表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/93

高難易度?ダンジョン?

暇がないっ!


スットクがないっ!


書く~~!


ゥワァァ━。゜(゜´ω`●゜)゜。━ン!!

それからかなり進んだのにまったく魔物は出なかった。

本当にここ高難易度ダンジョンなの?


「まったくぅ、どういうことなの~、ここ10階よ?地下10階!まだ1度も戦ってないのよ?ここの魔物は腑抜けなのぉ?40年前はこんなのじゃなかったのに、何が組合指定の高難易度ダンジョンよ、見かける魔物が全部逃げていくって意味不明よ」


「それ僕のセリフですね。ここに案内したのはグラブさんですし」


「せっかく私の華麗な戦いを見せてあげようとしたのにガッカリよぉ」


「それは別にいいですよ。気分が悪くなりそうですから見たくないですし。それより話聞いてます?」


「気分が悪くなるってどういう意味よ!ほんと前にここに来た時は本当にこんな事なかったのに~」


「話聞いてますか?答えて下さいよ」


「案内の話?小娘、貴方馬鹿なの?主のいるダンジョンは成長するって言ったでしょ?前にここに来たのは40年近く前の話なんだからもうダンジョンは変化しているって言ったでしょ?道があってるかどうかなんて気にしてたら進めないじゃない、常識よ」


「馬鹿じゃないです。ハゲ」


「とうとう直でハゲって言いやがったわね!よし、いいわ!勝負よ勝負!魔物の前に刺し殺してやるわ!」


「怒鳴らないで下さいハゲますよ?というかせっかく魔物が襲ってこない状況ですし少し休憩しません?今のうちに体力を温存しておかないと後が辛そうですし」


「このクソメスガキ・・人を何度も馬鹿にしやがるクセにマイペースで正論言いやがって・・。大体今は若返って生えているだろうが・・」


「ソウデスネー」


「・・・まぁいいわ、楽しみは後にとっておくわ。貴方の言うとおり休憩はしたほうがいいと思うし」


そう言うとグラブはブツブツと何かを言って僕から離れて行き荷物から水と携帯食を出していた。

僕もグラブの近くにいると嫌なので距離を取って休憩する事にした。


そして適当な場所を探してしゃがみ込み荷物から水を出してそれを飲むっと後ろから、いや背中から声がかけられる。


「美紅オレもご飯、あともういい?オレちょっと疲れた?寝ていい?」


「あ、ゴメンね~お腹空いたよね~。ん?疲れた?掴まるのが?」


僕は荷物から干し肉を出して背中に引っ付いているアミーに干し肉を渡す。

そうすると外套の中から起用に手だけを出して干し肉を奪っていった。

後ろでモグモグと食べているに違いない。


というかアミーが疲れたとか変な事を言った気がするので聞いてみることにした。


「アミーそれ食べたら眠たかったら寝ていいからね。ずっと引っ付いてて疲れたんでしょ?あともういいってどう言う事?寝ていい?って事だよね?」


「引っ付くの疲れない暖かい、いい匂い。寝たいのは襲ってきた奴追い払うので疲れたから?」


「まさか君まで匂いって・・・ん???」


どういうこと?追い払う?その言葉を聞いて僕に1つの答えが浮かんできた。


「ア、アミー寝る前に答えてくれるかな、もしかして今までアミーが魔物を追い払ってた?」


「ハレンと約束」


僕はハレンちゃんと別れる前の最後のシーンを思い出していた。


「弱いの威嚇した?」


『ヒルマさんとハレンの代わりに美紅様をお願いします』


ダンジョンに入って飴袋から飴も取らずに静かにしてると思ったらハレンちゃんとの約束を守って僕から敵をを遠ざけてくれてたのね・・ちょっと涙が出そうだし。


「ありがとうアミー、眠る前に教えてくれるかな」


背中から静かな寝息が聞こえた。

アミーは僕の質問に答えた後に寝てしまった。

にしてもよくしがみ付きながら寝れるね。


僕がアミーに聞いてわかった事は今までアミーが魔物を追い払っていてくれたとの事だった。

アミー曰く、オレよりたぶん弱い奴は威嚇で勝てる、だった。

魔物にしかわからない殺気みたいなものを僕の背中から飛ばしていたらしい。

しかしこれが結構気を使うらしく精神的に疲れたので暫く寝たいとの事、何かあったら起こして欲しいと言って寝てしまった。


えーと、言う事はアミーが寝ちゃったのでこれから後は魔物は容赦なく向かってくると言う事?


