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約束通りに・・

ちょっと早く書けた!(*´・ω・*)


なんかブックーマークが増えてきた、嬉しい!ワーイε=ヾ(*ΦωΦ)/

また思い違い、いや今度は思い込んでいたようだ。

一度目の暗殺の時『風』がまだ入るかもしれないと考えなかったこと。

そして今度は目の前の事を疑わなかった事。


でも考えてもたぶんわからなかったと思う。

ナディガムの王族に配られた鎧の秘密はある程度知ってたというより聞いた。

でもまさか鎧の魔物の方が常に表側で人間である本人が裏にいるとは思わなかった。


何か理由があるんだろうか?

そもそも目の前にいるこの人は本当に魔物の方じゃないんだろうか?

嘘をついているんじゃないだろうか?


「おい、お前はやる気があるのか?俺がわざわざ出てきて相手をしてやると言っているのにこっちを向いてはいるが、鎧に向けてたような殺気が全然出てないぞ?」


「聞いていいですか?」


「なんだ?時間稼ぎか?」


「時間がなくなって困るの・・いやいいです。貴方がその体の本当の持ち主で良いんですよね?そしてさっきのが鎧の魔物って事でいいんですよね?あとなんで貴方じゃなくて魔物の方がずっと表というか人格を支配してたんですか?」


「お前質問が多すぎだな。というより何度も言わせるとかお前は馬鹿か?俺が本物と2度も言ったろ。さっきまでのは鎧の奴だ。そして最後の質問だがな、いちいち俺達の関係を教えるつもりは無いと言いたいが教えてやる。契約だよ契約、まぁおれはまだ仮契約で留めているのだがな。仮契約でも体を貸せばある程度俺に有利なようにしてくれるって言うからな、貸してやったんだ。鎧が表に出てても俺が主人だから不利には働かないしな」


「答えてもらってありがとうございます。でも鎧は大会で負けたり1度ならず2度も暗殺失敗してますよね?思いっきり不利な状況ですよねこれ?」


「ふんっ。そういう意味では不利だが、契約的に俺には不利じゃないんだよ。あいつは俺の体を使ってはいたが俺じゃない。つまり思い通りに行かないこともあるって事だな」


なんかこっちのセナスはまともだ。

言ってる事もわかりやすいし正論な気がする。

もしかしたら話し合いで解決するんじゃないのかな?


「提案なんですが・・捕まってくれません?」


「逆に俺から提案だ。俺じゃないとはいえ3度も俺達の邪魔したんだ。死んでくれ」


それは提案じゃなくて命令って言うんだよ!


「いいんですか?時間がないですよ~?本物セナスさん、現在進行形で計画が失敗してる時点でと~っても貴方不利なんですよ~?」


「ガキに言うみたいに言うな。お前俺より年下だろうが。あとな、お前俺を鎧より弱いと思ってるだろ?」


「え?違うんですか?」


「お前が接触したのはお漏らしディットだと思うがな。鎧にも特性がある。そもそも知ってるかわからないが俺の鎧はな、ディットとはまったく別物なんだよ。まぁ俺のはある意味特別製だ」


恐らく4つの鎧の中に封じられている魔物の事を言っているんだろ思う。

4種の封じられた魔物。

それはナディガムの極秘の研究の成果、賜物らしい。

だから僕はそれを詳しくは知らないと思っているらしい、当たり前か。

でも知ってるんだよね・・製作者のシュッペルさんに聞いたし。

しかしどういう事だ?魔物よりこの人が強いなら鎧を着る意味がない筈なのに。


「ふう・・そろそろ行くぞ。俺も結構久しぶりに鎧と交代したんでな。体を動かしたいんだよ。ホントの事を言うとな。鎧が表に出ている時は俺は鎧の中だと思うんだが外のことを映像でも体験してるかのごとく見えるんだ。コレが結構居心地がいいんだよ」


「そんな事別に知りたくないんですけど?」


「まあ、独り言だと思え、本当に行くぞ。ほらよ!」


「お、おおう」


「次行くぞ、そら」


セナスの掛け声と共に手のひらから魔法が放たれる。

10センチ程の水の球が次々と僕を襲った。


「おっもしれーな。ここまで早く動いて避ける奴だと、狙いがいがあるってもんだ」


僕は必死にそれを避けていた。

そして避けた球が後ろの壁に当たった、ガキンっと音がした。


あれ・・音がおかしいぞ?水が当たった音じゃないような・・・。

後ろを見ると球が当たった部分の壁にヒビが入っていた。


「な、なにあれ・・」


「何驚いたんだお前は、魔法だぞ?ただの水の球とでも思ったのか?しかしお前本当に面白いな。鎧と戦った白い獣といいお前といい、お前の場合は戦い慣れているくせに何も知らない感じがするがな。避ける避ける。もしかしてお前も拳からなんか出して俺を吹っ飛ばしたりできるのか?」


こっちの知識があまりないんだよ!

