依頼
年末忙しいよ~!(´;ω;`)ブワッ
そして本編がちょっと短くなってるくせに後書き物語が長くなってる気がする。
だって書きやすいもの(*´・ω・*)しゃーない
「おっかしいな~、なんで気付かれたのかな。まさか・・まぁしかたないか」
暗殺に失敗したというのに鋭い銀色の短剣を握って振りながらふざけた口調で独り言を言っている。
「こんな賑やかな場所で人殺しなんて随分大胆ですね」
「君が気付かなきゃ大胆にはならなかったんだけどねー。そもそも大胆とは・・いやいいか。一応このタイミングが一番いいって情報をもらったから来たのだけど・・ま、いっか。また来るね」
そう言うとセナスは振り返った。
僕はその態度を見て不思議に思ったけど完全に僕に対して背中を見せている。
このままこいつを逃がすのは危険と思った。
だから僕はドレスの中、太もものところに隠し持っていた短剣を抜き去りそのままセナスの背中目掛けて突進した・・しかしそれは失敗終わった。
背中を突き刺した短剣は折れていた、セナスが下に着ていた緑色の鎧によって止められていたのだ。
「まさか武器まで持ってるなんてね。また予想外だよ。でも駄目だよ、そんな武器じゃ僕の鎧は貫けないよ
。刺されたのはムカついたけど見逃してあげるよ。これ以上は時間切れだからね」
時間切れ意味不明がわからないがそんな言葉を言ったセナスを再度僕は追いかけた。
しかしセナスはそのまま人込みを掻き分けて歩いていく。
不思議なのは刃物を持っているセナスに誰も悲鳴をあげたり、逃げ惑ったりしていない。
まるで最初からいるパーティーの参加者のように優雅に歩いて消えていった。
僕は結局セナスを見逃してしまった。
「大丈夫ですか!?フリスさん!」
「一体なにがあったんだい?いきなり目の前に変な男がいたと思ったら、次の瞬間目の前に・・」
言ってる事がおかしい。
刃物で襲われそうになったのにそう認識してないような言い草だ。
「何言ってるんですか!?セナスですよ!僕達の決勝の最後の相手です!あいつがフリスさん、刃物を持って貴方を襲ったんですよ!」
「セナス?緑のかい?」
「はい、そいつです!」
「いた・・のかい?本当にかい?あたしには厳つい男がいきなり目の前に現れて挨拶を・・確かにちょっと怖かったが・・刃物を?あんたがその男の腕を掴んだとこまではわかったんだが・・」
なんだんだ一体、僕の認識とフリスさんの認識が明らかにおかしい。
そうだ!!
「ノーバン王子!アルナ姫!お二人は見ましたよね?セナスがフリスさんに死んでくださいと言って刃物で襲おうとしたのを!」
「え?私はお母様に厳つい男性が挨拶をしてたのを見ただけで美紅さんが言うような事は・・」
「刃物を?わたくしもお兄様と一緒です。男性のお方がお母様に挨拶したのを見ました。それを美紅さんが邪魔をしたように感じました」
・・・二人までおかしい事を言っている。
何がなんだかわからなかったが僕だけの認識だけ違う。
3人の認識は共通して、僕だけの認識がフリスさん達と違っている?3人が見たことが本当で僕が間違っているのか?幻でも見たのだろうか。
しかし僕は自分にさっきおきた事が本当にあった事だという確信がある。
その証拠に僕の左手にある短剣は・・折れている。
この短剣は業物ではない。
予備の為に買った物でそんなにいい品ではない。
しかし短剣というのは刀身が短い分簡単に折れるものではない。
それが折れて僕の手の中にある、それが証拠だ。
さっきのあれは完全に、本当にあった出来事でセナスはいたのだ。
「フリスさん、大事なお話があるのですが静かな部屋はありませんか?」
「なんだい?今からかい?」
「はい、パーティーが終わってからと言いたいですが、話が話なのでできれば今からでお願いします」