頑張らなくちゃ、なんか僕は守られ体質な気がしてきた。



そして・・休憩後。


「どぉぉぉぉいうことなのよ!!!」


グラブが雄叫びをあげていた。


「何で急にお祭り開始みたいに魔物の集団が襲ってくるわけ!?さっきまでの静けさはなんだったのよぉぉぉ!貴方も手伝いなさいよ!」


大量の魔物に囲まれたグラブがそう叫んできた。

それを見て僕は言う。


「華麗な戦いを見せてくれるって言ったじゃないですか」


「言ったけどもぉ!こんないきなりさっきと180度違う状況になるんて心構えがあるわけないじゃない!」


いや、僕はあったよ?さっきまで魔物を追い払ってくれてたアミー寝ちゃったし。


「クソ共がああああああああ」


グラブは大声をあげると囲んでいる魔物に向かって突っ込んでいく。

そして1匹、また1匹と手刀で切り刻んでいった。

魔物もグラブを襲うがグラブはそれを簡単に避けてカウンターを食らわしていく。

悔しいがグラブは強い。

戦い慣れているのが目に見えてわかり、一度戦い出すと魔物達との実力の差は明白だった。

たった数分でグラブを囲んでいた大量の魔物はあっという間に残骸と化していた。


「ふっ・・こんなものよ。やっとまともな戦闘が出来て感が戻ってきたわ。さてそこで見学してる小娘、次から貴方もちゃんと戦いなさいね」


「エー」


「えー!じゃないわよ!なんの為に手を組んだと思っているのよ。貴方の目的忘れたわけじゃないんでしょうね」


忘れるわけがない。


「わかってますよ。今の僕は多少の犠牲ぐらい問題ではないですし」


「そうよね、じゃあ頑張んなさいな」


この後、僕達はどんどん先に進んでいく事になった。

グラブと僕は戦闘スタイルが似ていて

同じスピードタイプだったので不本意ながら戦いやすかった。


「ふーん、なんか剣筋が洗練されてるわね。見たことない型だけどあのダークエルフの教えかしら?でも貴方の場合かなり変則。元々あのダークエルフと戦闘スタイルが違うから無意識に自分に合うように剣を振るっているせいで大分我流になってるわね」


「わかるんですか?」


「私を誰だと思っているのよ。戦っている年月だけなら貴方なんか私に比べたら赤子同然よ」


「お歳ですしね。今おいくつですか?」


「覚えておきなさい。オス(メン)に歳なんて聞くものじゃないわよ」


それ女性ならわかるけどオス(メン)も入るの?なんかヤダ。


「さてそろそろ無駄話は出来なくなるわよ」


「なんでですか?また魔物でも襲ってくるんですか?」


「それならまだいいわよ。この階層はまだ魔物も弱いし、ほら見なさい」


グラブが言う方向を見ると1本道の方に小さな扉があった。


「このダンジョンで初めての扉ですね。何の部屋ですか?」


「変わってなければだけどね、門番ってところね」


「門番ですか?なんか嫌な響きですね」


「まぁ入ればわかるわ。この下の階層に行くには絶対この部屋を通らなければならない。そしてその部屋の魔物を倒さなければならない。ちなみに戻ることは出来るけどその魔物を倒さなきゃ前へは進めない仕組みよ。あくまで変わってなければ!だけどねぇ」


「どんな魔物かは覚えているんですか?」


そう聞くとグラブはアゴに手を当てて思い出そうとしているような仕草をした。


「うーん・・たしかぁ、複数だったわね」


「複数ですか。他には?」


「他は覚えてないわ。言ったでしょ、40年近く前だって。だからあんまり記憶にないの」


「あっそ」


僕は呆れ顔になった。


「何その態度は・・しょうがないじゃない!本当にあんまり覚えてないんだから!」


「別に何も言ってないじゃないですか」


「まったくもう!いくわよさっさと!」


「はいはい」


「はいは1回!」


教師か。


僕はグラブに続いては扉をくぐる。

そして部屋の中に入った。

部屋は広かった。まるでココで戦えと言わんばかりの部屋だった。

なぜならその部屋は・・血の匂いがした。


そしてそれはいた。

部屋の真ん中に2体・・いや2名?