それにそんなのできないよ!それが出来たらとっくにやってるし!

あ・・ハレンちゃんに習おうかな・・いや、たぶん習ってもできないな。


「必死に避けてるところ悪いけどな、俺は鎧と違ってあんまり遊んだりしねえんだわ。てわけでな、まあ頑張れや」


嫌な予感がした。

僕は目の前から来る球を避けた。

この後に後ろで音がするはずだった、壁に当たり壁が砕ける音。

それが・・ない。


セナスの手からは次々に来る水の魔法。

僕は次に来る球を避ける動作のモーションを大きくした。

元の自分がいた場所より数メートル横に飛んだのだ。


「なんだお前は、感もいいのか?違うな・・予想したのか?」


後者が正解。

予想したの。

後ろで音がしなかった。

セナスの遊ばないという言葉。

そしてハレンちゃんとの試合。


セナスの魔法は水を操る魔法。


僕が避けた小さな水球は・・壁に当たらずにカーブを描いて後ろから・・僕を襲ってきていたのだ。

僕はそれを動作を大きくする事で何とか避けることに成功した。


「なるほどな、まあ想定の範囲内だ。前回の試合を見ていればできる動きだな。ただ予想したのなら悪いがな、これからはあんな手品程度の魔法じゃないぞ」


セナスがそう言うと水の球は数を増す。

ハレンちゃんの試合の時はこれより大きい水球が当たる寸前に棘のような針が出て当たったら串刺しにする魔法だったはずだ。

数もたしか2つだった。

しかし今飛んでいる球は5つほど、これ以上増えるのだろうか?棘は出ていないにしても壁にぶつかった時の破壊力といい、鉄球と言っていい硬度をしてるのがわかる。


ああ、水の魔法に強い魔法があればいいんだけど・・なぜ僕には魔法の適性がなかったんだろう・・。

才能のある人が羨ましい!水なら雷が効くのかな?いや魔法がそんな簡単な話ではない気がする・・それでもやっぱり雷を操るヒルマさんがここにいてくれたらとても頼もしいのに・・。


「さすがにここまで避けられるとウザイな。もっと数を増やしてもいいが・・」


やめて!これ以上数を増やしても意味ないよ、きっと!

って増やすな!このアホ!


セナスは水の球を順調に増やしていく。


「おお、避け方が大雑把になってきやがったな。そろそろ疲れたか?そっちは危ないぞ?」


その通りだった。

ここは広いとはいえ、お城。王宮の一室だ。

出口はあるが逃げる気もないので球が増えればいずれ僕は捕まるだろう。


「速かったがもう限界か。もうちょっと増やせたがこれが限界か」


その言葉は恐らく僕のいる場所の状況を見たから出た言葉だろう。

僕は水の球を避けるたびに追い詰められていった。

四角の部屋の隅の追い詰められて後ろには・・壁があり行き止まりだ。

僕は今の水の球を避けたのと同時に・・後ろに壁の存在を感じた。


「じゃあ、さよならだな。面白くなかったぞ」


セナスの別れの言葉と共に10個以上の水の球が逃げ道のない僕に一斉に向かってくる。

あの数の球が一斉に僕に当たれば僕は全員の骨がボキボキに折れて半分以上原型も留めないだろう。


そして・・物凄い音と共に僕がいた場所に煙があがった。

水の球が壁を壊し破片もあちこちに飛び回った。


「おおぉ・・以外に派手に壊れたな。安物の壁だな」


煙の中から飛び散る壁の破片を見てセナスはそんな事を言った。


「さて、今から追いかけるか?いや・・もうここでやめるべきか・・しかしここでやめれば俺の立場が・・仕方ない追いかけるか」


セナスは体の向きを変えるとフリスさん達が脱出した出口に向かい歩き始めた。

しかし、1歩も歩かないうちに動きを止めた。


「で?どうやってあれを避けた」


セナスは自分の右胸を見ながら後ろにいる僕に向かって言う。


「こっちも質問なんですけど、さっきといい今といいなんで刺したのに死なないんですか?左が駄目だったので右に心臓がある稀な人かと思って逆を刺したのに、もしかして心臓がない人ですか?ゾンビですか?」


「答えてやるから答えろよ。ゾンビと一緒にするなクズが」


余裕の態度だったのにちょっと怒ったかな?


