報酬と・・
長くなる~!書いてると長くなる~16000文字とか最長?
まぁいっか(*´・ω・*)
「生きてたんですか?」
僕のその一言は暗い牢獄の入り口の前でグッタリしている男の人に向けられた言葉だった。
「・・まるで死んだほうが良いみたいな言い方ですね」
「まさかまさか、そんな風に聞こえました?そんなわけないじゃないですかぁ。シンガイダナー」
「・・後半棒読みじゃないですか?」
「気のせいですよ」
「・・・まったく貴方達がもう少し早く来ていただければこんな状態にはならなかったんですがね」
「そこまでにしておけ、ナッハガイム。私達だって都合という物がある。間に合って命があっただけマシだろう?それに今は魔力の枯渇で喋るのも億劫な筈だ、文句があるなら後にしろ。まぁ後で文句を言われてもしっかり反論するがな」
そうなのだ、ヒルマさんの言うとおりこっちにもちゃんと遅れた理由があったのだ。
暫くナッハガイムさんの状態を鑑みて大人しくしていると通路の向こうから何か大きなものが必死にこっちに向かって来るのが見えた。
「はあはあはあ・・無事か!ナッハガイムは無事か!?」
王様!?ワグル王が息を切らして必死にこっちに向かって走りながら叫んでくる。
しかも1人で!?護衛ぐらい連れてきなよ・・。
「ワグル王、ナッハガイムは残念ながら無事だ。外傷の方も惜しいがかすり傷程度。今は魔力の使いすぎて体に力が入らない程度だ。そろそろ返事ぐらいはできるだろう」
「そ、そうか!良かった本当に良かった」
「あの~、それで説明して欲しいのです。なぜ王様がナッハガイムさんの依頼書をハレン達に届けたのです?」
そうなのだ、セナス暗殺未遂事件のあと怪我や体力の回復、アミーのこれからの事を与えられた部屋でゆっくりと4人で考えていると珍客が来たのだ。
ノックもせずに必死の形相で先ほどの様に走ってきたワグル王だった。
ナッハガイムがそのハレンちゃんの疑問に対して口を開こうとしたその時。
「それには私から答えよう。ナッハガイムはもう少し休んでおれ。この男、ナッハガイムは皆に、近親者以外には内緒にしているが私の歳の離れた義弟だよ」
「え?こんなのが?」
しまった!素で答えてしまった!
「失礼ですね・・私と王に対して」
ほら・・瀕死のナッハガイムさんに突っ込まれちゃった。
「いや、美紅の気持ちは私も同感だ。なあハレン」
「な、なぜハレンに振るのです?えーと、優しそうな王様に対してナッハガイムさんは目つきのせいでちょっと・・」
ハレンちゃんフォローになってないよ。
「気にしないで欲しい。ナッハガイムは私の父が死ぬ時に連れてきた養子でね。優秀な子を連れてきたから自分が亡くなったら後を頼むと言われたんだよ。私も義弟だが子供のように可愛がったんだが王になった時に疎遠になってしまってね」
「王、それは私から言ったことですよ」
「お前が私の事を思ってくれたのはわかる。しかしお前は気を使いすぎたんだよ。王になるものに自分のような経歴の者がいるなんて知れたら私が困ると思ったんだろ?それくらいいくら私でもわかるぞ」
「いえ、私は父と同じ立派な商人になりたいと幼少の頃から決意してました。あなたがフリス様と一緒になり王になれば血が繋がってないとはいえ、たぶん優しい貴方は私を要職にでも就かせてくれたでしょう。それでは私の夢が叶わなくなるので、あの時はそう言ったのです」
「素直じゃないですね」
「そうだな」
「こんな時ぐらい素直になればいいのです」
「愚か者愚か者」
ワグル王に続くように僕達4人はここぞとばかりに突っ込んだ。
「なんですか貴方達4人まで」
ナッハガイムさんは少しは状態が回復したようでだんだん口が回るようになってきたようだ。
とりあえず心配は要らないようなので僕達は肝心な事を聞くことにした。
「それで何で王様をパシリにしたんですか?」
「物凄い嫌な言い方ですね」
王様の前なのに露骨に顔をしかめるナッハガイムさん、僕のせいじゃないよ?
