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鬼神殺し―リリアと十六夜の物語―  作者: 水彩月子
―第一章―リリアの野望編
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契約編―鬼と契約しよう11

 銭湯を出ればすることもなくて、ルーシアがうるさいから浅葱は彼女の家に戻った。劉輝もアスランの様子を見てくると言って浅葱とは別れた。


「おかえりなさい」


ルーシアが笑顔で迎え入れる。浅葱からする石鹸の匂いに、ルーシアは意外そうに言った。


「お風呂入ってきたの?」

「リリアに十六夜を頼まれてな」

「そういうこと」


身支度をしているのね、とルーシアはお茶の準備に取り掛かる。


「髪もきれいになってたぞ。前髪も切ってた」

「ええ~私も見たかった!」

「そのうち見れるんじゃないのか?」

「そうかしら」


何やらぶつぶつ言いながら、ルーシアはお茶菓子を用意する。今日はクッキーのようだ。実は甘さ控えめのルーシアのクッキーは浅葱のお気に入りだったりする。そしてそれは秘密のつもりでいるが、ルーシアは浅葱の好みとしてしっかり把握している。


「何もできなかったわね~」


悔し気にルーシアは言った。


「鬼神のせいでバランスが崩れているんだろう」


リリアが言っていただろうとそっけなく返す。そうだけど、とルーシアは不満気だ。


コンコン、とドアが鳴った。


「はーい」


ルーシアが返事をする。二人とも劉輝あたりだろうと思っていたが、入ってきたのは鉄斎だった。


「休まれているところ失礼する」

「はあ」


ルーシアは何と答えていいのかわからないようで、曖昧な声を出すにとどめる。


「お恥ずかしい話なのだが、我が主スガノサはまだことを理解しておらず、十六夜殿をあきらめてはいない」

「とっ捕まえて来いってか」

「いや、今のを言伝て、準備ができ次第この里を発ってもらいたい」

「それ、言いに来て大丈夫なのか?」

「本来の目的は別にあるゆえ、心配はご無用」


本来の目的に、浅葱は嫌な予感がした。鉄斎はにっこりと笑う。


「崩れた崖の補修がうまくいかぬ。あなたに指揮をとってほしい」


浅葱は頭痛がした。



「そうですか、十六夜は旅立つ準備を進めていますか」


劉輝からの報告にアスランはほっと一息ついた。


「世界の仕組みとは、分からないものですね」


本をぺらぺらとめくりながら独り言のように言う。劉輝はそんな流れるような言葉を聞きながら、外の往来を眺めているのが好きだった。


「ねえ、アスラン」

「どうしました?」

「十六夜は本当に鬼神になるのかな」

「―話を総合するとそうですね。劉輝はどう思いますか?」


劉輝はうーんと考え込む。


「特別だとは感じる。でも、リリアのほうが特別」

「そうですか。まだ在位の鬼神の血のほうが強いのかもしれませんね」

「そういうものなのかな」


劉輝の言葉にアスランは答えなかった。それを肯定と劉輝は受け取る。

「さて、そろそろ俺も加勢に行こうかな」

「珍しい、あなたががれきの撤去なんて手伝うんですか?」

「きっと浅葱が徴収されてるから」

「なるほど、いってらっしゃい」


アスランに見送られ、劉輝は浅葱を探しに再び出かけた。


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