パーティー
必死に書いてると前書きも書くことなくなるよね。
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城の衛兵らしき人に案内されながら僕達は城の中を進む。
豪華な入り口、豪華な廊下、豪華な扉、歩き進むたびに目にはいる彫刻や絵画。
どれも素人目に見ても素晴らしいものだとわかる。
うん、完全に場違いだ!まさか生きているうちにこんな場所に来ることがあるなんて思わなかったね!
違う意味で異世界と感じさせられちゃうし。
「なんというか綺麗なお城なのです」
「そうだろうな、建国10年ということは城自体も出来て間もないという事だろう」
「あ、なるほど新築みたいなものですね」
3人でそんな会話をしていると、衛兵さんがその通りですと教えてくれた。
というかパーティー会場まだですか?かなり歩いていると思うんですけど。
いや、別に文句言ってませんよ?ただこのドレス・・歩きづらいんだよ!スースーするし。
そこからまだかなりの距離を歩き、大きな両開きの扉がある部屋に付いた。
部屋の中からはざわざわと人の声が聞こえる。
「こちらが会場になります」
案内役の衛兵さんの言葉と同時に扉が開き部屋の中が見える。
圧巻だった・・・。
会場は広く、天井は高く、装飾はどれも煌びやかにその存在を示していた。
先ほど来る途中に飾ってあった芸術品はなんだったのかと思われるほどの品が多数存在しており、この会場に入ってよいものなのかが躊躇われるほどだった。
そしてすでに会場は人で埋まっており、自分の着ているドレスと同じ様な感じの服装の人達が大勢いた。
中には鎧姿の騎士や不思議な衣装、仮装?みたいな人もいた。
これならヒルマさんやハレンちゃんも全然目立たなくてすむので良かったと思った。
というかああいった服装が許されているなら僕こんなの着る必要性なかったじゃん!なぜ僕にこんなのを着させた!
「あの・・どうぞお入りください」
「あ、すいません」
部屋の前にずっと動かずに立っていた僕達を変に思ったのか衛兵さんは部屋に入る様に促した。
1歩入っただけで景色が違った。
部屋の匂いと、料理の匂い、恐らくこの世界に来て一番と言っていいほどの高級食材で作られた料理が所狭しと並んでいた。
ゴクリ・・と横で聞こえた気がした。
「ハレンおあずけだぞ」
「わかっているのです。それにヒルマさんハレンは犬ではないのでその言い方はやめてほしいのです!」
「子猫なのは知っているが、ハレンは大食いで食いしん坊なのでな。一応飛びつく前に注意したんだ」
「飛びついたりしないのです!」
「どうだかな」
「でも、本当に飛びつきたいほど食欲をそそられる料理ばかりですね」
「私にとって美紅の料理より美味しいものはこの世にはない」
「いや、流石にこれと比べられると・・でもありがとうございます」
「美紅様美紅様、ハレンも美紅様の料理が一番なのです!その証拠にここの料理には一切手をつけないのです」
「子猫、真似をするな」
「ハレンちゃん、嬉しいけど我慢せず食べていいよ。せっかく招待されたんだし食べないと損だよ。僕も機会があったら頂くつもりだし」
「み、美紅様がそこま言うなら少し、ほんの少しだけ頂くかもなのです」
「我慢せず太ってこい」
「少しって言っているのです!そんなに食べないのです!ヒルマさんこそ食べないほうがいいのです。太ると鎧がきつくなるのです」
「子猫お前!私は太ってないと何度言ったらわかるんだ!」
「ハレンも子猫じゃないと何度言ったらわかってくれるのです!」
二人共ここがどういう場所が考えて行動しようね。
二人がいつもの喧嘩という掛け合いをしていると会場がいきなり暗くなった。
そして一番奥の場所だけに光が降り注ぐように明るく照らされていた。
そこにこのパーティーの開催者、つまり主役のフロス=モガル=ドロル面々が立っていた。
王であるワグル=モガル一世。
一歩下がった横にはフリス=モガル=ドロル后妃、つまりフリスさんがいた。
その後ろには2人、見たことのない若い人が控えていた。
司会と思われる人が王の前に口を開く。
「皆様、本日はようこそ我が国の10周年記念パーディーにお越しくださいました。建国記念大会も無事成功に終わり、この晩餐会を迎えることが出来ました。会場には皆様に楽しんでもらうためにこの国の自慢の料理が並んでおります。ですがお楽しみいただく前にまず王からパーディー開始の挨拶と乾杯の音頭をとってもらおうと思いますのでお近くの飲み物、グラスをお取り下さい」
そう言われると会場にいるほとんどの人がグラスを取る。
僕達3人も近くにあったグラスを取った、これお酒??
