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閑話2 廃村にて

仕事上更新は日曜の夜か月曜の夜になります。


本編が長いので今回の後書き物語は短めになってます。


★ ゜+。:.゜(´・д・`)ノゴメンチャイ・・・゜.:。+゜

「・・では試験の結果を言い渡す。3人とも失格」


そして鶴川君たち3人の昇格試験は昇格なしで終わった。


「早いよ!奏さんの妹ちゃん早いよ!てかまだ始まってすらないよ!」


「・・・チッ」


「舌打ちしてんじゃねーよ!」


慧の悪ふざけに仙田君の鋭いツッコミが冴える。


「可愛いから許そうよ~仙ちゃん~」


「くだらねえことやってないで早く始めろ。てかなんでお前らが試験官なんだよ」


「・・・口の利き方と顔が悪い3点減点」


「減点方式じゃないし!あと誰の顔が悪いの!?俺じゃないよね!」


どうも慧はこの3人が嫌いなのにからかって面白がる節があるね。


「はぁ・・慧いい加減にしなさい。仙田君、君ちゃんと渡された試験内容の書かれた用紙は読んで来たのかい?」


「え?何か渡された?俺さ、試験とか頭痛くなるんだよね。ぶっちゃけ本番に強いタイプだし」


渡された事すら忘れているらしい。


「仙田、そのその辺にしてくれ。奏さんに聞きたい事がある」


「なんだい?鶴川君」


「あんた等はちゃんと審査してくれるのか?俺達はいい加減頭に来てるんだよ。ちゃんとやってやっているのにこの世界ときたらムカツク事ばかりだ」


あれでちゃんとしてたのか?と聞き返したくなる問いだったけど。


「もちろんだよ。別に同じ『風』という理由で贔屓もしないし、無碍にも扱ったりはしない。ちゃんと公平に審査するつもりだよ」


「そうか・・でもな」


「でもな?」


「あんたの妹は信用できないんだよ!!」


「・・・・・・」


ボクの後ろで慧が舌をだして鶴川君を挑発していた・・。


「慧は素直なんだよ、でもやる事はちゃんとやる子なのでそこはその信用してもらうしかないんだよ」


「鶴ちゃん可愛いし許そうよ~」


「人志黙ってろ」


「は~い」


「それにクロムの審査なんてボク達4人も実際はいらないしね。ボク達は監視みたいなものさ。気にしないでほしいとは言わないが、ボク達だって通った道だよ?君達が真面目にやればすぐ合格できると思うけどね」


「俺はお前達が2段飛ばしでシルバーになったのを知ってるんだが?」


「そんな事もあったね」


「ちっ・・コレだから女は」


「それは差別的発言だよ」


そうじゃなければ彼は本当に女嫌い・・いやまだ疑惑の段階だ、疑うのは良くない。


「そろそろ宜しいかしら?」


後ろでは説明の為に控えていた木葉さんが待っていた。


「ああ、ゴメンよ木葉さん始めてもらっていい?」


「ええ、えーとチーム奈落の光・・ふ・・うぷぷ・・に与えられた今回の依頼という名の課題を言い渡します」


「あんた今チーム名笑っただろ!!」


「い、いえ・・ぷぷ・・誤解ですわ。そ、それでは発表いたします。今回貴方達にクリアしていただくのはこの街から南行った場所に廃村があります。と言ってもごく最近廃村になったらしいのですが。そこにどうも隣国から流れてきた不審な者達がたむろしているらしいとご報告がありました。それを対処して下さいとのことです」


「対処ってどうすればいいんだ?殺すのか?」


「物騒ですわね。そこは冒険者として貴方達の適切な判断にお任せしますわ、と事です」


「ねえねえ、そういうのって普通は国で雇ってる兵士がやるんじゃないの?」


「仙田さんの意見はごもっともです。しかし現在人手が足りてませんの。特にこの地域では、なので組合に話が来たらしいですわ。話を元に戻しますわね、対処の仕方ですが適切な判断と言いましたが、それが状況によって間違っていた場合や明らかな残虐行為に発展した場合はわたくし達が介入して止めに入れとのことです」


「そうなった場合失格ってことか?」


「そうは言ってませんわ。判断は任せると言いいました。そこに居座っている人達が殺人集団だった場合はそういった対処も必要になる事でしょうし、しかしヒントというか助言を言わせていただければですわね。ちゃんと調べてから行動した方が賢明ですよ、という事ですわ。貴方達は理性が少々足りてませんもの」


「あああ!!」


「ちょ、睨まないで下さいます!」


「先輩達、木葉さんが怯えているので止めてもらえますか?」


木葉さんを背中に庇うようにして目里君が前に出る。

目里君のが身長が低い為木葉さんはかがむようにして後ろに隠れていた。


「目里君カッコイイですわ!」


「別になにもしねーよ!説明はそれで終わりか?」


「ま、まだありますわ。わたくし達は基本ノータッチ、離れた場所で監視させていただきます」


「あっそ、じゃあ行くぞ」


そう言って鶴川君は合図を送ると歩き出した。


「・・・あの、そっちは北ですわよ?」


「地図をよこせ!!」


「・・・馬鹿の逆ギレ」


「マジか~暖かそうな方向が南だと思ってたのに違ったか~」


この3人よく今まで生きてこれたね。


そして3人は依頼で指定された場所に出発した。

ボク達は出来るだけ離れて3人を監視する事にしていた。

というより全員一致の意見だったが、あんまり近づきたくなかったというのが本音だったしね。


そこからは早かった。

無駄に体力だけはある3人組は目的の廃村近くまで半日程でついてしまった。

しかし3人の足取りは廃村の手前で止まった。


「どうしたんでしょう?」


「あんな場所で止まってますわよ」


「・・・人生に絶望して足が止まったとか?」


そんな急に人生について考えるような3人じゃないよ慧。


「たぶんだけど3人共ちゃんと考えているんじゃないのかな」


「どういう事ですの?」


「このまま直接廃村に乗り込んだらどうなるかわかっているんだろ思う。ちゃんとあの村がどういう状況かあの村にいる者達がどういう者達かを調べるのが先とわかっているんだよ。木葉さんが説明した対処ってのをちゃんと理解していたくれたんだよ」