「思い出したわ、あの2体を倒せば・・」


とグラブが言い終わる前に・・3体目が出現した。

2体の人型の魔物、灰色の人型の生物が構えていた。

1体は鎧を着て剣を構えた剣士、もう1体も鎧を着ていたが剣士の物ではなく軽装で武道家といった感じだった。

そして後から出現した3体目は2体から数メートル離れた後ろに陣をとり、弓を構えてた。


「嘘つき、3体じゃないですか」


「私の時は2体だったのよ!言ったでしょ、ダンジョンは変わるって。しかしやっかいね」


「僕は剣士を相手するのでグラブさんは他2体をお願いします」


「勝手に決めんじゃないわよ!なんでアンタが1体で私が2体なのよ!」


「年功序列ですよ」


「意味わかんない!本当に意味わかんない!普通は年寄りは大切にするでしょ!」


「そうでした、じゃあお歳よりのグラブさんは1体でいいです」


「若いわよ!若返ったし!」


「どっちなんですか・・うるさいなー」


「というか普通に考えて前の2体を何とかしないと弓の奴は対処できないでしょうが。それとも小娘、ナンタは魔法とか遠距離系の武器持ってるの?ダンジョン石でもいいけど」


「うーん、はっきり言ってないです。グラブさんは?」


「ひ・み・つ」


うざっ!なんだこのハゲ。


「今失礼な事思わなかった?」


「全然」


「まぁいいわ、作戦はこうよ。弓の奴がどのくらい強いかはわからないけど、対処は難しいわ。でも作戦は単純よ。アンタか私、どちらかが前の2名を倒して先に倒せたほうが弓兵を対処する。いいわね?」


「それしかないですねー、でもそれだと前の2名と戦っている最中に弓で狙い撃ちにされませんか?」


「避ければいいのよ。なにいってるの貴方」


「・・簡単に言わないで下さい」


「それくらい出来なきゃこの先はやっていけないわよ?」


「はぁ・・そうですか」


何か納得が行かないけどこのダンジョンは向こうのほうが詳しいので作戦に従うしかない。

仕方ないので僕は剣を抜き前の敵に集中する。

どうやら敵も僕をターゲットに決めたらしく剣を構えてこちらを凝視している。

その間にグラブも自分の相手に向かって行く。


僕が構えていると敵が動いた。

敵が一直線に僕に向かってきたので僕は横に移動して戦いやすい場所まで誘導する。

ちょっと剣を交差させるとわかった、この魔物は生粋の剣士だ。

それもかなりの腕前の・・。

ちらっとグラブを見ると向こうも激しい勢いで拳を繰り出していた。

あまり余裕がないので目の前の敵に視線を戻すと・・。


そんな中、向こうは余裕があるのか場違いな大声が僕に飛んできた。


流石歴戦の闘士は違う。


「ちょっと小娘!!アンタわざとやってるでしょ!」


「わざと?何の事ですか?」


何を言ってるんだこの変態は?気を抜いたら死につながるこのダンジョンでいきなり変な事を言い出さないでほしい。


「とぼける気!?アンタの戦っている場所の事よ!アンタ弓兵の弓の射程の直線状、私を盾にするように戦っているでしょ!?わざわざ私の後ろで戦って弓兵がアンタを狙ったら私が邪魔になる位置に移動したでしょ!さっきから私ばっかり狙われているのがその証拠よ!」


