紹介します
前書きってあんま書くことないよね。
いつも読んでいただきありがとうぐらい?
というはわけでどうぞ(*´・ω・*)
一言ずつ会話を交わした後、僕はその子に急いで布をかけた。
その子は別に嫌がらずに不思議に思ったようだがされるがままになっていた。
しかし僕はまだ床に叩きつけられた衝撃で体がいう事が聞いてくれずに片足は跪いたままの姿勢で躓いてしまった。
毛布を着せられたその子は僕の目の前にわざわざしゃがんで僕の目線に合わせてきた。
お人形みたいな綺麗な女の子だった。10?歳位だろうか?身長小さくて髪の色が特徴的な子だった。
濃い紫色なのに特に特徴的なのは銀色のメッシュが入っていることだった。
先ほど会話したのも忘れ僕はその子に見つめられているというのに見入ってしまっていた。
その子の方も僕をじーと見ていたが突然、再度口を開いた。
「生きてて良かったな?」
何故疑問系で聞くの?っと思ったが僕はその言葉について考え込んでしまった。
この子がもし僕の思う者ならこのかけられた言葉はどっちの意味だろう?またはどっちもだろうか?
どう答えればいいのかと思った、なので僕は妥当な返事を返す事にした。
「君のお陰だよ。前も今もね」
「そうかそうか。感謝しろ?」
「うん、物凄く感謝してる。本当にありがとう」
「もっと感謝しろ?敬え崇めろ」
どこで覚えたのそんな言葉・・あの人か?あの人が教えたのか!
「君がそうして欲しいならそうしてもいいんだけど、意味理解してる?」
「オレ賢い」
うん、間違いないねこれ。
「そっかー、で?意味は?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
何故黙る・・。
「それよりオレ聞きたい事ある」
何故答えない!ごまかしたの?ねえ!
「・・何が聞きたいの?僕に答えれる事なら何でも答えるよ?」
「お前の名前知りたい」
「え?うん?あれ?そういえばちゃんと自己紹介してなかったかも?でも色々あったけど僕の名前は結構君の前で呼ばれてたりしたからもう知ってるかと思ったけどなー」
「しらないしらない。オレ記憶ちょっと失った・・かも?曖昧」
「そっか・・うん!じゃあお互いちゃんと名乗りあっておくって事でいいかな?僕の名前は美紅。み・くって言うの」
「美紅、わかった」
「そう、普通に美紅って呼んでくれればいいからね。君の名前も教えてくれるかな?」
あの時は聞けなかった。
でもやっと聞けるんだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
え・・・何故また黙る!!
「えっと・・・名前は?」
「インプもどき?」
そうこの子、この目の前の綺麗で小さな女の子はリステインダンジョンの元主。
ディットから僕を庇って死んだはずのインプもどきだ。
僕は何故か最初にこの子が現れたときに直感でわかった気がした。
そして最初の会話でそれは確信にかわったんだ。
なぜこんな全然違う姿でここに現れたかはまだわからないけど、僕はまた助けられてしまった。
助けてもらっちゃったのだった。
「それ違うでしょ!それは僕達が勝手に君が何者かわからないから、そう呼んでただけでしょ!ま、まさか本当にその名前だったの!?そんなわけないよね?ていうか記憶が曖昧とか言ってそういう余計な記憶はしっかりあるのね?」
「・・・知りたい?」
「え?出来れば知りたいかも?」
「なんで?」
「・・・だってこれから君を呼ぶ時に必要だし、インプもどきなんてもう失礼でしょ?」
「そんなに知りたい?」
何故そこまで念を押すの!?
「そりゃ知りたいよ!命の恩人の、それも2度も助けてくれた者の名前だよ?知りたいに決まってるでしょ?」
せっかく自己紹介をしているのに、もう絶対に会うことはないとリステインダンジョンの最下層に作ったお墓の前で思った。
しかしインプもどきは僕の目の前に現れた。姿形は違うけどこのやり取りは間違いなくあの時のインプもどきだ。
僕はあの時、正直後悔した。
だからやり残したと思った事もあるので知りたかった。
何が起きているのか、いやそんな事はもうどうでもいい。
イノプもどき、彼女の名前を教えてもらって、僕はあの時出来なかった事をやりたいと思っての発言だった。
しかし・・・。
僕の強めに言ったその言葉を聞いた元インプもどきの女の子はというと。
なぜか頭を抱えて唸り考え込んでしまった。
「えっと・・どうかした?僕なにか変なこと言った?」
「わかった!勝負に勝ったら教えてやる!」
なぜ名前ごときで勝負を持ちかける・・。
「勝負って?またクイズとか?ちょっと疲れてるし長いのは嫌かも」
「じゃあ、簡単なので。美紅考えろ」
それでいいのか・・?そして方法は他人任せか!