嫌な顔をされてもなぜ王様がナッハガイムさんからの手紙を持ってきたかを確認しなければならない。
「それは私の立場では城に滞在している貴方達に会うすべがなかったからですよ。美紅さんにはあの時は偶然会いましたが、あの時はまだ調べている最中でしたので。そもそも貴方達は王族の個人的客人と言う立場なので非公式で城にはいないことになっていたようなので余計にです」
「意味がわからないんですけど?非公式でも僕達程度より王様に連絡するほうが難しいでしょ?」
コレには王様が答えた。
「それは私がもし何か緊急の事態があった場合信用できる配下を通していざという時の連絡方法を作ってたのだよ。ナッハガイムは嫌がってあまり使わなかったがね」
「そういうことです。しかし今回のあの化け物で元偽上司のキャングスがセナスの仲間という事が調べていくうちにわかったのですよ。多少貴方達にも関係しているのでそれは感謝していますが。そして偽キャングスがセナスに接触しようとする事を知りました。でも事が事なので私しか動けなかったので対処しようとしましたが、やはり保険として貴方達に手伝ってもらおうと思い、王に迷惑をかけたくはありませんでしたが連絡を取らせて頂きました」
「それでですか~。王様が焦って走ってきて貴方から変な手紙をもらった時は驚きましたよ」
「驚かして申し訳ないですね、っと言いたいところですが少々苦情を言ってもよろしいですか?」
「え?苦情ですか?なんですか?心当たりがありませんけど?」
確かに僕はアミーのお守りで間に合わなかったけどヒルマさんとハレンちゃんがしっかり間に合って、ちょっと疲労しているけどほぼ無傷でナッハガイムさんを助けることが出来た。
敵にには逃げられたらしいがセナスの脱走は防いだと言っていい、なのに苦情?意味がわからないんですけど。
「ふぅ、では助けていただいた身分で心苦しいですが言わせて頂きます。私の送った手紙の内容は見たのですよね?」
「はい、もちろんですよ。そもそも見てなければここにはいません」
貴方達が王の為に働いている事、そして王族の方々を助け命を救ったことは調べて知っております。実は私は暗殺実行数時間前にに上司とセナスが計画を話しているのを聞いたのです。どういう方法か知りませんが私に扮して殺すと話しておりました。それを直前に知った為に貴方達に伝えれなかったことが悔しくて仕方ありませんでした。しかしあの大会で優勝したほどの実力者である貴方達ならきっと王族の方々を助けて頂けると思っておりました。現実そうなったのを大変嬉しく思います。ですがまだ終わってはおりません。私は貴方達と会って以降上司であるキャングスが怪しいと思い常に尾行し調べておりました。そしてついに尻尾をつかました。キャングスはセナスを助ける為に行動を起こすと予想されます。私はそれをさせない為に行動を起こすでしょう。しかし私は戦力にはあまり自信がないので助力をお願いしたい。恐らく今夜それは実行されます。これは私からの貴方達への依頼だと思っていただきたい。もちろん報酬はお支払いいたします。商人組合副支部長 ナッハガイム。
「ですよね?」
「はい、わざわざ手紙を開いての朗読非常に感謝いたします」
「で?苦情ってなんですか?」
「わからないんですか?」
「はい、さっぱり?ヒルマさん、ハレンちゃんわかります?アミーは・・飴食べてるね」
二人に問いかけると首を振ってわからないというジェスチャーをしてくる。
「そうですか・・では言います。私がその手紙を王に送ったのは今日の朝の事です!遅くとも私の使った連絡方法なら貴方達の元に手紙がつくのは昼過ぎぐらいの筈です!なのになぜこんなにここへの到着が遅れたのですか?むしろ私より先に来て対処しててもおかしくない筈ですよね?」
「あーーー!そういうことですか!」
「それで?ちゃんと理由をお話していただけるのですか?・・・もしかしてワグル王が手紙を届けるのが遅れたとかそういた場合は私は立場的に何も言えませんがそれではないですよね?」
「わ、私はナッハガイムがさっき言ったとおり正午過ぎには美紅さん達にお前の手紙を届けたぞ!というより私も手紙の内容は知らなかったのだ。先ほど美紅さん達に聞いてここに来たぐらいなのだ」
「なるほど、では遅れた理由は貴方達3名、いや今は4名になっているようですが、そちらにあるわけですね?」
「遅れた事など今更どうでもよくないか?お前は助かった、そしてセナスも脱走させなかった、それでいいじゃないか」
ヒルマさんがナッハガイムに向かってそう言った。
「いえ納得できません。私はしっかり自分に出来る事をやり、時間がないまでも計画を立てて貴方達に頼みました。そもそも私はこの計画に自分の命までは賭けていませんでした。なのに何度死ぬと思ったか・・あんな化け物だとは思いませんでしたよ、まったく」
ふむ、確かにナッハガイムさんの言い分ももっともだ。
この人がいなければセナスには確実に逃げられていた。
僕達はキャングス支部長が偽者だったなんて毛ほどにも疑っていなかったのだから・・・。
でもでもこっちにもちゃんと理由がある!
「で?さっさと言ってくれますか何故遅れたのですか?」
「本当に知りたいんですか?」
こういう事はしっかり確認を取っておかないとね。
「もちろんです」
「では言います。僕達は貴方を、ナッハガイムさんを信用してなかったんです」
ああ・・だから言いたくなかったんだよね。
この国に来てずっとポカーフェイスで気取っていたナッハガイムさんの表情が崩れてこめかみに血管が浮かんでいる。つまりちょっとキレそうなのだ。
「な、なるほど・・確かに貴方達とは初対面からちょっとしたいざこざで印象も悪かったと思いますが、私は何度も貴方達にそれとなく助言をしたつもりですよ?大会の時も、支部長から情報を貰った後も、お城で美紅さんに偶然会った時も、もちろん誰の目があるかわからなかったので遠まわしに言ったかもしれませんが」
僕とヒルマさんとハレンちゃんはお互い顔を見合わせて考える。
そして出てきた言葉が・・
「「いつの話??」」なのです」
「何言ってるんですか!?この大会は危ないので棄権したほうがいい!貴方はうかつなので警戒をもっとしたほうがいい!と言ったでしょ!ちょっと考えればわかる事でしょ!」
いいえ、まったくわかりません。
そもそも貴方の嫌味と胡散臭さが助言?を覆い隠したのが全ての原因です、はい。
「落ち着いてくださいナッハガイムさん、貴方は信用できていなかったと言っちゃいましたがヒルマさんがさっき言ったようにちゃんと救援に来たじゃないですか~。それに僕達にだって言い分はありますよ?実は僕達は重要な案件とか次の行動に迷った場合は仲間内でちゃんと話し合って多数決を取って決めるんですよね。だからその話し合いの結果で・・わかるでしょ?こうしてちゃんと来たって事は頭の回転の速いナッハガイムさんなら」
「ちなみにですがその話し合いとやらの多数決の結果を聞いても?」
え・・聞きたいの?何この人のしつこさ・・僕達一応命の恩人だよ?
