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それぞれの役目

ちょっと時間が出来たー!ワーイε=ヾ(*ΦωΦ)/


ストックが1つ分多く貯まった!(*´・ω・*)

俺の右目を刺された。

俺は戦いが犠牲がつきものをいうのを承知している。

戦闘だけじゃない、あらゆる物には犠牲が必要だと思っている。

何事にも犠牲がつきものという事を知っているから犠牲を払うのを躊躇する。


右目がなくなったのはムカついたが目の前に写る状況で払った犠牲は十分な気がした。

正直やっかいな奴だった。

ある程度犠牲も覚悟していた。

右目という犠牲は大きすぎる気もしたがそれを代償にした結果がそこにはあった。

それに目の方は治す方法もある。


相手の死。

鎧の奴は最初から今まで役立たずだったが最後は役に立った。

隙を付いて敵を動けなくしやがった。


恐らく鎧も俺の右目の件は怒ったんだろう。

そして今がある。

数メートル歩けばこのくだらない戦闘も終わるはずだ。

相手を観察する限りもう手はない。

外傷はないようだが衝撃で身を起こすのがやっとという感じだ。


俺は短剣が届き位置まで歩いていった。

そしてさっさとそいつに代償を払ってもらおうと短剣を振りかぶった。

思えばそこでそれに気付かなければ結果は変わったかもしれない。


気付いたものはそこにあった。

ダンジョン石。

この世界の者にとっては宝石よりなによりも貴重な存在。


落ちていたダンジョン石は見事な物だった。

俺はそれを気に入り拾おうとした。


しかし拾えなかった。

俺より先に拾った奴がいた。

拾ったのは先ほどまで戦っていた奴ではない。

そいつは今も必死に起き上がろうとしている。

拾ったのは不思議なガキだった。

さっきまでは絶対ここにはいなかったガキ。

何処から入って来たのかいつからそこに居たのかわからない。


俺は何か嫌な感じをそのガキから感じた。

だから怒鳴った。

しかしそのガキは俺の声に気圧されることなく俺に言った。


「お前面白そうじゃない。黙ってろ?」


何を言ってるこのガキ?俺になんと言った?