「いきなり変な話をしたあとで真剣な顔でそんな事を言われて不思議に思わないわけじゃないが、どうやら本当に何かあるみたいだね。いいだろう。付いてきな」
「美紅さん、もしかして大事な話とは結婚のお返事ですか?」
「美紅さん、お兄様の妻に決心が付いたのですね」
「二人共悪いですが、その話とは違います。できれば二人も一緒に来てください。あ、フリスさんちょっと待って下さい。ヒルマさんとハレンちゃんを呼んできますので。できれば先に行かず僕から離れないでください」
そう言うと僕は人混みを掻き分けてヒルマさんとハレンちゃんを探した。
一体何事だ美紅?と言う顔をしたヒルマさんと料理に未練があるのかちょっと残念そうな顔のハレンちゃんを引っ張って僕はフリスさんが案内してくれた小部屋に向かっていった。
「それは本当か美紅」
ヒルマさんがそう言った。
僕は部屋に入ってすぐ椅子に座っているみんなにさっき起きた話をした。
部屋にいるのはフリスさん、ノーバン王子、アルナ姫、ヒルマさん、ハレンちゃん、そして僕をいれて6人だ。
とりあえず僕はノーバン王子とアルナ姫を知らないヒルマさんとハレンちゃんに簡単に紹介したあとにセナスが現れた事、フリスさんを刃物で襲って殺そうとしたが僕はそれを阻止できた事、しかしフリスには逃げられてしまい、短剣も折れてしまった事、暗殺が未遂終わってフリスさん達の状況を確認しようとしたら目の前で起きた事だというのに、僕とは全然違った出来事を認識していた事を事細かく話した。
「つまり美紅様はフリス様のお命を救ったのです?」
「結果的にはねたぶんだけどね。でも何故か僕がした行動は3人、いやその周りにいた誰も見てない。というより見えてなかった?感じていなかった?ゴメン入っている意味がわからないかもだけどきっと見えていたとしても全然認識されずに違ったものが見えていたと思えるくらいなんだよ」
「話はわかった。美紅が見たものが正しい。悪いが王族の3名の見た者は幻覚、もしくは妄想の類だな」
「何か知ってるんですかヒルマさん」
「もちろんだ、美紅が嘘を言うはずがないからそっちの3名が見たことは妄想だな。間違いない」
「信じてくれるのはとっても嬉しいですが根拠になってません・・ん?ハレンちゃんも何かわかったの?」
ヒルマさんの隣で意見があるようにハイハーイと手をあげて主張していた。
「ヒルマさんではないですが、ハレンも美紅様が正しいと思うのです」
「・・・根拠は?」
「根拠はそちらのお三方だけではなく、ハレンやヒルマさんもセナスさんの存在に気付かなかったことなのです」
「どういうこと?」
「話を聞くとセナスさんが去った人混みにハレン達も居たのです。しかしそんな事があればハレンやヒルマさんが気付いていたはずなのです。なのに気付かなかったという事はセナスさんが怪しい術を使っていたという事なのです!以上なのです!」
え?え?意味が・・確かにヒルマさんなら僕らの会話を拾ってただろうし、ハレンちゃんならセナスの臭いに気付いていただろう。
しかし二人も気付いてない時点でセナスは二人すら気付かせないような手段でフリスさんを襲った事になる。でもそれはあまりにも考えにくい。
僕は別としてこの二人を欺くのはとても難しい事なはずだ。でもそれをやってのけたのならおかしいのはやっぱり僕じゃ?やっぱり僕の方が幻覚を見た可能性が・・。
でもその説明でなぜハレンちゃんは僕が正しいと思ったのか。
「ハレンちゃん、その説明だと僕の方が幻覚に聞こえるんだけどなぜ僕が正しいと?流石に二人を欺けるとは思えないんだけど」
「そんなの美紅様が正しいに決まってるからなのです」
それだと自分の自慢の嗅覚が役立たずです!って言ってるようなものだけどそれでいいの!?そこまで僕を優先してくれるとそれはそれで重いんですけど!
