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閑話 2組の人気者

考えずにその場の勢いで書いてるのでたまにやる気が・・特に後書き物語(*´・ω・*)

ここは大国オーキラスの国境近くにある街。

カーナルミア山脈という山々に囲まれた街。

今ここは街づくりに必死で複数の村や小さな町の人達が集まり、一つの大きな街を造り発展させようとしている、まさに賑わいという言葉がピッタリな場所だ。


冒険者組合、そして商会、聖堂その3つの大組織も乗り気でその街造りに協力しようと支部をいち早く建設して協力しているほどに。


しかしそれゆえに、活気とは別に問題も多々浮上している、そんな街だった。

そこにボク達はいた。


「おい、戻ってこられたぞ!」


「キャー、おいでになられたわ」


「貴方見えないわよ、ちょっとどいて!」


「おい押すなよ、足を踏むんじゃねー!」


「奏様よ!なんて凛々しいお姿なの!」


「聖女様ー!僕に祝福を!」


「目里様カッコイイですううう」


「可愛いよ慧ちゃん可愛いよぉぉぉ」


騒がしい。

しかしそれも慣れてきた。

不本意ながら、という言い方は街の人達には失礼かもしれないけどボク達はこの街ではかなり有名になって好意的に見られているようだった。

その証拠に僕達が歩いていると花束がたくさん投げられるのだ。


「受け取って下さいまし奏様」


「私のを~」


「そんな汚い花を捨てて俺のをー!」


「この日のために摘んできました!」


「ああ・・外れちゃった・・」


「やったわ!受け取ってもらえたわ!」


「オレのは・・駄目だった・・」


丁度目の前に飛んできた花束を反射的に掴んでしまっただけでこれだ。

ボク達はオーキラスを出発した後いくつかの村や町、主に冒険者組合の支部がある場所で滞在しながらそこにあった依頼をこなしながら旅を続けている。

そしてこの街での滞在は長引いている。

理由は先ほどの街造りの為。

この場所はまだ冒険者の数も少なく、国境近くの山間という理由で非常に治安も悪かったので仕事に事欠かなかった次第だ。

この街の問題、周辺の村への依頼、様々な困った問題を冒険者として片付けでいるうちにこうなってしまった。

まぁ、もう1つ別の理由で足止めさせられているんだけどね。


「は、早く組合に入ってしまいましょう」


「・・木葉ちゃん気持ちはわかるけどしょうがない」


「慧ちゃんの言うとおりだと俺も思います。走っても追いかけられますし」


「そうだね。こういうのは堂々としてればいいんだよ」


「さすが奏さんは女性のファンに慣れてますわね」


心外だ、ボクは確かに同姓に人気があると言う自覚はあるが同性愛者というわけじゃないに。


「ボクもそうだけど目里君だって特定の人気が凄いじゃないか」


「強そうな男性冒険者に囲まれた時はオレ・・逃げたくなりましたよ」


「あれは可哀想でしたわね」


そう思ってても木葉さん助けなかったよね。


「・・・でもアレが一番でしょ」


慧がそういうと一番怖いのがこっちへ向かってくる。


「聖女様、どうかこの子に祝福を!」


「聖女様今度俺達結婚するんで子供が生まれたら名付け親になってもらえませんか?」


「生まれてから言いやがれ!聖女様僕達子供が生まれたんです!6つ子です、名付け親になって下さい!」


「聖女様、彼女と別れたんです・・慰めてほしいです」


なんというか・・ボク達の人気とは質が違う人達に囲まれる木葉さん。

6つ子の名付け親とか・・6人分も名前考えるの辛すぎるよね。


「・・・プッ」


そしてそれを見て笑う我が妹。


「わ、笑ってないで・・笑ってないで助けて下さいまし皆さん!わたくしは聖女なんかじゃないと何度言ったらわかってもらえますの!」


ギフトのせいである意味チームで一番有名になってしまった元副会長の木葉さんはそう叫んだ。

はぁ・・しかし組合までの道のりが遠いな。


しかし次の瞬間。

ある意味助け舟という騒ぎが起きたのだ。

ボク達4人もボク達を囲んでた人達も、その騒ぎの中心にいる人物達に視線を合わせた。