「それ答えになってないですよ。じゃあ僕も答えます。あの球遅いんですよ」


「はっ!生意気だな。つまりお前はわざと行き止まりに誘い込んで逃げ道がないと俺に思わせたわけか。さらに俺に限界だと思わせていた速さ以上の速さで避けたというわけか」


「正解!騙されたわりには理解が早いですね!」


「挑発してるのか?だったらやめろ。俺はお前みたいな下の者に感情的になる事はない。そもそも俺が相手してやってる時点でお前は感謝するべきだしな」


「え?鎧の魔物が敵わなかったからと時間がないから貴方が勝手に出てきたんじゃないんですか?」


「それを感謝しろと言ってるんだ。お前と俺は身分が違うのだからな」


ああ・・なるほど。

やっぱりこの人もディットと同じ感性の持ち主か。

兄弟って怖いわ。


「なるほど~王子様ですものね」


「やはりわかってたか。そうだ、俺ははナディガム大国第一王位継承者だ。ひれ伏せてもいいぞ貧民」


「・・・・え?第一王位継承者?」


そんなバカな。


「なんだ?何がおかしいのか?」


「失礼ですが・・お歳は?」


「お前もか・・31になるがそれがなんだ?」


オマエモカ?


「うっそーー!!」


「ちっ・・だから言いたくなかったんだ」


「30前!?どう見ても20ぐらいでしょ!その鎧って若返りとかあるんですか!?」


「・・・ふざけているのか?あるわけないだろ。それに若く見えるなら別に問題ないだろ!それ以上言うと殺すぞ!」


もしかして・・気にしてる?

鎧に若返りの効果なし・・っと。

しかしコレに関してはあっさり答えてくれたな。


「いや、確かに31歳でその童顔なら羨ましがられるかもしれませんけど・・王族なのに威厳が・・もしかして童顔のせいで他の下のご兄弟より下に見られて舐められたり・・いやいいです。すみませんでした」


「お前・・威厳とか言わなかったか?」


「言ってませんよ。気のせいですよ。お歳で耳が遠くなったんじゃないんですか?」


「殺すっ!」


おお、どうやら怒りの琴線はこの内容の話だったみたいだ。

いやーちょっと面白かったし、ディットと一緒で実は短気?

しかしナディガムの王族というか王子は碌なのいないね。

長男は暗殺で四男も人をゴミとしか思ってないし。

ん?次男か三男がまともじゃなきゃもしかして次の世代でナディガムは滅びるんじゃ・・。


「殺されるつもりはないですけど殺す行動に出る前に教えて欲しいんですけどいいです?現在王位継承争いで一番の最有力候補って誰ですか?」


どうかコレやディットじゃありませんように!


「聞いてどうする?お前みたいな貧民には関係ない」


なるほど・・そういうことね。


「えっと、つまりセナスさんは最有力じゃないんですね。自分が1番なら今の状況なら俺に決まってんだろ!とか言いそうですものね。・・・・それで王位継承1位とか嘘じゃ・・ぷっ!」


長男で第一子なのにもっと優秀か力のある王子がいるのね。

まぁこんな場所で暗殺なんてしてるぐらいだしその程度か。


「お前・・俺を怒らせてどうするつもりだ?お前にとって良い事など一つもないぞ」


「いえ、そんなつもりはないんですけど。ただの興味ですよ」


「・・・もういい。いちいち感に障る奴だ。もう終わりにする。言っておくが俺はディットとは違うぞ、アレの鎧は出来損ないみたいな物だ。俺のも・・まあ今はまだだがな。だがディットとは物が違うのは確かだ」