「・・・そですか」
「一体なんだいアンタ達は人が暗殺されそうになってた話をしだして変な会話を始めて。美紅、あんたがいう事が本当にあった事だというならこっちも対策を練らなきゃならないんだよ?何か分かることはないのかい!まったく説明になってないじゃないか!」
「いやフリスさん、そう言われましても・・証拠は僕の折れちゃった短剣としか・・」
「美紅、ハレンの感じた事は確かに確信を得ているかもしれないぞ?私達二人を欺けるとは思いたくないがセナスはそれをやった。そして美紅だけ気付けた。そこから考えるべきだと私は思う」
「はぁ・・僕だけ違う物を見た理由ですか・・あ、お酒とか飲んでないですよ?」
こっちじゃ17歳は成人らしいけど、一応まだ感覚では未成年なので。
「あの~わたくしはよくわかりませんけど、そのセナスさんと言うのは決勝の方ですよね?幻覚魔法を使ったんじゃありませんか?」
「幻覚魔法なんてあるんですか?」
あるならちょっといいなーっと思ってしまった。
「あるにはあるが私もそんなには知らない。しかも今の話だと自分以外全ての人間に幻覚みせているんだろ?いや美紅以外か、そうだとしてもそんな魔法があるのか?普通は個人が個人に対して軽い制限のある幻覚を見せれるぐらいだと聞いたことがある」
「ハレンはあんまり魔法は詳しくないのです」
「すいません、私もわかりません」
「言っておいてなんですが、わたくしもそんな幻覚魔法はさっぱりですわ」
「あたしは何個か知ってるがね、あんた達の説明に当てはまるものはないね。個人に幻覚を見せるものや混乱させる程度のものならあるのを知ってるぐらいさ」
どうやらここにいる6人の中にセナスが使ったような不思議な現象を起こすような魔法を知っている人はいないらしい。
「そうなると困りますね。全然結論がでないです。まず僕が正しいのか間違っているのかさえわからなくなっちゃいました」
「美紅は正しいに決まっている!」
「そうなのです!」
ありがとう二人共、でもそれ根拠ないから・・。
「何言ってるんだいアンタ達は。そんな事はわからなくても対策は打てるんだよ」
はっきりと明言するようにフリスさんが言った。
「どういうことですか?」
「あたし達が見たことや美紅、アンタが見たことが幻かどうかはこの際ほっときな。わからない事を考えても仕方ない。だが美紅が見た幻だったかもしれないセナスがあたしを狙って失敗したのならその幻がまたあたしを暗殺に来るかもしれないって事だろ。そして美紅はそれを防いだ。そこが問題さ」
「幻じゃないのです!美紅様が見たのが現実なのです!」
「だから幻でも現実でも美紅が正しくてもどっちでもいいさ。肝心なのはこれからさ。美紅アンタ達はあたしを護衛しな」
「なるほどな、そういうことか」
どうやらヒルマさんはわかったようだ。
しかしわからなかったノーバン王子が口を開いた。
「え?お母様どうしてそうなるのですか?」
「お、お兄様、こういう事です。どっちが正しくても用心に越したことはありませんわ。もし美紅様が行っていることが正しかった場合を考えての事ですわ。美紅様だけセナスさんに対処できたことが重要なのですわ。だから次もあるなら美紅様をお母様のお近くに置いておけばまた対処可能かもしれないという事ですわ」
「あ、なるほど!」
「そういうことだよ・・まったくのんびりした息子だよ」
「・・すいません」
「というわけだい。頼むよ美紅とそっちの二人」
なんとなくわかってたけど話がやっかいな方向に向かってる気がする。
「どういうわけか知らないがそっちの都合でこっちのこれからの私達の行動を決められるのは困るな」
流石ヒルマさん、はっきりと意見を言えるお姿素敵です。
「なんだい断るのかい。確信がない襲撃の為とはいえ、もちろんタダで護衛しろとは言わないよ?」
「そういう問題ではない。私達はそういった存在ではないと知っているはずだ。冒険者でも傭兵でもない。いきなり王族を護衛しろと言う方がおかしいだろ?そもそも王族なら護衛なら腐るほどいるだろう?それらを差し置いて私達の様な輩を雇って護衛にしては王族に使える戦士や兵士たちに失礼だろう」
「それにはわたくしがお答えします。結果から言わせてもらいますとその心配はご無用です。兵士達に気を使う必要はありませんし、貴方達をお母様がお雇いになってもまったく問題ありません。むしろ好都合です」
「答えになってないな。理由を言ってほしい姫様」
「わかりました。后妃であるお母様のお口から言わせるわけにはいきませんので。まず私達王族、つまり王であるお父様、后妃のお母様、王子であるお兄様、そしてわたくしはこの国では王族となっておりますがあまり権力がありませんの」