「おい!戻ってきやがったぞ!」


「ギャー!来たわ!」


「見たくないわ!ちょっと帰るからどいて!」


「おい押せ押せ!踏み潰せ!」


「鶴よ!なんて憎憎しい姿なの!」


「仙の野郎!僕が正義の祝福という名の鉄拳を食らわしてやる!」


「人志~!カッコ悪いですぅぅ」


「殴りたいよ鶴ちゃん殴りたいよぉぉ」


ボク達以上に騒がしい。

それもその筈、彼等はある意味ボク達以上にこの街では有名人になっている。

非常に不本意だが先にこの街に来ていたようで何も言えなかったが・・。

元いた世界同郷の3人組だ。鶴川君、仙田君、人志君だ。

彼等も今は冒険者、つまりボク達ど同職というわけだ。


そんな彼等の進む道先にも先ほどのボク達と同じ様にたくさんの物が投げられる。


主に・・・石やガラクタが・・。


「オラ!俺の愛を受け取ってくれ!!鶴野郎!」


「オイラのを~!おらああ!!」


「そんな小さい石を捨てて俺のデッカイのを投げろ」


「この日の為に肩暖めてきましたー!そいや!」


「ああ・・外れちゃった・・」


「とう!やったわ!命中したわ!!」


「オレのは・・目に当たった・・いやほーい!」


嬉々として街の人達は彼らに石や物を投げつける。

正直可哀想だけどコレばかりはしょうがない、というより関わりたくない。

彼等も同じだ、この街は依頼に事欠かない。

本音で言えば冒険者として力もつけれて有名になれて、さらに言えばお金も稼げるという一石三丁というわけだ。

ただしそれは上手くやった場合に限るが・・。


「この腐れ住民共が調子に乗りやがって!」


「痛て~よ~鶴ちゃん~、目に泥玉当てられて目に入ったよ~」


「いい加減にしろよお前ら!」


「ダ、ダメだって鶴ちゃん、今度俺らこれ以上依頼に関係なく騒ぎ起こしたらこの街どころか冒険者止めなきゃいけなくなるって!」


「そうだよ~!悔しいけど我慢してさっさと組合まで走ろうよ~」


「逃げろって言うのか!毎度毎度石ぶつけやがって!これで何度目だと思ってんだ!恩を仇で返しやがって!」


恩を仇か・・確かに鶴川君たちも冒険者。

この街で様々な依頼を受けてそれをこなして来ていた。

ボク達と同じ様に・・それなのに何故こうも扱いが違うのかというと・・。


「よ、よくも俺達の村を水浸しにして全滅させやがったな!」


「暗い場所でしか育たない薬草を怪しい光でダメにしやがって!」


「私の旦那を夜盗と間違えて殴るなんて最低よ!」


「ワシの畑の作物を勝手に食べおってからに!」


というわけだ。

彼等は依頼は受けて確かに成功させる・・がやりすぎるのだ。

そして依頼以外のことでも多々問題をよくおこした。

それが・・あの状況というわけだ。


「鶴ちゃ~ん、ここは逃げるしかね~べ」


「そうしよう、どうせ依頼終わったし報告しに行かなきゃいけないんだし」


「あいつ等の顔だけ覚えておけ!絶対あとで目にもの見せてやる」


「覚えなくてもほぼ街の奴等全員だって~」


「そうだ!あっちの近道行こうぜ!うわっ!腐った卵投げんじゃねー!!!」


そう言って3人は出来たばかりの街のを汚しながら一層綺麗に舗装されているであろう先へ走り出した。


「何をすればあの人達あそこまで街の人達に嫌われるんですか?」


「目里君はご存じないのですの?」


「・・・馬鹿だから」


「違うだろ慧、半分以上あっているけど。彼等3人はね目里君、ボク達より先にこの場所に来ていただけあって多くの依頼をこなしている。依頼の成功率は別として彼等の依頼の受ける数、それにこなす速さがとても早いらしい。でも依頼をこなす上で彼等は必ずと言っていいほど余計な問題を起こすらしいんだよ。それが小さな問題だけならいいが結構大きな問題もあるらしくてね・・それがあの状況さ」


「納得しました」


「・・・馬鹿であってた」


「自業自得ですわね」


「さてと、ボク達もそろそろ行こう。こう言ってはなんだけど彼等に注意が向かったお陰でスムーズに組合まで帰れそうだ。でもボク達はあっちの道から行こう、確かに彼等の向かった先はとても近道だけどね、彼等と同じ道で行くのはほら、嫌な予感がするんだ」