ディットも斬っても刺しても再生していた。

まぁその分寿命が減っていたらしいけど。

この人もさっき2回刺したけど寿命減ったのかな?でもそれにしては反応がおかしい。

大切な寿命が減ったときのディットみたいにキレたりしてないし。

考えられるのはやっぱり鎧の中に封じられた魔物の種類か・・・まったく気持ち悪いな~。


「おい!少し無理をするぞ!・・・いやそれはしない。融通を利かせろ・・お前は・・だろ?いずれはそのつもりだがまだその時じゃない・・やるぞ」


「何言ってるんですか?」


「お前に言ったんじゃない。こっちの話だ」


「え・・ああ、なるほど」


鎧と会話したのね。

本当に気持ちの悪い鎧だね。


「よし、死刑の開始だ」


何それ、勝手にそんなの開始しないでほしいんだけど。

そしてそれは起きた。


緑色の鎧に変化が起きた。

鎧の色が変わっていく、やっぱりコイツも変化するのね。

足から順に上へ、緑から水色に近い色へと変化していった。

しかし完全な水色ではなくところどころにまだ緑の模様が残っていた。

ただ・・普通の鎧ではなくなっていた。


金属なら普通は誰が見ても硬さを感じることが出来るはずだ。

しかし変化したセナスの鎧は違った。


波打っていたのだ。


とても小さい動きだが海が風に押されて波を打つように・・小波のような感じに常に動いていた。


「気持ち悪っ!」


「お前にはこれの凄さがわからないらしいな。そんな感想しかでてこないなんてな」


「いやいやいやいや。もう貴方もわかってると思いますけど僕はディットの鎧も見ました。その時も思いましたけどね、すっごい気持ち悪いですよ!鎧が波打っているなんて気持ち悪い以外ないですよ?神々しいとでも言えば良かったですか?絶対無理です、はい」


「ふん、見た目でしか判断できない事が程度が低いといっているのだ。見せてやるよ、絶望するなよ?」


なにやらセナスは自信満々な感じで僕にそう言った。

そして自分の腰に刺してあった暗殺に使用しようとした短剣を・・自分の胸に刺した。

というより刺してから横に切り裂いた。


普通なら血が噴出して絶命するはずだ。

しないまでも瀕死にならなくではおかしいはず。

しかしセナスは何事もなかったように立っている。


短剣には血すらついていない。

でも先ほどと違う事がわかった。

短剣が濡れている?


「どうだ、わかったか?これがさっきの答えだ。さっきの時は急所だけをこの状態にしていたんだがな。今は全身がこの状態だ。お前の負けだよ」


チートか!つまり鎧の部分全部が液体ってこと?

でも鎧はフルプレートだけど頭、つまり兜は被ってないし。

波打ってない部分には攻撃が効くんじゃないのかな?


「何を考えている?その表情は俺の力を見て絶望している感じじゃないな?もしかしてお前・・鎧じゃない部分には剣で斬れると思ったのではないか?」


感が鋭い、というより人間観察能力が高いのかな?王子という身分のせいもあるのかな?


「違うんですか?」


「言うわけないだろう、と言いたいが考えればわかる事だしな。まぁ・・いいか。この状態じゃお前の考えている事が正解だ」


じゃあ弱点丸見えじゃん!鎧狙わなきゃいいだけじゃん!


「お前は自分の早さに自信があるから俺の弱点を狙えると簡単に思っている。そうだろ?」


簡単とは思ってないけど?てかそれしか打撃、斬撃が効かないならやるしかないでしょ。


「どうやら本当にそう思ってるらしいな。試してみろ」


鎧の部分が水という液体に変化したセナスは僕を挑発するように水になってない部分を狙ってみろと言う。

自信満々に言ってくる事といい、何かあるとは思う。

もしかしたら波打ってないだけで嘘をついていて鎧以外も水かもしれない。

しかし試さないと倒せないのも確かだった。

だから僕は行動に出た、罠かもしれないけど試さないと始まらないからだ。

僕は剣を抜き切っ先をセナスの顔の部分に狙いを付けるように構えそしてそのまま動いた。


「速い!わかっていたが・・まったく見えないとはお前も化け物の類だな」


失礼な。こんな可愛い蒼の体を化け物とか。

本当の化け物を宿した鎧を装備している奴には言われたくない。

僕は心の中でそう反論をしながらセナスの後ろ右斜めに回り込む。

そしてそのままセナスの頭部に向けて突きを放つ。

このままいけばセナスは頭を串刺しにされて終わるはずだ。


刺さった!そう思えた。


「残念、しかし驚きだ。反応がまったくできないのだからな」


反応が出来ていないのに防がれた?感触はあったのに。

僕の剣は間違いなく頭部を貫通した・・はずだった。

そう、僕の剣の切れ味なら頭部くらいならプリンぐらいと同じくらいに簡単にいけたはずだ。


「本当にダメ元で確かめたわけだな。だが丸わかりの弱点に対策を打ってない馬鹿にでも見えたか?残念だな」


馬鹿に見えたかって?見えたよ!だってディットの兄でしょ?