「じゃあ、ジャンケンで決めようか」
「ジャンケン?」
「やっぱり知らないか、誰でもできる簡単なものだから説明するね」
そうして僕はジャンケンのやり方を丁寧に説明した。
「面白いな。じゃあやるぞ」
「おっけー!では!じゃ~んけ~ん!ポン!!」
チョキを出した僕に対してインプもどき(仮)はグーを出していた。
「・・・・・」
「僕の勝ちだね」
「後出し後出し!!!インチキインチキ!!」
なぜ後出しを知ってる、そして姿は変わっても性格はやっぱり変わってないのね。負けず嫌いか!
僕は後出しなんてせずに正々堂々とやったのに根拠もないのに勝負にイチャモンつけるところとか前とまったく一緒だよ!
「してないでしょ!同時に出したよね?」
そう言うとインプもどき(仮)は納得がいかないのかジト目でこっちを睨んでくる。
確かに初めてのジャンケンでチョキとかは出してこないとか思ったけど!でも勝負は勝負、譲るつもりは・・ない!
インプもどき(仮)はまだこっちをジト目で睨んでいた。
「・・・わかったよ!3回勝負ね!3回先に勝った方が勝ち!それでいいでしょ!もう!」
「3回!3回!オレが勝つ!」
満面の笑顔で・・なんて調子のいい奴だ。
「それじゃ次いくよ!じゃ~んけ~ん!ポン!!」
数分後・・・膝をついてうなだれている童女がそこにはいた。
「僕の勝ち!ストレートで3回連続勝利~!あははははは!」
目の前には敗北者インプもどき(仮)が涙目で僕を見上げるが関係ない。
僕はインチキもしてない!運の勝負で勝ったのだ!
「さあ!名乗ってもらおうか!」
僕の高らかな言葉に対してインプもどきは涙目でもう一度こちらを睨んだ後に僕を見据えて口を開いた。
「□○×※△×※○□!!」
え?今確かにインプもどきは何かを喋った。
しかし何を言っているのか聞き取れなかった。
発音が歪で人の言葉ではなかった気がする。
たぶんそれは人間では発音できない音だったと思う・・でも・・。
頭の中に何かが流れ込んできて、繋がった感じがした。
「今のが君の名前?」
「・・そうだ」
「不思議な事が起きたんだけど聞いてもいい?僕は今君の名前が聞き取れなかったんだけど聞いた瞬間君の名前が頭に浮かび上がったというか理解したというか、ゴメン何を言ってるかわからないね。でも君の名前はわかったよ」
「ペッ!!」
何故唾を吐く!説明してくれないの!?そんなに勝負に負けたのが悔しいわけ!?
「と、とりあえず言わせてよ」
「なんだ」
「僕を2度も救ってくれありがとう。アメリミフェス」
それがこの元インプもどきの名前。
「あぁーーーー!!」
って何!なんで叫ぶの?ここ感動のシーンじゃないの?
「ちょ、ちょっといきなり叫ばないでよ。落ち着いて!」
僕がアメリミフェスを宥めようとした時、後ろと前から同時に僕を呼ぶ声がした。
「美紅!」
「美紅様!」
声の主達は当然ヒルマさんとハレンちゃんだった。
二人共こっちに向かってくる。
ハレンちゃんは王族の人達を連れている。
ヒルマさん・・は誰?知らない子を連れている。ああ!もしかして術者かな?
ちなみにその声を聞いたアメリミフェス僕に寄り添うようにして身を小さくして隠している。
「二人共良かった無事だったんですね」
「それはこっちも言いたいぞ美紅。無事でよかった。セナスは微塵切りにしたんだな」
何その惨殺の仕方・・殺し合いでそんな器用なこと出来ませんよ。
「ヒルマさん、アレが見えないのです?」
ハレンちゃんが氷の彫刻と化したセナスを指差して言った。
「ちょっとした冗談だ。しかし美紅、氷漬けとはどうやったんだ?そしてそいつは誰だ!」
「そうなのです!その綺麗な子は誰なのです美紅様!」
「ああ、それは説明すると長くなりそうなんですけど。まず紹介しますね」
「この子の名前はんんんんんんん~~」
二人に名前を言って紹介したうとしたその時僕の後ろいたアメリミフェスが僕の口を両手でふさいだのだ。
「美紅様、その子はんんんんんん?が名前なのです?」
違うに決まってるでしょ!
「ハレンお前も冗談を言っている場合じゃないだろ。おい!小動物!私の美紅の可愛い口をふさぐな!変われ!」
変わってる場合じゃないんですけど!苦しいんですけど!