「なるほどですわ」


「ちょっと見直したかもです」


「・・・まだわからない。ただ疲れたから止まった可能性の捨てちゃいけない」


ボク達が離れた場所でそんな会話をしていると前にいる鶴川君達はというと。


「鶴ちゃん俺疲れたよ~ちょっと休も~」


「人志、お前が休憩なんてしたらカッコ悪いとか言ったから急いだくせに何言い出してるんだ」


「鶴ちゃん俺今歩きながら人生について考えてたんだけどさ、今までの人生を思い返してみるといきなり異世界に飛ばされて十代の高校生活だったはずがこんなのになっちゃってちょっと絶望したんだけどどう思う?」


「知るかよ、お前はそんな事考えて歩いてたのか?確かにこっちの世界はムカツクことが多いが俺は結構面白いと思ってるぞ」


「そっかー、じゃあ俺もそれでいいや」


「それより都合のいい事ににここから廃村がよく見える。とりあえず俺は偵察するべきだと思うがお前らどう思う?」


「俺のカーペットで火の海とかでよくない?」


「感だけどそれしたら失格な気がするんですけど~」


「ちっ・・仕方ない俺が決める。俺の魔法で様子を見ることにする」


「お!大魔法使い!」


「魔法もいいけどいい加減鶴ちゃんのギフトみたいんですけど~。マジでこの世界に来て半年以上経つのに1回も見せてくれてないよね~」


「き、切り札は最後まで取って置くんだよ!」


「鶴ちゃん期待してるっす!」


そう言うと鶴川は目をつぶる。

闇系の魔法。

黒いカラスのような鳥が1羽出現する。

そしてその1羽は本当の鳥と変わらない動きで廃村の方に飛んでいった。

ボク達はそれを離れて確認していた。


「あれは・・魔法かな」


「・・・アレは闇の魔法。擬態の(しもべ)を形成して、範囲制限と時間制限あるけどそれが感じた物や見たものを術者は感じることが出来る魔法。でもそれを使っている時術者が無防備になるリスクがある」


慧が説明してくれる。慧は魔法についての知識は信用できる。

この世界の魔法の本を片っ端から読みまくっているからだ。


「へー便利ですね。というかあの人に似合わない位便利です」


目里君も結構毒を吐くね。


「本当ですわね。あんな便利な魔法を使えるのに何故依頼の成功率が低いのでしょう?」


「・・・理由は単純」


「お馬鹿さん?」


「・・・正解!」


「強力な力が使えても使うもの次第で薬でも毒にもなるという事だよ。それより僕達もあの廃村の状況を知りたいんだけど慧頼めるかな?」


「・・・お任せ」


慧は頷くと手を合わせる。

そしてそのまま地面に向かって両手を叩くように押し付けた。


「・・あの場所にいる数は・・20以上?・・・何かがこすれ合う音もする・・たくさん不思議な音がする。でも何かおかしい・・話し声?・・違う・・唸り声がたくさん・・でもブサイクな感じ?」


