第3滴 理不尽
部屋を連れ出されたあとしばらく歩かされた。
目隠しをしているためどちらの方向に進んでいいのかもわからないが、無理やりに掴まれて歩かされている。
何か魔法のようなものをかけられているのか、体が強く動かすことができず、抵抗することはできい。
急に兵士たちが動きを止めた。
その手に掴まれていた壱世たちも止まることになる。
扉が開いた音が聞こえた。
そのまま壱世たちはその部屋に連れ込まれた。
そこでようやく目隠しを外された。
その部屋はとても広く、豪華絢爛なトコロだった。
部屋というより、広間といってもよいだろう。広間全体のイメージカラーは金色で、天井には色鮮やかな魔法陣が書いてあり、そこから大きなシャンデリアがかかっていた。
部屋の四隅には美しい女性の像が建てられていて、壁にも様々な絵がかけられていた。
奥は階段で高くなっており、その上に玉座と思わしき豪華な椅子があった。
そしてそこから敷かれた赤い絨毯が入り口まで伸びている。
絨毯をはさむようにしていかにも貴族といった格好の男たちが数人立っていた。
その貴族たちを挟むようにして多数の兵士たちが並んでいる。
壱世たちは兵士たちに歩かされる。
全員が階段の下についた時、
貴族、兵士たちが姿勢を正した。
何事かと思っているとすぐに、広間に人が入ってきた。
男と女の2人組みだった。
男の年は三十代であろう、女の方はそれよりも若い。
男の頭にかぶった王冠と二人のこの部屋の誰よりも煌びやかな格好からこの国の王と王妃であることがわかる。
その後ろを若い男と女が一人づつ入ってくる。こちらも格好から言っても王子、王女といったところだろうか。
王が玉座に着き、その左右に王妃たちが並んでいく。
「よく召喚に応じてくれたな。異世界の勇者たちよ。」
それを王が口にした瞬間怒号があがった。
「ふざけんな!調子ノンな!!!
お前誰だよ?!
俺たちを元の場所に帰らせろ!!!」
それを口にしたのは菅崎哲平。彼は俗に言う不良というやつだと思う。
見た目はワックスを使って髪を立てて、耳にピアスを付けて学校に来る。先生たちに注意されても食って掛かり、その後謹慎をくらっているのも1度や2度ではない、そんな生徒だ。
「そうだ!これじゃ拉致じゃねーか!」「舐めんじゃねー!、ぶっ殺してやろーか?!」その後2人の生徒も立ち上がった。彼らは吉田大成と平勇樹。彼らはいつも哲平と一緒にいる。
基本的に3人で行動していることが多い。
3人は今まで無理やりにここに連れてこられて溜まっていた鬱憤と不安が爆発したのかもしれない。
周りにいた生徒たちも3人に触発されたのか何か言おうとしていた。
そこに兵士たちが集まってきて、3人を取り押さえた。
「ふざけんな!んだよ、放せよ!」「さわんな!」「おい!!!」
不良3人が抵抗する。
が、
ボキ
棒を折ったような鈍い音が聞こえた。
「っぎゃーーーーー!!!!!」
勇樹が悶絶して、転げまわっている。
腕を折られたようだった。
兵士が暴れる彼の腕を折ったのだ。
そのとなりで暴れていた不良2人が静かになってしまった。
「静かになったようだな。」
王が言ったその言葉に対して誰も何も言うことができなかった。