んんんん~!10歳ぐらいの子供とは思えない力で僕は口をふさがれた。
てか息が出来ない!僕は必死にその事を伝えようとアメリミフェスの肩を叩く。
そうした所でやっと手を離してくれた。
「はぁはぁ・・苦しかった」
「美紅平気か!」
「美紅様!ご無事なのです!?」
「苦しかったけど・・大丈夫だよ」
危なかったけどそんなやり取りをしているとアメリミフェスが僕の手を引っ張ってくる。
さっきの行動といい、どうやら僕のしたことに対して何かあるのだろうか?
「おい美紅、とりあえずその小動物と状況の説明をしてくれないか?」
「そうしてほしいのです。フリスさん達も不思議に思っているのです」
「そうだよね。うん?」
アメリミフェスが引っ張っていた手を止めて僕に耳打ちをしてきた。
・・・え?
「ダメなの?なんで?」
「どうしたんだ?その乱暴な小動物は何を言ってるんだ?」
「えっと・・ヒルマさんとハレンちゃんだけとだけでちょっと話をしたいんですけどいいですか?」
僕は後ろで静観していたフリスさん達に問いかけた。
フリスさん達は状況を知りたそうな表情をしたがどうやら氷漬けのセナスを見て安全だという事を理解したらしく了承してくれた。
「わかった美紅。でも少し待ってくれ」
「え?はい」
ヒルマさんが凍ったセナスの前に歩いていく。
そこにはヒルマさんが連れてきた傷のある少年が、おそらく術者で『風』の少年がいた。
「凍ってる・・そんな・・セナス様が一体なにが・・俺は・・僕はどうなるんだよ・・」
「どうなるも何もお前はこの国では犯罪者だと言っただろ。どうやったかまだ聞いてないからわからないがセナスは美紅に、私の仲間に負けたんだ。お前達の敗北だ。そして勝手に動くな!」
「わー何するんだ!放せっ!」
「うるさい。お前は一応危険人物なんだ、こうするのは当然だ」
「痛いよ!」
少年は痛みを訴えるもヒルマさんは無視して彼を鉄の鎖でぐるぐる巻きにしていた。
「これでよし。鎖の先は私が持っているからな、何かしたら電気を流す。感電したくなければ大人しくしていろ」
「ひ、ひとでなし!」
「黙れ。そうだ、おーい!安全の為に全員コイツに1度触っておいてくれ!コイツに触っておけば幻術にはかからないらしいからな。今触っておけば当分までは有効だろ」
「ぐっ」
「逃げようと思わないことだ。覚悟を決めろ」
そういうと少年は観念したようでぐったりと鎖に巻かれた状態でうなだれた。
その後に僕たちと王族全員は一度その少年に触った。
そしてフリスさん達王族をその場に残してアメリミフェスを入れた僕達4人は少し離れた場所に移動した。
「それで美紅。先ほどの事といい、一体何なのだ?」
ヒルマさんがそう聞いてきたので僕は何から説明していいものかと迷った。
しかしヒルマさんとハレンちゃんには嘘や誤魔化す必要はないのでまず一番大切なことから告げようと思った。
「えっとですね。セナスの事はまず置いておいて1番気になっていると思いますが、この子ですがヒルマさんもハレンちゃんも一度会った事がある子なんです」
「・・すまない美紅覚えがない。誰だ?私は自慢じゃないが記憶力はいい方だと自負してるんだが・・」
「申し訳ないのです美紅様。ハレンも思い出せないのです。自慢ではないのですが一度覚えた臭いは忘れないとハレンも自負しているのですが・・」
だよね。普通そう言われてもわからないよね。
だから僕はストレートに真実を告げる。
というか今考えると言って信じてくれるのかな?姿形、声質まで変わって現れてるし・・そもそもこれ完全に種族が違うよね!
「この子リステインダンジョンで会ったインプもどきです」
「み、美紅様?ご、ご冗談を・・インプというのは魔物でそもそもその子は毛布に包まってますが、どう見ても人種に見えるのです。そ、それになのです。美紅様のお辛い記憶を思い出させるようで悪いのですが・・その、あのインプもどきさんはお、お亡くなりになったのです。そもそも臭いが違うのです!」
最後の判断臭いなんだ・・でも普通そういうリアクションだよね。
ハレンちゃんが正しいリアクションだよね。
「そうか、この小動物はあの時インプもどきか。なぜこんなまったく違う姿で現れたか知らないが了解した」
「ヒ、ヒルマさん!?なぜそんなあっさりと納得しているのです!?」
すんなりと受け入れるような発言をしたヒルマさんに驚いたハレンちゃんは驚いてそうヒルマさんに問いかける。
僕もそう思った。まさか現実主義っぽいヒルマさんがこんなにあっさりと信じてくれるなんて、もしかして何か知ってるのかな?だったら助かるんだけど。
「何を言ってるんだハレン。美紅がそう言ってるんだからそうに決まってるだろ?前にも言ったが私は美紅の言う事は無条件で信じる事にしているんだ。美紅教があったらとっくに入信しているほどだ」
違った・・信じていただけるのは嬉しいけど、それにそんな怪しい宗教団体は作る予定はないです。
もし作っても入信してないでいただきたい!!
