担保と新ダンジョン
1年振り~!
なんというかやる気がなかった!以上なの!
アハハ(^Д^#)。o○(ヽ(゜Д゜#)ノバカヤロー )
僕達は怪しい村の怪しいお店にお金を借りに来ました。
2億5千万という大金なのでまともに借りれるとは思っていませんでしたけど、この店のオーナーらしい人は言いました。
「で?担保はどうするの?」
と・・。
「担保?」
いるの?当たり前だよね大金だし。
目の前にいるのは妖艶な女の人、露出的な服装をしており非常に見る場所が限定される人だった。
「そ!!た・ん・ぽ。まさかとは思うけど担保もなしにお金を貸すような奴がいたと思ってましたなんて言わせないよ?まぁ、ないんならお帰り願うまでさ」
僕は困り顔でグラブを見る。
しかし横にいるグラブはというと・・。
我関せずという顔で女オーナーの後ろにいる屈強な男達に色目を使っていた。
こ、この元ハゲぇぇ!決めた・・今度敵になったら毛根だけを集中的に狙おう。火を使える人を探すか雇うかして毛根を狙い撃ちしよう、うん!そうしよう。
「担保ってどんなものですか?」
「何も知らないのかい?困った子だね。そっちの男色家は保護者じゃないのかい?」
こいつは将来僕が毛根を死滅させる予定の奴です。
「すいません。コレが保護者とか冗談でもなしでお願いします」
「なんだいそれは・・とりあえずだね、非合法の方法で金を借りようって言うんだ、借りる金額に対してそれ相応の物をこっちに提示するとかしてもらわないとと取引はないたたないんだよ。まぁ他の方法もあるけどね」
2億5千万もの大金に値する品・・僕の剣・・はたぶん価値はあるけど見る人がわからなければただの骨董品だ。僕の持っている品でそんな大金があるとは思えない。
あ・・優勝賞品の白のダンジョン石は!・・ってあれ2億もするのかな?
そんな事を考えているとハレンちゃんが手をあげて質問をした。
「聞きたいのです」
「なんだい?」
「他の方法とはなんなのです?」
「いい話じゃないよ?小娘達には特にね」
「教えるだけ教えて欲しいのです」
「じゃあ、言うけどね、簡単さ。自分を担保にするんだよ。これからの人生をね。あんた等若いんだ、これからの人生を売りなよ。2億5千万だったか?まぁあんた達器量は良さそうだし元は取れるだろうからそれなら貸してやるよ」
僕男なんですが?いや、そういう問題じゃないか。
つまり奴隷みたいなものかな?当然却下。
「わかったのです。でもハレン達はこれから絶対にやることがあるので担保はハレンがなるのです」
「ハレンちゃん!?」
何を言い出すの!?
「ダメだよ、2億5千万だよ?アンタ1人じゃとてもとても、返せない場合こっちが赤字だよ」
「これでもなのです?」
そう言ってハレンちゃんは普段は絶対取らない白い外套をその場で脱ぐ。
「ちょっとハレンちゃん!」
「こ、これは・・アンタ・・なんだい?いや獣人?でもこんな獣人見た事は・・聞いたことがある希少種だってのかい?」
「そのような者なのです。ハレンのような獣人は高く売れると聞いたのです。借りたお金を返せない場合は貴方に売買の伝があればハレンを売れば十分に元が取れるのではないのです?」
「そ、そりゃ白銀に光る色をした猫の獣人なんて・・元どころかお釣り・・いや大儲けだ・・ゴホン!」
そう、ハレンちゃんの毛色は日の当たり方によっては光って見える。
「猫・・違うのです」
ハレンちゃんは小さい声で否定した。
「はははは!わかった!こんな珍しい種族の子が担保ならこっちから喜んで取引させてもらうよ!利子は2000万だ!返済期限は14日希望だったね?取引成立でいいかい?」
「いいので・」
「ダメ!!」
僕は大声で叫ぶ。
ヒルマさんを救う為でもハレンちゃんが犠牲になっては意味がない。
「美紅様、心配してくれるのはいつも嬉しい限りなのです。でもこれしか方法はないのです。それにこれからまだ美紅様には動いてもらわねばならないのです」
「それでも・・」
「前にも言いましたがヒルマさんはハレンの恩人なのです。ここでこうしなければハレンは村の者達に顔向けができないのです。それになのです、美紅様がヒルマさんを取り戻してついでにお金を返してくれれば何の問題もないのです。ハレンは美紅様を信じているのです。疑った事は会ってから1度もないのです」
