第5滴 王子と王女とステータス
連れていかれた訓練室という場所では、たくさんの兵士たちが槍での試合や弓の練習をしていた。
王子が口を開いた。
「さて、自己紹介といこう。
僕が第3王子のアポル・ラル・カタルシアだ。」
「そして私が第3王女、イリーナ・ラル・カタルシアです。
今からあなたたちにステータスのことを教えます。」
静かだったクラスメイトたちがざわつきだした。
「あの!」
興奮した様子の男子生徒が声をあげた。
「第3王子、王女ということは、他にも王子様、お姫様はいるんですか?」
彼は光成英輝。
オタクキャラでいつもテンションが高く、クラスでも目立っていた生徒だ。
「そうですね。
あの場にはいませんでしたが、私たちは7人兄弟で、王子が3人、王女が4人です。」
「ウォーーー!やっぱり夢じゃなくて異世界だ!リアル王女様だ!!!」
英輝はイリーナの言葉を聞いて興奮して叫んだ。
アポルはそれを見て苦笑いをし、イリーナは笑みを浮かべている。
王子様とお姫様という言葉に影響されたのか、生徒たちは周りの子達とおしゃべりを始めた子もいる。
男子はイリーナの美しさに、女子はアポルのカッコよさが話題になっているようだ。
「さて、説明をはじめますね。
皆さんがいた世界にはなかったのかもしれませんが、この世界にはスキルと属性というものがあります。
スキルは持っている人が少ないですが、
その分、持っていればとても役立つものが多いですね。
それとスキルにはレベルというものがありまして、レベルが高ければ高いほどそのスキルは高性能になります。
レベルはスキルを使えば使うほど上がりますので、レベルを見ればその人がどれだけそのスキルが使えるのか、使ってきたのかがわかります。
スキルには常に発動している種類と、任意で発動する種類があります。
任意で発動する種類は意識しないとレベルは上がりませんが、常に発動している種類は本人が経験を積み重ねるだけで上がるといわれています。」
王女が説明をはじめると、先ほどまで騒いでいたのが嘘の様にみんな静かに聴いていた。
「次は属性の説明をしますね。
属性には火、水、風、土、それと光と闇があります。
この6つは六大国の名前にもなぞらえていますね。
属性には相性というものがありまして、相性のいい属性のものには攻撃が効きやすく、相性の悪い属性には攻撃が効きづらいなどもあります。
土は風に強く、風は水に強く、水は火に強く、火は土に強い、ただし光と闇は互いに弱点となっております。しかしそのほかの属性から受けるダメージには特に変動がありません。
ただし全員が属性を持ってるわけではなく、
もっていない人もいます。
というよりも、持ってない人の方が多いですね。
また、属性が重要なスキルもあり、
『魔法』スキル、そしてその上位スキルである『魔導』スキルなどがその代表例ですね。
これらのスキルは属性を持っていないと使えないスキルとされています。
属性、スキルを持っている人はギルドで優遇されます。
ギルドというのは人々が問題があった時にその解決を依頼する場所で、依頼状を出しておくと、冒険者と言われる職業の人たちが解決してくれます。
属性を持っている人は少ないのですが、
スキルを持っている人は属性を持っている人よりもさらに稀なのです。
しかし、今回勇者として召喚された皆さんは何らかのスキル、属性を持っているはずです。」
「それはなぜですか?」
イリーナの言葉に対して、誰かが質問をした。
「過去に異世界から召喚された勇者の方々は例外なく、何かしらの優秀なスキル、属性をお持ちでしたので、私たちは勇者様方はきっと優秀なスキルを持っていると考えております。」
説明をさえぎられて激昂した王と違ってイリーナは怒鳴ることもせず、眉をしかめることもせずに優しく答えた。
その事に生徒たちはまずほっと息をついた。
そして魔法や異能力が使える世界にいるということを実感したのか、興奮している生徒もチラホラ確認できる。
「ステータスってどうやって見るんですか?」
「バッカだなー!心の中でステータスって念じるかつぶやくんだよ、
ステータス!...あれ?オープン!ステータスオープン!」
男子生徒のつぶやきに英輝が興奮して答えた。
だが英輝が念じてもつぶやいても叫んでも何も起こることはなかった。
それを見てイリーナとアポルは微笑んでいた。
「ミツナリ・ヒデキ様、ステータスは念じても口にしても表示されません。」
「何でボクの名前を?!」
イリーナの言葉に英輝がおどろいていると、アポルが説明してきた。
「ステータスは『ステータス鑑定』というスキルで見ることができるんだよ。
『ステータス鑑定』はスキルの中でも取り分けて珍しいスキルなんだけど、イリーナは使えるんだ。
もしくはこの国の王都にあるギルドに行けば、そこにある魔道具でステータスを鑑定してもらうことはできるよ。」
アポルの言葉を聞いて何人かの生徒は落ち込んでいた。
特に英輝の落ち込みはわかりやすかった。
異世界に来たからには『ステータス鑑定』を使って見たかったのだろう。
「今回は私が皆様のステータスを見て、私が見たステータスを皆さまに公開します。
それにそう落ち込むものではありませんよ。
皆様はきっと鑑定スキルよりも素晴らしいスキルをお持ちです。」
「もしくは、ギルドにあるような『ステータス鑑定』スキルと同じようなことのできる道具がきっとあるよ。」
イリーナとアポルは落ち込んでる生徒たちを励ました。
「一応ですが、参考のために私たちのステータスを公開しておきますね。」
そういって王女は自分と王子のステータスを全員に公開した。
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・イリーナ・ラル・カタルシア
・女
・17歳
・光
・ステータス鑑定 レベル6
・光魔法 レベル5
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・アポル・ラル・カタルシア
・男
・17歳
・光
・剣術レベル4
・拳闘術レベル4
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「これが私たちのステータスになります。
上から、名前、性別、年齢、属性、そしてスキルの順に並んでいます。
熟練の方々の『ステータス鑑定』ともなるとスキルの効果までわかるようですが、私はまだまだ未熟なもので、スキルのレベルまでしかわかりませんが、今回は皆様がどのようなスキルを持っているのかがわかれば十分だと判断いたしましたので、今回の鑑定は私が務めさせていただきます。」
「これがステータスか...」
生徒たちからは色々な感情が溢れている。
初めてステータスという存在を見て、本当に異世界に来てしまったことを改めて実感した者もいれば、実際にステータスの存在を知り興奮の声を上げているものもいた。
王女の説明の後半部分など聞いてはいなかったかもしれない。
王女はその様子を見て、微笑んで言った。
「それでは勇者様たちのステータス鑑定を始めていきたいと思います。」
こうしてクラス全員のステータス鑑定が始まった。