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ダークエルフ

ストックがががが!(*´・ω・*)

僕は今1人でいた。

いや正確には2人で1人の状態だけど。


それにしてもここに入ってから血の臭いしか嗅いでいない気がする。

視界に移るのは石造りの廊下。

非常に綺麗な作りをしており職人のこだわりが感じられるほどの作りだった。

そんな場所に場違いとばかりに襲ってくる物達。

僕はそんな物達から自分の身を守るため、目的の為に前へ前へと進む。


そして後ろから暢気で不愉快な声が聞こえる。

仲間は僕1人だけど今ここには連れ・・がいた。


「ん~、素晴らしい景観ね。こんな場所じゃなかったら別荘にしたいわ~、そう思わない?」


「じゃあ、貴方だけここで残って暮らして下さい。永遠に」


「嫌な言い方するわね~。一応ひと時だけど私達はパートナーなんだけど?二人っきりなんだしちょっとは仲良くしようと思わないの?」


「そうでした、でも仲良くは嫌です。僕は確かに貴方を信用するとは言いましたが、まだ貴方は何かを隠している気がしてならないので」


「あらあらあら、私のような裏表のない人間を捕まえてなんて言い草なのよ」


「どの口が言いますか・・ないのは髪の毛だしょ」


「今は!!あるわよ!あら、またお客様よ。今度は私が貰うわね~」


そう言ってその人は前へと進んでいく。

それを見送るように立っていると後ろ、背中から声がかかる。


「美紅平気?」


「ん?心配してくれるのアミー、大丈夫だよ。コレしか方法がないなら僕はやり遂げるよ」


「オレも頑張る」


「うん期待してるよ。でも本当に君がいてくれて良かったよアミー」


「そうかそうか」


アミーは僕のその言葉が嬉しかったらしく僕の背中に引っ付きながら僕の頭をペシペシ叩いた。

最初は何故僕の頭を叩く・・と思ったが今の状況でのこのアミーの行動は癒しになっていた。


なぜ僕が1人で不本意な人とこんな場所にいるかというと・・、


それは遡る事10日前の出来事だった。




--------------------------------------------------------------------------------


キューベレでの大会で優勝。

色々事件に巻き込まれたりしたけどフリスさん達と別れて僕達はアミーを加えて新たな目的に向かっていた。


「アミーちゃんアミーちゃん!ハレンが特別に取っておいた秘蔵の飴をあげちゃうのでその場所をちょっとだけ変わっていただきたいのです」


僕の横を平行して歩いていたハレンちゃんはアミーにそんな提案をしていた。


「ヤダ」


即答で断れていた。


「そんなぁぁなのです」


ところでハレンちゃんその場所ってもしかして・・。


「子猫、アミーを飴で釣って場所を変わってもらう浅知恵は失敗したのは笑えるが、アミーのいる場所は美紅の背中だぞ?ハレンは美紅におんぶをしてもらいたいのか?」


「い、いけないのです?」


「いや、それは先に美紅にも了承してもらわないとダメだろう」


「美紅様はお優しいので聞かなくてもしてくれるのです。ハレンと美紅様の仲なので、ヒルマさんはたぶん聞いてからじゃないとダメだなのです」


「なんだと!っと普段の私なら怒るところだがハレン、もしアミーが場所を変わってくれて美紅が優しいからオッケーを出してもハレンは背負って貰えないぞ」


「何故なのです??」


「重いからだ、美紅が潰れる」


「ニャッ!?ヒルマさんだけ!!!には言われたくなかったのです!」


「事実だろうが子猫!そもそもお前は肩車やおんぶをしてもらう側ではなくする側だろうが!怪力子猫!」


「ハレンは箸より重いものは持てないと何度言ったら・・」


そのままいつもの言い合いに突入するかと思ったがハレンちゃんは何かを考えるように言葉を止める。


「なんだ子猫?図星を突かれて言い返せないのか?」


いつもなら言い返せないぐらいならヒルマさんに掴みかかってさえ行くハレンちゃんが何故か止まったのでヒルマさんも不思議に思ったらしい。

しかしハレンちゃんが次にとった行動は予想外だった。


「み、美紅様、アミーちゃんをいつも背負ってお疲れでしょう?だからハレンは美紅様をおんぶさせてくださいまし」


その場に急にしゃがみこんでそんな事を言い出したのだった。


「な、何を言い出してるのだ・・子猫」


「ふふん!ハレンは美紅様の為に常に行動するのです」


「どこがだ・・お前いつも箸より重いものを持ったことがないと言ってるじゃないか」


「美紅様は箸などより軽いのです!それともヒルマさんは美紅様が重いと仰るのです?重いのはヒルマさんだけで十分なのです!」


「私は重くないと言っているだろう!それに美紅がいくら軽そうでも箸より軽いわけないだろ!」


・・・その通りです。


「美紅様の重さは羽毛1枚ぐらいなのです!」


ないから・・そんなのだったら僕風に飛ばされてとっくにここにいないからね?