そう言うと3人は素直にそうしましょうと言ってくれたのでボク達はゆっくりと組合に向かうことにした


そして街の人に追いやられるように3人は1つの街道に入っていく。

そこに入ると住人達は追いかけるのをやめ忌々しそうに止まる。

しかし住人達もわかっているらしく何事もなかったように普段の生活に戻っていく。

たくましいな。


3人が入っていった街道の先にはまだ建設中ながらもそこには他とは違う町並が続いていた。

明らかにここだけはお金をかけていますという感じの建物が広がり道もよく舗装されていた。

ここはこの街を活性化される目的で国から派遣された貴族や大商人、元々の街の有力者達が住む区画。

つまり富裕層が住む高級住宅街というわけだ。


しかしだからこそというべきか、ここには厳重な警備体制が引かれており、常にこの街の警備兵が街道の入り口に二人は立っており、巡回兵までいる。

もちろんそんな場所といってもよほどの犯罪者かならず者でなければ街の住民なら一般市民でも普通に入ることは出来る。

それにこの警備兵はどうやら聞いた話では私兵らしく、この住宅街に住む人達が街に申請して正式に自分達の私財で雇っているらしい。


「なんで俺達がここを通れないんだ?」


「さっきも言ったろ、そう上から御達しがあった」


「なんでだよ!俺達ここは3日前に通ったよ?普通に通ったよ?」


「そうだそうだ~」


「3日前はそうだとしても今はダメだ。悪いが戻って回り道をしてくれ」


「戻ったら石投げられんだよ!」


「俺なんか湿ったジジイのふんどし投げられたんだぞ~!」


「そんなの知るかっ!お前ら噂どおり過ぎるだろ!」


「理由を言え!納得できるか!」


「はあ・・わかったかわった。でも暴れないと約束してもらうぞ」


3人はとりあえず微妙に納得できないまでも頷いた。


「ガリッチチ氏をご存知だろ?」


「「・・・リッチチ?」」


「知らないはずないだろ!お前達が4日前に冒険者組合で依頼取って護衛したこの町の市長になられるお人だ!」


「ああ~、あのガチムチじじいか。思い出したぜ、確かこの近くの村の住民がこの街に移住する為に自ら向かって指揮をとるので護衛を、とかいって組合に依頼出したジジイだな。簡単な依頼のくせに報酬がいいから受けてやったんだ。ん?でもあれは普通に何事もなかったぞ?あのジジイが何かしたのか?」


「何かしたのはお前の方だろ!本当に覚えてないのか?」


「はあ?知らねーよ。人志、仙田、お前ら知ってるか?」


「ぜんぜ~ん」


「知らないし」


「だってよ、何かの間違いだ。ほら通せよ」


「じゃあ詳細を詳しく言うがな、村の住民をこの街に安全に移住した後にガリッチチ氏はお前達3人の1人に服を破かれ馬乗りになって襲われたそうだ。それで残りの2人には悪いがこの区域にはチームであるお前達は立ち入り禁止だ。別に犯罪者とまでいかないが他の権力者が今後そういったことのないようにとの指示だ・・・・とんでもない事をしたなお前達」


「はあ?俺そんなことしてねよ~」


「俺も俺も!俺は護衛依頼終わったらすぐに組合に報告しに走ったし!」


「・・・・・・・・・」


「「鶴ちゃん??」」


「・・・その様子だとどうやら犯人はお前か?」


「つ、鶴ちゃんそんな事しねーよ!ね?鶴ちゃん」


「濡れ衣だ濡れ衣~」


「いや、どう考えてもコイツの反応は覚えがあるって反応だろ?」


「ふ、ふ、ふ、ふざけんじゃねーあのクソジジイ!あれは事故だろ!!!!!!!」


「つ、鶴ちゃんやったの!?」


「事故~!?」


「あれはなこの2人がいなくなった後にあのカチカリ・・・・チチジジイが俺の魔法を見せろ見せろうっせーからちょっと見せてやっただけだ!ワシは昔ちょっとした冒険者だった、受けてやるからちょっと撃ってみろ、とか自慢話をずっとしやがるから黙らせる為にちょっと弱めに見せてやったらあのジジイが避ける瞬間に転びそうにやがって弱くても直撃するとヤバイから当たる前に体当たりして助けてやったんだぞ!その時に服が魔法にかすってビリビリに破けたが怪我はなかった!そのあと反動で馬乗りになっただけだ!それをあのクソジジイ・・助けたのに叫んだんだ!キャーーーーーー!とかな!」


「つ、鶴ちゃんそれ鶴ちゃん悪くないよ!」


「当たり前だ!」


「そ、そうだとしてもだ。ガリッチチ氏は妻子もいるのにお前に襲われて貞操の危機になるところだったと仰られている。ガリッチチ氏は自分も昔は冒険者だった、だから報酬は報酬、組合にも報告はせず問題にはしないが、この区域には他の貴族やこの街の為に出資してくれている有権者の方々もたくさんいる。その・・なんだ・・そういった性的思考が悪いとは言わんがな・・他の紳士達が襲われるのを防ぐ為にも・・お前達は立ち入り禁止になった」