「ヒルマさんは狡賢いのです!ハレンだって美紅様のいう事は無条件で信じるのです!ですがここは疑問が先に出てくるのが普通なのです!」
うん、僕もここはハレンちゃんのだ正しいと思います。
「美紅教に理屈はいらない。可愛いが全てだ」
勝手に変な宗教作った挙句に勝手に美紅教の教えみたいなのを言わないでいただきたい!
「・・・二人共その辺も説明しますからそこまでにしてもらえます?」
そう言うと二人は黙ってこっちを見た。
「一から説明したいんですが僕も実はどうしてこうなったかどうしてこの子がここにいるかは説明してもらう時間がなかったのでまったくわかってません。でもわかっている事から説明しますと、先ほども言った通りこの子は間違いなくあのダンジョンで僕を助けて亡くなった・・・はずのインプもどきです」
「なるほどな。なぜそんな姿になったか理由はまったく私達もわからないがそこは納得しておこう。後ではっきりさせるとしてだ。先に聞きたんだが先ほどの行為はなんだ小動物!私の美紅の口をふさいで!窒息させるつもりだったのか!」
「そうなのです!いくらあのインプもどきさんで美紅様の恩人といえどあの行為は許せないのです!」
二人共そこから聞きたいんだ・・。
でも丁度いいかもしれない。
あと二人して威圧するの止めてくれませんか、後ろで圧力にアメリミフェスが震えているんですが・・。
「それはですね、あの時僕は二人にこの子の事をというか名前と一緒に紹介しようとしたんです。そしたら急に後ろから口をふさがれたあげくに他の人には名前を言うなと釘を刺されました」
それを二人に説明してアメリミフェスを見ると、うんうんと小さい体で頷いていた。
「なぜ名前を言うな等と言うのです?」
ハレンちゃんは僕に向かって聞いたのか、それともアメリミフェスに向かって聞いたのか素直に疑問を口にしていた。
しかし僕もそれはまだアメリミフェスから説明されてないので答えれなかった。そもそも説明してくれるのかな?この子は。
というかアメリミフェスはさっきからハレンちゃんを警戒しているような・・。
「・・・名前・・言ってはいけない・・元魔物・・インプ」
そんな事を考えているとヒルマさんが独り言のように何かを呟いていた。
「どうかしたんですか?ヒルマさん」
「まさかな・・いやしかし・・。おい、元インプもどきの小動物。お前が今は何故そんな姿でかは今はどうでもいいが確認したいことがある。お前は今も自分が少しでも魔物という自覚はあるか?姿形の事は置いておいてだ。中身、というか存在としてだ。答えろ」
ヒルマさんはアメリミフェスに向かって真剣な眼差しを向けてそんな疑問を問いかけた。
その質問に対してアメリミフェスはというと。
上を向いて暫く何かを思案するような仕草をしたあとに・・コクっと頷いた。
「自覚があるのだな?つまりお前はわかってて美紅に教えてしまったわけか?ふざけるな!!」
何かを納得したあとにヒルマさんがアメリミフェスに向かって叫んだ。
その怒気にアメリミフェスがビクっと怯える。
「ヒ、ヒルマさん!一体どうしたのですか?」
「いきなり叫ぶなんてビックリするのです」
「確かにいきなり声を荒げたのはすまない。そうか、美紅は当然としてハレンも知らないのか」
「何をなのです?」
「いいか?この元インプもどきが今も自分が魔物という自覚があるという。そして美紅に名前を教えた。それが重要なんだ、わかるか?」
「あのヒルマさん。よくわかりませんが名前に関しては僕が知りたかったので正直無理矢理聞いてしまったというか、あの時よく考えればこの子は僕に名前を教える事を躊躇してましたし。それでも僕は恩人の名前が知りたくてですね、勝負に勝ったら教えるといわれたので簡単な勝負で圧勝して教えてもらったんです」
「さすが美紅様。お強いのです」
「なるほどな、そういう事か。おい元インプもどき、さっきは怒鳴ってすまなかった。しかし今美紅が言った理由にしても・・だ!お前は躊躇するほどの自覚があるならわかっている事だろう。言葉も流暢に話せる様になっているようだし美紅に説明する事も出来たのではないか?お前達にとって大事な行為だろ。知らないとは言わせないぞ」
よくわからないがアメリミフェスはヒルマさんに睨まれて気まずいのか目線を受け止めきれずにそっぽを向いて口笛を吹きだした。しかし慣れてないのか音が出ずにふーふー言っているだけになっている。
「その様子だとわかってて説明を省いたようだな。どういうつもりだ?言い訳があるなら言ってみろ」
「あの~ヒルマさん?よくわかりませんが落ち着いてください。この子もなんか怯えてますし」
「美紅には悪いがこれは結構重大な事なんだ。わかってない者に対してやることじゃない。というかもしそれを魔物がやったとしたら悪意の行為になるはずだ。騙すのと同等の行為だ」
「名前を聞いて教えてもらったぐらいで騙す行為なのです?」