「怪力のハレンならそう感じるかもしれないな」


「怪力じゃないのです!ささ、美紅様、遠慮なくハレンにお乗りください」


・・・ゴメンねハレンちゃん、遠慮するよ。一応僕男なんで自分より小さい女の子に肩車はプライドが・・いやプライドとかあんまりないけどそれ以前に恥ずかしいしね。


「ほら、美紅も嫌がっているぞ」


「嫌がってなどいないのです!きっと美紅様は次にヒルマさんが羨ましがってハレンの上に乗りたがってハレンが潰れてしますのを心配してくれているのです!」


「誰が子猫に乗りたがるか!あ!」


2人が争っている隙を狙ってハレンちゃんが手をあげた瞬間、手に持っていた飴をアミーがひったくったのだ。そしてそのまま瞬時に口の中に・・。


「ハ、ハレンのおやつが!!」


「アミーにいずれあげる用だと思っていた飴はお前のおやつだったのか・・・」


ヒルマさんが飽きれる様にそう言った。


「うぅ・・キューベレの有名店で買ったのです・・1日50個限定だったのです」


しゃがんでいたハレンちゃんはそのまま地面に泣き崩れた。


「アミー・・ダメだよ。そういうのは泥棒って言うんだよ?」


「ハグハグハグハグ」


アミーはたぶん聞いてはいるが都合の悪いことを無視する傾向があるのでそのまま飴を取り返されると思ったのか噛む勢いで夢中に舐めていた。


「・・・・ほら、限定ではないが私の飴をやる。アミー用だがあっちはアレで満足しているからいいだろ」


「ヒ、ヒルマさん・・」


ガバッとハレンちゃんがヒルマさんに抱きつく。


「コラ!離れろ暑苦しい!私に抱きついていいのは美紅だけだ!」


「飴は感謝して貰うのです!ですが美紅様がヒルマさんに抱きつく事は永遠にないので変わりにハレンが抱きついてあげるのです!」


「子猫、感謝するのが普通なのにまだそんな事を言うか!」


ヒルマさんは抱きつかれて身動きが取れないらしく、必死にハレンちゃんを剥がそうとしていた。

その時だった。



その人は現れたのだった。



「ヒルマ!ヒルマ!ヒルス・カルマーズ・ベルナルガ・サナリーマ!やっと見つけたぞ!」


低い男の声だった。

誰?あ!これヒルマさんのフルネームだ!

というか久しぶりに聞いたし、誰だか知らないけどよく全部覚えてるね!


「何故貴方がここにいる?」


どうやらヒルマさんも知っている人のようだった。


「よくその言葉が出るなお前は、定期連絡さえしなくなったクセに。いくら我が集まりが自由すぎると言っても消息ぐらいは連絡するのが当たり前だろう?オストピアの件の報告後お前の消息が消えてずっと探していたんだ」


「それは悪かったな。だが貴方も言ったとおり私達は束縛されない集まりだろ?じゃあ別に気にする事じゃない」


「相変わらずだな。そんなだからお前は協調性がないと言われるんだ。まったく鎧ばかりじゃなくて心まで隠さなくてもいいではないのか?」


「余計なお世話だ、貴方に私の心情や素性を話す必要がない。貴方だってそうだろ?それとも喧嘩でも売っているのかな?それより私に用があったのでは?」


「おい、物騒な言い方は止めてくれ。オレがお前に敵うはずがないんだ。それよりだ、まずその一緒にいる子供3人は誰だ?絶対誰とも行動しなかったお前がどういう風の吹き回しだ?お守りのバイトでも始めたのか?」


「話を聞いていなかったのでもう一度だけ言おう。私の心情や近況を貴方に喋る必要はない。私達はそう言った集まりの筈だ」


「は~わかったわかった。とりあえずその子供3人に名前だけでも名乗らせてくれ。それが礼儀だろ?」


「勝手にしろ。すまない美紅、ハレン、アミー。この者は私のちょっとした知り合いだ。名乗るだけ名乗らせてやってくれ」


珍しく殊勝な態度でヒルマさんはそういうので僕達はまだ訳がわからなかったが反射的に了承する。


「では・・ゴホン!初めまして子供達、オレはそこにいるヒルス・カルマーズ・ベルナルガ・サナリーマの同志、いや知り合いでスネット・カール・ビーツと言う者だ」


へー・・またヒルマさんのフルネームを、愛称で呼ばれることを許されてないのかな?あと貴方もどれが名前なんですか?スネットさん?カールさん?ビーツさん?