「すいません、目の前の剣士で手一杯なんで変な言いがかりはやめて下さいよ。それとも会話で僕の注意を引いて僕の邪魔する作戦ですか?」


「ふざけんじゃないわよ!どう考えてもアンタの方が私を殺す作戦で戦っているでしょうがっ!危な!」


グラブに向かって弓が数本飛ぶ。

それをグラブが避けたせいで僕の方に弓が飛んできた。


「ちょっとグラブさん、弓を避けないで下さいよ。こっちに飛んできて危ないんですけど」


「避けなきゃ私の命が危ないでしょ!てかやっぱり確信犯ね!ああ、いいわ!もういいわ!コイツ等殺ったら次はアンタの番よ!」


「そういうの良いですから、さっさと敵を倒してください」


「クソガキ・・親の顔が見たいわ」


こっちもだ。


そんな会話をしている間にも敵は剣を繰り出してきていた。

確かに手ごわい相手だがこの魔物の剣は素直すぎた。

僕なんかより剣士をしている剣捌きだった、だからこそ読みやすい。


相手の突きによる剣の一撃にカウンターを合わせて繰り出した僕の剣が相手の魔物の腹に突き刺さる。

相手の魔物から血が流れ落ちる。

赤色の血かと思ったが黒ずんだ赤色だった。

そのまま剣士の魔物は動きが止まり、前のめりで倒れていった。

そしてそのまま首を跳ねた。


自分の敵がいなくなったので僕はグラブを見ると目の前の敵と戦いながら弓を必死に避けていた。

凄いなぁ、流石にスラビーさんの師匠で達人とか昔は言われてただけあって無駄のない動きだ。

今は違うけど敵ながら見習うべき所がたくさんあるかもしれない。

丁度いい、こんな状況だけど動きとか体裁きはしっかりと見極めて盗むのもいいかもしれない。


よし、そうと決まればしっかりと見学しなきゃ!


「オイ!クソ小娘!敵を倒したならさっさと回り込んで弓兵倒せやゴラ!!」


「え?」


「え?じゃないわよ!アンタの下種な行動で不本意ながら私が弓を引き受けてやったんでしょうが!さっさと手が空いたなら次の行動に移りなさいよ!」


「ああぁ」


「ああぁ、じゃねー今気づいたみたいに言いやがって!わかっててずっと見てだがぁ!早くしろよゴラ!」


なにやらグラブから切羽詰ったような苦情が来たようなので僕はせっかくの技術を盗む機会を奪われ、仕方ないのでグラブが戦っている場所を回りこむようにして弓兵に近づく。

僕が弓兵に向かっていくと弓兵はこっちに気付いたようでこっちに向かって弓を繰り出してきた。

僕はそれを避けながら弓兵との間合いを詰めて弓兵の首を飛ばした。


そしてその直後、後ろで何かが倒れる音がした。


「小娘ぇ・・覚悟はいいかしら~?」


グラブが魔物を倒したらしく、鋭い視線を向けながらこっちを睨んでいた。


「覚悟って何の事ですか?作戦通りじゃないですか。目の前の敵を先に倒したほうが弓兵を倒す、グラブさんの考えた作戦がうまくいったのに何をそんなに怒っているんですか?カルシウム足りないんですか?ハゲますよ?」


「誰がハゲじゃゴラ!どの口がそんな事言えるんだ!?おお!!」


「この口ですが?そもそもさっきから変な言いがかりは止めて下さいよ。ここはダンジョンですよ~甘い事を言ってたら命が危ないのはわかっているでしょ?」


「お前の非道な行動のせいで私の命が危ないのよ!」


「はいはい、次行きますよ。どうやら魔物を倒したお陰で先に進む扉が開いたみたいですし」


「話を聞けやっ!!」


グラブが何が甲高い声で叫んでいるが僕はそれを無視して先に進む。

まったく身に覚えのない事に対して文句を言わないで欲しい。

あんまりうるさいと僕の背中で寝ているアミーが起きちゃうじゃないか。


「いつかアンタは使命関係なく必ず私が殺ってやるからね!!」


はいはいお待ちしておりますよ。


「それでこの先はどうなっているんですか?」


「アンタあれだけの事をやっておいてよくそんな風に話しかけれるわね」


「褒めないでくださいよ。貴方が過去にした事に比べたら全然大したことないですし」


「・・・いい性格してるわアンタ、この先からは確か魔物の強度が増すわ。そしてさっきの魔物は私達より前にここに来て死んだ冒険者の亡骸よ。操られたゾンビみたいな物よ」


やっぱり死者だった。


「なるほど、だから赤っぽい血が出たんですね」


「前と違う弓兵が出たのは弓使いが新たに死んだせいね」


「つまりグラブさんもココで死ねばあそこでずっと戦えるわけですね」


「勝手に殺さないでくれるかしら!」


そしてそのまま僕達は突き進む。

扉を潜るとすぐに下へと降りる階段がありそれを降りてゆく。

そして次の階層に降りるとすぐに広い通路のような場所に出た。


暗い階層だった。

しかしすぐ見える場所に明かりがある事に気付いた。


「魔物ですかね?」


「馬鹿なの?あれは人工的な明かりよ。恐らく先に入った何者かでしょうね」


「馬鹿って言う方がハゲなんですよ?」


「それを言うなら馬鹿って言う方が馬鹿でしょ!ああ言えばこう言う小娘ね!」


わかってるなら馬鹿にするな。

警戒しながら明かりがあるほうに近づいていくとそこには男の人が3人、女の人が1人で武器に手をかけた状態で座り込んでいた。どうやら向こうも気付いて警戒していたようだった。