「なんかよくわからないけど難民の線は消えたね。慧はそのままもう少し探ってくれる?」


「・・・了解した」


「慧ちゃんの魔法は凄いです」


「・・・もっと褒めて」


「地雷でしたっけ?その魔法」


「・・・私が勝手にそう付けただけ」


この魔法は慧のオリジナルらしい。

しかしギフトではない、ギフトが関係しているがギフトではない。



その頃3馬鹿の方では・・。


「なんだこりゃ!!」


「どうしたの鶴ちゃん?いきなり叫んで?」


「面白いものでも見えたとか??」


「いや、わかんねーそれに言ったろ。この魔法は鮮明に映像は見えねえって、ぼやけて見えるって、それでも見た感じあそこに廃村にいる奴等は何かおかしい」


「おかしいって~?どんな風に~?」


「うなり声が聞こえた。でもな違和感があった。人はあんな声を発しない」


「鶴ちゃんゴメン、言ってる意味がわかんね」


「俺だってわからねえよ。でもなんか変だったんだよ、それとも信じられねーか?」


「いやいや鶴ちゃんの事は100%信じるよ。でも俺頭わりーかんね」


「やっぱ行って見ればわかんじゃねー?」


「それしかねえか」


「突撃~!」


そして3人は本能のまま廃村に向かって行った。



そしてボク達はというと。


「退屈ですわね、目里君3人はどうしてますの?」


3人を遠くから観察していた目里君が答えた。


「えっとですね、なんか座り込んでた鶴先輩が突然立ち上がって他2名が騒いでます」


「本当だ、何か分かったのかもね」


「あれ?慧ちゃんどうかした?」


「ん?慧までいきなり立ち上がってどうかしたかい?」


「・・・やっぱり人じゃない」


「人じゃない?慧ちゃん流石にそれは言いすぎかと思いますわ。あの3人は確かに馬鹿ですがギリギリ人ですわ」


「・・・違う。廃村のいる奴等の事。あとあの3人はギリギリ人じゃない」


「あの3人の事は置いといて慧、人じゃないとはどういう事だい?」


「・・・唸り声・・はあってると思う。でも鼓動がない」


「鼓動ですか?」


「心臓のかい?」


「・・・うん」


「それが本当なら少しやっかいだね」


「少しじゃないような気がしますわ」


「よし、3人を追いかけよう」


そしてボク達は3人を追いかける事になった。

その頃先に廃村に向かった3人はとんでもないことになっていた。


「なにこれ鶴ちゃん!!」


「くっさ~!これ臭いよ!この村臭いよ~!」


「お前らうるさいんだよ。アレ見ればわかるだろうが!」


3人が見たのは荒れた村にいるたくさんの生き物、ただし3人が感じているように不快な臭いを放つ物体が多数そこにはあった。


「動物だよね、こいつら?」


「俺らの世界でも見たことある動物だな。腐ってなかったらな」


「めっちゃ睨まれてるんですけど~やっぱ突っ込まないほうが良かったんじゃない~?」


「もうおせーよ」


臭いを放つ物体は村に侵入した3人の周りを囲むようにして丸く円陣を組む。

3人の目には元の世界で見たことのある動物達が確認できた。

熊、狼、兎、猪、犬、猫、と他にも多々小動物たちがいた。

ただ違っていることといえばどの動物も目の焦点がおかしい事、そして先ほどから神経を逆なでするような腐臭を放っている事だった。


「なんだお前達は?」


その声の主は村の奥からゆっくりと歩いてきた。

大きさは人のものではなく3メートルを超えた大男、皮膚と思われる物は灰色とも茶色とも言えるような感じで混ざっており、塵あくたが集まったように全体的にめくれあがっていた。傷にも見えるが一切血液という物が出ている様子はない。

顔を見るとやはり全身と同じように皮膚がめくれ上がっていて不快感を感じさせる、やけどにも見えたりもした。


「こっちのセリフだ気持ちわりー奴め」


「ゾンビ?にしてはおかしいような?」


「魔物じゃね~?」


3人がそれぞれ感想を言うと現れた大男は再度口を開いた。


「なんだ役立たずの人種(ひとしゅ)か。じゃあいらないな」


「あ?今何つった」


「いらないと言ったんだ人種(ひとしゅ)お前達種族は何にも使えない。ただ数がいるだけのゴミだ」


「お前だって人の形してんじゃん!気持ち悪いけど!」


「おめー達もしかして馬鹿だな?お前達の形が正しいと思ってる馬鹿だな?人種(ひとしゅ)以外にも2足歩行なんていっぱいいるべ。人種(ひとしゅ)は自分達が一番偉いと思ってるってあの方が言ってたべ。だから嫌いなんだべ」


「じゃあ、お前は何者だ?そいでこいつ等はなんだ?」


「答える義務ねえべ、オラは人種(ひとしゅ)が嫌いなんだ。とりあえずお前達はいらね。でもここに来ちゃったからには生きては返さね。死んでも仲間にはしてやんねえからな」