「で?これの説明はあるんですか?」


僕は剣を引いてセナスに問いかける。


「弱点を守る秘密を話す馬鹿がいるわけないだろ」


馬鹿見えたんだよ!ディットの兄だから!!


「お前今失礼な事を考えただろ?」


本当に感がいいね!考えたよ!


「まあいいか。そらっ!」


セナスが剣を持っている手を横一線で振った。

しかしもう僕は後ろに跳んで下がっている、そこの位置からは絶対に届かない。

不思議に思ったのは方向だ。

少し斜め上の方向に向かって振りかぶった気がする。


それが気になり僕は斜め上を見た。

何かが・・光っている。

それも無数に、広範囲で。

僕はそれを確認する為にじっと見た。


「うーん?って嘘でしょ!」


次の瞬間。

地面、僕のいた場所の床のタイルが。

たぶん大理石で出来ているだろうお城の床が破壊される音がする。

ガリガリバリバリなどと言う音が数秒間続いた。

先ほどの水球で誘導弾で壁が破壊されたような破片による煙が巻き上がる。

しかし範囲がさっきの火ではない。


音が止み、段々と煙が晴れてゆく。


「本当にめんどくさい奴だなお前、あの一瞬でそこまで移動したのか?」


床がボロボロになっていた。

比較的に無事な部分を見ると何が起きたのか予想が付く。

タイルに穴が開いていた、無数の穴。

そして濡れているという事は、恐らく水の棘。


上空から水と魔法で棘を作って降らせたのだろう。

それもとんでもない広範囲に。


「おーい!聞いてるか?」


僕は逃げる為にセナスからかいわがギリギリ届く位置まで移動していたのでセナスは聞こえないと思って大きな声をだした。


「次いくぞー!今度は部屋全体にいかせてもらうからな。おっと忘れてたな、出口から逃げるのは無理だぞ」


ドガッ!

音と共に僕が唯一逃げれるかもしれない出口が破壊される。

水球がセナスの手から発射されて扉の丁度上の部分のが破壊されて扉をふさぐ形になる。


「お前じゃあの壁の破片を持ち上げるのは無理だろ?俺の予感が当たっているといいんだがな、お前は魔法

使えないだろ?そして装備をみる限り盾もってない。魔道具やダンジョン石を隠し持っている線もあるが。あるならさっき避けずに使ってただろ」


・・・決めた、無事に帰れたら盾を買おう。

心の中で僕は決意し、次に来るであろう攻撃を予測して身構える。


「俺の予想が外れてても別にいいけどな、何か隠し持ってるなら次使った方がいいぞ」


そう言うとセナスは・・先ほどとまったく同じ動きをした。

心なしか先ほどより振りが大きい気がした。

そしてさらに・・角度を変えて。

僕に向かって一直線にまったく同じ動作を、つまり2連撃。


予想はしてたけどやはりできたのだ。


先ほどと一緒で上には無数の光が。

そして今度はセナスが見えなくなった。

否、セナスの前に上と同じで無数の光が放たれた。


上、そして正面から水の棘の魔法が発射された。

このままいけば逃げ道がない!



そして煙が上がった。



「さて、どうなったかな」



今まで一番の煙が上がり部屋はもう無残としか言えないぐらいに破壊された。


そしてセナスの顔から血飛沫が上がった。


「おいおい・・本当に何か隠してたのかよ。痛てーな!おい!!!!!!」


右目。

僕はセナスの右目を突いていた。

しかし浅い先ほどと一緒だった。

剣と途中で止まってしまって突き抜けなかった。


今度はわかる本物だ。

1つ前の一撃は確実に貫いていた。

しかし無傷だった、恐らくだけど一瞬だけ魔物が出てきて斬撃を防いだのだろう。

しかし今度は本物のセナスだ。


僕の腕に水がまとわり付いてそのまま振りぬけなかったのが悔やまれる。

しかし凄い魔法だ。

天井にもぶつかったらしく少し穴が開いていて外がちょっと見える。


「どうしてくれるんだ?右目を・・お前・・鎧の野郎・・反応しやがれクソが!・・あ?何が仕方ないだ!?一応止めた!?ふざけるなよ!さっきみたいにお前が出てれば何とかなっただろ!契約しない俺が悪いとでも言いたいのか!?して欲しければリスクを減らせ!ああ、本当に痛てーな!クソが!それに赤い奴お前えええ!どうやってさっきのを避けた!!」