「・・・・・・」
僕はそれを聞いて黙ってしまった。
「取引成立なのです。早くとお金を貸して欲しいのです。ハレン達には時間がないのです」
「ええ、わかったわ。子猫ちゃんにはここにいてもらうわよ。赤い子も心配しないで、この子は返済期限が来るまでは客人扱いだから。まぁ期限過ぎたら違うけどね」
女オーナーがそう言うと部下が大きめのケースを2つ持ってきた。
そこには見たこともない金額が入っていた。
2億5千万、僕はそれがちゃんと入っているのを確かめると出口に向かう。
ハレンちゃんを残して。
「美紅様、ハレンは祈る事しかできなくなりましたがお体だけは気をつけて」
「ハレンちゃん・・全部終わったら好きなだけ匂い嗅いでもいいからね」
「はいなのです!でもハレンだけじゃ贅沢すぎるのでヒルマさんもほんのちょっとだけ嗅がせてあげてほしいのです」
「うん、約束する。じゃあちょっとだけお別れだけど行ってくるね」
最後にハレンちゃんは僕のそばに寄る。
そして僕の背中に向かって小さな声で喋るのが聞こえた。
「アミー、美紅様と疎通できる貴方ならわかると思うですがヒルマさんとハレンは美紅様の元を暫く離れなければいけなくなったのです。だからヒルマさんとハレンに変わって美紅様を頼みたいのです。どうかよろしくお願いするのです」
ハレンちゃんは僕に聞こえているのがわかっていても背中に引っ付いているアミーに話しかけていた。
「任せろ」
あれ返答が疑問系じゃない?空気を読んだのかな?
短い返事でハレンちゃんにだけ聞こえる声でアミーが答えるのがわかった。
「美紅様ご武運を」
「うん」
そう返事をして僕は店を出る。
「グラブさん・・貴方、こうなる事をわかってましたね?」
「ええ、半分ね。貴方が借りる金額と同等の品を持っていない場合はあの獣娘が身代わりになるしかないと思っていたわ。文句ある?」
「いえ・・別に」
「そう、なら良かったわ」
「でも次このような事がある場合は先に言ってくださいね。ヒルマさんを無事連れ戻すのに綿密な計画が必要でそれに貴方の目的も詰め込んだのはわかります。貴方の作戦に乗ったのは僕達です。でもこれから説明なしだった場合は考えを改めさせてもらいます」
「そうね。そろそろ教えてあげるわ。貴方1人になったことだしね」
いや・・2人だけど?未だに背中にアミー引っ付いてるけど気付いてない?
確かに外套の中だし小さいから突起も出来ないし気付かないのも無理はないけど・・。
グラブほどの人物気付かないとは思えない、気配を感じる!とか言って気付きそうだけど。
まぁ、気づいてないなら別にいっか、アミーには静かにするようにお願いしておこう。
しかし・・僕の腰に下げている袋の中身がかなり減っている気がする。
飴袋(アミー用)に頻繁に手を伸ばして勝手に食べているようだった。
まぁ・・いいけどね。あとたまに音は小さいけどバリバリって聞こえるですけど・・飴は舐めるもので噛み砕いちゃダメだよ。
「とりあえず砦に戻る道すがら説明するわ。予想より早くお金も用意できた事だしね。2日とは言わずすぐにでもって言えば良かったわね」
「わかりました」
僕と背中に引っ付いているアミーとグラブは来た道を引き返す。
そして再び砦に戻っていた。
そして先ほどの様にグラブが兵士に話しかけると今度は簡単に通される。
さっきの部屋で待っていると驚いた事に笑顔の監視長が入って来た。
「もう金を持ってきたのかね。いやーそれにしても面白いものを見せてもらったよ。君の仲間にあんな奴がいたとはな、あの男は凄いな」
「あの男?もしかしてスネッツさんですか?」
「ああ、アレなら君の仲間には聖堂の奴等は手出しできんよ。それにこれでこっちにも理が出来た。先ほどの計画よりスムーズに君達の要求の2週間奴等をここに止める事ができるよ」
「よくわかりません、一体何があったんですか?」
「知らないのか?本当に?」
「はぁ?」
「奴が隠していたのか?いいだろう。こっちへ来い。奴等が常に監視すると言い出したのでこっちも監視を置いているがお前達を見られるわけにはいかんので遠くからになるが隣の通路からならギリギリ見えるだろうからな」
監視長はそう言って隣の塔のある部屋に指を刺す。