「・・・・2:2です」
「信用して助けに行く2票。行かない2票じゃないですよね?もしそれだったとしても分かれていますよね?美紅さんは行かないに入れたんじゃないのですか?」
「それは違うのです!美紅様はとてもお優しいお方なのです!行くに入れておりましたのです!行かないに入れたのはヒルマさんなのです!!」
ハレンちゃんが僕を庇うように胸をはって言い切った。
が・・。
「子猫!お前も行かないに入れていただろ!私だけを悪者にして売るな!」
「な、なんのことかわからないのです」
ちなみにアミーはノリで僕と一緒のタイミングで手をあげたらしい。
「はぁ、二人共・・別にわざわざそれに答えなくても・・ナッハガイムさん2:2に分かれましたが、その後の話し合いでちゃんと助けに行くとなりました。まぁその話し合いが長引きすぎて遅くなったんですけどね」
「話はわかりました。では私にも比があったようですね。感情では納得いきませんがこの件は不問にします」
「お前のそういう態度のせいで私達が遅くなったんだぞ?ワグル王、貴方はこいつの育て方を間違えたぞ」
おお!王に文句を・・ヒルマさん流石です。
「う・・ナ、ナッハガイムは優秀なゆえに他の者の感情をよく考えずに行動したしまうことが多々あるのだ。ナッハガイム、お前のしてくれた事や気持ちには感謝しかないがな、この件に関しては結果お前を助けてくれたのはこの者達だ、私も、私の大切な家族も助けられている。素直に礼を言いなさい」
そうだそうだー!
「そうですね、王の仰るとおりですね。蒼の商店の方々には感謝を。依頼を受けて頂き、命を救っていただきありがとうございました。しかし今後こんな事があれば正式な形でそちらも謝罪してもらいますので」
素直じゃない。
決めた!ナッハガイムさんの依頼はもう受けないでおこう!
「それでは今回の件の報酬の話をしましょうか」
え?報酬は絶対貰うけど今その話をするの?と思ったら王様がそれを止める。
「いい加減にしないかナッハガイム、勤勉なのは良い事だが今からする話でもないだろう。もう夜も更けこのような時間だ、報酬の話がしたければ後日にしなさい。私達も美紅さん達には同じ様な話がある、その時にでも一緒にお前も列席しなさい」
「わかりました。気苦労をお掛けして申し訳ありませんがご一緒させていただきます」
王様に対しては本当に素直だなこの人。
「うむ、それにお前暗がりでよく見えなかったが擦り傷が多少あるではないか、医者か回復魔法を使える者を呼ぶので今夜はここで休んでいってくれ。セナスの事に関してはどうやら動けはしないようなので妻と話して見張りを増やしておこう。」
あ、本当だ・・ちょっと服が破れて擦り傷がある、まぁ転んだ程度でもできる傷だし無傷みたいなものだよね?
「その様な事をしていただかなくても自分で直せます。魔力が回復すれば自分で魔法をかけますよ」
え?魔法使えるの?しかも回復魔法を?こんな人が?羨ましい!
「な、何をするのですか!痛いですよ、私に何か恨みでもあるんですか?私と貴方は初対面のはずですよ?ちょっと傷の部分を叩かないで下さい!」
ナッハガイムさんがいきなり叫びだしたと思ったら、アミーがナッハガイムさんをバンバン叩いていた。
「って何してるのアミー!初対面の人叩いちゃダメって!もしかしたら本能で嫌な人ってわかったとかでも
ちゃんと断ってから叩きなさい!叩いていいですか?って聞かないとダメだよ!」
「美紅それはちょっと違うと思うぞ」
「でもアミーちゃん、叩くのはダメなのですよ」
そして注意された当人のアミーは。
「叩いていいですか?叩いていいですか?」
叩きながらそう言い続けた。
叩かれ続けたナッハガイムさんは立ち上がって嫌味をしっかりと言ってきた。
「まったく・・小さな子供の躾ぐらいしっかりしてほしいですね。まぁ私を叩くように仕向けた線も考えられますが・・・ん?」
「どうしたナッハガイム、そろそろ行くぞ」
立ち止まって何かを見ているナッハガイムさんを見て不思議をに王様はそう言った。
「傷が・・なくなっている?というより治っている。まさか先ほどの行為で?貴方が?」
治っている傷とアミーを交互に見てナッハガイムはそう言った。
「その子は回復魔法が使えるのですか?その歳で?」
「何のことです?さてヒルマさんハレンちゃん行こうか、アミーも行くよ」
「そうだな、そろそろ眠いしな」
「ハレンも実はかなり眠いのです」
「オレまだ眠くない?」
「待ちなさい。まだ話が」
と後ろで何か言い続けるナッハガイムさんを完全に無視して僕達は部屋に戻って寝ることにした。
危なかった。
その翌日、僕達に宛がわれた部屋に使いの者が来た。
フリスさんからの使いで内容はそろそろ手が空きそうなのでセナスの件や報酬の話、その後あったナッハガイムの件も聞いたのでその事も合わせて話し合いたいそうだ。
2日後を予定しているのでどうか?との事だった。
僕達は大して別にやる事があるわけではないで了承の返事を返した。
「しかしアミーちゃんがナッハガイムさんの傷を治してしまったのは驚いたのです」
「たぶんアミーなりに気を使ったんじゃないかと」
「そうだとしても治してやらなくて良かったものを」
まあね。
「でもアミーもたぶん試してみたかったんだよね?」
僕は何か暇つぶしにと部屋にあった本を読んでいるアミーに向かって言った。
アミーは本から目を離すと僕にコクっと頷いて返事を返した。
「でも驚いたぞ、新しい白のダンジョン石が手に入ったのでグラブから奪った回復のダンジョン石をどうしようかと思っていた時アミーダンジョン石を奪って飲んでしまった時は」