「ご丁寧にありがとうございます。僕は美紅という者です。えっとスネット・カール・ビーツさん」


「ハレンはハレンという者です」


「アミー」


「礼儀正しいお嬢さん達だな。オレを呼ぶときはスネッツでいいぞ」


・・・どれも違った。


「スネッツ、私を呼ぶときはヒルマでいい・・だからいい加減何の用事でこんな所まで来たかを言ってくれないか」


「わざわざ来てやったのにその言い方はないと思うが、まぁいいだろう。しかしここではな」


そう言ってスネッツさんは僕達3人を交互に見た。

なるほど、思い出せばヒルマさんは出会った頃ある組織にいると言った。

たぶんその組織の人でヒルマさんに何か用事があるらしい、そして一応部外者である僕達がいるので邪魔ということなんだろう。


「ふぅ・・わかった。すまない美紅、察しのいい美紅なら彼が何者かわかったかもしれないが、ちょっと話を聞いてくる。少しこの辺で待っていてくれるか?」


「全然構いません。急いでないのでゆっくりでいいですよ」


「ハレンもあとで飴をやるから待っててくれ。アミーもな」


「ハレンもういらないのです!」


「いってらー」


そう言ってヒルマさんはスネッツさんという人と行ってしまった。


「美紅様、あの方は誰なのでしょう、知ってるのです?」


「えっとね、ハレンちゃんもヒルマさんから聞いたことあるでしょ?ヒルマさんが所属してる組織の事、ヒルマさん曰く、組織なんて言ってるけど協調性があんまりなくてただの同じ信仰を持つ集まりだって言ってたけどね。そこの人だと思うよ」


「・・・あ!確か女神様とは違うお方がいるかもしれないのでそれを信じてるというお話だったのです?」


「それそれ」


「女神女神」


「アミー頭をペシペシしないでね。そういえばアミーは何か信じているものとかあるの?」


そう聞くとアミーは暫く考え込んだ。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


長いな・・。


「・・・・・・青色!」


アレだけ考え込んでそれ!それ色だし!