そこには不思議な物が見えた。
「・・なんですか?あれは?」
「やはり知らないのかね?」
「へー、あれは結界像ね。にしてもまだ生き残りがいたなんて驚きだわ」
「お前は知っているようだな。我々も初めて見たんだが素晴らしいな」
「結界像ってなんですか?」
「貴方が知らないのも無理ないわね、忌み嫌われた一族の御技よ。確かむかーし呼んだ文献でこんな感じに書かれてたわね『我石になりて何者をも拒む者なり、縛る者は我、縛られる者も我』だったかしら」
「意味不明なんですが?」
「馬鹿なの?わかる努力をしなさいな。あるその一族が特殊な魔法?を開発、そしてそれを自らの体に込めてその魔法を技に変えて、その技しか使用できないようにする事によって特化した者へと変化した一族よ」
馬鹿で悪かったな。僕は馬鹿では・・あるかもしれないけどこっちの知識が少ないだけだ!たぶん。
「それであの状況ですか?」
僕は馬鹿にされたのでイライラした口調になって聞き返した。
ここから見える小さな部屋は驚くことが起きているように見える。
一枚の絵の様に見えるのだ。
男の石造が1体これはスネッツさんだ。
彼は座った体勢で石のように変化しまったく動いてないように見える。
そしてその近く、1メートルも離れてない場所に聖裁部隊の鎧兜を被った青い鎧の人がいる。これはヒルマさんだろう。
しかしヒルマさんだろう鎧兜を被った物もまったく動いていないのだ。1ミリも。
もう1人ヒルマさんを監視していたのか聖裁部隊の隊員だろうか?ヒルマさんの手前で完全に固まっていた。
そして一番驚く事が、そこが異常だとわかることがある。それは弓矢。
浮いているのだ。
おそらくスネッツさんに放たれたモノだろう。
それが刺さる前に50センチほど手前で浮いているのだ。
ここから見るとまるで絵のように見えてしまう不思議な光景。
「面白いだろ?あの弓の位置までは近づけるのだよ。しかし弓を触ったらまったく動かないのだ。そしておそこから先は行く事ができない、侵入できないのだ。スネッツだったか?あの男の言うとおりに私はあの男がヒルマに近づける隙を作ってやった。お前達の仲間を救出するフリをしてあの状況に持ち込んであの様だよ。あの弓矢からあの男の方向2メートルは完全に固まっている。あの場所に入ることすら不可能だ。正に結界だよ」
「凄いわね~。でもあの一族も聖堂からは危険視されてた筈だけど・・まぁでもあの技が本当に文献通りなら10日以上はあのままよ。あの技は効果が切れるのも待つしかない。今だ突破した者はいなかったらしいって書いてあったわよ?全てを拒む業ってああいう意味だったのね。自分の正体を晒してまであんなことするなんてなんていい男なの。惚れちゃいそうよ」
「スネッツさん貴方は約束を守ってくれました。必ず僕もヒルマさんを救いますのでそのまま頑張って下さい」
そしてグラブが貴方に惚れてしまったかもしれません、ご愁傷様です。
「とりあえず聖堂の奴はスネッツという者が現れたと言う事で私を疑ぐるだろうな」
「え?大丈夫だったんですか?」
「まったく問題ないな。むしろこっちから言ってやるよ。この様な奴に狙われるとは一体お前は何を運んでいるんだ?あの男が何故このような場所でお前を狙いこんな状況になったのだっと難癖をつけてやるわ
。これでは通行許可を出すわけにもいかないし、この状況が何とかなるまではこの砦からは出ることは許さんとな。これで奴の術が14日以内に解けたとしても奴を約束の期間までは余裕でここに拘束できるよ。本当にまったく面白い」
「そうですか、安心しました。それで監視長殿、これは約束の物です」
「ほう、早いな。では約束を守るとしよう。君達はどうするのかね?食事ぐらい出せるが?」
「せっかくですが気持ちだけ貰っておきます。僕とそこの元ハ・・いえグラブはやることがあるので」
「今貴方失礼な事言いそうになかった?」
「い~~え」
「そうかね。残念だが仕方ない。では14日後に・・いやもう13日になるな。その時に会おう。来るのだろう?」
「ええ、もっと早くしたいですが必ずここに戻ってきます」
そして僕とグラブは時間が止まったようなスネッツさんとヒルマさんを残して砦をあとにする。
「それでさっきの話、本当に実行するんですか?それで全部うまく行くんですか?」