「お、お、お、俺はノーマルだああああああああ!!!」


「鶴ちゃん落ち着いて~」


「は、話を聞いてると確かにお前は良い事をして気の毒に思う。しかし自分の性癖や趣味が他人と違うことは恥ずかしいことじゃない。そうだ!お前の様な者にピッタリの町があってな、オス・・」


衛兵が言い終わる前に鶴川君は叫ぶ。


「うっせえ!違うつってんだろ!変な方向に気をつかってんじゃねーよ!!」


「つ、鶴ちゃんはホモじゃねーよ!」


「そうだそうだ~」


「お前らもちょっと距離とって擁護してんじゃねーよ!!」


「「ご、ゴメン」」


そしてその後3人は元の道に戻った後、再び街の人達に物を投げられながら逃げ惑い、組合に到達したとういう。


そんな事があったあとにボク達はすでに組合に着いており、受けた依頼の完了報告を終えていた。


「はい、確かに依頼の達成を確認しました。こんなに早く素晴らしいですね。お疲れ様でした。次の依頼はどうなされますか?」


「このところ連続で依頼をこなしのでちょっと間を空けようと仲間で話のでちょっと考えさせて下さい」


「わかりました。まだまだやっかいな依頼がありますので出来るだけご参加くださいね」


「はい、考えてみます」


そんな組合の受付嬢とのやり取りを終えてボクは仲間達が待っている席に戻る。


「・・・お疲れお姉ちゃん」


「お疲れ様ですわ」


「ご苦労様です」


「3人ともすでに飲み物まで頼んで完全にリラックスモードだね」


「奏ちゃんのも頼んでおきましたわ。とりあえず座ったらどうでしょう」


「ありがとう木葉さん」


「と・こ・ろ・でアレはなんですの?」


「・・・だからゴミだって」


「何故あの人達は近道を行ったのにオレ達より後に着いたあげく、着いてすぐに大声を出しているんですか?」


「ボクに聞かないでくれ・・」


そう目里君が言った方向を見るとボロボロになりながら頭に卵のカラや藁をつけた3人組が受付に向かって何か怒鳴っていた。

どうやら受付嬢が呼んだらしい上司も対応していた。


「ですから~これではペナルティを払ってもらうしかないんですよ!最初の説明まったく聞いてなかったのですか?ダメって言ったじゃないですか!」


「はあ?どうしてだよ?たくさんあったほうがいいに決まってるだろ?余分に取って来た奴も買い取るのが普通だろ?なんで没収なんだよ」


「貴方達の受けた依頼はこの街の西にある崖の岩場に咲く医療に使う花の採取です、とても簡単そうに見えますがそこに行くまでの険しい道のり、この時期にしか採取できない事、以上の事からランクの低い冒険者では中々達成が難しい奴ですよね?」


「だから達成してきただろうが、あんなの俺達にかかれば簡単すぎんぞ」


「だ~か~ら~!依頼の内容しっかり聞いてました?行く前にしっかり念を押しましたよね?採取する花はとても貴重でそこしか取れない!生態系を破壊しないために依頼の10本以上取ってはいけないと!それ以上取ると来年以降の採取が困難になるのでしっかりと管理されているんですよ!何度言わせるんですか!」


「知らねーよ、たった10本でこんな高値で買ってくれるんだろ?多いほうが良いに決まってるだろうが。それに病気とかに使うんだったら多く取ってきたほうが多く助かるじゃねーか、屁理屈言ってないで余分に取って来た分も買い取れよ。ここで買い取れないから商会持ってくぞコラ」


「なんで理解してくれないんですか!まさか・・もしかして全部取って来たんじゃないでしょうね!?たくさん取り過ぎたら来年以降の患者さんとかどうするんですか!それに今年足りない分はちゃんと他の地域で採取できる場所がわかっている所から輸入して調整しているんです!分けて採取する、そういう仕組みなんです!近場の採取場所がなくなるという事がどれだけ重要かわかってます!?緊急にこの花が必要な場合に採取できなくなったら貴方達はどう責任とってくれるのですか!?」


「いいから金よこせよ」


「・・・・支部長ぉ・・ぐすっ」


受付嬢は何度も何度もちゃんと事の重大さを3人に説明するが彼等は一考にまともに取り合わずに依頼の成功報酬+余分に取って来た花の代金を請求していた。

普通の人なら理解する努力をするのだがアレだけ力説したのにまったく理解してくれない受け嬢は涙ながらに上司に助けを求めた。


「まず・・チーム鶴仙人君達」


「その名で呼ぶな!俺らのチームの名前は奈落の光って何度も言ったろ!」


奈落の光・・本当に何故そんな名前に、彼等が奈落に落ちていく未来しか見えない。

にしても何で支部長がボク達がいた元世界の彼等3人組のあだ名を知っているんだ?