右目を押さえながらセナスは僕に向かって怒鳴った。

言うわけがない。


しかし答えは簡単だ。

ギフトを発動して『ロスト』で消えた。

あの状況なら見られないと思ったしね。


でもさっきので決めたかった。

よくわからないけどセナスは契約とか言うのをしてないせいで鎧の魔物の力を全部出し切れていないようだ。契約をしていれば今の攻撃は聞かなかったような感じをだしている。

何か理由があるのか?リスク?


でもわかった事はある。

全部が反応されるわけじゃない。

さっきみたいな完璧な不意をついた一撃ならセナスも、鎧の中にいる魔物も反応できなかった。

攻撃の糸口は・・ある!


・・・だが次の瞬間。

僕は宙に舞っていた。


体に衝撃が走った。

何かをぶつけられたような、そんな衝撃。

全身を痛みが貫く。


一瞬飛んだ意識が戻ると感じた事のない痛みが僕を襲い共に視界も戻ってくる。

見えたのは天井だった。


思い返すと手が引っ張られた気がした。

その証拠に手首が濡れていた。


僕は痛みを我慢して体を起こす。

ちょっと動かしただけなのに恐ろしい痛みが走った。

まだ視界がぼやけていたがセナスが見える、笑っている。

やばい・・足に力がはいらない・・。


「よくやった!右目の事はしばらく忘れてやるよ!責任とってくれる奴がいるしな!てか犯人だったな!」


ようやく理解した。

さっき僕の一撃の威力を止めていた僕の腕に巻きついていた水だ、それが致命的原因だ。


僕はセナスにダメージが通った事、攻撃の糸口を見つけたことで完全に油断してしまった。

まだ腕に水が張り付いている事を忘れていた。


それが僕を、鞭をしならせるようにして僕を上にひっぱりそのまま地面に叩き付けたのだ。

この世界に来て、いや、戦いという物を経験して初のダメージ。

今まで手に入れた速さに任せた回避やヒルマさんやハレンちゃんに手ほどきされた避ける方法で何とかなっていた。


全て避けれていたせいで僕は自分の耐久性を知らなかった。

当たるとは思っていない過信。

いざとなったら『ロスト』を使えばいいという過信。

そんな思いが今の僕の状態だ。

いくら防具を着ているといってもそんなのは気休め程度だ。

痛みに慣れてないという事は戦闘では致命的、それが今のでわかった気がする。


いや、もうわかってからじゃ遅いかもしれない。

セナスが近づいてくる、ゆっくりと。

勝利を確信した動き。

それもそうだ、僕は身を起こしたはいいが痛みで動けない。

なにより・・ここに来てわかったことがあった。


『ロスト』が発動しない。


僕は焦っていたが理解した。

ギフトはいつでも発動できるわけじゃない。

今のような意識が朦朧としている精神状態では発動しないのだ。

こんな時にわかるとは思わなかった。

わかっていたが僕の力は万能ではなかった。


「さて、動けないみたいだがな。万が一があるな。逃げられる前に死ね」


セナスがもうあと数歩で短剣が届く位置にまで来ていた。

僕は腕輪のダンジョン石を発動させるがこれも痛みで上手くいない。


ああ、反省点がたくさんあるなー、ここに来てそんな事を思ってしまっていた。

ここで死ぬのかな・・蒼ちゃんになんて言おう。

死んだら女神様に蒼ちゃんに会えるのかな?もし会えたら謝ろう。

死んだことよりも、預かってる体を傷つけてしまった事を真っ先に。


「さよな・・うん?」


殺されると思った。

しかし短剣を振りかぶったセナスが何かに気付いた。

僕の手前の地面を凝視している。


「ほー!これはこれは!お前良い物持ってたんだな!白水色・・氷か!」


何を言っているんだ?と思ったが僕もセナスの目線の先を追う。

そこには小さな石ころ、いやダンジョン石が落ちていた。


ああ・・アレは預かり物だ。

僕の命を助けてくれた、小さなインプもどきからの預かり物。

担保として預かったけどなぜか結局返すことしなかった品。

僕が死んだらインプもどきにも会えるかな?会えたらあの時の感謝の言葉を伝えよう。

あ・・ヒルマさんとハレンちゃん悲しむかな?たぶん泣いてくれるよね。


