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詩集 残雪の声

たんぽぽ

作者: 紀 希枝

ずいぶん前に

道の向こうから春が転がってきた

道端で遊んでいる花々は、はしゃいだ春のポケットから落ちたものだ

春がここに居つくようになったからか、白い頭の子どもたちもたくさんいる

せせらぎも春の滞在を喜び、魚たちとはしゃいでいる

当の春は今、道端の斜面で寝転がっている


 あ、

 風が吹いた

いたずら好きな風が、僕の帽子を攫っていった

でもすぐに飽きたのか、その帽子を手放した

よりにもよって、川の上で

僕が濡れる覚悟をしていると

心優しいせせらぎが、僕を憐れんで帽子を河岸へと運んできてくれた

手に取った帽子は、頭の部分以外濡れていなかった

 ありがとう

そう言うと、

 どういたしまして

せせらぎは丁寧にお辞儀を返してた

帽子を渡し終えたせせらぎは、風の跡を追い、河岸を去っていった


 おーい

河原を去ろうとしたとき、誰かが大声で叫んだ

振り返ると、白い頭の子どもたちがはしゃぎまわっていた

 風が吹いたぞお

 とびっきりの、おおきな風だあ

そう声をあげて、白い頭の子どもたちは空へと駆けていった

僕の見つめる先で、あちこちから子どもたちが旅立っていく

 いってらっしゃい

 いってきまあす

 気をつけてね

仲のよかった花々や虫たち、せせらぎや魚が、大きく手を振っている

たんぽぽの子どもたちも、見送る彼らに大きく手を振りかえす

そこには、別離の寂しさや悲しみはない

まるで近所の公園にサッカーをしに行き、夕方に帰ってくるかのように

旅立つ方も、見送る方もあっけらんとしていた

今回旅立たなかったたんぽぽの子どもたちは、先に旅立った友を見て、旅立ちが楽しみになったらしい

子どもたちを乗せた風は去り、遠くの空へと消えていった

春はまだ、道端の斜面で寝転がっている

春が寝転がる草原は、太陽と日向の香りがした


 また明日も来よう

春を眺めながら、僕は明日の予定を決めた

 いや、明日なんて言わず、その次も、その次も

 春がここにいる限り

 あの子どもたちがはしゃぐ限り


拙作をお読みくださり、ありがとうございます。


批評批判大歓迎です。もっと私自身の思い描く世界を表現したいので、感想酷評、友人への紹介も期待しています。


長編の作品を幾つか載せる予定ですが、いずれもまだ修正中ですので先は長そうです。

少なくとも月に一度は、短編や童話や詩を載せるつもりなので、気が向いたらお読みください。


繰り返しますが、本当にありがとうございます。

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