「僕も驚きましたけどね」
どうやらアミーはダンジョン石を飲み込む事でダンジョン石の力を自分のものに出来るらしい。
例え魔法が入っていなくてもその飲んだダンジョン石の属性の魔法を使用できるという事があの戦闘のあと出来事でわかった。ちなみに原理は本人もわかっていないらしい、ただ本能ではわかっている程度らしい。
「優勝賞品の白のダンジョン石、回復のダンジョン石が手に入ったのでグラブのダンジョン石は売っちゃおうとか話している時でしたよね」
「なのです。いきなり美紅様に飛びついてパクっといっちゃった時は本当にビックリしたのです」
「ハレンなんて焦って嫌がるアミーの背中を叩いて吐かせようとしてたしな」
「あの時は本当に心配してそうしたのです!」
「あれでさらに警戒されたしな。笑ったぞ」
「仲良くなる計画が遠のいたのです・・」
「ま、まあまあ。あのあとちゃんとハレンちゃんは悪気がないってアミーには説明しましたし、それに今度からはダンジョン石をいきなり食べちゃダメってのもわかってくれましたし・・たぶん」
「でもハレンは未だに警戒されているのです」
「凶暴なせいだろ」
いつもの余分なヒルマさんの一言でハレンちゃんはニャーとヒルマさんに飛びかかっていった。
当のアミーはというと本に夢中になり、我関せずという風に大人しくしている。
「2日後ですか~どうします?」
「予定通りでいいと思うのです」
「そうだな、明日は買出しだ」
「飴!飴!」
「そうだね飴も買おうね」
飴いっぱい買わなきゃ・・ヒルマさんがアミーに飴を買ってあげて以来アミーは飴が大好きになり凄い食べる、ちなみにその行為でアミーはヒルマさんにも気を許している。
ハレンちゃんはそれを真似して飴をあげたが飴だけ取られてあげく距離をとられてショックを受けていた。まだまだ時間がかかるようだ。
「大会の賞品っていう目的も果たしましたしね」
「なのです」
「フリスさん達との話が終わったら・・だな」
「はい、予定通り国を出ましょう。旅を続けましょう」
「旅旅!旅ってなんだ?」
そして2日後。
僕達はフリスさん達王族に呼ばれお城の最奥にある王族と護衛しか入れないというフリスさん達が作った、いわいる家族団らんの部屋に呼ばれた。
「さて、お前達よく来てくれたのね。まだ頼みたい事も出来ちまったがまずこっちを先に片付けなきゃね」
フリスさんがそういうとそこにいた4人の王族は整列するようにして4人揃って頭を下げた。
「私達を救ってくれたことを家族を代表して感謝させてもらうよ。ありがとう」
「あの、依頼でやったわけですし、それに王様や后妃がそんな頭とか下げても大丈夫なんですか?」
「構やしないよ。ここにはあたし達しかいないしね」
「ならいいんですけど・・」
「よしそれじゃどんどんいくよ、報酬の話さ。お前達は言ったね、成功報酬でいいと、後払いにして欲しいと、そしてお前達は最高の結果をもたらしてくれた。言ってみな、何が欲しい?時間がなくて報酬は何が欲しいとか決めてなかったからね。家族と話したんだがね、お前達から欲しいものを聞くのが一番という結論が出たんだよ」
フリスさん達ならそういうと思っていた。
だから僕達は予め昨日話し合って出した答えをいう事にした。
「わかりました。ではこっちは僕が代表して頂く報酬を言わせて頂きます。報酬はコレです」
僕は1枚の紙をだした。
それを見て・・フリスさんが驚く。
「まさか・・ダメダメそれは反則だよ!それだけはダメさ、考えればわかるだろ!」
「なんでですか?この件ならコレは妥当だと思いますが?」
「ふざけんじゃないよ!それはそういう物じゃないしこういう事に使っていいものじゃないんだよ!」
「でも僕達はこれを報酬に頂きたいんですよ」
その僕の言葉に再びフリスさんが反論だろうか何を口にしようとした時、ワグル王がそれを手で止めて口を開いた。
「フリス、フリス君の負けだよ。というより私達全員のね。これはこっちが不利だよ、美紅さん達は正しい事を言っているし正統な権利だ」」
「そうだとしてもだね!これは・・」
「命より!大切な物があるかい?」
あの穏やかで怒鳴らなそうな王様が前半の部分を大声を出しフリスさんを制す。
「チッ・・わかったよわかったさ!この生意気なガキどもが!」
「ではコレが報酬という事で」
「わかっといっているだろ!」
なんとか納得してもらえたようだ。
それにこんな物持ってるだけで心臓に悪いしね。
ちょっと卑怯だけど使える状況があったら使ったほうがいい。
「まさかそれをここでつかわれるとはね」
「仕方ないですわ。こっちが不利ですわこれは」
どうやらノーバン王子もアルナ姫もこれの存在知っていたらしい。
僕達が報酬に要求したのは多数の豪華な優勝賞品の中にあった紙。
理不尽な等価交換の取引という賞品。
こちらの願いを王の力が及び限りなんでも叶える夢の賞品。
でもリスクがあり王の願いも叶えなければならない。
王の願いなんて何を要求されるかわからないのでこっちから願いをいうなんてなかなか出来たものじゃない品物。
それをここで使ったのだ。
王族全員の命を守って欲しい。
僕達は護衛という形で王の願いを聞いたという無理矢理な理由でコレを使用したのだ。
報酬という形で。
そうすればこの紙は、こっちの願いだけ残る本当の夢の紙になると踏んで。
「あーまったくそういう意図でやったんじゃないのにね!優勝していい気になってる奴に現実をわからせる為にやったってのにまったくクソが!そもそもそれはそっちが先に願いを要求して使うものだってのに」
そんな意図で作ったのか!てかその言い方ないんじゃないかな!