俺はその言葉に無意識に反応してしまったかのようにそのガキに対して短剣を斬りつけていた。

そのガキはそのまま斬られるはずだった。


しかしそうならなかった。

ガキは短剣の刃の部分を掴んで止めていた。


素手で・・・。


俺は混乱した。

なんだこのガキ?何がおきている?掴まれている短剣がまったく動かない。

そして次に俺が見たのはさらに混乱させる光景だった。

それは一瞬だったが確かに見えた。

ガキは短剣を掴んでいない逆の方の手を動かすと・・手の中にある物を口の中に放り込んで食べた。

それは俺しか見えなかっただろう。

あそこで俺達を不思議そうに見ている、先ほどまで戦っていた奴には見えない角度だろう。

しかしその信じられない出来事は確実にあった。


このガキは・・さっき俺が拾うはずだった物を食ったのだ。

俺より先に拾ったダンジョン石を飲み込んだのだ。


その出来事が短い時間だが俺と俺の中の魔物にまでに混乱という感情を運んできた。


そして俺達が1秒にも満たない時間の致命的な油断。

ダンジョン石を飲み込んだガキが動いた。


そのガキは飲み込んでダンジョン石がなくなった手をゆっくりと俺の胸に当てた。

手のひらを優しく押し当てる。

何をするかわからなかったが悪寒が走った。

ヤバイ!と思ったが・・・遅かった。

手を押し当てた部分から伝わるものがあった。


冷たさ。


それは冷たい程度。

しかしそれは段々凍える程度に変わっていき全身に広がっていった。

全身に広がるに連れてそれは冷たさという痛みに変わっていた。

そして痛みと共に感じる・・動けないと。

そして声が聞こえた、鎧の声だった。

動けないと・・当然だ、俺も動けなくなっていっているのだから。

そこで気付いたんだ。


俺は・・凍っていく。

凍ってしまう。

凍らされている。


視界がぼやける、消える。


見えるのはさっきまで俺が戦っていた赤い奴、俺が殺すはずだった奴。

そして目の前に視線を戻した時に見えたのはガキ。

笑顔のガキ・・くそ・・笑ってやがる・・。


そう、俺が最後に見たのはガキの笑顔だった。

恐らく俺を凍らせたガキの笑顔。

よく見れば綺麗な顔の・・そんなガキの笑顔だった。


そして俺の意識はそこで途切れた。



--------------------------------------------------------------------------------



僕は混乱していた。

殺されると思った。

油断、僕は自分の装備や能力を過信していた。

強い仲間。

運で偶然手に入れた強力武器、ダンジョン石。

そんな全部が僕に自信を与えて戦いという物をいつの間にか軽く考えていたのかもしれない。

もしもここ助かったら自分の弱点から考えよう。

もっと自分と向き合って能力を向上させよう。

この状況で、目の前の敵が短剣を振り被っているのにそんな事を考えてしまう。


死にたくない。


目をつぶって強くそう思った。

しかしいつまでたっても痛みがこないと思い目を開けると不思議な光景が目に入った。

濃い紫色で所々に白銀色のメッシュが入っている髪の色をした小さな子が僕を見て笑っていた。


いきなり現れて僕を助けてくれた。

ヒルマさんでもハレンちゃんでもない。

見た事のない綺麗な顔立ちの小さな女の子。


その子は僕が呆然としているとセナスと向き合っていた。

何かを喋っている?

セナスはその子に向かって怒鳴ると同時に何を思ったのか短剣で斬りつけた。

僕は思わずあぶないと叫ぶ。

信じられないことが起こっていた。


その子は短剣を受け止めていた。

素手で・・・。


僕は混乱したと思う。

一体何がおきているかわからなかったけど危険が遠のいていく感じがした。


そしてセナスとその子を見ると・・セナスがおかしい。

現れた子は右手を口の近くまで持っていってからセナスの腹部に当てた。

打撃?打撃にしては優しすぎると思った。


そしてそれは起こった。

セナスの色が変わっていく。

水色なのは変わらない。

しかし光沢を帯びていって波打っていた皮膚が硬さも帯びてゆく。

短い時間でのセナスの変化。

恐らくあの子が起こしている現象。


何がおきているのがわかったのはセナスが完全に動かなくなった時だった。


セナスは凍っていた。

まるで石像、彫刻のように剣を振りかぶって止められた状況で凍っていた。

あの子が凍らせたんだ、そう思った。


僕はその光景から目が話せないでいると・・その子がセナスの方から視線を外して体ごとこっちに向かって振り返った。


歩いてくる。

トコトコと小走りで。

そして僕の前で止まる。

やっぱり不思議と警戒心は沸いてこなかった。

その子は膝をついている僕の顔の位置にあわせてしゃがんだ。

まじまじとこっちを見てくる、僕も目があったのでその子を凝視してしまう。


身長からいって10歳ぐらい?いや12、3歳?ぐらいかな?

本当に綺麗な子だと思った。

貴族の子とか言われても信じちゃいそうだ。

裸じゃなければ。

ってこの子裸だ!何も着てないし!さっきまで状況が状況だからあんまり気にしてなかったけど裸だよ子の子!見ちゃったし!いや・・見てな・・見ちゃったね、いいわけ良くないね。


僕はとりあえず荷物から毛布か布を取り出そうと決意する!

そして荷物を漁ろうとした瞬間その子は口を開いた。


「確かに返してもらったぞ?」


頬に暖かいものを感じた。

その言葉を聞いて涙が出ていた。

そして頭の中に浮かんだ、絶対言うべきだと思った言葉を返す。


「また助けてもらっちゃったね、ありがとう」



--------------------------------------------------------------------------------


「まったく、速く美紅の元に戻りたいのに」


私は美紅から離れたくなかったのに作戦上仕方なく離れた。

そもそも一時も離れたくないのに・・だ!


「だけどこれはハレンちゃんよりヒルマさんの方がうまくやれると思います」


などと美紅に言われたら断れるわけないじゃないか!

ハレンより私を頼りにしている時点で全力でやらなければ!


というわけで私の使命は捕獲、または殺害。

セナスと共に今回の主犯といっても過言ではない者を探す事だ。


『風』の術者。


今回の暗殺を可能にしている幻覚を起こしている奴を捕獲する事だ。

一応美紅には捕獲を頼まれたが状況によっては殺しちゃっても仕方ないですと言われている。


本来私もハレンと共に王族の護衛に回りたかったのだが、今回美紅がセナスを止めることができればこのどこかにいる術者も用なしになるのだがこの術者は危険すぎるのでここで無効化しておくのが良いという結論が出た。