と思ったが後ろでボクの妹が思いっきり笑っていた。


「・・・・ぷっ・・ぷくく」


慧・・犯人は君か。

にしても知っていてそれを言う支部長も相当だと思った。


「光は絶対抜かすなよ~、俺のシンボルだからな~!」


人志君がそう言った。思い出した彼のギフトは眩しいしかとりえがない光の魔法だったね。

どうやら光に相当こだわりがあるようだ。


「失礼したね。だが物分りが非常に悪い君達に言っておくがな、君達が受けた依頼はこの街の診療所が毎年冒険者組合と商会に共同で毎年出している依頼なんだよ。どちらかで依頼を受けたものがいればすぐに連絡が行きその依頼は受けれないようになっている。それは依頼が重複させないためだ。かつ早急さがもとめっられる依頼というわけだ。今回君達が受けた時点で商会の方でもその花は商人達には取りにいけても行かないように厳命してある。理由はもちろん先ほどこの受付の子が君達に説明した理由だ」


「わかるように言え!!」


これ以上わかりやすい説明はないと思うのだけど・・。


「ふぅ・・つまりだ。君達は依頼内容の10本を大幅にオーバーして採取した。これは重大な違反だ、そしてそれをわかろうとしない、君達は余分に採取してしまった花を我々組合が買い取らないなら商会に持っていくという。それは無理だ、なぜならコレが完了した時点で組合と商会で連絡がなされているからだ。もし持っていけば出所を聞かれて下手をすれば君達は罪とわれることになる」


「なんで良いことをして犯罪者になるんだよ!」


「俺達犯罪者なの!?」


「んなわけねーって!」


「つまりだ、規律を守ってこその冒険者なんだよ。依頼を達成してくれたのはありがたいが君達が取り過ぎたせいで他の者達に採取場所の調査を送り出さなければならなくなった。今回の報酬は悪いが2割程度になる。そして余分に採取してしまった花は没収だ」


「ふ、ふざけるな!全額よこせこの悪徳野郎!」


「ふざけてなんていない。採取したばかりの花をまた植えればもしかしたらまだ間に合う可能性がある。そういった技術と魔法を扱う者もいるんだよ。その者達を雇う費用や手間賃を抜いたのが今回の君達の報酬だ。正直な話、コレまで君達に迷惑をかけられたことを考えれば今回も組合から解雇通知を出されないだけ感謝してほしいくらいだよ」


「本当にクソだな冒険者ってのは!!!」


「そのクソ冒険者なのだよ、君達は」


「じゃ、じゃあ昇格の話はどうなるんだ?」


「そうそうそれそれ~!!」


「それはちゃんと執行してくれんだろうな?金が少なくなるのは正直クソムカツクがこの依頼が達成っていうなら約束は守れよ」


「ふぅ・・本来未達成なのだが・・返事は明日しよう。食堂にでも行って何か食べてきたらどうだね」


「オイ行くぞ!」


「食事だ、わほーい!」


「ここの飯結構好きなんだよね~」


支部長は困り顔で3人が去るのを確認するとこちらを何故か見てきた。

そしてちょっと頭を下げた後にボク達のところに歩いてきた。


「失礼、赤の団の皆さん。少しだけお話よろしいでしょうか?」


なんだかとっても嫌な予感がするが相手はこの組合で一番偉い支部長さんだ無下に扱うわけにはいかずボク達は軽く頭を下げて空いている席を勧めた。


「オイ、君この方達に新しい飲み物を・・あ・・軽く何か食べますか?もちろん私の奢りですので」


「気を使わせて申し訳ないです。丁度依頼が終わって寛いでいたのでお言葉に甘えます」


「・・・何でも頼んでいいの?」


「もちろんだとも」


慧が支部長に確認を取ると支部長は見たこともない笑顔で答えた。

鶴仙人を教えたことといい、この二人いつの間に仲良くなったのかな。

この世界にきて人見知りだった慧が随分人と話せるようになりコミュニケーションスキルが上がった気がする。


「そちらの聖女様と・・目里君だったね。お二人も好きな物を頼んでくれ」


「こ・の・は!です!!」


「どうも」


「それで何か御用がある感じですが」


「うん・・うん・・そうだね、君達みたいなチームがこの街に来てくれたことを新設された組合の長としては非常に感謝している。それというのも所属冒険者が活躍してくれれば街の人達にも受け入れてもらうのが早いからね」