そして王の言葉が始まった。
ワグル=モガル一世は大会の時とあまり変わらないたどたどしい挨拶をした。
そして最後に一言。
「では我が国の建国10周年とこれからの国の繁栄を祝って!乾杯!!」
と大声で叫んだ。
それに合わせるように会場の人達はグラスを挙げてそれに応える。
そしてパーティーが始まった。
音楽家と思われる人達が一斉に楽器を弾き始め、それを合図に一斉に喋り始めり、料理を食べ始めていた。
明らかにもうグループというか特定の集まりが出来ている集団も結構いたりした。
「うへー緊張しますね」
「私もこういった場所は初めてだからうまく言えないが静かに料理でも取って目立たないようにしてるのが賢明だと思うぞ。ん?そういえばハレン一応お前は幻獣の姫なのだろう?だったらこういう場での対応ぐらいはわからないのか?」
「ヒルマさん何か勘違いしているようなので、いい機会なので言っておくのです。ハレンは確かにあの村では一族の長の娘で姫扱いされていたのです。でも別に豪華な生活をしていたわけではないのです。それにたぶんしていたとしてもハレンにはこの場での対応はわからなかったと思うのです。理由は文化が違いすぎるからなのです」
「なるほど、確かにあの村とじゃ全然文化が違うね」
「なんだハレンは似非姫だったのか」
「変な言い方をしないで欲しいのです!ハレンの身分はここまで大きな国というくくりの姫ではないというだけなのです!」
「冗談でいったんだ。本気にするな」
「まったく~なのです」
「とりあえず何か食べようか。僕お腹空いちゃってるし」
「賛成なのです!そうするのです!」
「食べ物と聞いて興奮するなハレン。食べ物は逃げたりしない」
「してないのです!」
「・・・さっさと行きましょう」
僕達はバイキング形式になっていた様々な料理を見ながら食べたいものお皿に取った。
見たこともない料理ばかりだったがどれも味は絶品でこれだけでも来たかいが会ったと思ったほどだ。
暫く食事を楽しんでいると意外な人に声をかけられた。
「おお、やはりご出席されていたのですね。いや、大会優勝者がいない方がおかしいですね。おっとまずこれを言わなければ。大会優勝おめでとうございます。まさか優勝してしまうとは驚きですよ。あ、失礼、優勝できないと思っていたわけではありませんよ。実力はあると思っていましたがここまでとは、予想以上で驚いただけですので他意はありません。しかし誇らしいですな。優勝者が我が商会の組員なんて。はははは、これでは冒険者達や腕自慢の者達の立場がありませんね」
話しかけてきたのはキューベレ商人組合支部長のギャングスさん。
招待されてたのね、あと話が長いよ。
「お久しぶりです。決勝前はありがとうございました」
「いえいえ、あまりお役に立てませんでしたし気にしないで下さい」
確かにあの情報はあんまり役に立たなかった。
「ギャングスさんも招待されていたんですね」
「ええ、私もこの国で1,2を争う商人ですから、顔は広いほうなのでご招待されましたよ。しかし本音を言わせていただくとこういった場は商人にとって狩場。すなわちチャンスなのですよ」
「どういう意味ですか?」
不思議に思って聞くとこれにはヒルマさんが答えた。
「こういう事だろ。他国の者やまだ知り合ってない権力者達がこの場にはたくさんいるからな、その者達と自然に縁を結ぶチャンスという意味だろ。だから商人にとっては絶好の狩場と言っていい」
「ほほほ、正に、正にその通りですよ。いやーさすがですね。その点貴方達が羨ましい限りですよ。私はこっちからアプローチしなければならないですが、貴方達は優勝という立場的に向こうから来てくれるでしょうからね」
「いや、僕達はギャングスさんとは違うタイプの商人って感じなので、そういった事はあまり気にしてないんですけど」
「そう言われるとそうかもしれませんが勿体無いですね。おっと・・失礼獲物を発見しましたので失礼しますよ。チャンスを逃すのは商人として失格ですので」
そう言って商魂逞しくギャングスさんは貴族の集団と思われる人盛りに突っ込んで言った。
凄いな、商人としては見習ったほうがいいのかもしれない。
でもあの普通にお客さんとかになるかもしれない人を獲物って思いっきり言ってたよね。
「商魂逞しいな。その辺にナッハガイムもいそうだな」
「あの人はあまり会いたくないですね」
「同感・・ん?美紅ハレンはどこへ行った?」
「えっと・・あそこです」
僕が指を指す方向にハレンちゃんはいた。
あそこには各国のスイーツ、甘いものが置いてあって女性陣が集まっている。
「あの子猫め、本能で生きてるのか・・まったく仕方ない」
そう言うとヒルマさんはハレンちゃんの元に歩いていた。
きっとはぐれない様に見張っててくれるのだろう、いつも喧嘩ばかりしているけどヒルマさんはハレンちゃんの世話を焼くのが好きな気がする。
「ヒルマさんも甘いもの食べてきてもいいですからねー!」
僕は人ごみを掻き分けてハレンちゃんの元に向かうヒルマさんに声をかけた。
さて、僕はどうしようかなっとそんな事を考えていると、こっちを指差しているご夫人方の集団が目にはいった。
なにやら嫌な予感がする・・。
「あの赤い子、ほら決勝チームの」
「あ、優勝を決めたチームね。ドレスなんて来ちゃって可愛いわね」
「やっぱり招かれていたのね」
「ベールで顔が見えないのが残念だわ。絶対若い子よ」
「そうね。そうだ!お顔を見せてもらいましょうよ?」
「いいわね!凄く興味あるわ!」
いいわね!じゃないし!見せてもいいけどあんな人数で囲まれたら僕はたぶん緊張して対応無理だし!