もちろんこれはちゃんと前日の作戦会議で組み込まれた事案だった。

だからしっかりではないがちゃんとセナスだけではなく術者の方にも罠がはってあった。


豚から吐かせた術者の能力が本当ならこれでいけるはずだ。

術者の能力は幻覚、自分の想像した幻覚を半径45メートル以内に入った者に強制発動。

どの位の幻を見せれる、限界があるかは不明。

発動前に術者に触れば幻覚に巻き込まれないで済むらしい。


美紅は言っていた。


「前回の暗殺の時に僕は小さい男の子にぶつかったんです。恐らくあの子が『風』で幻を見せてた子だと思います。ぶつかった時凄く焦ってましたし、その時はそんな風には思いませんでしたけど今考えれば場違いな感じもしましたしね」


つまり私もそいつに触ればこの幻から逃れれるわけだが・・未だに回りは何もない誰もいない普通の部屋に見える。

範囲は45メートルというから範囲内から出れば幻から解放されると思った。

だから私はセナスから離れたあとに急いでかなりの距離まで離れた。

しかし結果は半分成功という程だった。

幻から解放されていつのもの宮殿の風景になったと思った。

それからゆっくりともどきた通路を戻るとある場所から違和感を感じてそこから前日まで調べていた城とは明らかに少し違う感じの場所になった。


やはり好きな幻を見せれるといってもそれは想像にすぎず、細かいところまでは詳細に見せれないらしい。

私が意識をしっかり保っていれば幻とわかるらしい、でも幻の中にいるのはかわらない。

唯一のこの状況から解放される方法はこのどこかにいる術者に触ること。

私がいるこの場所から45メートル以内に奴はいる。


しかし隣の部屋には美紅がセナスを止めているので邪魔をするわけにはいかない。

美紅のいる部屋は直径で25メートルほど。

美紅とセナスのいる部屋にはいないだろう、巻き込まれる恐れがあるからだ。

部屋の東側はすぐ外になっているで空でも飛べない限りそこにはいない。

北側の出口はハレンとフリスさん達が脱出した通路なので当然そっち側にいない。

入るならば西の隣の部屋と南の今いる私の通路だ。

幻と現実の区別をつけるために前日に置いた今までなかった石造や置物がなくなっている時点でここは幻だ。それはわかるが・・・術者もしっかりと幻の中にいる。


恐らく向こうも当然警戒しているだろう。

私に気付いているかもしれないが向こうから攻撃はない。

魔法で攻撃は位置を私に知らせることになる。

直接攻撃は私に接触する可能性がある。

何よりその2つのどちらも1撃で私を殺せない場合は致命的だという事だ。


この幻には私の自慢の聴覚もハレンの嗅覚さえ無駄。

術者の能力の詳細は頭に入っていても、多く見積もって私から30メートルほど離れた術者を見つけるのは至難。

少しずつ範囲を絞って探していけばいいが向こうも人間だ、当然動くしそれは時間がかかりすぎる。

だからある方法をとるしかなかった。


この城はとても立派なもので傷つけるのは忍びないのだがな。

この周辺の部屋や廊下には美紅がいる部屋以外にはある物が敷いてある。

床にはこと狭しと茶色のふわふわした絨毯が贅沢に敷かれているはずだ。

この辺を歩く者は絶対にこの絨毯を踏んでいなければいけないぐらいに。

前日にはなかったものだ、しかし今はない。

当然幻の中にいるからだ。


実はフリスさんに頼んで仕掛けをしてもらった。

その絨毯も2日前にはなかったものだ。

文句を言われたがわざわざ敷いてもらった。


「自分で頼んで仕掛けておいたのに見えないがこれを隠す為に・・・」


私はその場でしゃがみこんだ。

そして床に手を置く。


まったく何てことだ・・確かにあるはずの絨毯があるはずなのに触った床の感触は視覚と同じで冷たさを感じる大理石。

確かにいきなりこんな幻を見せられたら意識してないと絶対に混乱するな・・違和感なく信じる者の方が多数いるだろうな。


しかし残念だったな。

お前の能力は五感全てを狂わせるものだが精神までは汚染されないのがもうわかっている。

人はまず見えるものから注意を払い信じる、その点ではこの術者の能力は最高だと言えるだろう。


「セナスの暗殺に使われるわけだな。本当に暗殺向きだ、悪用すればな」


今更ながらそう思い、嫌な感じになったが私は仕掛けに触りそれを実行する。


あるはずの茶色の絨毯に手を置き・・私は魔法を発動させた。


発動する魔法は簡単なもの手の平から単純に雷撃を出すだけのものだ。

普通なら絨毯が燃えるだけなのだが、コレには仕掛けがしてある。


この絨毯は魔物毛皮で出来ている。

雷軽減という特性を待つ魔物で防具の素材にも良く使われる魔物だ。

ふわふわで綺麗な毛並みなのに雷撃軽減という追加効果で女性冒険者に大人気の素材を待つ魔物ダイヌマータン。

毛皮はとても綺麗だがおぞましいほどブサイクな顔を持つ魔物だがな!!