「で?何が望みだい!ほらいいな!さっさといいな!」
せっかちか!
「望みはまだないです」
「なんだって!」
「有効期限は王が王でいるまでなんでしょ?じゃあまだいいです。一番いい所で使わせてもらいます」
「なんて奴だい!まったく!」
そっちこそさっきからなんて言葉使いを・・。
「もういい!報酬の話は終わりだよ!次だ!ナッハガイムに入って来るように言いな!」
フリスさんは無視の居所が悪いようで怒鳴り散らすようにそういった。
部屋の扉から丁寧なお辞儀をしてナッハガイムさんが入室してくる。
「ナッハガイムの事情は昨日本人から聞いてる、随分こっちに内緒で無茶したみたいだね。こいつもお前達に借りが出来たみたいで何か報酬の話があるんだろ?さあコイツにも無茶な事を言うがいいさ」
なぜ無茶と決めるける・・・。
「では美紅さん私も報酬を何にするかは取り決めておりませんでした。本来なら商人として金銭で支払うのですがあなたの事だ、それでは納得しないでしょうからなんなりと仰って下さい」
こいつ・・人を極悪人みたいに・・。
「え?じゃあナッハガイムさんは町の清掃をボランティアで1年間毎朝5時に起きてしてください」
「・・・・本気ですか?」
「え?嫌なんですか?なんなりとと言ったじゃないですか」
後ろでは王様以外の王族の3人が吹き出して笑っていた。
「6時になりませんか?」
おい値切るな。
6時ならやるのか!?
「なりません。と言いたいところですがさっきのは冗談です」
そういうと真顔でこめかみに血管を浮かべたナッハガイムさんがいましたとさ。
「本当の要求する報酬はこっちです。まず貴方には僕達がフリスさん達に報酬を要求する時の連絡係になってもらいます。あとこの子の身分証明書を作ってください。この子はとある事情で出生とか何も言う事ができません。年齢もこの見た目でわかるように商人としても登録できないです。だから貴方の力でどこでも通じるようなのをお願いします。手を抜かないで下さいね」
「わかりました。ぜひやらせていただきます。不法行為ですが!」
嫌そうな言うな!素直にやりますって言おうよ!
「まったく王の前で不法行為をお願いするなんてね。まぁ目をつぶるさ。報酬の話はナッハガイムと一緒で納得はいかないがコレで終わりだ。最後の厄介事を片付けるよ。手伝ってもらうよ」
フリスさんはそう言ってギロっと睨んでくる。
やりますよ、やりますって!予想はついてますし。
僕達は最後の厄介事とやらのために部屋から移動する事となった。
そしてすぐに厄介な場所に着いた。
寒い。
「やっときたか、オイ腹が減ったぞ。何か持ってこい。この国は飯だけは美味いからな」
「餓死しな」
「死ねクソババア」
氷獄の囚われているセナスとフリスさんの最初のやり取りだった。
偽キャングスのおかげでセナスは頭部の部分だけ溶かされており、しかしそれでは脱出できないようでそのままにされていた。
「飯運びじゃないなら何しに来たクソババア」
「わかっているだろ?理由を聞きに来たのさ。あたしを狙ったね」
「そんな事か。いいだろう、話してやる。失敗したんだ、もう黙ってても胸糞悪いだけだしな。
「随分素直だね」
確かに。
「言ってろ。理由は簡単だ。10年前だ、覚えているか1度会ったのをクソババア」
「はぁ・・ヤッパリかい」
「あの時だ、あの時のお前の言葉のせいで俺の立場が危うくなったんだ」
そこからセナスの話が始まった10年前のこの国で起きた出来事らしい。
10年前この国は国ではなかった。
正式に建国する為には周辺諸国や聖堂、またはそれなりの大組織、つまり周辺の王族達から国と認められなければならない。
聖堂の方はすんなりと認めてくれたが、周辺諸国ではそうはいかななった。
すぐに認める国もあればやはり認めない国もある。
そういった国はお金を積めば認める国もいた。
しかしナディガムは違った、この国を一度見てみたいと王になる男自ら来訪した皇太子を連れて。
フリスさん達は歓待して向かえた、その結果ナディガムはこの国を認めたのだが。
その歓待の最中にフリスさんとナディガムの間にこんな些細な会話があったそうだ。
『我が国をお認め下さってまことにありがとうございます。ですが失礼ながら私から助言をナディガムには3人の皇太子殿下がいるとの事、たくさんの跡継ぎ候補を抱え大変かと存じますが、先に生まれたからといって第一候補と考えるのはもう古いと存じます。新参者の考えですがご記憶くださいますように』
という件があったらしい。