そして大波の様に大勢の女性陣がこっちに小走りでやってくる。
うわっ!どうしよう!僕は踵を帰すと女性陣とは反対方向を向いて逃走の準備に入る。
「ねぇ、ちょっと待って!貴方優勝した子だわよね?お顔を見せてくれない?ベールなんかで隠しちゃって~、まぁ同じ女同士ならめくってもいいわよね?」
振り向くとそこにも数人のふくよかな女性達がいた。
逃走経路のほうが強そうな女性が待ち構えているだと・・。
ど、どうしよう!このままじゃ360度包囲されて囲まれる!
別に嫌じゃないよ?僕も男だし!見た目は女だけど・・女性に囲まれるのはたぶん嬉しい・・かな?でもあれはなんか違う気がする!
そんな事を考えているうちにすでに四方から猛獣?達が僕目掛けて襲い掛かってきた。
「ええいっ!」
仕方ない!『ロスト』
僕はギフトを発動して姿を消した。
こんな事で滅多に使わない力を使うとか・・いやこれはこれでピンチだったし仕方ないよね。
「あれ?今までここにいた赤い子は?」
「確かに居たわよね?」
「貴方踏み潰したんじゃない?」
「な、失礼な!その言葉は我が一族に宣戦布告でよろしくて?」
「ああ~もう!どこに行っちゃったのよ!私の可愛い子!」
先ほどまで僕がいた場所で大勢のご夫人達は大声を出して嘆いていた。
うん、これ『ロスト』使って正解だったね。
そして僕はこのまま消えたままではいられないと思ってその場を移動する事にした。
とりあえず姿を現さなければいけないので会場の人が少なさそうな場所に移動した。
「ここならいいかな。『ロスト』解除っと」
「イタッ」
「あ・・すいません」
「え・・」
「え?」
「なんでもない!バイバイ!」
僕は小さな子にぶつかってしまった。
しかしその子に謝ると同時に気にしなかったのが人混みとは逆方向に人を避けるようにしてどこかにいってしまった。
悪い事しちゃったかな?
そんな事を思っていると後ろから声をかけられた。
「見つけたよ」
「え?」
「まったくこんな隅にいて、全然楽しんでないみたいだね」
「貴方こそ良いんですか、こんな場所にいて?一応后妃ですよね、それに言葉使いも素になってますし」
話しかけて来たのはこの国の后妃のフリスさんだった。
ん?この場合僕はどういう言葉使いをすれば?
「こんな大勢いる場所だ、いちいち他人の事なんて気にしないさ」
「いや、后妃は別でしょ」
「うるさいね、いざとなったらちゃんとするさ。あんたはあたしのお付か何かかい?細かいこと言うんじゃないよ」
逆ギレされた。
「それで一応このパーティーの主催者側の人がわざわざ何か用ですか?后妃とかに話しかけられるとバレたら目立つので勘弁してもらいたいのですけど」
「一応は余計だよ。普通后妃に話しかけられたら喜ぶもんだよ。まぁいいさ、ちょっと紹介したい奴がいるんで連れてきてやったのさ。なんで身構えるんだい!」
僕は誰かを紹介したいというフリスさんの言葉で無意識に一歩後ろに下がっていた。
出てきたのは10代後半と思われる男の人だった。
「いや・・悪気は無いんですが嫌な予感がしたので・・」
「まったく・・ほら挨拶しな!」
フリスさんが乱暴にそう言うとフリスさんの後ろにいた人が呼ばれて前に出てきた。
「初めまして、大会は楽しく拝見させて頂きました。優勝おめでとうございます。あと母が失礼な態度をとってすいません。あ、私はノーバン=モガル=キューベレと言います」
「・・・母?王子様!?」
「はは、身分的にいうとそうなっちゃいますね」
目の前の王子様は照れくさそうに笑った。
見た目的に顔の作りは王様に似ずフリスさんに似たみたいでかなり男前だと思う。
しかし目だけは王様似らしく優しそうな雰囲気を醸し出していた。
「えっと、この度はお父様で在らせられる国王様にお招き頂きましてありがとうございます。僕・・私は美紅という者です、お見知りおきください」
ダメだ!自分で何を言ってるかわからない!こんな言葉使いでいいのか僕!