「青色は僕も大好きな色だけどそれはなんか違う気がする。それにアミーは銀色が好きじゃなかった?変わったの?」


「好き銀色。信じている青色」


「なるほど、意味不明だね」


「ア、アミーちゃんハレンも青色好きなのでちょっと青色について語り合うのです。ちょっとこっちで一緒に・・」


そう言われてササッと僕の後ろに隠れるアミー。

そう、残念な事にハレンちゃんはまだアミーのトラウマの対象になっていた。


「うぅ・・アレさえなければ・・ディットが元インプの時のアミーちゃんを襲わなければ・・ハレンはアミーちゃんと親友コースだったのです」


しかしアレがなかったらアミーはここにいなかったかもしれない。

そしてディット、たぶん次に会ったら君は僕でなくハレンちゃんに殺られるかもしれない・・。


「それにしてもです。ヒルマさんとあのスネットさんは随分遠くまで行くのです。どんどん臭いが離れていくのです」


相当遠くに行ったのか姿はもう見えなくなっていた。


「そんなに?まぁ向こうにも都合があるんだろうね」


「ん?アミーどうしたの?」


後ろで隠れていたアミーが僕の外套を引っ張る。

不思議に思ってアミーを見るとアミーの白い肌が青くなっておりちょっと震えていた。


「変な感じする」


「変な感じ?どういうこと?」


「ハレンは変な事はしてないのです」


「いや・・ハレンちゃんじゃないと思うよ・・」


その時だった、アミーが急に首を捻り在らぬ方向を向いた。

ヒルマさん達が向かった方向だった。


「何?ど、どうしたの?」


「み、美紅様、向こうにたくさんの臭いが急に出現したのです!」


「向こう?ヒルマさんの歩いていった場所?」


「そうなのです!何かおかしいのです、どうなされますか?」


「・・・わかった。行こう!アミー行ける?」


何か不安を感じているアミーは嫌がると思ったが僕がそう言うと背中にしがみ付く。

すぐに僕達はセルマさんのいる筈の場所まで走り出した。

そして走り出してすぐに嫌な予感が当たった事がわかる出来事が起こった。

煙が上がった。雷が落ちたのだ。


「ハレンちゃん!ゴメン僕先に行くね!アミー振り落とされないようにしっかり掴んで!」


「ハレンの事はお気になさらず」


ハレンちゃんは亜人で幻獣種、普通の人間と比べるまでもなく恐ろしく速い。

しかし持久力では僕は敵わないけどこの距離なら僕の腕輪の力を発動させれば僕のほうが速かった。


僕は最初から腕輪の力を全力で発動。

もし誰かが僕を見ていたら残像すら見えないかもしれない速度で目的の場所へ向かう。


そしてそこで見たものは・・・。


焦げた地面に煙を上げている草花だった。

そして尻餅をついているスネットさんの姿だった。


ヒルマさんは・・いない。

僕は180度辺りを見渡した後にすぐに行動に出た。

スネットさんに掴みかかった。


「何があったんですか!ヒルマさんは?ヒルマさんはどこですか!?」


「き、君は?ああ、かなり離れていたのにどうやってこんなに早く・・」


「そんな事はいいんです!何があったんですか!?ヒルマさんは!!」


「つ、連れてかれた。意味がわからないんだ、何故あんな者達がヒルマを」


意味が沸かないのはこっちの方だ。

僕はスネットさんの服の襟を掴んで揺さぶった。


「もっと詳しくわかるように説明して下さい!いやそれよりヒルマさんは何処に行ったんですか!」


「あ、あっちだ!あっちに連れて行かれた」


スネットさんが指差した方向を見た。

行かなければ!


「美紅様!」


「ハレンちゃん、ヒルマさんがいない。よくわからないけど誰かに連れて行かれたらしい。僕はこのまま追いかける!」


「連れて?よくわからないですがわかったのです。この方はどうするのです?」


ハレンちゃんがスネットさんを指してそういう。


「その人に構っている暇はないけど・・ハレンちゃん頼める?」


「もちろんなのです。縛ってその辺の木に括り付けてから追いかけさせてもらうので美紅様はお先にどうぞなのです」


「な、何?オレは何もしてないぞ?何故そんな事をする!」


そんなスネットさんの声が後ろから聞こえたが僕はそれを無視して再び走り出す。


「ハレンはどういう状況かわからないですが、何か大変なことが起こったというのはわかるのです。とりあえずスネットさんはこの状況が解決するまで大人しくしてもらうのです」


「ふ、ふざけるな!私はヒルマの同志だぞ?こんな事をしていいはずが」


「ハレンには関係ないのです。ハレンの仲間はヒルマさんだけであって貴方ではないのです。今の時点で貴方は信用に値しない。それどころか会って間もない時点でこんな事が起きた時点で怪しさすらあるという事をお考えくださいなのです」


スネットさんは口をあけて何かを言いかけたが観念したように大人しく縛られた。


「出きるだけ早く戻って開放したあげるのです。ではハレンも美紅様を追いかけるのです」


「ま、待て!やっぱり連れて行ってくれ!ここに置いていかないでくれ!」


「い、急いでいるのになんなのです!」


スネットはハレンちゃんに告げる自分が気づいた事を。


そこの頃僕はまだ走っていた。

走りながら考える。

何故いきなりこんな事が起こったのか、なぜヒルマさんが攫われたのかを。

考えても仕方ないのはわかる。追いつけばわかるかもしれない。

それでも頭の中では考えてしまっていた。

そして考えはまとまらない内にそれを見つけた。


「追いついた」


このまま行けば数十秒で追いつける距離にそれはいた。

馬?ではない、何かの動物が走っている。

そしてそれに騎乗した集団。

4・・5・・6・・数はおそらく6。

ヒルマさん・・は・・いた!一番前の奴の後ろにうつ伏せになって運ばれている。


それを確認した僕はその集団の右側から大きく円を描くように前に回りこむように追い抜く。

そしてその集団の前に突然現れるようにして・・道をふさぐ様にして追いついた。


「全員停止!!」


一番前の者がそう叫ぶ。

急停止にも関わらず6匹の動物に騎乗していた者達は一糸乱れぬ動きで僕の手前数メートルで止まった。


ヒルマさんを攫った者達に追いつき止める事に成功した僕はすぐに口を開いて言った。


「はぁはぁはぁ・・1番前の人、後ろに乗せている人を返して下さい。会っていきなり物騒な事を言うようですが返していただけないならちょっと乱暴な手段を取らせてもらいます」

一番前の男は銀色の良く磨かれた兜と鎧を被った男だった。

あとの5人も同じ様な格好をしていた。そして最後尾にどこかで見たような旗をなびかせていた。


「君か、どうやったか知らないがよく追いついたものだ」


君?僕を知っているのか?