「ヒ、ヒルマさん。流石に名前を教えてもらった行為を騙すというのはお、大げさでは?」
「わかった。二人に事の重大さを説明してやろう。このインプもどきは今は完全に人の姿だ。そして名前を教える時躊躇したという。魔物の自覚まであるという。その時点で美紅が何も知らないのに名前を教えればどんな事になるのかを知らないはずがないんだ。前にも少し話した記憶があるが知能が高い魔物には真名というのがある奴がいる。魔物はそれを自分以外には決して教える事がないとさえまで言われている。しかし例外があるんだ。私も全部知っているわけではないが契約をする時に魔物は真名を教えるという噂だ」
「契約・・」
僕は契約と言う言葉を聞いて1つのことが頭に浮かんだ。
「美紅は気付いたようだな。私もさっき思い出したんだがディットの鎧の事をだ。あいつは鎧に封じられた魔物と契約をしてた節がある。恐らく真名みたいな物を言っていた気がするしな」
「待って欲しいのです。でもでもこの元インプもどきさんは美紅様がハレン達に名前を教えるのを躊躇してたのです。契約か何か知らないですが真名を知られてはいないのならディットは例え鎧の中の魔物でもあの時普通に名前を言っていたのです。おかしいのです」
確かに言ってたなー。確かジジム?とか言ってた気がする。
まぁディットは馬鹿だし口が滑ったという可能性もないこともない。
「私も全部知らないと言ったろ。魔物の真名に関してはわかってないことが多い。だがそれはコイツに聞けばいいだろう。美紅に真名らしきものを教えて私達には言えない時点で後ろめたいことがあるのは丸わかりだ。おい元インプもどきの小動物、説明してもらうぞ。この件に関しては前のように調子よくとぼけた場合は美紅の恩人といえど私は黙ってはいない」
「ヒ、ヒルマさんそこまで言わなくても」
「美紅、悪いがこれはたぶん重要な事だ。説明もなしに簡単に見過ごせることじゃない」
ヒルマさんは真剣な表情でそう言った。
そしてそれをちょっと怯えた表情で聞いていたアメリミフェスが意を決した様に少しだけ前に出てきて口を開いた。
「俺騙してない。騙す気ない。信じて・・信じてほしい」
アメリミフェスは僕達3人を見渡すようにしてそう言いきった。
「証拠はあるのか?」
「証拠・・?ない・・ある!」
「あるの?」
「ある!お前・・美紅!俺に強く何か願え!」
「へ?」
僕はその意味がわからずに変な声が出てしまった。
「それが証拠なのか?」
「そうだ。何でもいい!美紅願え!」
「なんでもいいって言われても・・なんでもいいの?」
「いい!」
僕が何かいう事が証拠なのだろうか?しかしアメリミフェスは真面目なようで僕は言われるままにいう事にした。
「じゃ、じゃあ。ジャンプして?」
言ったがアメリミフェスはその場でちょこんと立ったままだった。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・何もおこらないのです」
僕とヒルマさんは無言になったがハレンちゃんが突っ込んだ。
「これのどこが証拠だ小動物」
「もっと強く!思え思え!声いらない!声出したら証拠ならない!」
「はい~?悪いけど良くわからない上に難しいんですけど!」
「やれ美紅!頑張れ美紅!」
アメリミフェスはじれったいなーと言うように僕に声援を送ってくる。
「いや、物凄い応援されても困るんですけど」
でもそこまで言われてやらないわけにはいかなかったので僕は頭の中で出来るだけ強くアメリミフェスに向かって思いを伝えるように願ってみた。
アメリミフェスの方を向いて声を出さずに心の中でこうして欲しいと思い込んだ。
そうすると・・アメリミフェスが僕に向かって手を差し出してきたので僕はそれを握った。
握手だった。
「おー!なんでわかったの!?」
「証拠証拠!見ろ青い奴!これ証拠!」
アメリミフェスは物凄く喜んでいる。
笑顔で少しだけ飛び跳ねていた。
「悪いが私達はお前が美紅と握手してたことしかわからないのが?」
「あの~これが証拠なのです?」
確かに二人はこれが証拠と言われてもわからないだろう。
そいういう僕もまだ半分もわからないがこれは確かに証拠なんだというのがわかった。
だから二人に説明した。
「あの二人共僕から言います。僕も全然何が起きたかさっぱりですがたぶんこれは本当に証拠なんです。僕は今頭の中でこの子に向かって握手しよう握手したいと思い込んだんです、そしたら思ったとおりにすぐにこの子は手を差し出してきました。わかりますか?僕が思ったことがこの子に伝わったんです!あれ?でもこれって何で?確かに証拠といわれるとそう思うけど何この不思議な現象?よく考えるとこれって騙してないとかそういう証明じゃないような・・むしろ不思議が増えたよ!?ちょっとどういう事!?」
僕は冷静に考えてなぜ今まで出来なかった事が、いきなりこのようなことが起きたのかでパニックになった。
「み、美紅様落ち着いてほしいのです!