「まったく凄い出費だよ。しかも突然こんな無理言いやがってからに」


フリスさんは私と美紅の計画に必要な物を文句言いながらすぐに集めてくれた。

さすが元商人だ、いくら今は王族でも本当に集まるとは思わなかったのが本音だ。


そしてその魔物の毛皮の下に本当の仕掛けがあった。

毛皮で見えないがそこには床に敷き詰められた鉄板が敷き詰められている。

歩いたものには多少感触が伝わるかもしれないがダイヌマータンの毛皮で気付かれないだろう。


鉄は電気の伝導率が高い。

つまり私の放った電撃は鉄板を通して美紅のいる部屋以外の床は今強力な電気が流れた事になる。

上に敷いてあるダイヌマータンの絨毯で電気が通らないのでは?と作戦を話したときにアルナ姫に言われたが問題ない、雷撃軽減であって無効ではないので私が全力に近い威力で撃てば丁度痺れて暫く動けないぐらいの威力まで下がるしなっと言っておいた。


「うぎゃぎゃーーーーーーーーーー!」


電撃を放った後に数十メートル先から叫び声が聞こえた。


「ほら・・な、たぶん生きてる」


ちょっと焦ったが・・。

そして視界が変わった気がした。

見える位置はあまり違和感がないが、見えてきた物がある。

前日目印のために置いた石造や置物、そして何よりしたを見るとちょっとだけ黒く変色しちゃったかな?という絨毯が見えた。


「もう少し威力を抑えても良かったかもしれないな・・・絨毯が焦げ・・まぁいいだろう!結果が良ければきっと文句はいわれない筈だしな」


というわけで私は声の方向に走った。


そこにはピクピクと痙攣している子供がいた。

12~3歳ぐらいの平凡な顔立ちの男の子だった。


「こいつが術者か?いや考えるまでもないな。こんな子供が今この時城にいるはずないしな。何より豚の情報通りだ。額に傷がある」


私はその子供の脈を確かめてから携帯していた水を顔にぶっかけた。


「うわっ!」


という叫び声と同時に子供は目を覚ます。

そして私もそれと同時に子供の胸倉を掴み持ち上げて私の顔を同じ位置に持ってきた。


「うぐっ。いたたた・・体中が凄い痛いよ。なんだったんだよ一体・・」


「おい、気付いたならこっちを見ろ」


「わあっ!あんた誰!?あ・・電気青鎧!?お前の仕業か!」


「人を変な呼び名で呼ぶな。そうだ、私の仕業だ。電気を流してお前に食らわせた」


「なんて酷い事するんだ。僕はまだ15歳だぞ!死んだらどうするんだ!僕は『風』という存在でこの世界の宝だぞ!凄い能力だって持ってるんだぞ!」


ポカっ!


「痛いっ!」


「うるさいなお前は、お前が『風』だろうが凄い能力を持っていようが関係ない。今の私の状況は目の前の敵を無効化することが使命なんだ。お前が敵である限りどんな存在かなんてしるわけないだろう」


「屁理屈をいうなっ!」


「・・・どっちがだ。お前本当に15か?12歳ぐらいに見えるぞ?嘘ついてないか?15ならもっとしっかりした考えが出来るだろ」


「身長の事を言ったな!よくも・・気にしてるのに!身体的特徴を馬鹿にする奴は最低だってママは言ってたぞ!お前は最低だ!」


「はぁ・・こんなのに困らされたわけか私達は・・豚や試合で戦った2人を思い出すと常々思うな。『風』というのは凄い力を持っていても人格までは良い訳じゃない。も、もちろん例外もいるが・・うっ・・話がそれたな。あとな!私は確かにお前の外見を見て15歳より幼く見えたが・・だ!そんな小さな事を言ったわけじゃない!考え方が15歳より幼いと言ったんだ!わかるか?」


私が怒鳴ると目の前の子供は怯えたように言い返してきた。


「で、でも僕達の世界で15歳はまだ成人じゃ・・大人じゃないんだからな!」


「そんなのはこっちでも同じだ。本当に理解してないのか?お・ま・えは!普通の15歳の思考より幼いと言っているんだ!あと身長が低い事を気にしているならそれに負けないぐらいの物を身につけろ馬鹿が」


「言いたい放題言いやがって!お前もさっきまで僕の幻の中にいたからわかっただろ!もう身長なんてどうでもいいくらいの力を僕は持ってる!ギフトだ、僕の魔法ギフト『モルガナ』は無敵だ!」


ボコッ!