それよりヒルマさんは・・良かった・・鎖に巻かれて縛られているけど無事だ、気を失っているみたいだった。


「どこかでお会いました?僕には生憎ですが人攫いに知り合いはいないですよ」


僕がそう言うと目の前の男だけではなく後ろにいた5人までも大声で笑い出す。


「何が可笑しいんですか?」


「ひーうははは、失礼、失礼したね。君があまりにもおかしい事を、無知な事を言うからついね。いやそれとも本当に知らない可能性もあるのかな?騙されていた可能性が」


何を言ってるんだこの人達は?笑われたのは不快だけど僕のそんな感情よりも今は早くしなければならないことがある。


「どうでもいいので貴方達が攫った人を返して下さい。それともさっき言ったように力づくでもいいですよ?」


「どうやら本当に無知の類のようだな。こんなのと一緒にいるぐらいだしね」


「こんなの?」


「コレだよコレ。私の後ろにいるコレの事だよ」


男はヒルマさんを指してそう言った。


「先ほど私は君を知っている感じに言ったけどね、私が一方的に知っているだけなので不思議に思うことはないよ。それというのはね、私はキューベレで行われたあの大会に招待されて会場にいてね、そこで君を見たんだよ。決勝の君の試合は素晴らしかった、優勝おめでとうと言わせてもらおう」


「そんな言葉はいいです。貴方達は好きになれそうにないですし、人を攫った上にコレ呼ばわりしたりする人達が碌な人なはずはありませんし。それにいい加減後ろの人を返してくれませんか?」


「ふむ、君が強硬手段に出る前にこちらも確認しておきたい事がある。今回は優先事項がコレだったのでこういう方法を取ったがのだが君とこうして接触してしまっては仕方ない」


「何が聞きたいんですか?いい加減僕は我慢できないんですけど・・」


「落ち着きたまえ、では聞こうか。まず君は信仰は持っているかね?」


「ふざけているんですか?」


「ごく一般的な質問だと思ってくれればいい。ただ非常に重要な質問でもある」


「・・・何を信じているかって意味ですか?」


「そう取ってもらって結構だ」


何故こんな事を聞くんだろう?と思ったが僕は答える事にする。

後ろにヒルマさんがいる以上とりあえずは様子を見てみることにした。


「僕が信じているのは僕の女神様だけです」


他の誰でも自分の妹が今現在している女神だけを信じている。

たぶん妹じゃなければ女神なんて信じはしないが。


「女神様を振興しているのだね?素晴らしい、合格だ!では次の質問だ」


「・・まだあるんですか?」


「君はコレの鎧の中身を知ってるのかな?」


これは・・どういう事だ?この人はヒルマさんの正体を知っている?ダークエルフという事を知っているのか?・・それはない気がした。ヒルマさんは普段絶対鎧を脱がない。脱ぐのは安全と確認した場所。僕やハレンちゃん、今はアミーの前だけだ。

正体を知っている可能性があるとしたら僕と出会う前にヒルマさんと会って知った?でもそんな感じじゃない気がする。一体この人達はなんなんだ?


「答えれないのかな?それとも返答に困って思案中かな?知らなくて答えれない可能性もないこともないが。まぁいい、続いて聞くよ。コレは君にとって何かな?」


「大切な仲間です。それといい加減その人をコレとか物みたいに言うのをやめていただけますか?」


「仲間?仲間と言ったかい?それは滑稽だ!2つ目の質問は答えてくれなかったがどうやら君はコレの中身を知っているようだね」


僕はもう限界だった。

意味のわからない質問の連続。

ヒルマさんを物みたいに呼び、後ろの人達は常に薄ら笑いを浮かべている。

何もかも気に触っていた。


「おっと・・顔は隠れて見えないが殺気を感じるね。興奮するのは良いがこれが最後だ。聞いてくれたまえ。コレの正体を知っているのか?と聞いたね。君がコレの中身を知っているなら不思議に思ったはずだ、何故私がコレの鎧の中身を知っているような質問をしてくるんだ?とね」