「・・・おい小動物。今の美紅とお前の現象、そしてお前が私達に目に見える証拠を必死に示してくれた事は理解したが言葉による説明が足りなさすぎる。私は今のを見て少しだがわかったことがある。やはりお前は美紅と契約をしたな?やっぱりお前達魔物にとって真名を教えた事は契約の鍵なんだな?お前は美紅に名真名を伝える事によって一体なぜこのようなことが出来るようになったんだ?それを教えろ。じゃないと美紅は別として私とハレンは恐らく納得しないぞ」
僕とハレンちゃんよりも魔物について多少なりとも知識のあるヒルマさんは何かを理解したように冷静に
アメリミフェスに説明を求める。
アメリミフェスはそれを聞いて再び上を向き何かを考える仕草をする。
たぶんアメリミフェスは言葉を整理しているのだろう。しゃべり方が流暢になったとはいえ、なんというかまだ会話というか言葉がたどたどしい部分があるのでこちらに物を伝えるのが苦手なのだろうなというのがコレまでのアメリミフェスとの会話にたいする僕の印象だった。
そして考えがまとまったのかアメリミフェスが口を開いた。
「俺勝負負けちゃった。でも気分良かった。だから言っちゃいけないモノ教えた」
言っちゃいけないものとは恐らく真名だろう。
「それで教えた後お前はどうしたんだ?」
ヒルマさんはそれを聞いて続きを促すように言った。
「名前は大事。教えるのはダメ。でも美紅はいいと思った。だから俺は教えた。契約?なるのはたぶん知ってた。でもそれ言ったらそいつ・・美紅は俺の本当の名前をもう聞いてくれない思った。俺たぶん本当は聞いてほしかった。呼んでほしかった。だから聞いてもらえて嬉しかった。だから言わずに教えた。俺騙したかも」
なんという事だ。
僕はあの時点で魔物がアメリミフェスの事を何も知らなかったのだ。
ただ僕はもう二度と会えないと思っていた者に会えて僕も嬉しかった。だから名前を教えてもらった。呼びたかったからアメリミフェスという名前を教えてもらった意味も知らずに。
もし名前を教えるのが魔物にとって何か重大な意味があるなら例え万が一、アメリミフェスが教えたがっていたとしても教えてもらう側にも責任がある。
この件に対してはアメリミフェスには責任はないと思う。
だってあの時は僕はどうしても知りたかったのだから、恩人の名前を。
契約が何か知らないけどアメリミフェスは僕を騙してなんかいない。
ただ純粋に僕に対して向き合ってくれて大事なものをくれたんだ。
「君は僕を騙してなんかいないよ!そんな事思っちゃダメだよ!あの時は無理矢理僕が勝負なんかで聞きだしたんだよ!それに僕は君の名前を教えてもらって嬉しかったんだから!」
僕はアメリミフェスが自分を責める前に思った事を伝えようと叫んだ。
君は僕の事を思ってくれたんであって何も責められる事はしてないとわかってもらいたかった。
「美紅・・すまない。私もちょっと性急に事を運びすぎた。事が事だけに強く言いすぎたようだ」
「いいんですヒルマさん。ヒルマさんが僕の事を心配してくれたのは痛いほどわかりますから。でもこの子はたぶん悪気はないんです。真名がどうとか契約とかより僕はこの子の名前を教えてもらった事が嬉しかったんですから」
「美紅様・・」
ハレンちゃんがちょっと涙を浮かべていた。
「元インプもどきの小動物、謝罪させてくれ。少し事情も知らずにお前を責めるような事を言ってしまった節があった」
「いい。気にしない」
「良い子なのです。とても良い子なのです。ぐすん」