「クソババア!お前があんな事を言った後、父が呟いた一言を教えてやるよ!」
『なるほど、確かにわが国は伝統だけは古臭いのがいくつもある。あの女がこれから王族としてどうなるかは興味はなかったが商人としての先見の明は素晴らしかった・・考えるのも一興だな』
「と言ったんだ!そのあと父は俺だけじゃなく下の王子達まで教育をしだした。あげく妾の子までな!お前の余計な一言がなければ伝統に乗っ取って俺が王になる筈だったんだ!」
・・・・なるほどなるほど10年前にそんなことが。
「って逆恨みじゃん!!」
「馬鹿なガキだよまったく」
「たった・・たったそんな・・10年も前の事でお母様も殺しに来ましたの?なんて人なの」
「お前達庶民上がりの王族にわかるものか!そこのナッハガイムといったな、あいつが殺した上司キャングスはな、本人も裏切り者だったんだぞ!あいつは俺に情報を流していた、しかし俺が本当の目的を言ったら怖気づいた、だから殺してあいつに変わらせてそのまま情報を集めさせたんだ」
「そうですか・・あの方はまだ根に持っておいででしたか」
「キャングスかい?あいつはこの国を建国する時にかなり頑張ってくれたね。しかし他の馬鹿共に才能を嫉妬されて貴族にはなれず商会の支部長に留まったのだったね」
「はい、たぶんフリス后妃もそれに一役買ったと思っていたのでしょう」
「違うと言いたいが何も言わなかったあたしも同罪か」
「わかったか!お前は俺だけじゃなくこの国の他の貴族達にも良く思われてないんだよ!」
「覚えとくよ」
「こんな国はすぐに衰退する。俺がさせてやる」
「悪いがそれはさせないよ。美紅頼めるかい?」
「やっぱりですか、別にいいですけどね。でもです、ちゃんと本人に頼んでください。それが筋です、紹介もしましたよね」
「回りくどいね、アミー頼めるかい?」
呼ばれて頼まれたアミーは一度だけ僕の顔を見た。
僕は何が言いたいかわかったのでアミーに向かって静かに頷いた。
そして・・・・。
「おいおい。まだ俺からは色々情報が聞きだせるぞ?やめておけ、な?」
「往生際悪いですね。アミー今度は手加減しなくていいよ」
「わかった!カチカチ!カチカチ!」
アミーはセナスに近づいてそして・・あの時のように手をそっとセナスに添えた。
「オイ!やめろクソガキ!ちっ・・おいこうなったらするぞ!本当のけいや・・・」
セナスが何かを最後まで言い終わる前に再びセナスは完全に氷の彫刻と化した。
「やれやれ・・逆恨みもいいとこさ」
次の日の朝だった。
僕達は国を出ることをセナスを凍らせた後にフリスさん達に伝えてあった。
どうやら見送ってくれるらしい、素直に嬉しいのでお願いした。
王族なのでお城の入り口までだけどね。
「これが頼まれていた品です」
そう言ってナッハガイムさんがアミーの身分証明書を渡してくる。
「手抜きしてませんよね?」
「してませんよ。仕事はしっかりやるのが心情なので、そもそも偽造に近いものを手抜きなんてしたら作った私まで犯罪に巻き込まれかねませんよ。それは何処に出しても絶対疑われる事のないようにできていますよ」
「へー凄いですね、こっちの道でで暮らしたらどうですか?」
「ご遠慮します。商人が天職と信じて疑ってませんので」
「ソウデスカ」
「それじゃ、フリスさん、ワグル王様、ノーバン王子、アルナ姫様、色々楽しかったです。それにお世話になりました。またどこかで会いましょう。ついでにナッハガイムさんも」
「報酬の件がある時点で会わないまでも切れないだろうがまったく、元気でやりな。あとね捕まえた『風』達だがね。命まではとらないがうちの国でしっかり働いてもらう事にしたからね」
「そうですか。一応能力には気をつけてくださいね。あとフリスさんもギャンブルはもうやめてくださいね」
「そうだな。お元気で」
「またどこかでなのです」
「またなー」
僕に続いて他の3人も別れを告げる。
僕は手を振りながら城を後に・・。
「あー!お待ちになってくださいませ!」
くっ・嫌な予感がする。
このまま自然に逃げようと思ったのに、よりによって叫んだのがアルナ姫とは・・。
「美紅さん例の件、お兄様の妻になるという返事を貰っておりませんわ!」
「そうだった美紅さん、私の妻になってください」
くっ・・めんどくさい。
「美紅、姫と王子がおかしな事を言っているぞ?」
「いきなり何を言い出すのかと思えば、美紅様はハレンの妻になるのでそのでそのお話は丁重にお断りさせていただくのです」
ハレンちゃん僕は男だから妻になれないよ?そもそもそんな話は知らないよ?