「死んでも仲間?どういう意味だ?」


「お前達なんでも質問だな、ちっとは自分達で考えろや。偉いと思ってんだろ人種(ひとしゅ)はそれともやっぱり馬鹿なんか?」


「お前みたいな汚ねー奴に馬鹿呼ばわりされたら俺達終わりだよ」


「じゃあお前達終わってるべ、お前達不味いかもしんねが餌だべ」


大男がそう言うと丸く囲んでいた動物達がその言葉に反応した。

3人に向かって一斉に飛びかかったのだ。


「仙田!」


「任せて鶴ちゃん!」


「鶴ちゃん俺は~?」


「お前のギフトは今は使い道がない、武器で戦え」


「酷くな~い?サンインパクトは逃走とか相手を怯ませる時に最高だよ?」


カーペット!そう仙田君が叫ぶと3人の周りに丸を描くように炎が円を描くように走る。

3人に飛び掛ってきた獣達はその炎に飛び込む形になる。

しかし丸を描くように走る炎の性質のせいか炎の丸が完成する前に円の内側に飛び込んだ獣達が数匹、それが3人に襲い掛かる。


だが・・その飛び込んだ獣達も打ち落とされる。

ダガー、人志君が投げた何本ものダガーが突き刺さり衝撃によってその場に倒れこんだ。


「ナイス!人志ちゃん!」


「任せてよ~」


「お前達気を抜くなよ、まだ雑魚はいるがあのデカブツも突っ込んでこないとは限らない」


鶴川君はとりあえずまだ攻撃してこない動物達は仙田君のカーペットがある限り安心と思い、おそらくボスである大男に注意を向けた。


「ああ、オラの仲間が大分燃えちゃったべ。ちょっとお前達を侮ったべ、まさか魔法使えるなんてな」


「魔法であって魔法じゃないんだけどね」


「黙ってろ仙田」


「確かに変な魔法だべ。でもいいのか?オラの方ばかり見てても」


「どういうこと~?」


「仙田!もう一度だ!もう一度同じ位置にカーペットを広げろ!」


「へ?あ、あいよ!」


「無駄だべ無駄だべ」


仙田君は2度目のカーペットを発動。

1度目で燃えて動かない動物達を再度カーペットの炎が襲う。


「どうしたの鶴ちゃ~ん」


「見なかったのか?燃えていた動物が動いたんだよ」


「マジで?でももう終わりっしょ。流石に2度も燃やせば」


「悪いなー。お前達、手間を減らしてくれて」


「あ?」


カーペットの炎に焼かれヂリヂリと燃え盛っていた動物達は肉が焼ける匂いを漂わせて黒くなって焦げていった。

しかし燃え、焦げ、そしてもはや原型をとどめていない動物達は真っ黒な塵となったにもかかわらず動いていた。

そして・・その塵達はまるで風に流される葉っぱのようにある場所まで飛んでいく。


「ああ~気持ちいいべ」


塵は大男に向かっていき、そして大男にぶつかる様にして吸収された。


「あれ?なんか大きくなってね~?」


その通りだった。

3メートル程の大きさだった大男は縦と横にさらに巨大になっていく。


「塵だと思ってたのは灰だったとか?」


「俺に聞くな。とりあえず仙田はもうギフトを使うなよ、お前も武器で戦え」


「そんな!まだ水のカーペットがあるって!そうだ流しちゃえばいいんだよ!」


「それで意味がなかったらどうするんだ?またアイツがデカくなったらどうするんだ?」


「それは・・」


「じゃあ俺のサンインパクトで・・」


「人志は援護だ」


「えー」


「攻撃はは俺がする」


「もういいべか?そろそろ臭いから殺すべ」


「お前のが臭いだろゴラ!」


さらに巨大化した大男は片腕を大きくあげた、そして手首から先が平べったく巨大化した。

そしてその腕を力任せに3人に向けて振りかぶった。


「「おっと!」」


地面が揺れるかと思うほどの一撃。


「あれ?避けられべ?」


その攻撃を3人は物ともせずそれぞれが思う方向へ飛んで避ける。

そうだった、この3人は運動神経だけは人一倍いいのだった。


「ねえ~鶴ちゃん。こいつ確かに大きい分動き遅くな~い?」


「警戒して損したなこいつは」


「でも攻撃どうしようっか」


「俺か動きを止める人志と仙田はいつもの奴だ」


了解!と二人は返事をする。

鶴川君は片手をあげると大男の地面が盛りあがる。


「なんだべ?」


そして大男は一瞬だけ浮き上がり体制を崩されて浮き上がる。

次の瞬間、大男に黒い光が降り注ぐ。

黒い光はそのまま滝のように降り注ぎ続ける。


「う、動けないべ!」


「はははは!そのままじっとしてろよ!行け!仙田に人志!」


「おうよ!」


仙田君は弓を構えていた。

仁君は槍を構えていた。


鶴川君の魔法によって動けなくなった大男に仙田君の弓の矢が何本も放たれる。

そして矢が刺さると思われたがその矢は刺さらずに貫通した。


弓の攻撃が終わったと同時に人志君が槍で大男の頭部を槍で突き刺していた。

槍は頭部に刺さりそしてそのまま・・爆発した。


「どうだ!!」


「これで殺れなかった敵はいないんだよ~」


大男は体中に弓で穴を開けられ頭部は吹き飛んでいた。



それをボク達は近くの丘で上から見学していた。


「それでみんなはあの生物?はなんだと思う?」


「わたくしはまったくわかりませんわ」


「ゴメン、オレもさっぱり」


「・・・たぶんアンデット系?」


「慧でも知らないとなるとこれは困りものだね、でもアンデット系はあっていると思うよ。仙田君のカーペットで燃えた動物の灰を吸収してたしね、塵と灰で出来た化け物。ボク達も初めて見る生物だけどあの3人は良くやってると思うけど」


「・・・あれじゃ無駄」


「ですね」


「確かにあの3人強いんですが」


「やっぱり3人もそう思った?」


「「「馬鹿」」」



そして再び廃村での戦いではというと・・。


「いやー死ぬかと思ったべ。ってオラもう・・いやそれはいいべ。でもやっぱお前達は馬鹿なんだべな」


頭部を吹き飛ばされた大男はすでに再生していた。

吹き飛ばした塵と灰が元に集まり、矢で開いた穴も同じ現象がおきていた。


「おいおいおい、どういうことだ?」


「戻っちゃったよ」


「え~」


「馬鹿すぎんべお前達。オラに物理攻撃が聞かないのは考えればわかるべ?槍は爆発したみたいんだけんど結局アレも炎だべ?効くはずないべ」


「え~これ不味くない~?」


「やっぱ水で流そう?」


「水か?やってみればいいべさ」


その挑発に止めるまもなく仙田君はカーペットを放つ。

先ほどは違い一直線に走る大量の水が大男に向かって襲いかかる。

このままいけば物凄い勢いの水が大男を洗い流すだろう。

しかしそれは起こることはなかった。


「水が煙になって・・消えた?」


水流が大男に当たる寸前に水は水蒸気になって霧散した。

大男は息を大きく吸いそして吐いた。

向かってくる水流に紫色の息、恐らくガスを吐きつけた。

ガスは水を蒸発させるほどの高温だったらしく、仙田君のカーペットは空しく霧散したらしい。


「惜しいべ、水はオラを重くするなら致命的じゃないが有効だったんだけどな、でもオラも対処できないわけじゃないべ」


「も、もっかいやれば」


「やめろ仙田!見ろあの蒸発した水の色を」


水は水蒸気になって霧になりそしてじゅううぅぅという音とともに今だ生温い湿気を放っている。

そしてそれはガスと同じ紫色をしていた。


「おお?お前はわかっただか?オラのガスは高温の毒ガスだ。お前達が風上じゃなかったらやばかったんだべ」


大男は笑いながらそう答えた。

それを聞いた3人は後ろに飛んでさらに距離をとり再び武器を構える。

戦いは硬直状態に陥った。



「どう思います?奏さん」


「そうだね、あの3人は個々の身体能力は高いしギフトもある。それに一応連携も出来てるみたいだけどチームの構成に問題があると思う。せめてもう1人いれば良いと思うけどね」


離れた丘で見ていた木葉さんの質問に僕は答えた。


「オレもそう思います。回復役もいないみたいですし」


「そうだね、見ると仙田君の武器は弓でギフトは魔法だから後衛。人志君は槍だから近、中距離かな?あとギフトは・・光るだけだから中途半端感がある。最後にリーダーの鶴川君だけど何故か武器を持ってない。魔法は闇系みたいだから彼も後衛なのかな?」


「・・・つまり完璧な前衛職がいない」


「冷静にそう分析するとあの3人穴だらけじゃありませんこと?」


「かもね。たぶんだけど今までは個々の能力が高いから力技で全部倒してたんじゃないかな?だから手加減とかをする事を覚えなかったからやりすぎてたんだと思うね」


「さっき言ったように仲間を増やすといいかもです」


「・・・あの3人のチームに入りたいという人がいると思う?」


慧のその言葉にボク達は答えることが出来なかった。


「で、でもこのままじゃあの3人勝てませんわ。あの大男さん強いですわ」


「そうだね、介入も考えよう」


「参戦したら先輩方怒らないですか?」


「・・・よし、3人が死んだら参戦しよう」


慧それは参戦って言わないよ?