「どういうことです?王様って一番偉いんでしょ?」
「美紅さん、偉いのと権力があるのはこの国では別の話なんです。貴方達はこの国の建国の経緯をご存知ですか?」
アルナ姫のその質問に対して僕達3人は首を振って知らないと答えた。
「説明いたします。この国は貿易の国と呼ばれています。理由は商人が集まって出来たからです。この国の土地の場所、周辺諸国からの距離が非常に貿易に適していたので商人が集まって集落を作ったのが始まりです、そして非常に素早くスムーズにその集落は大規模になっていきました。そしてその集落は町となり、数十年ではこの町なしでは周辺の村も立ち行かなくなり、いえ商人達がそうしたのです。そして商人達は一致団結して周辺国から商売で培った交渉能力で認知、承認を得て国を建国するまでに至ったのです」
「凄い話じゃないですか~」
「その通りです。まさに国を立ち上げた経緯から言うと奇跡に近いほどの早さです」
「だが不思議な部分もあるな」
「どこがなのです?」
「ヒルマさんの仰っているのは商人達が集まって作ったのなら王族なんて血筋のものがいるはずがないということですね?」
「その通りだ。だが実際貴方達4人は王族としてここにいる」
確かにその通りだ。
「そうです、わたくし達は王族ですが王の血筋などではありません。元はただの小さな村の出の商人の家系です」
「ど、どういう事ですか?」
商人が王族?どういうことだろう。
「商売に失敗や損は付き物です。しかし商人達による建国という大事業は絶対失敗できないものでした。なぜなら時期を逃せば建国できなかったかもしれないからです。そして国という物は象徴が必要だった。それはどこの国も同じだと思います。だから建国時にその象徴を決める大決議が行われたのです。まだ子供だったわたくしですら記憶に残っているほど混迷を極めた自体でした。王を決める決議です」
「どうやって決めたんだ?」
「簡単ですよ。商人としての格です」
格って言われてもわからないですけど・・。
「つまりどういうことなのです?」
「この国の建国の為にどれだけ頑張ったか、どれだけ労力や資金を惜しまなかったかで決めたんですよ。それを投票で。もちろん自分に投票する事は出来ません」
「それで現在の王様が投票で代表になって王に選出されたわけですね?」
「いいえ」
「え?違うんですか?」
「はい、王に選出されたのはお母様です。お父様はされてません。お母様の夫だったのでおまけで王になったのです」
おまけ・・アルナ姫様はお父さんが嫌いなのかな・・さっきといい、言い方がヒドイ気がする。
「それこそおかしいだろ。それならフリスさんが王妃になり、父上は公爵、つまり王妃の次の位になるはずだろ?」
「その通りです。ある理由でお母様は王妃になるのをやめてお父様を王にすることにしたのです」
「その理由って?」
「政敵です。建国まで協力していたとはいえ商人とは敵が多いのです。商売敵とはよく言ったものです。お母様は王に選ばれた時に私達の、周りのよく思ってない方のお気持ちを汲んであえて自分の夫であるお父様を代表にして自分は后妃として支える方法を取りたいと表明することで選ばれなかった他の人達の批判をかわずと同時に表ざって行動を起こすかもしれない人達を押さえ込んだのです」
「フリスさん凄いのです!」
「つまり実質この国で一番偉いのは・・フリスさん?」
「あたしはそんなもんじゃないよ。確かに選ばれたがあまり気乗りしなかったもの事実だからそうしただけさ。商人の家系でたまたまこの土地に来て成功して大商人とまで呼ばれるようになっちまって、周りの奴等と夢や野望を語ってるうちにここまできちまった、ただそれだけだよ。そんな事してるうちに王族になってしまい、庶民だった息子と娘は王子と姫にしちまった。笑えるだろ?時々コレでいいのかわからなくなるのさ」
「お母様!私は幸せです!」
「わたくしもです!」
「そうかい、確かにお前達は王族らしい態度や口調まで勉強して変えたくれたしね。感謝してるよ。昔みたいにママって呼んで欲しいがね」
ママと呼ばれていたのか・・似合わな・・ゴッホン。
「流石にそれはもう恥かしいです」
「お兄様の言うとおりです。口調なんて変えるのは簡単でしたし。でもお父様は問題ですわ。未だに一人称をしっくり来るのを探して変えたりして、私、余、我輩、いい加減にして欲しいですわ。語尾だって偉そうな口調を心がけるって言うくせによく敬語に戻りますし。まったくですわ」
あー・・だからあの王様は演説の時もカンペを読んだみたいに棒読みだったり前は私って言ってたのに、いきなり余に変わってたりしたのか。つまり未だに王様研究中なわけね・・頑張れ!って本当にアルナ姫は父親に厳しいな!