確かにそれは思った。

だがもうそんな事はどうでいいんだ。


「そうだ、私はコレの正体を知っている。ダークエルフだろ!そうだろ!」


「やめろ!!」


男はそう言うと後ろにうつ伏せで気を失っているヒルマさんの兜に手をかけてそのまま力づくで引っ張った。


そしてヒルマさんの素顔が晒される。

褐色の肌、薄いピンク色の髪に尖った耳。

普段は夜になって薄暗い場所や日の当たらない僕達しかいない場所でしか晒さない素顔。

こんな状況で不謹慎かもしれないが久しぶりに日の当たる場所で見たヒルマさんの素顔を僕は美しいと思ってしまった。


「その反応!どうやら本当にコレの正体を知っていたようだね?この醜い黒い肌!さらにこの尖った耳!全てが呪われたダークエルフ足る証拠だ」


こいつ・・今なんて言った?


「私達がコレの正体に気付いたのは大会決勝でのコレの試合だ。この化け物はうかつにもダークエルフしか使えない魔法を使用した、気付かないとでも思ったのかね。赤い雷撃の魔法だ、アレは人種(ひとしゅ)にも亜人にも使うことは出来ないだよ。知っていたかな?いや知らないだろうね、古い文献にしか載ってないことだ。使えるのは純度の高い魔力を保有する一部の生物だけ、つまり魔物だけだ!」


ヒルマさんが決勝で相手の指を飛ばした魔法。

普通の人なら早くて目にも止まらない切れ味を含んだ赤い雷撃。

アレが見えたのか?というか見ていたのか、こいつらは。


「君はこの化け物を物みたいに呼ぶなと私に言ったね?そもそおそれが間違いなんだよ。人の世界ではダークエルフは魔物に分類されている化け物と認識されている。そもそも大昔に人と争い人を苦しめたと言われているしね。そのせいでダークエルフは人種(ひとしゅ)とエルフが共闘して滅ぼされる寸前まで追い詰められたらしいがね。だが絶滅はしていないと噂はあった。それが正解だったのは非常に残念だがこうして捕獲できたのは非常に幸運だった。人種(ひとしゅ)に再び災いをもたらす前にこうして化け物を抑えることが出来たんだからね」


「がはっ・・」


6人の内の1人がお腹を押さえて騎乗していた動物から落ちる。


「おい、どうした!?何があっいが」


さらにそれを見て声をかけた者も背中からの衝撃で転がり落ちる。

そしてそのまま3人目は僕が来るのかわかったのか両腕で顔を覆って防御の形を取る、そして僕はそのまま蹴りを放つ。

3人目はその蹴りで吹き飛ばされてそのまま立つことはなかった。

4人目は剣を構えたかその剣を折られてパニックになった所にアゴの打撃を食らい昏倒する。


「やめたまえ!!!」


僕はその叫びを無視した。

そして4人の地面に落ちてもがきている者や気絶者達しているのを見て焦っている5人目を襲う。

迎撃の為に背中に背負っていた槍を取ろうとしていた男の後ろの飛びついた、そしてそのまま腕をガッチリと掴み押さえ込み関節を曲がらない方向に力任せに引っ張る。


「がっ・いてええー止めてくれえええ!」


「止まれといっている!!この化け物がどうなってもいいのか!!!」


先ほどまで喋っていた男が叫んだ。

予想していた事だ。

僕はその叫び声はやっと止まる。

不意打ち、奇襲をやめた。

ヒルマさんがいる以上あの男は最後にするしかなかった。

多勢に無勢の状態をまずなんとかしなければいけなかった。

そして僕の予想通りの行動にでた。

本当はこのまま全員と行きたかったが許容範囲だろう。


叫んで僕を止めた最後のリーダーだと思われる男はヒルマさんに剣を突きつけて僕を睨んでいた。


「試合でもみたが間近で体験すると恐ろしい程の速度だ・・こんな一瞬でここまでの被害がでるとはな。しかしそこまでだ。この化け物がどうなってもいいのかな?大切なのだろう?」