「へへへ、打つ手がなさそうだな?じゃあオラの番だな。お前達!!」


大男はそう叫んだ。


「まだいたのかよ」


「ヤバイよ鶴ちゃん!」


そこには先ほどの3倍以上の腐った獣達。

この数で襲われたらどうしようもないと思わせるほどの数の深いな臭いを放つ獣が現れていた。


「どうだべ?もっと怖がってもいいべさ。人種(ひとしゅ)は嫌いだが怯える姿は好きだべ」


「俺達はまだ切り札があるんだよ!ねえ鶴ちゃん!」


「あ?」


「鶴ちゃんのギフトだよ!俺達知ってんだ、見るなって言われてるから見てはないけど鶴ちゃんが夜遅くどっかに行ってたのを、ギフトの特訓してたんだよね?」


「そうだった~!鶴ちゃん頼んま~す」


「お前ら・・」


「なんだ?まだなんかあんのか?」


二人にそう言われて鶴川君は微妙な表情を浮かべる。

確かに鶴川君だけ今までずっとギフトを見せたことがない、何か理由があるのだろうか。


「どうしたの鶴ちゃん?」


「くそ・・」


「も、もしかして鶴ちゃんのギフトって使うのに時間がかかる系~?」


「そうか!だから今まで使えなかったの!?」


「いや、そういうわけじゃねーけど」


「え?違うの?このままじゃ俺らやばいんだけど・・」


「わかってる!お前達だから言うがな、俺のギフトはあんまり人に見せたくない。もちろん仙田、人志お前達には・・見せてもいい。でもな、あいつ等4人、奏達がどっかで今の状況を見てるはずだ、あいつ等には絶対見せたくねーんだよ」


「どういうこと?見せると不利になっちゃうって事?」


「そ、そんなとこだ」


「なるほど~、じゃあ俺にいい考えがあるんだけど~」


「なんだ?」


「俺のサンインパクトでここ一体を光らせれば奏さん達見えなくない?眩しくて」


「それだ!」


「オイ待て!それも確証が・・!」


鶴川君がそう言い終わる前に人志君はうお~~と大男に向かって突っ込んでいく。

恐らくギフトを使いたくてしょうがなかったのだろう。

無防備で突っ込んでくる人志君に驚いたのか大男は身構える。

回りを囲んでいた大量の獣達も大男を守るように人志君の前に集まりだした。


そして人志君は叫ぶ。


『サンインパクト』


廃村全体は光に包まれる。

それは丘で見ていたボク達も眩しすぎて目を細めるほどの発光だった。


「なんだべ!いきなり光だしたべ!なんの攻撃だべか!?」


「今だ鶴ちゃん!人志が敵を引きつけてるし、これなら見えないよ!」


「あの馬鹿、まだ先走りやがって!使いたくないがしかたねー!」


決心したのか鶴川君が叫ぼうと口を開く。


『へ・・・・』


鶴川君がギフトを今正に使おうとギフトの名前を叫ぼうとした時、横にいた仙田君が疑問の声をあげた。


「へ?」


「なんだどうした?仙田」


「つ、鶴ちゃん・・アレ見える?」


「あ?見える?おかしな事聞くな。それどころじゃ・・なんだ!」


仙田君に言われ鶴川君も気付いたようだ。

恐らく二人は光に目が慣れ、少しだが目の前の光景が見えてきたのだろう。

その不思議な光景に驚く。


「まだかよ鶴ちゃ~ん!俺死んだかも~」


「人志・・お前何した?」


「はあ??サンインパクトだけど?」


「周りを見ろ!」


鶴川君に言われて光っていた人志君は自分の周りに集まりかけていた獣達を見る。

そして自分もそれを見て驚く。



「なんじゃこりゃ~~~!!!」



3人が見えた光景、それは腐った獣達が崩れ落ちていく姿だった。

燃えて崩れ落ちていくとも違う、形を保てなくなった者が砂が崩れるようにサラサラと崩れて消滅していく。

獣が消えた後には塵や灰すら残ってはない。まるでそこには最初から何もいなかったよう消えていた。


「ひぃぃぃ、なんだべ!?体が!体が崩れていくべ!」


「一体どういうことなんだ?」


「大男まで・・・」


「こ、これって鶴ちゃんのギフト~?」


「俺のじゃねー」



いきなり廃村全体が光った、そしてその光に目が慣れた事にボク達が見た光景は驚きの光景だった。


「見てくださいまし!消えていきますわ!」


「アレだけ大量にいた獣が全部消えましたね、鶴川先輩のギフトですかね?」


「・・・違う」


「あれはたぶんだけど人志君がやった・・のかな?」


「・・・木葉さんならわかると思う」


「え?なんでわたくし?・・・あ!もしかして人志君のあの役立たずで光るだけのギフトは光属性の魔法だったという事!?」


「え?眩しいだけじゃないんですか?」


「みんな散々な言い草だね。恐らく木葉さんが思ってるのであってるよ。思い返せば回復の光に似てるしね。ただやたら眩しいだけだったからそっちに意識がいってわからなかったんだよ」