「そう言ってやるんじゃないよアルナ。あの人はあの人でよくやってるさ。あたしの変わりに王になってくれて恥ずかしくないように頑張ってくれてるんだよ」
「十分恥ずかしいのですが・・」
「アルナ、お父様は商人としては普通だったらしいけど、女で南方の大商人と呼ばれたお母様程の方が選んだ男だよ?お母様は観察眼、人を見る目は誰にも負けない心配しなくていいよ」
なんまりフォローになってないよー!王子様ー!
「わかりました。少しだけ優しく接することにいたします」
少しなんだ・・。
「あの~話はわかりましたが、この国の経緯と僕達がフリスさんを護衛しても問題ないのとどうつながるんでしょうか~?」
「・・この国は未だまとまっていないのです。かつて大商人と呼ばれた数人とわたくし達王族で国を運営しております。だから王が絶対権力者ではない国なのです。なのでお母様が誰を護衛に雇おうと誰も文句を言いません」
「でも優勝者チームを護衛に雇ったと警戒されるかもね。逆に」
「あ、流石お兄様それはあるかもですね」
「だけど優勝した事が護衛にピッタリだというカモフラージュにもなるってもんさ。さああんた達こっちはここまで話したんだからいい返事が聞けるんだろうね?」
「というかほぼ勝手に話しましたよね?」
「それにフリスさん貴方は結構強引だな」
「本当に大商人なのです?」
「ふんっ!多少強引な方が交渉ってのはうまく行くんだ覚えておきな小娘共」
「はぁ・・わかりました・・ちょっと待って下さいね」
そう言って僕達はフリスさん達から距離を取ると、ヒルマさんとハレンちゃんを呼んで固まった。
そして仲間だけの会議が始まった。
「どうしましょう?」
「美紅に従う」
「美紅様の仰せのままに」
僕は王か・・。
「いや、それだとなんか平等って感じがしないので今回はみんなの意見というか主張で決めましょう。こうしましょう、一度目をつぶって護衛に賛成の場合は合図で手をあげましょう。そして確認の為に3秒後に目を空けましょう。ずるはなしで」
「美紅が言うならそれでいいぞ」
「多数決というわけなのです」
「では目をつぶって~賛成の場合は・・挙手!」
3,2,1・・0。
そして全員が目を開け自分以外の他の二人を確認した。
僕とハレンちゃんが手をあげていた。
そしてヒルマさんは手をあげてはいなかった。
「裏切り者発見なのです」
「なっ!」
ハレンちゃん・・一応今回は個人の意見を主張してもらいたくてこういう方法を取ったのにいきなりなんて言葉を・・。
「美紅様とハレンは気持ちが通じ合って同じ意見。しかしヒルマさんは残念な結果なのでーす」
ぴょんぴょん跳ねてすっごい嬉しそうに言わないで・・このあと怖いから!