「ふはは、貰っておくぞ。優勝賞品はお前達に取られたがこれはこれで希少な品だ。お前という邪魔者を殺した戦利品にしては豪華すぎるぐらいだ。しかしここまで透き通ったのは初めてだな。何処で手に入れたかは知らないが素晴らしい品だな」



そんな歓喜の言葉と共にセナスはそのダンジョン石を拾おうとした。

しかしそれは叶わなかった。


「見っけた!」


その言葉とそれを見てセナスが驚きもうすぐで僕に届いたというのに後ろに飛びのいた。


「誰だお前!!」


「うっさい馬鹿。お前に用はない・・たぶん?あ・・でもでもあるかも?」


その声の主はセナスの問いを乱雑に返すとセナスに笑って近づいていった。


「何処から入って来た!ここの者かクソガキ!」


「あぶないっ!」


僕は叫んでいた。


セナスは近づく距離に入って来た珍入者に対してそんな言葉を吐くと短剣を斬りつけた。

そして短剣はそのまま・・その珍入者に素手で受け止められた。


「はあぁぁぁ?」


「お前面白そうじゃない、黙ってろ?」


剣を素手で掴んでセナスの動きを止めた珍入者はそのまま剣を受け止めてない方の手をセナスの腹部の部分に優しく当てる。

セナスは何をされるかと身構えた時それは起こった。

僕は信じられないものを見た。


見た物が信じられなくて僕は何度も瞬きして確認をした。

セナスの前にいる珍入者の前でセナスが剣を振りかぶって止められた格好で動かなくなっている。

何が起こったか思考が追いつかずにセナスをじっと見る。


そして段々と理解した。

セナスが固まっている。

恐らくだけど氷・・セナスは凍って彫刻と化していた。


そしてその子はまったく動かなくなったセナスをどうでもいい、という風な感じでこっちを振り向いた。

僕をじーーと見るとこっちにテケテケと歩いて近づいて来る。

敵かもしれないという警戒心は不思議と沸かなかった。


その子はそのままダメージでよろけて跪いている僕に近づいてしゃがんだ。

そして僕と目線を一緒の位置に合わせると・・口を開いた。



「確かに返してもらったぞ?飲んじゃったけど・・」



僕はその言葉にを聞いて何故か涙が出た。



こんにちは皆さん、蒼です。女神です。

今頃我が使徒ソウちゃんがあたしの為に汗を流して頑張っている事だと思います。

頑張っているソウちゃんのことを思うと心配で少ししか眠れません。

しかしあたしはあたしで女神としてちゃんとやることがあるのです。

今日はこの世界で女神になってから色々知って、非常に気になっていた事を自己解決しようと思ってます。たぶんこれはあたししか確認できる立場にいない重要な案件です。


というわけで・・いざ!確認へ!


ドンドン!!ドンドン!!

私はいくつもの結界を通り抜けてみた事もない頑丈そうな大きな扉を遠慮なく叩く。

鍵は持っているのだけどノックはマナーだしね!

そしてその音が聞こえたのか扉の向こうの部屋の主が現れる。


「な、なんじゃ!?非常事態かスーニィー!?鍵を渡したのにわざわざわしを大きな音で呼ぶくらいの!?」


「久しぶりカナじい!元気?非常事態?全然違うよ?」


「・・・・悪戯か?戻るわぃ」


と、この世界を作った神様はあたしを無視して戻ろうとした。


「まてーい!ある意味非常事態だから!ちょっと気になることがあって夜も寝れないから答えて言って!お茶もだすから!」


「女神のお前さんは寝ないでもいい体になったじゃろうが・・それにわしは中で非常に重要な事をしておるといったじゃろ」


「知ってるし、中で少しでも力を増大させる為の難しい作業中なんでしょ?」


「わかっているなら何故呼び出したんじゃ!少しの時間でも惜しいんじゃ今は!」


「それでも聞かなきゃいけないと思ったんだよ」


「む?なんじゃ言うてみぃ。そこまでして聞かねばならぬ事など想像もつかぬが時間が惜しい、はよ頼むぞぃ」


「オッケー!じゃあ聞くね。あのさ、カナじいって神様だよね」


「今更何を言っておるんじゃ?」


「うん、続きを話すね。この世界ってさ女神が表立って治めているというか下界の人には女神が存在していて自分達に恩恵や奇跡を与えてくれる存在って認識されてるじゃん。カナじいの存在は知られてないのってわざとだよね?意識して知られてないようにしたんだよね?」


