夜の今の状況を説明する。


「まあ、ゆっくり外せるようにするさ」

「ああ、頼んだ」

「頼まれた」


リリアはニッといたずらっ子のように笑んだ。


「さて、あらかた買い物も済んだし、そろそろ出るとするか」

「もう行くの?」


さみしそうなその声に、皆首をかしげるがルーシアは何か思い至ったようだ。


「大丈夫。私たちも結構外に派遣されるの。きっとすぐ会えるわ」

「本当?」

「ええ。出先で黒い鬼がいるって聞いたら十六夜のこと探すわ」


十六夜はまだぎこちなく笑んだ。


「じゃあ、俺も、里の鬼が来てるって聞いたら浅葱たちを探す」

「うん」


ルーシアは頷きで返した。


「それじゃ、行こうか」


今度こそ大丈夫だろうと、リリアは歩き出す。その背に小さくなって十六夜がついていく。少し離れてはこちらを振り返っていく様は小さな子どものようだ。彼の行く先が、どうか幸せであってほしいと三人は祈った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