「子猫貴様!お前など大した考えもなしに本能で何も考えず手を挙げただけだろう!虫でも飛んでいたので捕まえようとしたら手を挙げちゃいましたとかそういうオチだろうが!」
「ち、違うのです!困っている方を捨ててはいけないという正義感がハレンの手を動かしたのです!」
「どうだかな!」
「ヒルマさんこそなぜ反対なのです!?美紅様に逆らってまで!」
「べ、別に美紅に逆らってなどいないぞ!」
いや、そんな怯えたように否定されると傷つくんだけど・・。
「ハレンちゃんそのくらいして。別にヒルマさんは裏切り者じゃないしね。こういう方法を取ったんだから意見が割れるのは必然だよ。ヒルマさん、一応多数決って事になってましたけど、なぜ反対か理由を教えてもらっていいですか?理由次第でもしかしたら意見を変えなきゃいけないかもですし」
「ぼーっとしてて手をあげるのを忘れただけなのです」
「あとで覚えてろ子猫。私は私でちゃんと理由はある。1つ目は王族の護衛なんて聞こえはいいが私達は所詮部外者だから表立って行動できるわけじゃない。つまり護衛の難易度は格段に上がる。2つ目はセナスだ、奴がなぜフリスさんを暗殺しようとしたか動悸がわかってないし、さらに美紅が次も奴の手段に反応できる保障も無い。3つ目はさっきの話だ。元商人が王族になり国は1枚岩でなく政敵までいるんだぞ?そんな中で護衛なんてしてみろ、嫌でも何かやっかいなことに巻き込まれそうだ。以上の3つが私が反対した理由だ。も、もちろん美紅が賛成ならこんなくだらない理由は捨てて賛成に回るぞ私は!!」
「い、いや、そんなちゃんとした理由を言われた後でくだらないとか言って捨てられても困るんですけど。それに僕が賛成に挙手した理由なんてあんまり大した物じゃないですし」
「美紅様はなぜご賛成にしたのです?」
「言ったとおりちゃんとした理由はないんだよ。ただ僕が見たというより体験したさっきのセナスが現れた時の現象ね、それを言ったせいでこうなったんだし最後まで責任をとろうかなって思っただけだよ」
「美紅様ご立派なのです!」
「いや、ヒルマさんの理由を聞いた後じゃちょっと止めようかなって思っちゃったりしてるんだ。だからそんな立派じゃないよ」
「美紅が最後まで責任を持ちたいならやり用はいくらでもある。賛成2票だ、多数決にしたがって護衛を受けてもいいんだぞ?」
「そうなのです。ヒルマさんの反対票なんて無視なのです。ないと同じなのです」
「子猫貴様・・というよりハレンお前の賛成理由はどうなんだ?」
「ハレンは正義感からなのです!」
そうハレンちゃんは胸をはって答えた。
「つまり何も考えてないわけか。これだから子猫は」
ヒルマさんにそう言われると心外なのかニャーとヒルマさんに向かって威嚇するハレンちゃんがそこにはいた。
さっきハレンちゃんもヒルマさんをからかったので自業自得かな。
「では多数決って最初に決めたのでヒルマさんには悪いですが一応賛成の方向でいいですか?」
「別にいいぞ。私に気を使うな」
「そうなのです。ヒルマさんに気なんて使わなくて良いのです」
ニャー!とハレンちゃんが叫ぶ。
どうやら尻尾を握られたようだ。
ハレンちゃんはヒルマさんに向かって抗議しだしたので僕は無視して護衛の返事を伝えるためにフリスさん達の元へ向かった。
「なら護衛をしてくれるんだね?」
「その方向で決まりましたが、最初に言わせてもらいますけど正直護衛なんて初めてなので責任という物は負えませんけどいいですか?それにさっきは何故か僕だけセナスに反応できましたが次もとは限りませんそれだけは念を押していきます」
「そんなのは別にいいさ。人間死ぬときは死ぬんだ、いちいち人のせいにしてたらめんどくさいったらありゃしないよ」
「お母様そのようなことを言わないでください!」
「そうですわ!」
「うるさいね。王族になった時に全員で覚悟したんだから文句を言うんじゃないよ」