「・・・それもあるけど今まであの眩しいだけのギフトの真の効果を発揮する機会がなかったんだと思う」


「なるほどですわ!そういう事ですか!」


「どういうことです?」


「つまりこういう事だよ目里君、あの人志君の眩しいだけだと思ってたギフトはアンデット系の生物に効く魔法だったというわけだよ。今まで人志君はアンデットにギフトを使う機会がなかったんだろうね、そして今まさに自分のギフトがどんな物かわかったというわけだよ」


「・・・馬鹿のクセにあんなたくさんのアンデットを一度に消滅する魔法を」


慧がちょっと悔しそうに呟いた。


「でも人志君は理解してるのしょうか?」


「どうだろうね」


ボクは苦笑いしてそう答えた。



「オラの体が崩れていくべ!なんだべ・・どういうことだべ!さっきの光のせいだべか!?」


「え~?俺のサンインパクトで~!!!!??」


どうやら使った本人の人志君が一番驚いているようで頭を抱えて鶴川君と仙田君に助けを求めている。


「おい、人志・・お前がやったのか?」


「わかんないよ~!でも俺?がやったかも~」


「人志すげーーー!」


「え?俺すげ~の~?」


「体が体の維持ができねーべ」


大男は体の3分の1ほどが崩れておりその場に倒れこんでいた。

鶴川君はどうやら大分状況がつかめているのか大男に近づいていく。


「どうやらうちの人志のギフトはお前達の天敵だったみたいだな。お前は獣達の後ろで守られてて人志の光が当たらなかった部分があったから完全に消滅しなかったのか?」


「嫌だべ!せっかく生まれたのに消えるのは嫌だべ!助けて・・助けてくださいべ!」


「命乞いしてしてるよこいつ!笑えるし!」


「お願いするべ!助けて欲しいべ!」


「消えろ、人志やっちまえ」


「おっけ~!光れ!俺の無敵のサンインパク・・」



「待て待てお前達」



鶴川君達3人は声がした方向を反射的に見た。

そこにはまた彼らが今まで見たことのない生物がいた。

大男とはまた違った意味で気持ち悪い生物だった。


「おいおいおい・・・せっかく作った物を何してくれてんだクソ共おぉ!!」


雄叫びに似ていた。

その生物が大声で叫ぶ。

3人に鳥肌がたった。


「な、なんだお前は・・魔物かよ」


「気持ち悪い姿しやがって・・こいつの仲間か?」


「マジキモイんだけど~」


「はぁ・・つい興奮してしまったな・・グラブの旦那にもお前はもっと理性を持てと釘をさされているんだった」


「グラブ?お前の名前か?」


「ゴミの人種(ひとしゅ)になんて名乗りたくないが勘違いされたままは困るしな。俺様の名前はゴルゴア様だ」


「ゴルゴア?なんの魔物だ?」


「俺様を魔物なんて物と一緒にするなよ」


「どう見ても魔物だろ、猿顔、蛇の尻尾、手は・・よくわからねーが混ざりまくりじゃねーか。きめーんだよ」


人種(ひとしゅ)ごときが・・まぁいい。しかしよくも俺様の実験の邪魔を・・炎に強い生物を作って兄にけしかけて実験しようとしてのに予定が狂ったな。別にこんな事で旦那は怒らないがあいつとの賭けに負けちまうな」


「意味わからねーこといってんじゃねー!やんのかコラ!人志!」


「おうよ~!」


あの合図で再び光り出す仁君。


「ご主人様お助けだべ!あの光を今度食らったらオラ消えちゃうべ!!」


「お前は実験生物だ。言われた成果見れたしな、使った時間は惜しいが丁度いい証拠隠滅で消してもらえ」


「そんあぁぁ・・・」


大男はゴルゴアに助けを求めるが冷たい一言で返され見捨てられる。

そして光を浴びると先ほどの獣達と同じ様に・・完全に消滅した。


「どうだ!」


「って俺のサニンパクトがこいつには効いてない~!?」


「さっきから見てたがお前達は馬鹿なのか?お前の魔法だと思うがそれはアンデットだけに有効な光の魔法だろ?俺はアンデットじゃない。あんな大量のアンデット消滅魔法は知らないがな。それともお前は自分の魔法の性能を知らずに使っていたとでも言うのか?」