「信じると決めたんでしょ?だったら信用してもらいたいものね~」
「信じるしかないって状況なんですけどね」
「どっちでもかわらないわよ」
「そうですね、その通りです。今の僕には選べる権利はないですしね」
「じゃあ行くわよ。それと野宿になるけど距離をとって寝てね。私は女が近づいたりすると鳥肌がたったり触られたりなんかしたら蕁麻疹がでるのよ」
「蕁麻疹を出させてやりたいですけど僕もグラブさんの近くで寝ると気持ち悪くて吐きそうになりそうなので好都合なので距離を取りたいです」
「失礼な小娘ね!!!」
どっちがだ!あと僕は男だら蕁麻疹でないと思うよ?まぁ出なくてもさっきの本当だから近づかないけどね。
「大体この距離でも貴方に近づくと鳥肌がたってるって言うのに」
待って!男だから!なんで女性と同じ現象が起きてるの!
気に入らない事もあったけど、この後結構な距離を移動した。
今日はこの世界に来て最悪の1日だった気がする。
一気に仲間が僕のそばから離れていって・・走ってばかりだった日。
野宿では何故かグラブが料理をして食べろといってくる。
自分で作るからいいと言ったけど結局食べさせられてしまった・・普通に上手かったのが悔しかった。
なぜオス男は料理が上手いのだろうとその夜思った。
こっそり残して置いてアミーにもあげたけど上手いと食べていた。
グラブの話では明日からが本当の正念場になるらしい。
僕は気分的になかなか寝付くことが出来なかったけど無理矢理にでも目を閉じた。
アミーがいてくれて本当に良かったと思った。考えてみれば僕はこの世界に来て本当の意味で1人になった事は一度もなかったのだ。
もしアミーが居てくれなかったら本当に1人になっていた所だった。
そんな事を考えていたらいつの間にか眠ってしまっていて起きた時にはもう辺りは明るかった。
「あら?やっと起きたの?」
「・・おやすみなさい」
「なに人の顔見て2度寝を決め込もうとしているのよ!」
「起きたら目の前に汗だくで下着1枚の変態がいたら普通そうしますよ」
しかも下着がピンクだ!
あとなんでブラジャーつけてるの!
「トレーニングよ!トレーニング!失礼ね、この美しい肉体を保つには必要な事なのよ。ああ・・朝日を浴びて光る私の汗、芸術だわ」
ゲイ術?なんの術ですか?
「気持ちの悪いこと言ってないで服を着てください。もし何も知らない一般人に見られたりしたら石投げられますよ?」
「投げられるわけないでしょうが!」
朝起きてショッキングピンクの女物の下着を着た変態がいたらいたら僕なら投げるよ?
「それより行きませんか?時間が惜しいです」
「そうね、じゃあ昨日に引き続きついてらっしゃい」
そう言って僕はグラブの後ろについていく。
「って何で貴方だけ騎獣に乗ってるのよ!」
「え?だってスネッツさんあの状況で頑張ってますし騎獣が余ったんですよ。乗らないと勿体無いじゃないですか」
「その奇獣は元々私のじゃない!よこしなさいよ!」
「何言ってるんですか?この騎獣の持ち主を殺して強奪したくせに、この騎獣も飼い主を殺した人には乗られたくないって目で訴えてますよ。変な言いがかりつけると毛根引っこ抜きますよ?」
「怖い脅ししないでよ!いいわよもう、自分で走るわよ!」
「最初からそう言えばいいんですよ。さあ、早く案内して下さい」
「この小娘・・また敵になったらお前の毛を全部燃やしてやるからね」
こっちのセリフだ。遠くない未来に毛根戦争が始まる気がする。
「ここよ」
グラブに案内された場所それは小さな建物だった。
石造りの一軒家というのが正解だろう。
しかし疑問はなぜこんな何もない場所にこんな建物があるのだろう?と思わせた。
「ここがグラブさんが言っていた場所なんですか?はっきり言ってそうは見えないんですけど?」
「それはそうでしょうね。ここは普通の一般人にはただの絶対入れない建物。ここを通る者の目印、道標ぐらいにしか思われてないでしょうからね」
そう言いながらグラブはその建物にある入り口。
石の扉に向かっていく。
「これをこうして・・」
グラブは石造りの扉の取っ手口に何かをかざすと・・。
ガガガガガ・・と石の扉が横開きに自分から動いて開いた。
おお~、自動ドア!