「ヒルマさんにハレンさん、お二人は少し黙ってて欲しいですわ、騒ぎと別れの流れですっかり忘れそうでしたが一番の重要案件でしたわ。さあ!美紅さんお返事を!」
お返事を言われても雰囲気でわからないかな・・。
そもそもオッケーなら国出て行くはずないよね?
そして一番の問題があるし・・。
僕の横ではヒルマさんが腕を組んで何かを思案するようにして目をつぶっていた。
そして口を開いた。
「美紅、もしかしてだが言ってないのか?」
「・・・申し訳ありません、言う機会がなかったですし・・というかそろそろ自分でもどうでもいいかなって思い始めてて」
「なんの話をしてんだいあんた達は?」
フリスさんが不思議に思ったのかそう聞いてきた。
「つまりだ、アルナ姫。美紅はノーバン王子の妻にはなれない。ちゃんと理由もある」
「どういう事ですの?」
「よく聞いてくれ。美紅はな・・男だ」
「あははは、流石にそんな嘘はやめましょう。断る理由にしてもそんな嘘をつかれたら私もちょっと傷つきますよ」
ノーバン王子は完全に信じてないようだ。
だが・・アルナ姫はというと。
「ちょ、ちょっと何するんですか!」
「美紅さん失礼します」
アルナ姫は僕に向かって突っ込んできて、そのままの勢いで僕の体を上からペタペタ触り始めた」
「な、何をしているのです!?アルナ姫様、嫁入り前の女性が男性の体を触りまくるなんてはしたないのです!」
「よくそんな事言えるな子猫、お前など初対面で名乗りもしないのに美紅に抱きついたあげくに、匂いを嗅ぎまくっていたじゃないか」
「な、何の事かわからないのです」
二人がそんな事を言ってるとアルナ姫様がショックを受けていた。
「そ、そんな・・嘘ですわ・・いえまだ少し発育が遅い女性の可能性も・・」
ないです。胸触ってわかるでしょ?
「かくなる上は!」
「ちょっと待ってアルナ姫!何をしようとしてるんですか!上はまだ確認の為と許しますけど、そっちはダメです!下はダメですよ!僕の為にも貴方の為にも!」
「観念して下さい。確認の為ですわ」
「ふざけるなアルナ姫!一国の姫とはいえ美紅のその部分は触らせないぞ!」
「ヒルマさんやるのです!気絶する程度の電気ならハレンが許すのです!」
いや、僕が止めるから!物騒な事やめてね!
「お前達いい加減にしな!まったくみっともない。美紅あんた本当に男なんだね?」
「・・・はい」
「まさかこれで男性とは・・別の職業で食べていけるのでは・・」
ナッハガイム!今なんて言った!
「そんな・・本当に男だったなんて・・」
言うのが遅くなり大変申し訳ないですノーバン王子様!
「これがお前達に会って一番の驚きの事実だよ」
「はあ、すいません」
「ノーバン諦めなってのも変な感じだがね、いくら容姿がその辺の女より良くても男を妻にはとれないからね」
「・・・・はい」
ノーバン王子は目に見えてガッカリしていた。
「あの~というわけなんで・・なんか最後に微妙な雰囲気にして申し訳ないんですが僕達行きますね。ではこれで失礼します」
そして僕達4人は再び別れを告げようとしたその時。
「お待ちを美紅さん!」
「え?」
「お母様、まだ手はあります。このまま美紅さんほどの方を逃してはならないと思います」
「アルナあんたまさか・・」
「わたくしが美紅さんと結婚します!わたくしは国を継ぐ身ではありませんがお兄様が王になりましたらそれを助ける所存でした。ですから美紅さんがわたくしと結婚していただければ当面の目的は達成できますわ」
「なるほどねぇ、許可するよ」
なるほどねぇ、じゃない!勝手に決めないでね!
「待て許さんぞ!美紅は嫁にはやらん!もし欲しいなら私を倒していけ!」
「そうなのです、美紅様はハレンのお家に嫁に来ると決まっているのです!」
そこの2人!僕は嫁じゃないと何度言ったら・・それにそんな話もない!
「美紅さん、いえ旦那様と言わせて頂きます。わたくしと結婚して下さいませ」
兄弟揃って僕にプロポーズを・・それに国の為に結婚とかダメでしょ。
「そのお顔はわたくしが旦那様をこの国に留まらせる為に結婚してしまおうと思っているという感じですわね」
この子結構こっちの考え読むなー、元だけど商人の娘だから観察眼が鋭いのかな?
「え・・違うんですか?あと旦那様って呼び方やめてください」
「違います、最初は確かにそんなつもりもありました。ですが好きでもない人との結婚は流石にわたしくしも無理です。というわけで好きです!男性だとわかった時正直嬉しかったです」
なんて正直に・・嬉しいけど・・。
「申し訳ありません。嬉しいんですけど僕にはやることがあるのでお断りさせていただきます」
「美紅よく言った!」
「さすが美紅様なのです!」
「・・そうですか、本当ならここは好きになってくれるまで貴方についていきますっと言いたいですが、わたくしは立場上この国を離れる事はできません」
良かった・・可哀想だけどしょうがないよね。
「ですがそれが諦める理由にはなりません!わたくしは旦那様以外と添い遂げませんので美紅さんが貰ってくれなければ一生独身を貫きますので覚えておいて下さいませ。国はお兄様の子が継いで行くのでわたくしは独身でも問題ありませんし」
こわっ!それ告白じゃなくて脅しだよ!?フリスさん娘がとんでもない事言い出してるよ?何か言ってやって!