「確かにしましたが・・」
「それはそうですが・・」
どうやらフリスさん達家族は王族になると決めた時に命の危険がある機会が増えるのを見こうしてこういう時の為に予め覚悟をきめているようだった。
「それじゃ美紅お願いするよ」
「わかりました。大船に乗った気持ちとかは言えないですけど全力を尽くして頑張らせていただきます」
「お母様、美紅さん達の護衛の報酬の話はどうするのですか?」
「それがありましたね」
さすが元商人の家族、報酬の話なんて忘れてたけど向こうから言ってきた。
「そうだね~、あんた達なにか望みはあるかい?」
「ん~、それって今決めないといけませんか?」
「どういうことだい?」
「言いにくいんですがさっきも言った様に護衛なんてしたことないんで、万が一があるかもしれないので報酬なんて貰えない状況がくるかもしれないという事です」
「なるほどね、もし護衛失敗で護衛対象のあたしやこの子達が死んじまったら気持ち的に貰えないって事かい」
「まぁ・・そういう事です」
「それでも失敗したとしてもそれまでの働き分があるんだ、前払いでいくらか払っておいてもいいんだがどうするんだい?」
「いえ、いいです。出来ればですが完全成功報酬でお願いします」
「別にいいが、あんたが勝手に1人でそれを決めていいのかい?」
「問題ないです。こういう事は僕たち結構意見があうんです。ヒルマさんもハレンちゃんもきっとこういう結論を出すと思います」
「随分信頼してるんだね」
「してますよ、仲間ですし」
「ふんっ」
何か可笑しかったのかフリスさんは僕をちょっと睨んだ後に少し苦笑いな表情していた。
「それで美紅さん、お兄様の妻になってもらうお話ですけど」
覚えてたのかって忘れるわけないか・・にしてもしつこい。
「あの~そんな話をしてる場合じゃないと思うんですけど」
「その通りだよアルナ、僕達は美紅さん達に大変な事を頼んで、これから美紅さん達は僕達のために働いてくれるんだ。今はそんな話を蒸し返してる場合じゃないよ」
「それもそうですね。では美紅さん、このお話はこの事態が収まってから。つまり成功報酬とご一緒に続きをしましょう。それまで考える時間をあげるので良い返事をお待ちしておりますわ」
なかった事にはならないのね。
というかアルナ姫様、その話は考えるまでもないんだよ。
なぜなら男同士は結婚できないから!!!
できないよね?この世界でも同姓婚はダメだよね?
いや・・僕の元世界では出来る国もあったのかな?
・・というか出来ないよね!?ね!?
「改めて自己紹介させてもらおう。私の名前はシュッペル=ドレング。しがない研究者だ」
「ソウなのだ。短くてすまない」
我は今、町の近くの岩場に座ってさっき会ったばかりの御仁に携帯食量とお茶を頂いていた。
うん、なかなか美味しい!
「それで君は一体何者なんだい?種族は聞いてもいいのかい?顔を隠している時点で何か理由があると思うが」
「しゅ、種族はハーフリザードマンなのだ。ほら!」
我は一応礼儀として外套のフードを取り、尻尾も見せた。
また嘘をつくのは忍びないが宿屋の親父にもこれで名乗ったのだ、もうこれで通すしかない。
「ふむ・・ハーフリザードマンね。絶滅種じゃないか。しかし・・いや、勝手な認識で否定してはいけないな」
「な、何かおかしいのか?」
もしかしてこの御仁はハーフリザードマンを見たことがある!?絶滅したのに!?
「いや、文献で呼んだハーフリザードマンと違っているだけだよ。本に書いてあったハーフリザードマンは君のようにみえ麗しい女性の姿はしてないと思ったんだよ」
「そ、そんな本があるのか?」
ヤ、ヤバイのだ。
「まあ、所詮本だよ。間違っている本など無数にある。私は本は大好きだが目で見たこと以上には信じはしない。君がその種族というならそう信じよう」
なんとかなったの・・か?