「あの支部長、前置きはいいので」


「すまない、だが感謝しているのは本当だ。徒党を組んで国境周辺を荒らしまわっていた盗賊の壊滅や君達が発見した数々の希少な薬草の採取場所、そして何よりまた1つダンジョンを攻略したそうじゃないか」


「ダンジョンは小さな物でしたので、それに半分以上自分達の為にしていることです」


「冒険者とはそういうものだよ」


「それで御用は?」


何かを言い出したいが言い出せそうにない支部長にボクは気にする事はないと伝える為にちょっと強めに急かした。


「うむ、実はだね。先ほどの受付での一件を恥ずかしながら見られていたと思うがね。彼等と依頼に行く前にちょっとした約束をしてしまってね。本来なら今回の依頼の散々さから見て反故にしたいのだが、もう過去に何回か彼等にはそれを使っているので今回は流石にこちらも分が悪い。彼等は確かに馬鹿・・失礼ちょっと考え足らずで問題も物凄く多いがちゃんと依頼をこなすことも多々ある。その点はちゃんと評価したいとこちらも思っているのでね」


馬鹿って言いそうになったよね。


「その点はボクもわかります。彼等は残念ながら3人とも馬鹿ですが実力はあると思います」


「・・・馬鹿ですが」


「馬鹿ですね」


「お馬鹿ですわ」


「お、同じ意見の人がいてくれて良かったよ」


支部長は目をヒクヒクさせながらそう言った。

馬鹿の部分が同じ意見なのか、実力があると言う部分なのか支部長はどっちのことを言ったんだろう。


「それでだね、非常に頼みにくい事なんだが、君達に彼等の昇格試験の監視役をやってもらいたいのだよ」


「・・・お断りします」


ボクが答える前に慧が断った。


「慧君そんな事を言わずに!また組合秘蔵の魔本を貸すから!」


聞いたことのない話だ。

ボクの妹はボクの知らない所で一体なにをしているのだろう。


「・・・むっ」


そしてそれに負けて考え始めている。


「なぜボク達なんですか?」


「君達も知っている通り冒険者にはランクがあり下からアイアン、クロム、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナだ。今あの3人はクロムの位置にいる」


「・・・え?」


「・・・ぷっ」


「クロムって下から2番目ですよね?」


「あの方達クロムでしたの!?あの数の依頼をこなしていて!?」


「そうなのだよ、彼等がここの街に来るまで通った組合での依頼の達成率は報告を受けて知っている。そして今まで見てきたつもりだ。しかしやはりマイナス面が大きく上回ってしまって昇格には組合の規則と照らし合わせても無理なんだよ」


「・・・じゃあアイアンに戻そう」


慧それは降格だよ。


「流石にそれは・・話を戻そう。私もこの件を上に報告したら私の判断に任すと言われてしまってね。私はしかたなく条件を出したんだ。ブロンズ級の依頼3つ達成とこれ以上二度と街で騒ぎを一切起こさないという条件をね。そして問題はあったかさっき依頼達成で3つ目、そして私が約束をして以降彼らが街で暴れたという報告は入っていない。これは極秘だが鶴君が街の50代男性のお偉いさんに無理矢理・・その・・襲いかけた・・というのは聞いたが組合には被害届は出てないので不問にした」


今なんて言った?暴れないとかブロンズ3件達成より重大な事実を聞いた気がする。

にしてもそれで彼らは街の人達にあんな扱いを受けても我慢してたのか。

その点はちょっとだけ見直したかもしれない。


「・・・中年のおじさんを襲った」


「オレ、聞かなかったことにします」


「まあ鶴川君そっちでしたの!?しかも熟年の殿方!上級者じゃないですの!」


「みんな、鶴川君の性癖はここだけの話にしよう。彼がどんな人を好きでも応援はしてあげよう」


さらに支部長は話を続けた。


「というわけで彼らは辛くも目標をクリアしたと私は判断せざるえない」


「なるほどです」


「しかし昇格試験はシルバーより以上の冒険者の同行の元に行われるのはクリアした君達なら知っていると思う」


「はい、もちろんです」


「そこでまた問題が起きてね。この街にはまだ冒険者自体が少ないシルバー以上は4組ほどいるがね」


「まさか・・他3組に断られた?」


「そうなんだ・・そうなんだよ!試験管業務は強制ではない!まさか全員断るとは・・あの3人の名前を言った途端だよ、だからその心苦しいが・・君達にお願いしたいのだよ」


はぁ・・。

そしてボク達4人は困ったように全員で顔を見合わせた。


「もちろんタダでとは言わない!君達チームをゴールド昇格を本部に私名義で直接推薦状を書かせてもらうというのはどうだろう!そうすれば君達が最初に言っていた目的も達成できろだろ?」