そう来ると思っていた。

人を攫うような奴等だこんな事が平気で出来るのはわかっていた。

だから僕は5人目をこうしたんだ。


「そっちもこの人がどうなってもいいんですか?」


僕は5人目の男の腕を片手で後ろで押さえつけ関節とりながら残った手では剣を首に尽きててそう言い返した。


「何故最後の1人は剣を使った打撃を行わないと思ったがそういう事か。君なら簡単に出来たであろう他の部下の命を奪うような攻撃をしなかったのは感謝、いや賢明だが最後の1人は人質というわけか、器用すぎる真似を」


「そっちも同じじゃないですか」


「ん?私は人質など取ってはいないよ。コレは人ではなく化け物だ」


「ひぃぃぃぃ」


僕はその言葉で反射的に人質の男の首に当ててある剣を引く。

もう少しで斬れる寸前まで。


「待ちたまえ。そいつを、部下をもし殺せば君は取り返しのつかない後悔をする事になるよ?」


「なりませんよ。僕が後悔するとしたらここで貴方が卑怯にもその剣をつきたてている人を救えなかったときだけです」


「罪のない者を殺すのは後悔しないと?この後どんな状況になっても?」


「罪がないかは見解の違いですが後悔は絶対しません」


「そうか・・まったく法というのは・・」


「法?」


「命令する!己の信仰に絶対を持つならそれを信じ行動せよ!」


「・・・・了解しました!」


リーダーらしき男が叫んだ。

急に何を言っているんだ?そう思った瞬間だった?


僕が人質にとっている男が動いた。

関節をとっていてちょっとでも動いたら痛いはず。

男は僕が首筋に当てている剣に向かって頭部から突っ込んだのだ。


それを見た僕は反射的に剣を前に引いた。


「どうしたのかな?何故剣をひいた?後悔しないのではなかったのかな?」


自殺が失敗した部下の男は息を切らして僕の前で蠢いていた。

そして自害・・を試みようとした部下を冷静に見ながら男はそんな事を言い出した。


「さっきのは自分の部下に死ねと言ったのか?」


「勘違いするな。さっきのは信仰に従えと言ったまでだ」


「同じ事でしょう!」


「違うね。いやこれはさっき君も使ったが見解の違いだよ。だが理解したと思うがね、もはや君と私では立場が違う。君はこの化け物が大切で仕方ないのだろう?ちなみにその気持ちはまったく理解できないがね」


普段ならこんな単純な挑発には絶対乗るつもりはない。

でも今の僕には我慢できない一言だった。


「おっとそんな怖い目で睨まないでくれないかな?君は確かに強いが私もそれなりに腕が立つつもりだ、そっちの気絶している部下達とは違うと言っておくよ」


確かに雰囲気が他とは違う、それはわかる。

でも勝てない相手ではない気がする、ヒルマさんさえ人質にされていなければ・・。


「待つんだ!美紅と言ったな、そいつに手を出すな!止まれ!」


後方から大声がした。

聞いたことのある声だった。

目の前のリーダーを警戒しながら後ろを見る。

叫んでいたのはハレンちゃんに背負われながらこちらに向かってくるスネッツさんだった。

どういう事だろう?確かハレンちゃんには拘束するようにお願いしたはずなのに。


「美紅様申し訳ないのです。この人の剣幕に押されてしまって連れてきてしまったのです。ヒルマさんは無事なのです!?」


「無事・・ではあるかな」


僕はハレンちゃんにそう言ってあっちを見るようにジャスチャーをする。


「ヒルマさん!?美紅様、ハレンが行きますので隙を見てお願いするのです!」


僕がハレンちゃんのその提案に乗ろうとすると。


「ハレン君、説明しただろう!あいつに手を出してはいけないと!それを止めにきたはずだ!」


「で、でもヒルマさんが危険なのです」


「スネッツさんどういう事ですか?今は貴方なんかに構っている暇は僕にはないんですけど」


僕がそう言って睨むとスネッツさんは一瞬怯えたように黙るがそれでも口を開いた。


「気持ちはわかるが聞いてくれ。アイツに手をだしたら君が後悔する事になる。君だけじゃない、君の大切な仲間、もちろんヒルマもだ。絶対後悔する事になるんだ」


「意味がわからないです。僕が後悔する事になるのはこのままヒルマさんが救えない、それだけですよ」


「待て待てちゃんと最後まで聞け!うわ・・もう手を出していたのか・・いやしかしあいつが指揮官・・指揮官が無事ならまだなんとか・・」


スネッツさんは倒れている者達を見回して独り言を呟いていた。


「いいか美紅君、君がオレも疑っていたのはわかるがな、オレはさっき襲われた時にヒルマの正体を知ったばかりだ。同志の事だが俺達はある一点以外は干渉しないから個人の深いところは知らないんだ。あいつらの仲間じゃない。その証拠にオレはあいつ等の正体を知ってる。覚えがあるんだ」