「どお?驚いたでしょ?この扉は資格を持ってないと開かないのよ~」
「資格ですか?元ハゲとかですか?」
「違うわよ!これよこれ!」
そう言ってグラブが見せたのは1枚の薄い紙の手形だった。
「これはなんですか?」
「聖堂と冒険者組合、まぁ商会にもある場合もあるかしらね。発見されている危険度の高い場所に移動できちゃう魔方陣の使用許可書よ。中々手に入らないのよ?冒険者なら相当高ランクで申請しなきゃ貰えないんだからね。貰えてもこの手形にもランクがあるからいける場所が限られたりするのよぉ」
「へー、よく持ってましたね」
「うふふ、聖堂から離れる時にちょっとね~」
「・・・・泥棒」
「人聞きの悪い言い方しないでよ!役に立ったでしょ!?まったく~それにこれ色々な場所で役に立つのよ」
「まぁいいです。貴方がどんどん罪を重ねようといつか償ってくれれば問題ないです。ちゃんと頭を丸めて囚人服でも来て労役に服して下さい」
「捕まるのはいいとしてなんで頭を丸めるのよ!貴方どうしても私をハゲに戻し・・てか捕まらないわよ!私はね、犯罪をしているつもりはないの!おかしいのは私じゃなくて世の中の方なのよ!アンタの様な奴には理解不可能だと思うからいちいち言わないわ」
可笑しいのはお前の頭だ!というツッコミはしないでおこう。
「それでこの魔方陣を使えばいけるわけですね?」
「そうよ、本当は聖裁部隊から今から行くダンジョンの情報を手に入れたし、私一人で行くつもりだったんだけどね。貴方なら戦力的にまぁ足手まといにはならないと思うしね」
「それはそれは・・ありがとうございます」
「じゃあ、行くわよ」
はい、と返事をすると僕達は魔方陣に入る。
後ろでは建物に入るとゴゴゴゴゴゴと扉が閉まる音がした。
「準備はいい?」
「さっさとして下さい」
「はいはい、で・は!ジャバル遺跡!ジャバルダンジョン!!」
グラブがそう大きな声で叫ぶと魔方陣は眩い光を放った。
次の瞬間、僕達はsの光に包まれる。
僕は眩しさに目を瞑る。
そして・・目を開けた時には薄暗い場所にいた。
視界に入るのはボロボロの建物。
人が作ったと思われる建造物の中にいた。
「あれを見て」
グラブが指差すと立派な石柱の向こうに鉄の扉があった。
「アレが目的の・・ダンジョン?」
「ええ、普通の冒険者が入ることが許されていない場所。この手形を所持した者と一緒でないと石柱の場所で弾かれるのよ」
「随分厳重な警備ですね」
「それだけ危険なダンジョンって事よ。低ランク冒険者や組合に所属してなくても腕に覚えがあると付け上がった者が勝手に入って死なないように管理されているってことよ」
「ふーん、じゃあ入りましょう」
「ちょっとぐらい怖がりなさいよ~面白くないわ~」
「時間がないんですよ。グラブさんこそまたハゲるのを怖がってください」
「ハゲないわよ!今度こそちゃんとケアを怠らないでしっかりとフサフサで老けていくんですからね!」
「未来を変えるのは並大抵じゃないんですよ?舐めないでください」
「アンタ・・絶対殺すわ」
「死ぬのは貴方の毛根ですよ」
「いい加減しろクソガキが!!!」
「素が出てますよ?うるさいのでさっさと行ってください」
「はあはあ・・怒ってはダメよグラブ・・怒ってストレスを溜めればそれだけで毛根に負担がかかるのよ・・若返る前に聖堂に勤めていた時の苦労で心労が溜まって額が広くなってきたことを忘れたのグラブ・・深呼吸よグラブ・・第2の人生は失敗しないのよグラブ・・」
グラブは怒りを押させる為に呪文のように自分の過去の嫌な思い出を語り自分に言い聞かせている。
「い、行くわよ!クソ小娘」
「はい、ハゲブさん」
「誰がハゲブじゃゴラ!!!」
よし、どんどん怒らせてグラブの頭皮に負担をかけよう。
地道な努力もいつかは実ると信じて僕は誓う。
「何人も冒険者がすでに入っているようね」
