12
アトランタ城に着いて俺達は
「わお...」
の一言しか発せなかった。
半壊した城。今もなお吹っ飛ばされている兵士NPC。
...思ったより敵さんは強いようだ。
城内にもかなりたくさんのモンスターがいた。
関東のプレイヤーモンスター総参加してるんじゃないかというほどに。
だがそれほどレベルが高くないのか
俺の隠密スキルに気付くやつが一人もいないことは幸いだった。
無駄に戦闘しなくてもいいのは助かる。
...それにしてもモンスターの数が多すぎる。
こりゃここにいるモンスターじゃないプレイヤーって俺達しかいないな。
そんなこんなで城の最深部へ着いた。
扉の隙間からそっと部屋を覗くと、玉座に我が物顔で
座るリッチがいた。座り方がキザったらしくて腹立つ。
リッチっていうのは死霊モンスターの王である。
けっしてお金持ちとかそういうのではない。
強い種のモンスターはレベルが上がりにくいから、
あいつはまだ5レべもいってないだろう。
「まあ二人とも、こそこそしてないで入ってきたらどうだ?」
「...なんでわかった?」
おかしい。リッチは二日間不眠でPKレベル上げしても俺の隠密を感知する
レベルには上がらないはず...。
「ははは、この玉のおかげさ」
そういって魔王みたいな服装のリッチは紫の宝玉を見せた。
『鑑定』が出来ないからわかんないけど多分炎龍王のオーブみたいな
かんじのモンスター限定強化アイテムだろう。
でも、馬鹿なリッチだよ。
「スナッチ!」
確実に俺のがレベルが高い。つまりスナッチが効くんだよ!
しかし俺の手には何も握られていなかった。...は?
「これ便利だよね。凡玉だっけ?」
気付けばリッチは凡玉を俺に向けていた。
やられた。スナッチは攻撃技ではないのでまず威力がない。
凡玉のキャパでも全然吸収することができる。
「...ところで君はアッキーくんだよね?
ニュースで見たよ。あのプレインウルフを倒したそうじゃないか
ってことはオーブ持ってるよね?」
急に空気が変わった気がした。
俺の怯んだ隙にリッチはすかさず
俺のスナッチを吸い込んだ凡玉を使った。
「...!」
「君のスナッチだからね~。レベル差なんてないに等しいだろう?」
やつの手にはしっかりとオーブが握られていた。
少しだけ雰囲気も変わった気がする。
「スティング!」
とは言え素早さは確実にこちらが上。落ち着いてじっくり削っていけばいいさ。
短剣術のLv2スキルをやつの頭にぶち込む。
「...忘れちゃった?僕は死霊。武器は全く効かないんだよ?」
頭に短剣がぶっ刺さっているのに笑みを浮かべるリッチ。
かなり怖い。トラウマになるわ!
そんなこと考えている間にやつは炎呪文を放ってきた。
さっきの魔法使いさんの魔法の5倍以上の威力はある。
まずい、俺死んだかも。
「カバー!!」
俺を突き飛ばし、テンが大盾で魔法を受け止める。
あれはたしか守護者のスキルで、身代わりになってくれる効果だっけか。
「サンキュー、テン助かったぜ」
「おう!」
テンはなんか吹っ切れたような顔をしていた。
...助かったは助かったんだが、有効打がない。
これじゃ勝てない。
「...君たちさ、まだ気付かないの?
僕はリーダーモンスターなんだよ?一人でいるわけないじゃんか」
いつのまにか魔王の後ろにはミノタウロスが三匹もいた。
どれも大剣、斧、ハンマーとパワー系武器を持っている。
しかも皆オーブ持ちだ。
「これは流石に詰んだね」
「...詰んだな」
諦めかけたその時、ハンマー持ちの一匹が炎魔法に包まれて叫びだした。
魔法の飛んできた方を振り返ると、今日クラスで話しかけてくれた女子と
他にもたくさんの人がいた。
全員どっかで見たことあるような....
あ、これうちのクラスの奴じゃね?
「助けに来たよ、アッキー!」
前と似た展開になりましたすいません。