「母と話していたような言葉使いで構いませんよ。無理して固い感じに話してもこっちも緊張してしまいますので」
「あ、ありがとうございます」
いい人だぁぁ!
「無理して慣れない言葉なんて使うんじゃないよ」
後ろの母親はいい人じゃないな・・。
「あの~、じゃあお言葉に甘えて失礼かもしれないですけど言葉を崩されてもらっちゃいますけど・・フリスさん本当にこんな場所にいて良いんですか?しかも王子様まで連れて、いくら優勝者チームだからと言って僕に紹介する必要はないんじゃないかと思うんですけど」
「そんなのはあたしの勝手だよ。他国や国のお偉いさんや貴族の相手なんて夫に任せておけばいいんだよ。その為に国王にまでなったんだからね」
いや、后妃もサボっちゃいけないでしょ。
「はぁ・・そうなんですか」
「他の二人はどうしたんだい?」
「ヒルマさんとハレンちゃんならあっちです」
僕は甘いものに集まっている女性陣の塊を指差した。
「なるほどね。事によっちゃ丁度良いかも知れないね・・」
「なにがですか?」
「あんたに用があったのさ、美紅あんたうちに嫁に来る気はないかい?」
「うちって?どこにですか??」
「話を理解してないようだね。つまりこの息子に嫁になる気はないかいってことだよ」
この人は何を・・って嫁!?
「な、何言ってるんですか!!」
「大声出すんじゃないよ!目立つだろうが!」
そっちも十分大声でしょうが!ていうか嫁!?ダメだこの人やっぱり勘違いしてる!早く誤解を解かないととんでもないことになる!
「母さん、そういう事はもっと順を追って話さないと駄目だよ。それに私はまだ妻を貰うとは一言も言ってないじゃないか」
「お黙り!早く身を固めないといけないのはわかっているだろう!確かにお前に良い結婚話がなかなか来ないのも悪いがお前がなかなか選ばないのも悪いんだよ、だからあたしが決めてやろうとしてるんじゃないか」
「そうだとしても美紅さんもいきなりで驚いているし、結婚というのは強要される物じゃないしお互いの外見や中身を好いて認め合った同士がする物であって、それ以前に初めて会った同士でいきなりこんな事を言う時点で成立しないと思うし」
そうだそうだ!良い事言うね王子様もっと言ってやれ!
「ははっ!偉くまともな事を言うようになったじゃないかノーバン。外見?中身?その通りさ!じゃあまずそのくだらない屁理屈を言ってる馬鹿息子の目を覚まさせてやるよ」
こらフリスさん!こんなまともな息子さんに馬鹿なんて言っちゃダメだよ!
そんな事を思っているとフリスさんは僕のほうにツカツカと歩いてきた。
そして僕の顔を隠しているベールを掴んでひるがえした。
ヒラリッっと風で布がめくれるように一瞬だけノーバン王子に向かって僕の顔があらわになる。
「どうだい!馬鹿息子?あたしは1回目会った時はわからなかったが2回目に会った時にちらっと見えちまったのさ。普段あんなにぶかぶかでみすぼらしいフードで顔なんか隠してるからどんな顔だと思ってたよ。そしたらこれさ!確かにこの顔じゃ隠すほうが正解だね。ただし違う意味だ」
「うわぁ」
反応したのは2人。
ノーバン王子とその後ろにいた女の人。
そしてノーバン王子が口を開いた。
「・・母さん、初めて母さんが僕にまともな事をしてくれたと今思いました」
「だろ!」
だろ!じゃない!そして初めてって事に反応しようよ!母親として!
そしてこの王族親子は一体何を言ってるんだ?