「痛い!いちいち殴るな、大人は都合が悪くなるとすぐ暴力に訴えるから嫌なんだ!パパもそうだったし。

僕がどれだけ現実から逃げたいと思ったか・・」


「しるかそんなの。今殴ったのは私の言った事を全然理解しないからだ。お前が妄想に逃げようか知ったことか。私が言いたいのはなガキ、お前がもっとしっかりしていれば身長のことなんて言われても気にならないはずだと言いたいんだ。ギフトなんて与えられたものだろう?自分で手に入れた力を自慢しろ。手に入れてみろ」


「か、簡単に言うな!」


「他人だからな。私が言ったのも所詮適当だ。だがどう取るかはお前次第だよ」


その言葉をどう取ったのか掴んでいる子供は下を向いて俯いた。


「・・・これから僕はどうなるの?」


「さあな。私は雇われてお前を捕獲か殺すかしろと言われただけだ。逃げようと思っても無駄だぞ?お前に触れている時点で私にはもうお前の能力は無効なんだろ?他にも別の力があれば逃げれるかもしれないがな。経験でわかるがお前は武力はない。戦いに身を置くものって感じがしない」


「こ、殺されちゃうの僕?」


「今私がここで殺すことはお前が逃げようとしない限りもうないがな。捕まって刑が決まれば死ぬかもしれないな」


「なんでもするから逃がして!」


「ふざけているのか?」


「本当だよ!もうあの国にもセナス様にも協力しないよ!だからお願いだよ!」


「私がそれを信じたとしてもその提案は却下だ。何故ならお前には責任があるからだ。お前がこの暗殺をどう思っていたかは知らない。強制的に、不本意で協力したかもしれない、だがお前はそれでもここにいる。関わったんだ。つまりそれは罪だ。お前の待遇や考えとは別に被害を被った者がいる時点でもうお前のこれからの行動の姿勢や都合だけでは解決しない」


「し、死にたくないよ!僕は偉くなれるって言うから協力したんだ」


「お前の都合など知らないと言った。お前は失敗した時の事をあまり考えなかっただけだろ?受け入れろ」


「そ、そんな・・ねえ・・電気のお姉さん?僕を助けるように言ってよ。電気のお姉さんならそれくらいできるでしょ?」


こいつ・・電気電気って・・死刑を懇願してやろうか。


「た、助けてくれるのお願いしてくれてたら僕の能力で電気のお姉さんの好きな幻を見せてあげるよ!制限時間や僕の精神状態とか影響したり想像力に限界がちょっとあるくらいでリアルな幻を見せてあげることが出来るよ!?」


ゴクリ・・こ、こいつなんて魅力的な提案を・・。

いやいやいや、所詮幻だし現実じゃない!はっ!しかし幻なら美紅が絶対してくれないことも可能・・。

いやダメだ!そんな取引には応じないぞ私は!


「私の名前は電気じゃない!ヒルマという名前がある。あとお前の処遇を決めるのは私じゃないと言っただろ。もうお前は負けたんだよ」


「ヒルマ・・お姉さん。そうだ!まだ僕は負けてないよ?セナス様がいる!あの人が后妃って言うのを暗殺すれば僕達の勝ちなんだよ」


「そう思うか?セナスは今私の最愛・・仲間が相手をして戦っている。万が一にも・・軌跡が起きてもないことだがあったとしよう。セナスがフリス后妃の暗殺を成功したとしてだ。ここまでお前を助けに戻ってくるのか?」


「く、来るよ!僕の力は役に立つし」


「そうか、そう思っているなら助けを待つがいいさ。あとな。どうやら終わったようだぞ」


「終わったって何が?」


「お前の幻が無効になったお陰で私にはわかるんだよ。向こうが静かになったしな。このまま行って見れば全てがわかる。ああ、ここにきて逃げようと思うなよ。このまま掴んで連れていくからな。暴れれば容赦なく電気を流すぞ」


そう言ってやると先ほどの電撃の衝撃を思い出したのだろう。

ビクっと震えたあとに観念したように頷いた。


「では行くぞ。お前の運命がわかる場所に」



--------------------------------------------------------------------------------


「追ってはこないようだね」


フリスさんが喋ったのです。


「そうみたいなのです。見事に美紅様がセナスをお止めしているに違いないのです」


「仕方ないにせよ、本当に美紅さん1人に任せて良かったのでしょうか?」


アーバン王子様が喋ったのです。


「どういう意味なのです」


「相手は貴方と決勝を戦った人ですよね。素人目に見てもあの人はとても強かったと思います。あ、もちろんその相手に勝ったハレンさんはもっと強いですよ。だからです、ハレンさんも残ったほうが良かったと思って」