「だが確認させてほしい。お前は先ほど・・まぁそんなつもりはないのはもうわかったが、騙したかもと言ったな。私達は魔物の契約についてよく知らないんだ。お前と美紅のさっきの不思議なやり取りについてだ。お前は美紅に真名を教えると同時に一体何をした。何をしたらあんなことが出来るようになったんだ?」
ヒルマさんは先ほどまでとは違う、急かすような口調ではなく優しく語りかけるような口調でアメリミフェスに問いかけた。
確かにその件は僕も知りたかった。名前の件は僕はもう気にしてないと言っては嘘になるがあの現象だけは知っておきたかった。
「名前教える。相手と繋がる。どう繋がるかは相手と教えた奴次第」
「要約すと真名を教える事は契約になり、教えた相手と何かしらの繋がりが生まれるわけだな?そしてその契約内容は魔物と教えた相手次第・・というわけか?」
「そうだ」
なるほど・・って僕どんな契約したの?いやもういいけど・・。
「一番大事な事を教えてもらってないから答えてくれ。お前が騙したかもという件だ。私が思うにお前は名前を聞かれ躊躇したが本能では美紅に教えてもいいと思っていた。だからお前は勝負とやらに負けたら教えていいとさえ思い、負けて教えた。そこまではいい、だが契約内容が問題だ。先ほどの事を聞くと契約内容はお前と美紅で決めなければいけないはずだ。美紅の今の状況を見るに契約した事すらわかっていない。つまりお前は美紅に契約の事を告げず、あげく内容の事もだ。お前は契約内容をお前だけで決めたな?一体どんな契約内容にいたんだ?そもそも勝手にお前だけで内容を決めれるのか?」
「できた。美紅の願い聞いた。美紅俺の名前を教えて欲しいが純粋な願いだった。だから俺教えた。契約成立」
「ど、どういうこと!?」
僕は思わず口にだして叫んでしまった。
「そういうことか!美紅、つまり魔物との契約はお互いの利益や不利益を計算した上で考慮しなければいけないんだ。ディットを例にしよう、つまりあの馬鹿はおそらく魔物全能力を自分の力にするために寿命を差し出したんだ。等価交換になるかはわからないがな。ディットの願いに対して魔物は力を差し出したんだ。
まったく馬鹿な奴だ。しかし美紅の場合の契約だが美紅の、この元インプもどきに対する願いは名前と教えてもらう事だ、それが真名を教えると契約になると一緒だったんだ。願いの内容と契約の仕方が重なったんだ。だからこいつは契約内容を自分で決めれたんだ。名前、真名を教えた時点で美紅の願いを叶えているんだからな。そうだろ?」
「そうだ」
「へー、納得です」
「なるほどなのです」
「納得してるのはいいが美紅にハレン。騙したかもというのは契約内容を自分で決めたということで説明がついたが、その内容をコイツは美紅に言ってない。普通は契約内容を契約者と話すはずだ。しかしコイツはしなかった。おい、遅いかもしれないが説明責任を果たせ」
確かにそこは知っておきたい!命に関わるとかはアメリミフェスはしないって信じてるけど契約なるものをいつの間にかしてしまったのなら内容だけは知っておきたい。
「よかったら教えてくれる?」
僕はアメリミフェスに優しく問いかけた。
そうするとアメリミフェスはちょっとうつむいてた。
心なしか顔が赤く、真っ白い肌が赤く染まった。
そして言った。
「と、友達になる。友達は美紅の言う事なんでも聞く」
へ~・・な~んだ友達か~!容姿と同じでなんて可愛い契約内容だ、安心した!・・ん??