恐らく冒険者?だろうか僕はその人達と視線が交差した後に戦斧を背負った男の人が声をかけてきた。


「すまない、人だとわかっていたがやはりダンジョンで遭遇すると警戒してしまうな。アンタ達も部屋をクリアしてきたんだろ?ってアンタ達2人組か?よくあの部屋を通れたな」


男の人はそんな事を言ってきた。

どうやらまともな人のようだった。


「えーと、こんにちは」


僕はダンジョンでまともな人と遭遇するなんて初めてなのでとりあえず挨拶をする事にした。


「キャー!すっごいカッコイイ人じゃない?後ろの人もの凄いイケメンじゃない!」


弓を背負った女の人が甲高い声をあげてこっちに向かってくる。

目的はたぶん・・・。


「あの~このダンジョン初めてですか?わたし達はもう3回目なんです。良かったら一緒に行きません?」


ナンパか!!


「オ、オイ、何を勝手に」


仲間の男の人もその発言を聞いて止めに入る。

僕も止めた方がいいのだろうか・・だって冒険者らしい女の人が興奮して話しかけているのはというと・・。


「それ以上近づくんじゃないわよメス豚っ!ぺっ!」


唾を吐きながらとんでもない態度を取るグラブだった・・。


「えっ・・」


どうやら現れたイケメン?のグラブがタイプだったらしく話しかけた女の冒険者は予想外のグラブの反応に近づくのをやめて固まっていた。


「ちっ!メスが!1メートル、いや2メートル以内に入るんじゃないわよ!感染したらどうするのよ!タダでさえ、この小娘と一緒の行動を我慢しているのにこれ以上メスが増えたらたまったもんじゃないわ!」


「え・・メ、メス?感染?あの・・わたし別に病気なんかじゃ」


違うよ冒険者らしいお姉さん、その人はただの女性嫌いの変態なんだよ。

むしろ貴方が感染(うつ)されるのでグラブには近づかない方がいいですよ?


「ちっ!メスはコレだから・・あら?そこの戦斧をお持ちの殿方なかなか渋くていい雰囲気ね」


何度も舌打ちするなっ!


「お、俺かい?」


ああ・・ご愁傷様です。

グラブは固まっている冒険者であろうお姉さんを汚い物でも見るような目で避けながら戦斧持った男の人の横に一瞬で移動した。

その速さは恐ろしく、いきなり自分の横に現れたグラブに驚く戦斧を背負った男の人。


「うわぁ、いい筋肉ねん。二の腕なんか私の理想だわぁ。いやーー!この腹筋すごーい!これは毎日欠かさず2時間は筋トレしている腹筋ね。他の筋肉も均整がとれてて素晴らしいわん」


「え?え?あ、あの・・確かに筋トレはしてますが、何で時間まで正確にわかるんだ?」


近づくだけならまだしも、いきなり自分の体をベタベタと触られた男の人はテンパってしまって変な事を聞き返していた。


「あらやだ、私は声を聞いただけよ。筋肉ってのはね、しゃ・べ・る・の・よ」


グラブはウィンクをして気持ち悪い事を言い出した。

僕生まれて17年経つんですけど一度も筋肉と話した事ないんですけど?話しかけられたことももちろんないんですが?


「そ、そうなんですか?し、知らなかった・・な」


それが普通だよ?


「今度私と一緒に筋トレご一緒にしないかしら?1人でやるよりいい汗がかけるはずよ。1人でやる時と同じで言葉なんていらないわ。だってお互いの筋肉が勝手に会話を始めるもの」


始めてたまるか!