「お兄様、作戦会議の時に理由は仰ったでしょ。幻覚にかかっている者は一緒にいれば狙われる可能性もある。足手まといだってだからこそ美紅さんに任せるしかなかったんですわ」


アルナ姫様が喋ったのです。


「方法までは教えていただけませんでしたが美紅さんなら幻を見せる魔法を使う前に術者に触って美紅さんだけ幻覚にかからないようにできるとはっきり仰ったからこそ、この作戦は可能だったのです。だから美紅さんを信じるべきですわ」


「わ、わかったよアルナ」


アーバン王子が返事を返したのです。


そうなのです。実は今回の作戦は美紅様ありきの計画だったのです。

フリスさん達王族の方々は美紅様だけが幻をみてはいないと知ってはいるものの、どうやったかは知らないのです。

美紅様だけが幻を見ていない方法はハレン達3人だけの秘密なのです。

というのもそれは美紅様のお力、ギフトによる能力によるものなのです。

豚さんから聞いた情報で幻を回避する方法は1つ、それは術者に触ることだったのです。

しかしセナスが現れてから術者を探して触ったとしても後手に回ってしまうのです。

だからもっと前に術者に触る必要があったのです。

だから美紅様は地道な作業を作戦に組み込んだのです。


お城に入る人を全員触りまくるという方法なのです。

いくら『風』のお方と言ってもずっと幻を見せるのはたぶん不可能、だから美紅様のお力『ロスト』をご使用して片っ端から、幻の能力をを使っていたとしても隅から隅まで美紅様は走り回ったのです。


目に見えるものや動くもの、置物に至るまで全てのものをお姿を消してお城中の人にお触りになったのです。

ああ、触られた方達が羨まし・・じゃなかったのです・・というわけでなのです!今回の作戦上の功労者は間違いなく我が愛しの美紅様による地道な努力なのです!ちゃんちゃんなのです。


「まぁなんとかなるよ。あたし達が無事でいる事に意味があるんだよ。それが美紅達がセナスを止めてくれることに対する礼儀ってもんさ」


フリスさんが良い事を言ったのです。


「ところでハレンさん」


「なんなのですアルナ姫様?」


アルナ姫様はハレンに何か聞いてきたのです。


「こんな時になんなのですが、ちょっとした興味なのですが貴方達3人の中で1番強いのは誰な」


「美紅様なのです」


ハレンはアルナ姫様は言い終わる前に教えたあげたのです。


「そ、即答ですわね。にしても美紅さんが1番でしたのね。わたくしはてっきりヒルマさんかと思っておりました」


アルナ姫様大変な勘違いをしておられるようなのでハレンはその勘違いをちゃんと正さなければいけないと思ったのです。


「それは物凄い勘違いなのです。ヒルマさんは確かに物知りでとってもお強いのです。ですが気高さや美しさや可愛さ、そして匂い!そう匂いなのです!良い匂いの点において美紅様には遠く及ばないのです。というかヒルマさんはただの大量感電兵器なのです」


