ブラック企業が非難されなければならない理由 ~悪社は良社を駆逐する~
ある業界にブラック企業が一社現れると、その業界の企業はすべてブラックに染まる運命となる。
悪社が良社を駆逐する、そのメカニズムを説明してみたいと思う。
なお、ここで言う「ブラック企業」とは、「残業代を支払わずに従業員に長時間のサービス残業をさせるという違法行為を行なう企業」をさすものとする。
例えば、A社、B社という二つの牛丼屋があったとしよう。
このA社、B社はともに牛丼を税抜き350円の価格で売っており、どちらの企業も牛丼一杯を売るごとに得られる利益の構造は、以下のようになっているものとする。
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●売上
売上(牛丼の価格)=350円
●経費
食材費(牛肉、タマネギ、タレ、米などの原材料費)=150円
人件費(働いている従業員の給料、交通費、福利厚生費など)=100円
その他(店舗の家賃、水道光熱費、修繕費、宣伝広告費、消耗品費など)=90円
●利益
売上-経費=10円
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なお、食材費やその他の経費はすでに十分に最適化されており、これ以上削ることはできないものとする。
また、牛丼1杯につき10円という利益は、各企業が必ず獲得しなければならないものと考え、この数字も減らせないものとする。
さて、ここでブラック企業であるB社が、従業員の数を半分に減らしサービス残業によって仕事を回させることで、人件費を100円から50円に減らし、これによって商品の価格を350円から300円に値下げすることに成功したとしよう。
すると、同じ牛丼であれば、客はより安い値段で商品を提供してくれるB社で牛丼を買うようになる。
このため、A社には客が来なくなり、経営が成り立たなくなる。
こうなると、A社が倒産を回避するためには、B社と同様に商品の価格を下げ、それを実現するために人件費を減らすしかないことになる。
ブラック企業であるB社が、自社従業員のサービス残業を前提に価格競争を仕掛けたことにより、A社までもがそれに追随しなければならなくなったのである。
サービス残業をすることは、自社の利益と発展のための必要悪だと考える人もいるかもしれないが、それは巡り巡れば、そのような違法労働状態を前提としなければ経営が成り立たない企業体質、業界体質を作ることになる。
……そうは言っても、現実の僕らはそうした大きな枠組みについて考える前に、目の前の小さな現実と戦わなければならないわけなのだが。
違法労働状態には正しくメスが入り、ちゃんとルールを守って戦っている企業こそが生き残るような、そんな世の中になってほしいものである。
だいぶ前に見た、#企業戦士ガンダムタグであったネタ、
「黒い方が(価格競争で)勝つわ」 「フフフ。ララァは賢いな」
にはめっちゃ笑いました。