「それで君はなぜあんな場所で絶望していたのかね?」
「それは・・」
我はこの町で会った事を細かく御仁に話した。
でも逃げるのに飛んできた部分は話さなかった。
だってハーフリザードマンたぶん飛べないもん。
「理解した。逃げたのは正解だな。恐らく君だけを責めないまでも双方に対して何らかの制裁が来ただろうからな」
「そうか・・で、でも町に戻れなくなったのだ!」
「それは考えすぎだと思うがね。姿を見られていないのだろう?恐らく戻っても何もされないと思うがね」
「それが本当なら嬉しいが根拠はなんなのだ?」
「根拠は君に声をかけたリザードマンの職業だよ。冒険者なのだろう?実力と名声が全てと言っても過言ではない職だ。自分達数人がたった一人の女性に負けたなどと触れ回れるわけがないだろう?恐らく後から来た衛兵には冒険者同士の諍いで負けたとでも言っているだろうな。君の姿形までは絶対伝えていない。性別は絶対だな」
「本当か!?」
「私ならそうする。そもそもこの町は亜人種の町だ。気性が荒い種族も多数いるし、そんな小さな諍いまで取り締まるほど町の衛兵も暇じゃないはずだ。君も君だ。心配しすぎだよ」
「なのか!よかった!我は犯罪者というのにはならないのだな!?」
「・・あぁ、そんなに肩を掴んで揺らさないでくれたまえ。そんなに心配なら私もこの国に入るつもりだ。もし何かあれば一緒に行って証人になろう」
「な、なんて優しい人種の御仁なんだ」
我は感動した!で、でも聞かなければいかない事もある。
こ、こんな優しくしてくれた人にこんな事を言わなければいけないとは・・しかしこれも我の新たな人生に与えられた使命の為・・ちょっと恨むぞご主人様。
「えっと・・お茶までご馳走になり親切にしてもらって聞きにくいのだが御仁。何故そこまで優しくしてくれるのだ?」
そう聞くと目の前の御仁は少し俯いてしまった。
な!もしかして聞いちゃいけないことだった!?
親切にしてくれたのに何か駄目な質問だったのか!?
最低だ!我最低だ!
「ふむ、普通は怪しむだろうね。こんな変な親父が君のような女性に親切にすれば」
「違うのだ!それは違うのだ!ただ・・いや正直に言おう。警戒してしまったのは事実なのだ。だがこうも思ったのだ。御仁にとっては我に優しくしても利になる事はない。先ほどの説明が正しいとは思うが我が犯罪者になってる可能性もゼロではない。その時に一緒にいれば御仁にも迷惑がかかるのだぞ?御仁ならその点も考えている筈だ。なのに一緒に来てくれるというので聞いてしまっただけだ」
本当は使命もあるので聞かないと思ったのもあるのだ・・でもそれは言えないのだ。
「お嬢さんは正直者だな。しかし思ったことを言ってしまうのはあまり褒められたことではないな」
「気をつけるのだ」
それに全部・・は言ってないのだ。
「では問い答えよう。始めの自己紹介でも言ったように私はちょっとした出来事を最近体験してね。ここまで来るのに随分考えさせられて思いつめたんだよ。そして少しだけ自分の人生を反省したのだよ。だが過去は過去、だから私はこれからの行き方を変えて行こうと少しだけ思っていたのだよ。その思いが今の君に対する私の行動に現れている」
「よくわからないのだ」
「だろうな。悪いが思い出したくはないのでいきなり会った君に詳細までは言えないな」
「それは御仁が謝る事ではないのだ。しかし理解した。御仁は人生を変える出来事があったのだな。それは後悔でもあるが、自分にとってはプラスにもなると判断した。それでいいのだな?」
「ははは、そのとおりだよ。そうストレートにいわれると恥ずかしいがな」
「実は我も最近同じ様な出来事があったのだ。仲間だな」
「それは不思議なことがある物だ。ではこの出会いは必然かもしれないな」
「それも良くわからないがそうだと嬉しいし面白そうなのだ」
「では、宜しくという事でいいかな?」
そう言って御仁は手を差し出してきた。
なので我はその御仁と喜んで握手した。
「ではこれからは名前で呼んでくれるかな?御仁と言われるのはむず痒いのでな。私もソウ君と呼ばせてもらおう」
「わかったのだ。シュッペル」
そして我は出会った気難しそうな御仁、もといシュッペルとモノニアムに戻ることになった。
シュッペルさんがちょっと優しく・・(*゜ω゜)