ハレンは良い事を言ったのです。

これでアルナ姫様の勘違いはきっと正しい方向に向いたのです。


「あんた・・ヒルマに殴られるよ?」


フリスさんが横からふ、不吉な事を言ったのです。

こ、怖くなんかないのです。


「でもハレンさんとヒルマさんは仲がよろしいのですわね」


アルナ姫様がさっきとは違う意味で間違った事を、おかしな事を言い出したのです。


「どうしてそうなるのです?」


「ほら、喧嘩するほどって言うじゃありませんか」


「ふっ・・ハレンはヒルマさん程度一度も本気になって相手にした事はないのです」


ハレンはアルナ姫様に事実をありのままに伝えたのです。


「あたしはアンタがヒルマに何度もつかかって言ったのを見てるよ」


ど、どうやらフリスさんは敵の幻覚にかかっているかもしれないのです・・一大事なのです。


「それにしてもですよ。貴方達3人は本当に不思議な3人組ですよね」


ノーバン王子も変な事を言い出したのです。


「どの変が不思議なのです??ハレン達は何処にでもいる感じな市民なのです」


ハレンは冷静に事実を教えてあげたのです。


「どこがだい!あんた達みたいな怪しい3人組滅多に見た事ないよ!」


さっきからフリスさんが非常に心外なツッコミをしてくるのです。

絶対敵の幻覚にかかっているのです。


「わたくしもお母様やお兄様と同意権ですわ。この騒ぎが終わって静かになったら貴方達3人とじっくりお話がしたいですわ」


「黙秘するのです」


ハレンはお婆様の教えに寡黙な女性は魅力溢れるものですと言われたのを思い出したので黙ることにしたのです。


「今度は黙って誤魔化す気かい?」


フリスさん心外なのです。

ハレンはただ寡黙な女性を目指してるだけなのです。


その時なのです、ハレンは来た道を振り返ったのです。

今まで把握できなかったことが起きたのです。

臭いが、今までしなかった臭いが急に臭ってきたのです。

王族の方3人もハレンの態度を見て驚いたようで聞いてきたのです。


「どうしたんだい急に振り返って?」


「もしかして追っ手が!?」


「何かありましたの?」


どうやら何か勘違いをさせてしまったみたいなのです。

しかしこれは・・・・。


「勘違いしないで下さいなのです。どうやら美紅様達のところで何かあったようなのです」


「どういうことだい!?大変な事かい!?」


フリスさんが動揺してしまったのです。

ちゃんと説明するのです。


「わからないのです。術者のせいでハレンの嗅覚すら無効にされていたのです、でもそれが急に効くようになったです。恐らくヒルマさんが術者を捕らえたか殺したのです」


「本当なんですの!?」


アルナ姫様がちょっと喜んでいるのです。


「まだ話の続きがあるのです。臭いがわかるようになった瞬間に美紅様の匂いとセナスの臭いが確認できたのです。でもすぐにセナスの臭いがなくなったのです。代わりにとは言ってはなんですが嗅いだ事のない・・いえ嗅いだあるかもですが変わった臭いがしているのです」


「どういうことだい?まったく意味がわからないよ」


「どういうことですかハレンさん」


「セナスの臭いがしなくなったという事は美紅さんが勝って・・殺したとか逃げたとかじゃないのですか?」


王族3人が興奮してそれぞれ感想を言ったのです。


「アルナ姫様、たぶんそれは違うのです。逃げても臭いは消えないのです、移動するだけなのです。あと死んでも臭いは消えることはないのです。嫌な言い方になるのですが死臭に変わるだけなのです」


「じゃあ、一体何があったのですか?」


アルナ姫様が答えを求めてきたのです。


「わからないのです。ハレンにはこう感じられたのです。セナスの臭いが途切れたと感じられたのです。あんて説明すればいいかわからないのです。こう・・セナスが消えた?そんな感じなのです」


「で、では一度解除された幻の魔法が再度再会されてまた臭いがわからなくなったのでは?」


「それはないのです。何故かと言うと美紅様の素晴らしい匂いが今もするからなのです。ハレンがこの匂いを間違える事はこの世界が滅んだとしてもないことなのです」


ハレンは誇らしくそう伝えたのです。


「じゃあ本当にどうなったんだい」


「だからハレンにもわからないのです。わかる事は美紅様が無事な事とセナスの変わりに何者かがいるという事なのです。変な臭いが!でも別に嫌な感じの臭いではない気がするのです」


「そうかい・・じゃあハレン、あんた確認してきな」


「何を言っているのです?!」


フリスさんは本当に幻を見ているかもしれないような事を言ってきたのです。


「逃げる事は大切だが、状況が変わっているなら話は別だ。その状況を把握しないと逃げたって悪くなるかもしれないからね」


なるほどなのです。


「で、でもハレンはフリスさん達の身を守る使命を美紅様とヒルマさんから頼まれて・・」


「じゃあ、あたし達も一緒に行くよ」


「それがいいです」


「そうしますわ」


「それじゃ本末転倒なのです!」


「依頼主の命令だよ!護衛なら護衛らしく依頼主のいる場所で護衛しな」


「無茶なのです~!」


「ハレンさんと言ったね。私からも頼むよ、フリスのいう事を聞いてやってくれ」


・・・・・・・・・・・・あ!王様なのです、喋ったのです。

というかよく今まで黙っていたのです。


「ああ!もうしょうがないのです!でも戻るならハレンが先頭なのです!決してハレンより前に行かないで下さいなのです!」


王族の3・・いや王様も入れて4人は静かに頷いたのです。


・・・王様影薄すぎなのです。


というわけでハレンは美紅様やヒルマさんから叱られるかもしれないのに危険を承知できた通路を戻ることにしたのです。




--------------------------------------------------------------------------------



僕はその子と向き合っていた。

その子も僕をじっと見つけてきた。

ちょっとした会話をした。

いや結構大事な事を話した気がする


短い時間だったけど長く感じられた。

そんな時だった。


部屋の入り口と後ろの通路の出口の両方から声がした。




「美紅、誰だそいつは!」


「美紅様!その子は何者なのです!」



えーと、なんて説明しようかな。











シュッペルのながーい話を聞きながらも我は戦っていた。

正直に言おう!雑魚ばかりなのだ!