それは確かにいい話だった。

ゴールドになればかなり組合内で優遇処理が受けられる上に僕達が当面の目的も達成される。


「みんなどうしようか?」


「・・・受けた、判定失格」


「け、慧君!試験官は公正に!それに失格前提は勘弁してくれ!」


「オレはやっていいと思います」


「目里君にしては前向きですわね」


「なんていうかですね。あの人達が暴走した時止めれる試験官はこの街にはいない気がするんです」


「・・・確かに」


「確かにあの3人は知能はあまり高くないですけど能力だけはシルバー以上ですわ」


「なら頼めるかな!?」


「わかりました支部長、一応その試験官の件は了承させていただきます。ですがあの3人がボク達が試験官だと伝えたらどういう反応をするかわからないのでそれはそっちで何とかして下さい」


「そこは任せてくれたまえ。試験を受けさせてやるんだ、文句は言わせんよ」


面倒事だけど仕方ない。

まったく、せっかくオーキラスから出て結構順調にいってるというのあの3人はここでも迷惑をかけてくれる。

話がまとまってニコニコしている支部長が席から立つと同時にそれは起こった。



「オイ!なんで俺の事をさっきから睨んでやがる!気持ち悪りーんだよ!」


「鶴ちゃんここで暴れるのは一番まずいって!」


「でもさ~本当にあいつ食べている時ずっと鶴ちゃん睨んでたしさ~喧嘩売ってるんだよ~」


「何か文句があるなら睨んでねーで口で言いやがれ!」


鶴川君は自分を睨んでいたらしいブロンズだろうと思われるスキンヘッドで顔に傷のある冒険者に対して怒鳴り散らしていた。


「オイ!ハゲ!コラ!」


鶴川君の暴言が効いたらしく睨んでいたスキンヘッドの男は席を立つと鶴川君の前に行き今にもお互いに手が届く位置で止まる。


「オイ、確かツルカワって言ったなお前、本当にに噂通りなんだな?」


「ああ!どういう意味だゴラ!どんな噂か知らねーけどな!俺はお前が考えているほど優しくねーぞ?」


「そうか・・責め派なのか!」


スキンヘッドの男は何かを考えるように下を向いた。


「なんだ当たり前だろ!男は攻めてナンボだろ!守ってどうすんだよ!ぶん殴るぞ!言いたいことがあるならさっさと言えや!怖いなら席戻って大人しく水でも飲んでろ!」


「受けじゃないんだな・・わかった・・」


「ちっ!図体がデカイだけが・・期待させやがって」


「期待?わかった責任を取る!オレと今夜一緒に過ごしてくれ。噂は聞いた!俺はまだ30後半でお前の趣味にはちょっと届かないかもしれないが損はさせないつもりだ!オレは責められるのが好きな方なんだ!優しくしてくれない方が・・その、か、感じるしな!ど、どうだ?」


ドゴッ!!


「ブッ・・」


鶴川君はその告白を聞いて顔を真っ赤にして瞬間的にスキンヘッドの男を殴り倒していた。


「ふ、ふざけんだよ!」


スキンヘッドの男は辛うじて意識があるらしく、一緒にいた仲間に呟いていた。


「おい・・本当に殴りやがったよ。あいつの拳からオレへの愛を感じたぜ?あと数年立てばあいつの好きっつう年齢にはギリギリ届くかもしれね・・オレがんばるわ・・あいつ好みの男になるわ・・応援してくれるか?」