「よく言ったアルナ!」
コラ母親。
「というわけで旦那様、これを私だと思って持っていってくださいませ」
アルナ姫はしていた指輪を外して僕に渡してくる。
これは貰っていいのものか・・断ると泣きそうだし・・。
「・・・一応貰っておきます。預かるだけですので」
「はい、では旦那様」
・・・なんで目をつぶるの?顔近づけてくるの?
「アミー・・お願いできる?」
僕とアミーは契約によって簡単な意思疎通なら会話なしで可能なのだ。
「きゃっ!何でですの!」
僕とアルナ姫の前に薄い氷の壁が出来る。
「ヒルマさん、ハレンちゃん、アミー出発します」
「だ、旦那様酷いですわ。暫しのお別れのキスぐらいしても罰はあたりませんわ」
と氷の壁の向こうで叫んでいるアルナ姫を無視して僕達は走った。
「ところで次は何処へ向かうのです?」
「そういえば決めてなかったな」
「飴の産地?」
飴の産地はないかな。
「うん、そうなんだけどちょっと考えもあるんだ」
アミーを新しく仲間に入れて僕達は逃げるようにこの国を後にした。
「考えてみればお前達の言うとおりだだ。仲間じゃないかもしれないがオレは何も出来ない。こっちの連れてこられた一族がまだ捕まっていると同じ状況だ、言う事を聞くしかない」
もっともな事を言うチュージー。
「確かにその通りなんだがね。君のしている事はこっちの世界では非常に迷惑な行為なのだよ。そもそも君が暴れ出した魔物を倒したから結果的に何も起きていないだけであのままにしておけばレストロの効果で魔物達はダンジョンを出て暴れ出したかもしれない。魔物は基本ダンジョンで発生する魔力を好みダンジョンから出ないのが常識だがその理を変える様な物をこれからも使用するような実験を君が無理矢理させられているのなら考え物なのだよ」
その通りなのだ。
「お前の言う事が本当ならきっと正しいのだろう。でも俺はこうするしかない。賭けなんて不確かな物でも一縷の望みがあれば縋るしないんだ」
「ふむ、君が先ほど語ってくれたことが本当ならはっきり言って私の手には負えない事実だ。まさに神の所業という言葉が相応しい。私は現実主義者だが奇跡は信じることにしている。起きて欲しいと願ったこともあるしね。だからこそ私は個人的な理由で君の力になろうと思う」
「力になる?適当な事を言うな。それに意味がわからない」
「私はどうやらダンジョンで君のような面白い・・失礼、不思議な出会いをする運命にあると思ったんだよ。まぁダンジョンじゃなくても・・だがね」
そう言ってシュッペルは我を見る。
どうやら我の出会いも不思議?とやらに入れられているらしい。
ふ・・だが不思議な出会いなら我の方が凄いのをしているのだ!
そのせいで人生変えられましたけど・・あれちょっと涙が・・。
「どうやって力になってくれる?俺の仲間を救ってくれるのか?」
「それは私には無理だね」
あっさりとシュッペルは肯定した。
「なら消えてくれ。俺は続きをする」
「早まらないでくれ。君の仲間を救うのは無理だが君なら救うことは出来るかもしれないと思ったので言ったまでだよ」
「俺を救う?」
「そうだ、君をこのままにしておくと嫌な予感もするからね。だから提案しよう。君は君をこの状況に追い込んだ者達から離れて別の方法を模索するつもりはないかね?」
「また意味がわからない」
「失礼した。こう言う事だ、君の話を聞くに君と賭けをしているのは君を連れてきたものでも第一の僕とやらでもなく、強大な者達の下で君と似たような状況で働いている者だろう?」
「たぶんそうだ、俺とは違い好きでやってる雰囲気だったがな」
「なら考えてみたまえ、君が賭けに勝ったといってそんな下の者のが君の仲間を開放して欲しいと進言したとしても駄目だと思わないかね?君を連れてきた者はわざわざ君達の姿まで変えてここに連れてきたのだよ?何か目的があってのことだ。それも恐らく相当のね。そんな事が出来てしまうものが君と同じような立場の願いなど聞かないと私は思う。こう言っては何だが思うに君に賭けを持ち出した人物は遊び半分だったんじゃないかね」
シュッペルは何食わぬ顔をしてチュージーにいやに説得力のある自分の仮説を突きつける。
「・・そうだとしても!」
「そうだとしてもなんだね?君は騙されているかもしれないと薄々気付いていたようだね。なら私の提案に乗っても損はないと思うがね」
「お前の提案にに乗って仲間が救える保障は何処にある!」
「正論だ。あると言ってあげたいが正直に言っておこう。可能性は低い・・が君に自由を与えれるかもしれない。この状況から君を救えるかも知れない。君が自由になれば様々点からアプローチが出来る。方法も見つかるかもしれない。さあ、これが私の君に対する提案だ。君がこの提案に乗って来てくれれば私は君が自由になれるかもしれない方法を実行するとしよう」
そしてチュージーはそのまま何かを考えるように黙るのであった。
ソウちゃんの出番があんまりない!(*゜ω゜)