「そうなの~!?俺のサンインパクトってアンデットしか効かないの~?あんなに光るのに!?」


「人志、光るのは関係ないと思うよ?」


「人志ちょっと黙ってろ。コイツはヤバイ感じがする」


「本当に知らないで使っていたのか・・こんな馬鹿共は相手にしたくないな」


「じゃあ、俺のカーペットで・・うわ!」


「やめておけやめておけ、さっき見たがお前達は俺様には勝てないぞ。確かに実験を邪魔されたのはムカついてるが他にやることもある。馬鹿の相手はするつもりはないしな」


「馬鹿馬鹿言いやがって・・お前も馬鹿っぽいだろーが!」


「は?挑発か?おっと・・来たか」



ボク達は新たな珍入者が現れた瞬間、廃村に向かって走っていた。

それが危険だと思ったからだ。


「ボク達に気付いていたのかな?えっと・・魔物さん」


「お前達もか!俺様は魔物なんかじゃない!」


「おい!これは俺達の獲物だ!何しに来た!」


「これは試験だからね。それにこの・・魔物じゃないんだっけ?危険そうだから来たんだよ。にしてもボク達に気付いてたみたいだね」


「この3人よりお前達のが危険そうだったんでな。最初から参戦しても良かったんだがお前達のように様子を見させてもらった」


「なるほどね」


「オイ!俺達を無視して会話するなよ!」


「鶴川君ちょっと黙っててくれるかい?試験なら合格だから」


「そういう事言ってんじゃねーよ!」


「おい女、お前はこいつ等のお守りか?お前からムカツク奴と似たような臭いがする。ムカツク臭いだ」


「誰の事か知らないけど、貴方と会ったのは初めてだし意味がわからない」


「赤い奴を知らないか?」


「赤い??知り合いに赤い・・人はいないと思ったけど」


「そうか、だがせっかく登場してもらって悪いが俺はここで退かせてもらう」


「逃がすかよ!!!」


そう鶴川君が叫ぶ。


「逃がす?・・いや不本意だが逃げるになるのか?そうだな。悪いな馬鹿っぽい奴、俺は学んだんだ。世の中には俺より強い奴もいっぱいる。お前がそう言う訳じゃないがな。今は多勢に無勢すぎる、戦えば俺が負ける可能性がある。特にそっちの4人は危なそうだしな」


「俺らのがつえーよ!」


「・・・見えたぞ?お前はさっきの戦いで一番役立たずだっただろ」


「・・・ぷっ!」


そう言われた鶴川君がショックを受け、慧が後ろで吹き出した。


「俺は本気をだしてねんだよ!!」


「ああ、何かしようとしてたのはわかるがな。出し惜しみしてそのセリフは負け犬のセリフだ」


「・・・正論」


「慧・・・あれは敵だよ」


「黙れ!!!」


「うるせえな。というわけだ。俺様は行かせてもらう。追ってはこれないと思うが追って来るなら対処させてもらう。じゃあな」


「待てこの気持ち悪い化け物が!!!」


ゴルゴアはその言葉を無視して地面を蹴った。

地面に電が走り、次の瞬間そこにはもうゴルゴアの姿はなかった。


「追うぞお前ら!」


「待つんだ!鶴川君、もし追えば君達は失格だ」


「ああああ!?」


「アレは危険だと思う、君が勝てないとは言ってない。でもこの廃村を調べて対処するという目的は果たしんだしね。ここは折れて欲しい」


「ちっ!」


「合格だってさ鶴ちゃん!」


「俺達ブロンズだ!」


「というわけだ。戻ろうかみんな」


ボク達はゴルゴアという奴は関わらないことにして撤退した。

3人は・・というか鶴川君は納得いかなかったらしいが街に戻ることに渋々ながら了承した。



「というわけです」


ボクは街に戻っていた。そして見たこと感じた事を組合で支部長に報告していた。


「そんなわけのわからない危険な物がいたのかね」


「はい」


「つまり3人はそれを見事撃破、対処してみせたと?」


「一応、その通りです」


「しかし君達の話を聞く限りではこの街の近くにそんな危ないものがいたことが信じられない。そいつの目的はなんだったのかわからないのかね?」


「申し訳ないですがゴルゴアとかいう者との戦闘は撤退を選んだので、それより支部長はゴルゴアとかいう者に心当たりは?」


「ない・・と思うが・・組合本部に問い合わせてこれから調べておこう」


「オイ、俺達の昇格はどうなった?」


ボク達が長話をしていたので痺れを切らしのか鶴川君が話に入ってくる。


「そうだったな。奏君達の報告では君達はこの街に将来降りかかったかもしれない危険を回避したことになる。今回はこちら側に被害もなかったしね」


「それじゃ俺らブロンズ?」


「やった~」


「それなんだがね結果を鑑みるに君達の功績は非常に評価していいと判断したので、ある条件を飲んでもらえれば2階級昇格という事にしようと思うんだがどうかね?」


「2つ?支部長それはシルバーということですか?」


「ああ、その通りだ。だがまだ話の続きが・・・」


「それは本当か?」


鶴川君が支部長に掴みかかる。


「ほ、本当だよ!つ、鶴川君そんなに興奮しないでくれたまえ!私には妻も子もいるんだ!それに条件があるといっているだろう!ゴホッ」


支部長は何故か怯えていた。


「マジで俺ら一気にシルバー?」


「やほーい!」


「当然だ」


3人は喜びのあまり話を聞いていないようだった。

鶴川君からやっと解放された支部長は話を続けた。


「さ、先に君達から話そう奏君達、君達との約束したゴールドの話だが数日のうちに本部から昇格の話が届くと思うがもう1つの方は本当に行くつもりかね?私としてはやめたほうがいいと思うが・・」


「やめるつもりはありません」


「ナディガム国への通行許可書だったね・・今現在あの国は出る者も入る者も規制されている。しかしゴールドクラスになら組合の権限で通過できると思うが・・」


「決めたんです」


「止めたいが君達がそこまで言うなら仕方がないな。本部から返事が届いたら許可しよう」


「感謝します」


大事な話をしているのに後ろでは鶴川君達が盛り上がって暴れていた。


「あの3人は・・」


「ま、まぁ今回の立役者だ。大目に見よう。それに・・つ、鶴川君そろそろいいかね?」


「なんだ?今気分が良いし聞いてやるぞ」


「そ、そのなんだ・・君達には・・いや君にはたぶん良い話だとは思う」


「良い話?」


「そうだ、実は組合がだね。ある町に支部を作りたいという案が上がっていてね。それに対してできれば腕の絶つ冒険者を先にその町に派遣して欲しい。シルバー以上の望ましいと要請があり募集しているんだよ。私としては君達を推薦したい。君達がそれを受けてくれるならシルバーとしてその町に行ってもらいたい。君達は実力だけなら折り紙つきだ。それ・・にだね・・つ、鶴川君にピッタリの町だと思うのだ、君の・・なんだ趣味にも会っていると思う」