「もちろんだ」


「頑張れよ!」


いい仲間に励まされていた。


「支部長、良いんですか?アレ試験取りやめでしょ?」


「あ、あれは個人の趣味志向の問題だ。組合内の揉め事ではない・・と思う。それに私はどんな形でも愛があればいいとは思っている。・・・個人としては理解ができないがね」


「・・・鶴川は責めっと」


「これで決定ですね」


「あとの二人はどうなのかしら?」


3人は完全に面白そうにそれを見物していた。


「つ、鶴ちゃんもう行こうぜ」


「はあはあ・・はあはあ・・」


「こ、興奮しないでさ、ほら!いい酒がある店発見したじゃん、そこ行こうよ」


「これは興奮じゃねー!ムカついているんだよ!」


「ほら~いこういこう~」


人志君が背中を押して、仙田君が腕を引っ張って、興奮した鶴川君を連れ出していった。


「慧君、私は50代で男性なんだがもしかして鶴川君のストライクゾーンには入っていないだろうか?」


「・・・そういえば熱い眼差しで見ていたかも、さっきの支部長へ態度も熱い思いの裏返しかも」


「つ、妻一筋なんだが・・」


慧からかうのはやめてあげなさい。


支部長は青い顔をして戻っていくと受付嬢に何かを必死にお願いしていた。

それを言われた受付嬢は非常に嫌な顔をしていたがやがて頷いていた。



次の日支部長に昨日の昇格試験の返事を聞きに鶴川君引き入る3人組が訪れただが、約束したにも関わらず何故か支部長は留守にしており、受付嬢から昇格試験は受けれる事、試験官がボク達だと聞かされたらしい。




黙り込み何かを考えていたチュージーがゆっくりと顔を上げて言う。


「その提案の方法を教えてくれ。保障がないならなおさらだ」


「もちろんだよ。方法は簡単だ。君には一度死んでもらう。死ぬといっても仮死状態だ、おそらく君には発信機のような物が付いていると考えている。仮死状態なら死んだと同じ、向こうも君の事を探すかもしれないが諦める可能性のほうが高いからね」


「お前の言う事は当たっているかもしれない。俺がどこにいても場所がわかるとあいつ等は言ってた。でもその仮死?とやらになってもあいつ等に場所がわかったらどうするんだ?」


「そこなんだがね、私も馬鹿じゃないつもりだ。私は研究者で生物学も治めている、君が仮死の間に色々を調べさせてもらう、そうしないとわからないからね。はっきり言うとこうだ。君は仮死になる覚悟だけでいい、仮死状態になって君についているかもしれない君を把握する物を発見する事が重要だ。もし発見できれば成功。発見できなければ失敗。可能性が低いとはそう言う事だ」


「発見できれば俺は死んだ事になり自由か?」


「その通りだ。君に命令してこんな事をさせている者も流石に死んだ者に命令は出来ないだろ?おそらく相当の力を持つ者だ、当然君が死んだことも把握できている筈だ」


「肝心な事を言ってないぞ。その仮死とやらはどうやるんだ?それにいきなり死んだらおかしいだろ」


「何もおかしな事などない。ここはダンジョン何があってもおかしくない」


「確かにそうなのだ」


「仮死の方法だがね、私の魔法を使う。私はこう見えても魔法が使える、長年の修行と研究で使える魔法の数もかなりある。今回使うのは私が研究の果てに偶然できるようになった魔法だ。成功率は高いので安心して欲しい。どうかな?」


「仮死の後はちゃんと生き返れるのか?それに返事はお前達を完全に信用しないと出来ない・・な」


「計算では生き返れる、この提案を呑めばまさに君は私とソウ君に命を預けるというわけだ。しかも間接的だが君の仲間の命も、と言う事になるね。君が死ねば仲間を助けれる可能性もなくなるかもしれないのだから」


シュッペルはそこまで正直に話す。

シュッペルの性格から言って嘘はまったく言ってないだろう。

研究者と言うだけあって現実主義者のようだ。

しかし可能性が低いがやらないか?と提案する時点で同時に理想主義者でもある。


「お前は・・お前達は俺に協力して何を得る?」


「どういう意味だね?」


「俺の状況を話した。俺に関わればお前達も大変な事になるかもしれない。それなのにお節介な提案をして俺を自由にするという。そんな事になるかもしれないと言うのに自分達が何も利益を求めないというのはないだろ」


それを聞いたシュッペルが今度は考え込んだ。

しかしすぐに口を開いた。


「もちろんだ、私もタダとは言わない。君を診させてほしい」


「ど、どういうことだ?」


「警戒しないでくれたまえ。取って食うというわけではない。私は研究者と言ったろ?君は不本意でこの世界に来たかもしれないがこの世界の私にとって君は未知だ。だから君の事を教えて欲しいんだよ、ゆっくりとね。だから君を自由にして色々と邪魔されずに知りたいんだよ。おっとちなみに私はノーマルだよ」


「べ、別にそっちの心配はしていない。シュッペルと言ったな。お前の理由はわかった。これまでのお前の行動や話を聞いているとその理由なら納得できる。で・・お前はどうなんだ?お前も手伝うのだろ?」


チュージーはこっちを見て言った。


「え?我?」



ソウちゃんです(*´・ω・*)


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