「え?あの・・俺達一応これから予定が・・」


「それはこっちも同じよ。でもとーおい未来の予定は決まってな・い・で・しょ」


グラブは再びウィンクしながら意味不明な言葉を返す。

というか本当に止めてあげて。


そんなグラブと自分の仲間である戦斧を背負った人のの会話を不気味に、不思議に思ったのかグラブの被害者である固まっていた女の人が息を吹き返して僕に声をかけてきた。


「ね、ねぇ、貴方あの人の仲間よね?」


「違います。断じて違います」


こんな侮辱は生まれて初めてだ。


「え?でも一緒にここまで来たんじゃないの?」


「あれは目的の為にたまたま、本当にたまたま一緒に行動しているだけの人です。確かに顔見知りですけど他人です。どの位他人かと言うともしこのダンジョンで勝てない魔物に襲われて逃げる事になったらアレを生贄にして逃げる予定ぐらい他人です」


冒険者の女の人は顔を引きつらせながら次の質問をしてきた。


「そ、そうなの?それであのイケメンはもしかしてだけど・・あっち系の人なの?だとしたら凄い勿体無いんだけど」


「あっち系がどっち系かは知りませんが貴方をメス呼ばわりした態度でわかりません?あとアレの生まれた場所は知らないですけど、住んでいた場所は知ってます。ご存知かどうかわかりませんがオストピアです」


「ヒィィィィ」


どうやらどういう場所か知っているっぽい冒険者の女の人は悲鳴をあげた。

そしてその話が聞こえていたらしいグラブに迫られている冒険者らしい男の人達も悲鳴らしきものをあげた。


「オ、オストピアご出身なんですか?」


「あら、ご存知なの?生まれは違うけどね。でも心の故郷はずっとあそこよ、私には使命があってあそこを離れる事になってしまったけどね。そうね、心が・・張り裂けそうだったわ。でも仕方がなかったのよ」


張り裂けてしまえばいい。

そしてそろそろ僕は他人に迷惑をかけているグラブを止める事にした。


「グラブさんそろそろ止めてあげて下さい。いくら未知を求めてダンジョンに入る屈強そうな冒険者の方でもグラブさんみたいな生物はさすがに引いてますし、ある意味魔物より警戒されてるので。そもそも一緒いる時点で僕も恥かしいのに、さらに恥かしい行動は控えて下さい」


「こ、小娘、アンタはもしかして私が傷つかない人間とでも思っているの?アンタ本当に口悪いわね、よくアンタの仲間は一緒に行動してくれているわね」


「仲間に対してはこんな事は絶対言いませんよ。あと僕は興味のない物には昔からこんな感じです。まぁ僕の事はいいのでいい加減にしてください。これ以上迷惑をかけるとあの人達と一緒に魔物として討伐しますよ?」


「アンタ、いつか絶対天罰が下るわよ・・私は過去した事に対して別になんとも思わないけどアンタもいつかこっち側に来る気がするわ」


「僕はハゲ側には行きませんよ」


「そっちじゃないわよ!」


「あと嘘は言わない方がいいですよ」


「はぁ?なに言ってるの?」


僕の言葉を聞いてグラブは少しだけ顔を顰めてそう言った。


「べっつに~」


そんなやり取りをしているとグラブ被害者の男の人が心配そうに声をかけてきた。


「もう大丈夫ですよ。この猛獣はできる限り迷惑かけないように見張りますから」


「そ、そうか、それは本当に助かるよ」


後ろでグラブが猛獣扱いされて怒鳴っているが無視をする。


「それでは僕達は失礼しますね。この先に急ぎの用がありますので。行きますよグラブさん」


そう言って僕はグラブさんに先を促した。


「ちょっと待て、君達はこのダンジョンはどんな場所か知ってるのか?いや、このダンジョンに入れただけで君達がゴールドクラス、もしくはちゃんと聖堂か商会で申請を行って許可された実力者だと言う事はわかるがこの先はたった2人で進めるような場所じゃないぞ」