どうやらスネッツさんは自分は敵じゃない。

自分がいた時にヒルマさんが襲われたのは偶然だと言いたいらしい。

しかしそんな話は今はどうでもいいという気さえしたが正体というのは少し気になった。

さっき言ったやめろと言うのに関係があるのだろうか?」


「いいか美紅君、ヒルマは・・ダークエルフだったんだな。ダークエルフは絶滅種だ。言いたくないが魔物に分類されえているのが人種(ひとしゅ)の世界では常識だ。しかし・・だ。だからと言って見つけたらあいつみたいに捕らえるなんて普通の奴はしない。そもそも発見すら困難、いるかどうかももう伝説に近くなってる種族だ。そんな種族を見つけたといってあそこまでの暴挙にでる奴等は2種類ぐらいだ。希少な種族を売買している裏仕事をしている無法者。そしてあいつはもう1つの方だ」


「もう1つ?」


「ああ・・よく聞け。無法者なら手を出すなとは言ってないこれから話すのがその理由だ。あいつな、聖堂の者だ。鎧、あの旗の紋章、聖堂とは少し違うが聖堂の紋章と似た部分がある。聞いたことがあるんだ聖堂には異端者や聖堂が管理する世界に仇名す者に断罪を加える部があると、そういった部署があると」


そういった部署?



「断罪の部隊・・聖裁部隊フレイブスだ!」


「これだ」


そう言ってチュージーは丸い物を差し出した。


「これが君がさっき説明してくれた物かね。しかしこんな物聞いたことがない、実験をする者として私も過去にたくさんの罪を犯してきたが君にコレを渡した奴も大概だね」


チュージーが見せてくれたものは気持ちの悪い何種類もの色が混ざったような玉だった。

大きさは20センチ位でとても嫌な感じがした。


「これを使って新たな魔物という奴を作れる。俺をそれをさせられていた」


「魔物の材料が魔物というわけだったのだね?」


「そうだ、魔物の死体に玉を近づけると玉が吸い込む。強い魔物の死体をほどこの玉がどんどん収縮していくらしい。最初はこの玉もかなり大きかったんだ」


「それでチュージーはレストロで魔物を凶暴化させたのか?」


「その通りだ。使ってみろと言われた」


「しかし凶暴化した魔物を全部やるとは・・君も大概だな」


「勘違いするな。あの時はお前達が信用できないから俺が倒したと言ったが実は違う」


「どういうことなのだ?」


「魔物同士が争っていだしたので弱りだしたところを時間をかけてやったんだ。俺はもうここにかなりいるしな。このダンジョン石から出る変な物が凄いんだ。これを魔物に食らわすとどんどん弱るんだ。そしてトドメを刺した」


そう言ってチュージーは今度は黒いダンジョン石をだした。


「失礼、見せてもらえるかね?」


「いいぞ」


チュージーはダンジョン石を渡した。

そして渡されたシュッペルは壁に向かって込められた魔法を放つ。


「うわ・・なんなんだその魔法。ベトベトなのだ」


「君にその玉を渡したのといい、このダンジョン石・・禁呪まで使えるとは・・」


「禁呪?」


「そうだ。これは黒の魔法、呪いの魔法だよ。文献で読んだが見るのも始めてだ・・危ない物を」


「俺は使い方を聞いただけだ」


「すまない、責めてはいないよ。どうだろう、これを預からせてもらえないか?もちろん取ったりはしない、しかし危険なのでね」


「いいぞ。そんな物は俺はいらない」


「助かるよ」


「で?やるのか?」


「もちろんだソウ君、全ては君にかかっている」


「頼む」


シュッペルは軽く言ってくれるのだ。

これから起こる事を考えるとなんかお腹が痛くなってきたのだ。


「ではチュージー君、君の準備、いや覚悟はいいかね?」


「もうとっくに出来ている」


「ソウ君はどうかね?」


「我はもう流れに任すことにしているのだ」


「意味がわからないがいけるようだね。ではチュージー君頼む!」


シュッペルがそう言うと・・チュージーは手に持っていた玉を地面に思いっきり叩き付けた。



黒い・・そして臭い煙の中から決して玉の体積には入れないだろう何かの影がその場に現れた。



続く!(`・ω・´)


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