ダンジョンの入り口の扉の前に立ってグラブは言う。
「わかるんですか?」
「私ぐらいになればちょっと見ればここ数日ぐらいの痕跡ぐらいわかるのよ」
「へー、どの位の人がいるんですか?」
「そこまではわからないわよ」
「役立たずですね」
「別に人数なんていいじゃない!さっきから失礼すぎるわよアンタ!」
「いや、大問題ですよ?先客がいたら僕の目的もグラブさんの目的は何か知らないですけど困難になりますよ?先越されるかもですし」
「それはあるわねぇ・・よし、ちょっとだけ最初から本気を出す事にするわ。貴方も覚悟しなさい」
「後ろに気をつけてくださいね」
「どう言う事!?貴方何するつもり!?」
「冗談ですよ」
僕は笑顔でそう答える。
「まったく・・いくら私が美しいからって・・」
「ええ・・眩しいです。元ですが」
「む、む、無視よグラブ・・貴方はもうフサフサよ」
暗示など無駄無駄!
などとグラブを煽りながら僕はグラブが開けた扉をくぐる。
「な、なんですか!これは・・」
「驚いたようね、見事でしょ~」
その通りだった。
荘厳、その言葉が似合う光景だった。
外の壊れかけたボロボロの遺跡が現役だった場合こんな感じなのだろうと思わせるほどの作りだった。
「これダンジョンですか?」
「もちろんよ。驚くのも無理はないわ、ここはかなり昔に発見されたのに未だ未攻略のダンジョンの1つ。冒険者組合では危険指定されているダンジョンなのよ。作りが素晴らしいのは年月のせい。当然見てわかるように主がいるわ。その主が時間をかけてダンジョンに魔力を注ぎ込んでここまでの状態にしたわけよ」
「なんかここまで凄いと入るのが気が引けますね。不法侵入してる感じになりますよ」
「何言っちゃってるの?まさに私達は不法侵入者、招かざる者なのよ。まぁ主の方はどう思ってるかわからないけどね」
「主ですか。どんな者なんでしょうね~」
「さあ?正直わからないわね。見た者もいるらしいけど全員五体満足で帰ってないらしいわよ。わかる事は相当な知能を持つ奴って事だけよ~」
ん?なんかグラブさんの声が裏返っている気がする、また何か隠してる?
「高い知能ですか、では行きますか」
「そうね、まず私が先に行くわ。付いてらっしゃい」
「わかりました。ただ暗い場所に入ったらちゃんと目印の為に自前の明かりを照らして下さいね」
「じ、自前って何の事?わ、私はそんなのもう持ってないわよ」
「もうって事は過去は持ってたと認めるんですね」
「私の頭は松明でもランプの光でもないんだよ!!本当にいい加減にしろや!しつこいぞ!若返ってフサフサだろうがクソガキが!!」
「過去はね・・消えないんですよ」
「ええ・・そうねその通りよ、日々減り続ける毎日に何度涙したか・・って言わすなやゴラ!」
面白いなこの人。
過去に毛根はないが遺恨はあるので遠慮する必要がないのがいい。
「怒るとハゲますよ?」
「はあはあ・・だったらその口閉じてなさい」
「断るっ!あ・・暫く閉じます」
「どうしたのよ急に・・ってそう言う事ね」
僕が見ている方向を不思議に思いグラブはダンジョンの先を見る。
そこには丁度魔物がこちらに向かってまっしぐらに突っ込んで来るところだった。
「退いてなさい。言ったとおり私がやるわ」
「後ろで応援してますので頑張って下さい。辛くなったら言って下さいね?ハゲましますので」
「後半の部分の単語になんか力が入ってなかった?」
「イイエ、疑りすぎですよ。それより前を向いたほうが良いんじゃないですか?もう来ますよ」
「まったく・・」
そう息を漏らしてグラブは自分に向かって来る魔物を睨む。
片方の腕を前に出して構える。
見覚えがあった。
これはスラビーさんとまったく同じ構えだった。
「見てなさい。貴方が私に勝ったのはまぐれだとわからせて戦慄させてあげるわ。そもそもあんな何をしたかわからない勝ち方私は認めてないけどね」