・・・すいません許可されてません。そこのハ・・ヤツが元職場から盗んだ許可証で入りました。


「そうなんですか?」


僕はそれを聞きながらこの先に行った事のあるグラブを見るとグラブは両手をあげてさあ?という感じのジェスチャーをしてきた。

そしてそれを聞いたグラブが口を開く。


「ねえ、貴方達は3回目と言ってたけどどの程度まで進んだ事があるのかしら?」


「俺達は25階までだ。それ以上は行かないというより行けない」


行けない?どう言う事だろう。


「恥かしい話だが単純に実力不足だ。ゴールドになったばかりで念願のこのダンジョンに入ったのだが25階で足止めを食らっているんだ」


25階になにかあるのかな?グラブさんが昔24階まで行ったらしいけど。


「25階ね~、私は昔24階まで行って帰って来いと師匠に言われたから24階で引き換えしたけど25階は何かあったのかしら」


「そっちの、あの・・オス・・トピアの人は24階まで行った事があるのか?なら話が早い、25階に行くなら逃げる準備をしっかりしておく事だな」


「グラブと呼んで、グラちゃんでもいいわん!」


・・グラちゃん。

呼んでといわれた戦斧の冒険者は青い顔している。


「25階に何があるんですか?」


グラブが行った事のない場所、その情報は非常に欲しいところだ。


「すまない。わからないだ」


「え?わからないってどう言う事ですか?」


「本当にわからないんだ、俺達は1回目はここで引き返し、2ヶ月前の2回目で25階まで行った。そして仲間の一人が大怪我を負ったので仲間を引きずって必死の思いでダンジョンから脱出した」


戦斧の人は後ろの魔法士っぽい人を指差して言った。

あの人が怪我を負った人なのだろう。


「わからないってどう言う事なの?そこのメス、お前はアーチャーでしょ?目が良いはずよね?それしかとりえがないはずよね?なにが起こったか見てなかったの?」


なんて失礼な態度を・・そっちの戦斧の男の人と180度違う態度でそんな事を聞くグラブ。


「ヒッ・・あの・・その」


怯えてるし!


「はっきり言いなさいメス豚!」


酷い呼び方をするな!


「え・・あ、はい。一応メンバーの後ろでしっかり見てたんですけど、あたりは真っ暗で何も見えなくて・・気付いたら仲間が倒れてたんです」


「つまり何も見てないと?」


「・・・はい」


「ちっ!やっぱりメスって役立たずね!


「・・ごめんなさい」


「お姉さんも謝らなくてもいいです。ハゲ、その辺にしてください。可哀想です」


「もうハゲてないわよ!私が可哀想よ!」


全然。

僕はグラブを無視して聞いた。


「でも貴方達は今ここにいると言う事はまた挑戦するんですよね?」


そう言われた4人はお互い顔を見合わせて戦斧の男の人が答えた。


「本来ならそうしたいところだがこのダンジョンは高ランク限定だけあって24階までの魔物を狩るだけでも相当の金になる。前回あっという間に25階でやられて実力を思い知らされた、だから我々は今は24階までマッピングしながら実力をつけ魔物の素材を集めていくつもりだ」


「そうだったんですか」


「そのメスがやられているうちに25階を通ればいいんじゃないかしら?」


何とんでもない事いてるのこのハゲは・・。


「そ、そんなっ!」


涙目だし・・お姉さん。


「な、仲間にそんな仕打ちは出来ない」


「あら、いいやっぱりいい男ね。メスなんかそれぐらいしか使い道ないのに慈悲をかけるなんて」


何を言ってるんだこの人は。


「そ、それでどうだろう。俺達と24階までだが行かないか?人数が増えたほうが危険も回避できるし。それにさっきも行ったが俺達はこのダンジョンをマッピングしているからお前達も無駄な場所には行かなくてすむし」


凄く助かる提案だ。

しかし確かめない事がぁ・・。


「あらナンパ~?行きま~~す!」


確かめることを聞く前にに返事を即答するグラブ。非常にウザイ!


「待って下さい。申し出は嬉しいんですけど良いんですか?」


「いいとも、ここまで2人で来れる者だ。足手まといになどはならないと確信している」


「いやそこじゃありません。アレと一緒でいいんですか?と聞いているんです」


そう言って僕はグラブを指差す。


「・・・戦闘では流石に変な事はしないだろ?」


戦斧の男の人が小声で僕に聞いてくる。


「・・・たぶん?」


自信がないんです、ごめんなさい。


「何よぉ、内緒話してるのぉ?はっ!もしかしてその小娘が気に入ったの!?お止めになったほうがいいわよ!その小娘は外見だけで中身は最悪よ!口は悪いし、性格は性悪で戦い方は卑怯の一手よ!」


