とある病み人の誓い
とある病み人の誓い
とある過去の記憶の喪失。
そうして来る、喪失した記憶との邂逅。
この世から消える、その寸前までの記憶。
それがきっかけ。
幼き日の記憶。
自らを護るために消えたキオク。
・・・消えていたはずだった。
消えてなどいなかった!
奥底に眠っていた。
未来に火種と成ることも知らずに。
幼き日の記憶は“私”の中で眠っていた。
元凶、“私”であったのだろう。
然し、度を超していた。
幼き日の“私”のキオクから無くなるほどに。
幼子は、死の深遠なる闇を垣間見る。
然し、自らを護るために、記憶は奥底に眠る。
幼子が大人になる時まで。
大人になった幼子。
蘇りし記憶と邂逅する。
・・・然うして、大人のになった幼子は病んでいった。
予兆は在ったのだろう。
気が付かなかっただけで。
其処から、大人になった幼子は復讐を求める。
幼き日の記憶の復讐をせんと。
己が身に、己自身で疵を創り出しながら。
両の手を緋紅に染めんと。
冷たき鋼に己が想いを乗せて。
大人になった幼子は、復讐を求める。
何処にいるかも知れぬ元の庇護者の緋紅を奪わんと。
例え其れが代償を支払い己が誹られようとも。
何時の日か、必ず心穏やかに過ごせる時を夢見て。
代償として、己が緋紅を捧げることに為ろうとも、
心穏やかに過ごせる時が短くとも。
庇護者から嗤いながら緋紅を奪うと。
己が病み、感情のコントロールを喪おうと。
記憶が己を蝕もうとも。
必ず、何時か復讐を遂げると。
いつかの日が早まったとしても、消えたとしても。
復讐が果たされたのなら。
“私”はきっと甘美なる緋紅を手に入れるだろう。
その緋紅は、えもいわれぬほどに
“私”の喪失を癒やすことだろう。
その時を夢見て、今は静かに冷たき鋼を研いでおこう。
甘美なる復讐の為に。
読んで下さってありがとうございました。