そうですかー。
そして毛むくじゃらで異様に足が長くバッタのように跳ねて走ってきた小型のオラウータンに似ている魔物がグラブに襲い掛かる。
グラブはその突進に合わせて手刀を繰り出そうとした・・が。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
魔物達はあと数十センチでグラブの間合いに入る寸前で180度回転して猛スピードで戻っていった。
魔物達も気持ち悪かったのかな?気が合うかもしれない。
「しっかりと見せてもらいました」
「嫌味のつもり!」
「い~~~~え・・全然」
「なんなのあの魔物達!たぶんドッキュルって魔物だと思うけど普通ここまで来て逃げるかしら!人のやる気を返しなさいよ!」
グラブは出鼻をくじかれたので怒っている。
「それにしても凄いでね。戦わずに勝つなんて、魔物が一目散に逃げましたよ。魔物が苦手な物とか嫌いな物持っているんじゃないですか?」
「持ってないわよ!いや待って・・持ってるわ!持っているわよ!それは私の美しさね、魔物さえも私の美しさに嫉妬して去っていく。なんて罪な存在なのわ・た・し!」
「あの魔物毛むくじゃらでしたし触ると感染と思ったんじゃないですか?」
「人の話を聞かずに変な事言ってんじゃないわよ!感染ってどういう意味よ!私が何かの病気だとでも言うのかしら!」
「ほら~魔物も抜けたくない的な?」
「そんなわけねーだろうが!!」
はあはあっと息を荒げて怒るグラブを適当にあしらって魔物が逃げた方向を見る。
なぜ魔物は逃げたのか、考えてもわからなかった。なので僕はうるさいグラブを無視して先に進む事にしたのだった。
「にしてもグラブさん」
「・・・・・なによ」
「まったく魔物が襲ってきませんね。もう地下5階ですよ。魔物は現れるのに全部逃げていくんですもの。やっぱりグラブさん呪われているんじゃないですか?」
「失礼なこと言うんじゃないわよ!」
最初に魔物に襲ってきた魔物が逃げてから大分進んで地下5階まで来ていた。
あれから何度も魔物に遭遇したのに全然襲ってこないのだ。
最初と同じでこっちを警戒して逃げる始末。
グラブが絶対最初は私が戦ってやると言って前衛に出ているのだけどまったく肩透かしを食らっている状態だったりする。
「これグラブさんがずっと前にいて進んでくれれば簡単に目的地までいけるんじゃないですか?魔除け的な」
「魔除けって何よ、それになぜ魔物が避けていくかはわからないけどいつまでもこんな事続くわけないでしょ。にしても確かにおかしいわね、前に来たときは上層とはいえこんな感じじゃなかったのに」
「え?来たことあるんですか?」
「ええ、若い時に・・いや今も若いけどね。強くなる為とか言われて修行でここに連れてこられてね。その時は地下24階まで行ったわ。3人組だったけどね」
「へー、大変だったんですね。それが原因だったんですか?」
「何の事!?何の原因!?貴方は私をどうしたいの!?」
「いやだなー別に深い意味はないですよ。でも24階まで行ったのですよね?じゃあ、そこまでは安心ですね」
「馬鹿なの?もう40年近く前よ?ダンジョンってのは主によっては常に成長するのよ、だからある程度までわかっても私の知識なんて役に立たないわよ」
「役立たずですか。で?いつからあんな風になったんですか?」
「役立たずって言わないで!あんな風って何!?」
「さあ?なんでしょうか?」
「まあ・・いいわ。このまま魔物と戦わなくていいなら目的は楽になるしね。とりあえず覚えている道筋で進みましょう」
「はい、宜しくお願いします」
そして僕達はさらに下の階まで進んでいった。
後書き物語は読み直してからなので1回お休みさせていただきます。
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