あと後ろのシュッペルがかなりウザイ。

たぶんこいつは自分の好きな事は物凄く喜んで語るタイプなのだ、しかし自分でも言ったがあまり友人がいなかったようで語る事がなかったらしい。

だから・・その反動がコレだ。

なぜ今までの反動を我にぶつけるように語るのだ・・。


そんな自分に起きている理不尽な出来事を嘆きながら戦っているといつの間にか目の前からは敵がいなくなっていた。

その代わり目の前にはとても大きな空間があった。

自然で出来たとは思えない。

見渡すと均等の取れた5角形の形をしていることがわかる。


「シュッペル、なんなのだここは?」


「だからダンジョン石という者は魔物がいないと発生しないと言う学者もいるくらい・・なんだね?質問なら手をあげて・・なんだねここは?」


「我が先に聞いてるのだけど・・?」


「ふむ・・察するにここは最下層だと思うね。入り口があって出口がない。まぁ魔方陣や隠し扉があるのも考えられるがね、しかしそれもないようだ。アレを見たまえ」


「アレ?」


シュッペルがそう言うので指差す方向を見ると何かがこの空間にポツンと座っていた。


人種(ひとしゅ)かな?」


「違うのだ、あれは形だけなのだ。もっとなんというか変な感じがするのだ。それにここ変な臭いがするのだ・・なんていうか落ち着かないのだ」


「落ち着かない臭い?私にはわからないが・・いやまさかな・・とりあえず行ってみよう」


我とシュッペルは一度顔を見合わせて頷きあいそれに近づいていく。

距離が段々と縮まっていく、そして完全にそれが何かわかる距離まで来た。


形は人種(ひとしゅ)しかし肌が真っ黒で頭に何か動く物がついていた。

地面に尖った石で何か落書きのようなモノを書いていた。

その不思議な者にシュッペルは何も考えていないような仕草で気軽に話しかける。


「失礼、私はシュッペルという者だ。こちらはソウ君という。このダンジョンを捜索にきたんだがね、君は何者は聞いてもいいかね?」

 

シュッペルがそう言うと座って地面に何かを書いていた者が顔を上に上げてこちらを見上げる。


「こんにちは、お二人さん。ここには何もないよ、ダンジョン石ってのも、宝石も、お宝も、ご苦労様。出口なら入ってきた入り口だよ。さようなら、あ・・わたしの名前はチュージーだ」


「ふむ、何もないのかね。じゃあ君は何もない場所で何をしているのかな?」


「賭け」


「賭け?何もない場所で?」


「そう、何もないからいい。やりやすい、それに別に負けてもいい遊び」


「よくわからないが帰る前に1つ聞いても良いかね?このダンジョンを潜って見てきたことからこのダンジョンの構造上ここには主がいると思うのだが知らないかね?ここは最下層、いるならここのはずなんだが」


「主ならわたし、ここは実験の為にちょっと間借りしてるだけ」


そう答えが返ってきてシュッペルを見ると微妙に不快とわかる表情をしていた。


「間借り・・か。では君が主ということで間違いないのかな?」


「今はね」


「今は?まるで前は違ったみたいな言い方だね?」


「あなたうるさい。やる事あるし帰ってほしい」


「その質問に答えてくれたら帰ることを検討しよう」


「・・・主争いをさせて勝った奴をわたしが倒した。言った帰れ」


ん?どういうことなのだ?わたしが倒したのはわかるが、争わせた?まったく意味がわからないのだ。


「ふぅ・・君は」


シュッペルが何かを言い終わる前にチュージーという者が叫んだ。


「答えた!帰れ!」


しかしシュッペルは動じることなく。


「私は帰るのを検討すると言っただけだ。帰るとは言ってないよ。では言わせてもらおう。君は今争わせたと言ったね?もしかしてだが、レストロを使ってはいないだろうね?」


「うそつき!帰れ!」


チュージーは答えることなく怒鳴るが我はシュッペルの言う事が気になって聞いて見た。


「シュッペル、レストロとはなんだ?」


「最悪の花だよ」




続く(*´・ω・*)


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