なんて言い草を、自分を棚にあげて・・。


「ま、まぁ、一緒に行こう。俺達はさっきも言ったがゴールドだ。多少の事は問題ない。腕に自信もあるしな」


多少で済めばいいけど・・。


「えっと、じゃあこっちも助かるのでよろしくおねがいします。僕はあのハゲが迷惑かけないように出来るだけ頑張りますので」


「そ、そうか。ではこれから宜しく頼む」


そう言って冒険者の4人は頭を下げてきたのでこっちも焦って下げる。

なんというかタイミング的に非常に助かる申し出で嬉しかった。

後の問題は後ろでハゲって言うんじゃないわよ!と怒鳴っているハゲなわけだけど。


「宜しくおねがいしますわん。あ・な・た」



さっそく戦斧の人の腕に巻きついて腕に頬ずりしていた。

目的がなければ刺しているところだ。












産声をあげる目の前の緑色の大型の物体。

アレがドラゴン?アレをドラゴン等と呼ぶのは非常に不愉快なのだ。

ドラゴンというのは壮大であり気高い生き物なのだ。

他の生物と比べるまでもなく生物という種において世界ではトップクラスなのだ。

いや頂点と言ってもいいのだ!・・・え?女神にとんでもない目にあわされたドラゴンがいる?

そんな事覚えてないのだ・・涙。


と、とりあえずドラゴンというのは戦いともなれば1匹で戦況を覆せるそんな存在なのだ!

人や亜人みたいに群れなくても戦力においては比べる前もないのだ。そう、我も前は孤高のドラゴンとして君臨していたのだ!群れている奴等なんて羨ましくなかったのだ!


ボッチ?なにそれ・・。

それにもうボッチじゃないのだ!ご主人様だっているのだ!

ご主人様ボッチじゃないよね?我・・。


我がそんな高尚な事を考えていると後ろの2人が感嘆とも言える声を漏らした。

その理由は・・。


「まさかとは思っていたがここまでとは、流石だね」


「ソ、ソウと言ったな、お前は何なんだ!化け物か!?」


シュッペルはいいとして、チュージ、お前は失礼なのだ。

これから、いや今したことはお前にとっては救いになる行為だというのに我を化け物呼ばわりするなど失礼もいいとこなのだ。


「で?これでいいのかシュッペル」


「十分だよ、まさに注文通りだ。これならチュージー君の死も隠せる。しかし本当に注文通りの形にしてくれるとは、賞賛の言葉しかない」


「ふふん、もっと褒めるのだ。おい、チュージーお前も我を褒めておかないと後で後悔するぞ?」


「か、感謝する」


なぜ怯えて言うのだ。


そして我は目の前のドラゴン、いやドラゴンもどきだった物の肉塊をみる。

それは蠢いてた。


手足をもぎ取られ横たわる。

お腹には大きな穴が空いていた。

しかし生きている。

生命力だけはドラゴン並みといいかもしれないのだ。


「これなら誤魔化せるのだ?」


「ああ、先ほども言ったが素晴らしいよ。このままにしておけば魔物が集まりコレを食らうだろう。この生物は硬いがどうやら腹部は柔らいみたいだ。そこから魔物達は食らうだろう、そうすればこいつに食われてしまったチュージ君の残骸は他の魔物が食らってわからなくなるというものだ」


「でも他の魔物がこのドラゴンもどきを倒せるとは思わないのだ」


「そこは簡単だよ。チュージ君、君が弱らせた事にすればいい。頑張ったが弱らせる事には成功、勝てなくて食われた。そして弱ったドラゴンは魔物の集団に襲われた。単純だよ、だが単純だからこそいい。さてチュージー君、魔物が来る前に君が戦った爪あとを残そう。どんな方法でもいい、トドメを刺さない程度に傷つけたまえ」


「簡単にいうなお前は、まあ、この状態なら出来ないことはない。俺も腕に覚えがないわけじゃないしな」


そう言うとチュージーはドラゴンもどきに多数の傷と残す攻撃を行った。

そして暫くして小物な魔物達が臭いを嗅ぎつけたのか現れる。


それを確認した後我達はここから去ったのだった。



その後、魔物はすぐに散って行った。

多少食われて元の形がわからなくなった物体だけが残されていた。

魔物が全てを食らう前に散った理由は・・そこにいきなり現れた者が原因だった。

しかしその者もそれを確認すると苦笑いを浮かべ霧のように消えていった。



ヾ(・´ω`・)(・´ω:;.:..(・´:;…::;.:.:::;..サラサラサラ~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