「ってそれ友達の定義じゃないよ!!!友達はなんでも言う事聞いてくれるような便利なものじゃないよ!!??」
アメリミフェスは友達を勘違いしていた。
シュッペルは語り出す。
レストロは非常に希少なモノだ。
ある薬草とあるモノを混ぜてできる薬・・いや麻薬の類。
人にはまったく害がないらしい。それを開発した薬学者も偶然発見した物質だ。
ただ人にはまったく害はないがある者達にとっては絶大な効果をもたらす物だ。
ある者達というのは魔物。
レストロを燃やしその臭いを嗅がせるだけで魔物は暴れ出す。
意思を失い、近づく者を襲うんだ。
魔物同士は争うことはないわけではない。
しかし魔物同士は人間の様に私利私欲であまり争う事がないというのが世間の見解だ。
しかしレストロを使うとその魔物が本能ままに争いだす。
過去にそのレストロを使った事件があった。
その事件はあるダンジョンで使われた。
そのダンジョンには主がいた。
非常に強力な力を持った主がいたたらしい、そのダンジョンは長年攻略されなかった。
何を思ったのか国がそのダンジョン攻略をしだしたのだ。
そしてその攻略につかったのがレストロだった、ダンジョンに潜れば主に所にたどり着くまでに人数は制限されてその主と戦うまでに戦力低下は否めない。だから戦力を低下させない為に主のいる場所にレストロの効果が届く位置でレストロを燃やした、そしてすぐにダンジョンの外まで撤退。
そう、普段は自分の意志でダンジョンの最奥にいる主をレストロの効果で外までおびき出す作戦に出たのだ・・わざわざ主を誘導させる為の犠牲を払ってね。
そして自らの知性と意志を失った主は思惑通りにダンジョンの外まで誘き出された。
「それでどうなったのだ??」
「待ち構えていた国をあげての兵士、その作戦に同調した冒険者達が迎え撃ったらしい」
「では勝ったのか?」
「勝ったのは主だ。瀕死まで追い込んだが主は止まらず国が滅んだ」
「そんなに強かったのか?その主は?」
「レストロにはもう1つ効果があってね。魔物の力を増幅させるという副作用があったんだよ。それを知らなかったその国の者達は計算外の自体を起こし自らの愚かさのつけを払ったんだよ。手を出さなければそんな事にはならなかった」
そんな怖いのかレストロというのは・・ん?我が嗅いだらどうなるんだろう?
聞くかどうか別として、もしもの時のために鼻栓買わないと!
「ソウ君、亜人にも効果がないので安心していい」
「な、なぜ気にしている事がわかったのだ!?」
「鼻を押さえていたからね」
ゴメン我は亜人じゃないんです。
「本題はここからだよ。その悲劇があったゆえにだ、聖堂、冒険者組合、商人組合、そしてもう1つの組織までが同調して各国に申請した。レストロの製造、使用、レストロを製造する為に必要な素材までもが使用禁止になったはずだ。使用が見つかった場合は確実死罪だ」
「じゃあ、この者は死罪?」
「法律上はそうなるがこのダンジョンは見つかって日が浅い、そして臭いだけで判断したが証拠がない。おそらくそこまで考えて使用したのかとも思うがね」
「でもこの者がそういった様な事を言ったのだ」
「そうだがその後魔物を殺したと言っているからね、余計に証拠がない。ここの魔物が少なかったのはそういうわけがあったわけだ。さらに目撃者もいないしね、私達も結局後からここに来て気付いただけだ。この残り香もすぐに消えるだろう。こういった法は被害が出なければ曖昧に終わるのだよ」
確かにここの魔物は凄い勢いで襲いかかってきたのだ。
「お前達ごちゃごちゃウルサイ!」
「その言い方はないだろう?君の処遇に関わることだよ?万が一知らずに使ったとしてもだ・・レストロを何故持っていたのか、自分で製造したのか?貰ったのか?盗んだのか?製造したならその素材はどうしたのか?色々君には聞きたい事があるんだがね」
「言う必要はない!」
「その通りだ」
え?ないの?
「私達は探索者であって君を捕まえる権限はない。組合に所属している冒険者達なら義務があるのでそうすると思うが・・ああ、ソウ君もしかして君は組合には?」
「ないのだ。我は旅・・の者でそういった組織には所属してないのだ」
「なら私達にチュージー君だったね。君に何かする権限はないよ。例え・・君がどんな実験をしていたとしてもね。あと賭けも」
「なら消えろ」
「そこが問題だ!私達は用があってここにきたんだよ。君が我々を邪険にするように我々の行動も君には関係ない」
なんというか・・シュッペルには口では敵わなそうなのだ。
さっきまでこのチュージーとかいうのは殺気を感じたのに今はさっぱりなのだ。
「というわけで話し合いで解決しないかな?別に君の実験とやらについては何も言わないし聞く気もない。邪魔は・・するかもしれないがそれは会話によってだ。我々も用が済み次第消えよう。どうだい?」
「・・・・・・」
「ふむ、黙秘かな?じゃあいい返事をいただける様に決定的なことを言おう。もし戦闘になった場合の事だ。君の強さは知らないがたぶん私には勝てるだろうが、そこのソウ君には勝てないよ、たぶん1分と持たないだろう」
え?我?
そう言われたチュージーはジッと我を見てくる。
なんか恥ずかしいんですが・・。
そして一瞬だけチュージーが震えたように見えた。
「わかった。話し合いでいい」
「結構!では有意義な時間を始めよう!」
こうして戦いになると思ったその場はシュッペルのお陰?で何故か話し合いが始まった。
(((ノ゜Д゜●)ノナゼ??