「どう意味だ?どんな場所だ?」


「す、素晴らしい町だよ、歴史は浅いがね。ある意味・・強者の集う町とも言われている。どの国にも所属してはいない自由都市だ。しかしそれゆえにまさに・・まさに・・自由すぎる町だよいろんな意味で」


「強者?自由?なにそれすっげー」


「自由な俺達にぴったりじゃん!」


「面白そうだな。そこに行ってほしいのか?」


「ああ、実は商会もない町でね。組合が一番乗りで支部を作ろうと躍起になっているが上手くいかなくてね。君達が将来その町で活躍してくれればゴールドだって夢じゃないはずだよ!・・・・・・・・・・・特に鶴川君にはね」


「俺に!本当か!?」


「ああ」


「なんて町だ?」


「男の町・・いや白の都と言われる町だ・・・・・・・・・・・・・・・・・オストピアだ」


「白の都か・・いい響きだな。オイ!仙田に人志!次に行く町が決まったぞ!」


「おうよ鶴ちゃん!」


「あいよ~」


鶴川君に告白したスキンヘッドの冒険者も興奮していた。


「鶴川、アンタ・・あの俺達の憧れの町に推薦されるなんてすげえよ!俺達もあの町には行きたいと思ってたんだ。必ずアンタを追いかけて俺達も行くからな!立派なオスメンになるんだ!」


鶴川君達は目的地が決まって盛り上がっていた。

そこには違う意味で熱気があった。


「ねえ、奏さん・・オストピアって噂に聞いたあの特殊な町ですわよね?」


「たぶんそうだね」


「先輩達あの町がどんな場所か知らないんですかね」


「・・・知ってるかも?あんなに喜んでるし」


「やっぱり鶴川君は・・・」


「まぁ、やっとあの3人と別の道にいけるしね。彼らには彼らの冒険があるよ」


「・・・ところでお姉ちゃん」


「なんだい慧」


「・・・あのゴルゴアって気持ち悪いのが言ってた言葉覚えてる?」


「ん?実験とか言ってた事かな?」


「・・・違う。赤い奴」


「ああ、言ってたね。ムカツクとかなんとか意味はわからなかったけどね」


「・・・赤。赤い奴、美紅、みっくん」


「!?」


「・・・違うかな?」


慧の話を聞いてもしかしたらと思った。

でも美紅があんな危なそうな奴と接触したのだろうか?

考えすぎだと思ったけど・・今は何もわからない。

4人で話し合って決めた目的もあるし今は考えない事にした。


後日、僕達はゴールドに昇格した。

そしてナディガムに行くための通行許可証も手に入れた。

不穏な噂しか聞いてないけどこっちの聖堂にいなかったのだし美紅がいるならナディガムかもしれないそう考えると向かうしかない、そう思い無理を言って木葉さんと目里君には了承してもらった行き先。


遠く離れた大国。

ボク達は安全な国をでてそこに向かう事にした。


そして鶴川君達も出発するらしく支部長に通行許可書を貰っていた。


「コレだ。向こうには聖堂しかない。この紹介状を聖堂の支部に持っていってくれたまえ。そこで君達の当面の面倒を見てもらえることになっているしね」


「わかった、任せておけ。で?支部の誰に渡せばいいんだ?」


「あ、ああ・・町で一番著名な方だよ。名前をスラビチュというお方だ。君達も・・特に鶴川君には勉強になると思う」


「俺だけ?強いのかそいつは」


「も、もちろんだ。強さで言えばゴールド以上という噂もある程だよ・・・・・・・・・別の意味でもね」


「たっのしみ~」


「新天地~」


「それでは君達の幸運を祈っているよ・・・・本当に」


「任せておけ!」


この後・・何も知らない3人組は支部長を恨む事になる。

期待して向かった・・その町に地獄が待ち受けていることに3人はまだ全然まったく気づいていない。


「これも何かの縁だと思うので我も手伝おうと思うけど特に理由はないかもなのだ。それにお前は信用できるような理由がないとダメみたいなことを言うが出会ったばかりでそこまでのモノを提示は我には出来ないのだ。それでも理由が欲しいというなら我もシュッペルと同じだ、不思議な出会いには縁があるかもしれない。それぐらいなのだ」


我にはチュージーの気持ちは痛いほどわかる。

我の過去も騙された過去、我はもう騙されたくないと引きこもった。

チュージーは恐らく仲間以外は極力信用死しようとしないだろう。

シュッペルはそれを言葉巧みに自分のペースに持って行き信用させた。

しかし、我はそんな起用ではないのだ。


「いい、お前も信用する」


「いいのか?」


「お前の目は何故か親近感が沸いた。それだけだ」


なるほど、我と同じモノをチュージーも感じていたわけか。


「ふむ、では交渉成立というわけだね。チュージー君今からやる事は必ず成功させる危害でやるつもりだがね、作戦が成功した後にもし君を監視している輩が君が死んだと判断して君の死体を回収もしくは死因を捜しに来た場合の対処をしなければならないんだよ」


「どういうことだ?」


「ここはダンジョンだ。何が起きても不思議じゃない」


「なるほどなのだ。魔物だな?」


「その通りだよソウ君!単純だが魔物に襲われて死んだ事にしてしまえばいい。しかし・・ココで問題だ。チュージー君の実験の成果・・というかだね。そのお陰で強力な魔物が減ってしまったと言う事だ」


「それは問題なのだ」


「・・・強ければいいのか?」


「おや心当たりがあるようだね?」


「ある・・しかしそれはあいつ等の思惑通りになる・・お前の考えを否定するかもしれない」


「何か難しい話だね。時間はあるんだ説明してもらえるかね」


「簡単だ実験を続けると言う事だ」


そう言ってチュージーは説明し始めた。



ソウちゃんの出番が増え始めた!ヽ(゜∀゜)/ワーィ

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