「なんじゃ意味がわからんのぅ。前に言わんかったか?わしは表に出ず、女神に世界の運営を任していると、そもそも女神の上に万能たる神などいると認識などされんほうが世界の為じゃ。他の世界の神もそうしとる奴が多いしのぅ」


「なるほどなるほど」


だったら非常に怪しいですね。


「ではここで本題に入ります」


「な、なんじゃ藪から棒に」


「カナじいの言い分だと自分は世界を作ってから女神に任せて表には出ていないそうですね?」


「そ、そうじゃ何度もそう言っておるじゃろ」


ふむふむ。


「ではここで疑問が浮かび上がります・・突然ですがクイズです!この世界の共通通貨の名前はなんでしょう!」


「・・・・・・・」


何故答えない。


「・・・・・・・はい!あと3秒!3~2~!ブー!正解は『カナリ』でした~!」


「そうじゃったな!ここ最近色々ありすぎてど忘れしておったわぃ、歳は取るもんじゃないのぅ」


「しらばっくれるのはそこまでにしてもらおうか!『カナリ』という名前はどう考えてもカナじいの名前カナギウスからきてるよね?さあ吐け!」


「待て待て!わからんじゃろうが!お主を含めて過去に女神は何人もおるし、その中にカナなんとかという女神がいて崇められて通貨にまでなったかもしれんじゃろうが!」


「ふーん、いたの?」


「・・・いません」


「神が嘘をつくな!さあ吐け!」


「・・・いや・・その・・実はある時に女神に任せててた時があったのじゃ・・その時文明が進み通貨という物がその生まれようとしておった・・で・・わしちょっとその時思ってのぅ・・ちょっとぐらい世界に知られたりしないなーって・・でわし姿を変えてその通貨を決める権限をもった・・その時王国の王の枕元に立って何度も夢に入って・・その・・カナリという単語を植えつけて・・その・・」


「マインドコントロールじゃん!」


「仕方がなかったんじゃあああ!寂しかったんじゃああ!いいじゃろ通貨になるぐらいいい!わしが作った世界じゃしいい!ちょっとぐらい何かに関わりたかったんじゃああ」


「いいんじゃない?」


「へ?」


「いや別にあたしは疑問を解決したくて来ただけだしカナじいが世界に関わってないとか言って実は通貨になる為に王を洗脳したとかいうのを責めにきたわけじゃないし」


「洗脳とか人聞きの悪いことを言うでないわ!」


「同じ様なものじゃん・・」


「はぁ・・まったくお主の兄を尊敬するわぃ」


「もっと尊敬するといいさ」


「意味わかっておるのかのぅ・・で?用はそれだけか?」


「うん、これで寝れる!」


「そうか・・わし不眠不休で働いておるのじゃんがのぅ・・せっかく出てきたんじゃ他に報告はあるかのぅ?」


「あ・・報告した使徒を作ったよ!」


「ほっほー、それはそれは・・てかそっちのが重大じゃろうが・・。どんなのにしたんじゃ?」


「ボッチで怯えているドラゴンがいたので保護して友達になって転生してもらったんだ~。すっごい喜んでたよ。しかも美人さんになってね、可愛いの」


「なるほどのぅ。もし機会があれば会わせとくれ」


「いいの?女神の使徒って神に会える身分なの?」


「お主の使徒なら構わんじゃろうて、それに今の状況じゃしな、ある程度事情も話したのじゃろ?」


「うん」


「なら構わん。では戻るぞ」


「うん、頑張って。あ・・お茶お茶!」


「向こうで飲むからお茶だけ渡しとくれ」


向こうで飲めるの?・・以外とくつろいでるんじゃ・・。




ひさしぶりのカナじい登場でした。カナじいにとって不本意ですが・・(*゜ω゜)






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