第6滴 ステータス鑑定の開始
ステータス鑑定が始まると、生徒たちは打って変わって騒ぎ出した。
自分のステータスというものを見たことがないので、それを見ること、見れることに興奮が抑えられないのだろう。
ステータスの鑑定は順調に進んでいった。
委員長の場合。
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・高野悠馬
・男
・17歳
・光
・異界からの召喚者
・神聖魔導 レベル1
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という内容だったが、
「す、すばらしい!『神聖魔法』のスキルをお持ちか!」
委員長のスキルを見たときに王子と王女は驚愕と歓喜をあらわにした。
「『神聖魔導』ってそんなにすごいんですか?」
委員長は疑問の言葉を口にした。
その顔からは褒められたことに対する喜びの色が見られる。
「すごいことですよ!今この城の中には『神聖魔導』を使えるものはいませんし、
使えるものがこの国にいるという話も入ってきていません。
かつての勇者様と共に魔王を倒した聖女が持っていたと言われるスキル『神聖魔法』、その聖女は勇者様の仲間にふさわしい活躍をしたと聞いております。
この世界には毒や麻痺といった状態異常と言われるものが存在するのですが、その状態異常をすぐに治療できるのはこの『神聖魔法』だけです。
ほかにもこのスキルを持ったものは災いを退く力を持っているとされ、
極限まで高めたそのスキルは、高位の魔族とすら対等に渡り合える力を秘めているとされています。
しかし、ユウマ様が持っていられるスキルは『魔導』スキルでございます。
『魔導』スキルは、『魔法』スキルの上位スキルになっておりまして、『魔法』スキルをたくさん使ってレベルを上げていくしか通常持つことはできません、しかし、ユウマ様は最初から『魔導』スキルを持っておられる!しかも、『神聖魔導』というとても珍しいスキルを!
さらに今回の勇者様たちはみんなが『異界の勇者』スキルをお持ちのようです!
このスキルにはレベルはありませんが、スキルのレベルアップ速度を速めるという能力とこの世界の言語が喋れるようになるという能力があります。
ユウマ様のお持ちの『神聖魔導』のレベルアップも通常よりも格段に早い速度となっております!」
委員長の疑問の言葉に対して王女は興奮した様子で説明していく。
委員長は少し引いているくらいの勢いだ。
「おいおい、俺、『操影術』とかいうのが手に入ったよ。」
「何ソレ?」
「影を操る能力があるんだって。実体化させて攻撃したり、なんか覆ったりとか?
それと火属性適正で『火魔法』スキル持ちだから幅が広がるぜ!」
「いいなー、俺とか土属性適性なのに持ってるスキルは『鑑定』だけだぜ?
『土魔法』のスキルがないと使えないとか悲しすぎるだろ...」
「いや、『鑑定』は便利すぎだろ、羨ましいわ。」
そんな会話をしているのはクラスの男子2人
藤野紀之ふじののりゆきと下山田秋人しもやまだあきとだ。
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・藤野紀之
・男
・16歳
・火
・異界からの召喚者
・操影術 レベル1
・火魔法 レベル1
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・下山田秋人
・男
・17歳
・土
・異界からの召喚者
・鑑定 レベル1
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「お前どんなスキルだった?」
「『暗殺』...めちゃくちゃ物騒だろこのスキル。殺すって字が入ってるし、俺暗殺なんかできるのかな。」
「マジかようらやましいわ、俺『棒術』とか言うスキルだったわ、棒とか子供のころ木の枝振り回してたくらいしかないからめちゃくちゃ弱そうに聞こえるわ。」
この3人の不良も先ほど鑑定を終えている。
兵士によっておられた腕を治療してもらい、最初は不満そうだったが、『スキル』や『属性』の話をされた時にはもうそのことを忘れていたようだった。
「『棒術』か、でもカンフー映画とかでヌンチャクと一緒に棒振り回してるのを棒術っていうって聞いたことある気がする。」
「マジか、なら強いかな?あと『風魔術』が使えるわ。」
「『風魔術』?」
「早い話が『風魔法』の下位互換だってよ、だけど使いまくってレベルをあげまくれば『風魔法』に変わるらしい。」
「んだよ、じゃ全然いいじゃねーかよ」
「へへ、哲平は?」
「...」
「...哲平?」
「『医学』...。」
「「?!?」」
不良3人達もおのおののスキルを確認しているようだった。
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・菅崎哲平
・男
・17歳
・水
・異界からの召喚者
・医学(内科) レベル1
・水魔法 レベル1
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・吉田大成
・男
・16歳
・火
・異界からの召喚者
・暗殺レベル1
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・平勇樹
・男
・17歳
・風
・異界からの召喚者
・棒術 レベル1
・風魔術 レベル1
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「属性とか固有スキルか、年甲斐もなくワクワクしちゃうな。」
教員であるこの男もまた、異世界に胸を躍らせていた。
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・興野俊之
・男
・37歳
・風 土
・異界からの召喚者
・槌術レベル1
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「属性2つって俺なかなか凄いんじゃ...」
「これは...!!!」
王女の声が突如響いた。
皆がいっせいにそちらを見てみると、光成英輝みつなりひできが鑑定している最中だった。
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・光成英輝
・男
・17歳
・火 水 風 土
・異界からの召喚者
・魔導術
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「属性が4つに、数多の魔導を操るという『魔導術』スキルをお持ちとは...」
「それに先ほど『神聖魔導』をお持ちの方もいましたし、もしかしてこれは...」
「来たぜ!俺の時代が!!俺が無双する異世界物語が!!!」
王女と王子が考え込む中、一人馬鹿みたいに高いテンションで盛り上がる英輝。
それを見て担任が一人落ち込んだのは余談である。
そんな感じで生徒達はなんだかんだでこの状況を受け入れつつあった。
そのときである。
「いい加減にしてよ!!!」
突如ひとりの女生徒が大声をあげた。