「美紅さん!先ほどの言葉を撤回させて下さい!初めて会った者が成立しないのは努力が足りないからです!だから僕は成立させる為に努力を惜しみません!僕と結婚して下さい!絶対幸せにしますから!」
おい、王子、さっきの立派な言葉はどうした・・180度態度を変えないでくれるかな。
にしても良く考えたら今のってプロポーズだよね?・・はっ!人生初プローポーズこれ?
しかも僕がする側じゃなくてされる側!?うわぁ!かなりショックなんだけど!!
うう・・体が可愛いだけでこんな事が・・蒼の体がここまでとは・・でもショックを受けている場合じゃない!やることがある。
というわけで!!
「ゴメンなさい!」
「なんで断るんだい!小娘!」
「なんで断るんですか美紅さん!」
親子揃って同じ反応をするな!断るに決まってんでしょ!結婚とか無理だし!こんな見た目だけど僕は男なんだよ!
「あの・・まず根本的な事を勘違い、いえ、こっちも言わなきゃいけないと思ってタイミングを逃してたのですが~」
僕は突然のプロポーズという出来事を断るために自分が男である事を打ち明けようとした。
たぶんショックを受けるだろうな~と思いながら・・しかしそれはまた止められてしまった。
「なんで断るのですか!お兄様が・・あまり強く言えないお兄様がここまではっきりと本音を言ったのになんで断るんですか!失礼にも程がありますわ!」
最後まで言わせずに突然飛び出して来たのは今まで何も言わずに後ろで静かに立っていた女の人だった。
身長はハレンちゃんより少し大きい程度で細身な人だった。
声からして若い女の子なのはわかるが僕と同じで顔をベールで隠していて、ドレスも控えめな色だった。
「え?あの・・誰?」
「コラ!アルナ、いきなり出てきて何を言うんだ!美紅さんはたぶん戸惑っているだけだよ。彼女が悪いみたいな言い方をしてはいけない。それにまだ断る理由も聞いていないから完全に断られてもいないよ」
戸惑ってますとも、いきなりの結婚しろとか、その後に知らないといえど同姓からのプロポーズ。
この状況で戸惑わない強者がいたら紹介していただきたい。
それに理由を言ったら完全に断ると思うよ?そっちからね!
「ですがお兄様!この方はきっと傲慢なのです!ちょっと可愛いくて美しい顔立ちをしているからと言ってお兄様を下に見ているのです。たしかに女の身の私から見ても一瞬ボーっとなりました。それでも相手は王族ですよ?それを一考もせず断るなど傲慢以外何者でもありません!」
何その偏見・・。
僕だって考えたよ?同姓同士じゃ夫婦にはなれないって事をね。
あと下に見てるって・・僕ってそんな傲慢に見えるの?
「まったくこの子は黙ってると思ったらいきなり出てきて誰に似たんだか・・もっと言ってやりなアルナ!」
こら母親!止めてよ!
そしてフリスさんの子供だったとしたら絶対母親似だよ!
「母さんもアルナを煽らないでください!それにアルナ、ちゃんと名乗りもしない相手にそんな失礼な事を言ってはダメだよ」
この人達は本当に王族なんだろうか・・コント集団の間違いじゃ・・。
「・・確かにそこは失礼いたしました。美紅さんでしたね。わたくしの名前はアルナ=モガル=キューベレ
と申します。16歳です。もうこの状況でお分かりと存じますが兄様の妹でそこのお母様の娘になります」
「はぁ?僕は美紅です。ということはお姫様ですか?」
「そうなりますね。でもそんな事は今はどうでもいです。それよりお兄様の妻になってください!」
どうでもよくないよ!てか僕には妻になるかどうかのがどうでもいいんだよ!
「ですから~それはさっき断ったし!」
「なぜですか!お兄様はその辺の男性より顔は良い方ですよ?それにとぉぉぉっても優しいです!王族という立場ですが決してその辺の王族に比べて権力を振りかざしたりはしない性格です。絶対幸せにしてくれますよ?もし身分違うとかそういう小さい事をお考えになっているのでしたらそんな考えは捨ててください。身分なんて物はあってない物です一度越えてしまえば努力次第でなんとでもなりますし、それはわたくし達が一番わかっておりますもの」
この子はブラコンだ・・絶対そうだ。
あと僕は身分とかより問題は性別だから!努力次第とかそういったもので超えれない物だから!
「あのですね。ノーバン王子の外見や性格とか王子である身分だからとかが問題なわけではなくですね・・」
「だったら兄の何がいけないんですか!はっ!もしかしてお母様ですか?お母様が義理の母になるのが嫌なんですね?確かに母はキツイ性格をしてますけど、ある一点においてはとっても優秀なのです。母がいなければこの10年この国を維持する事など到底できなかった程です。キツイ性格さえ我慢してくれればお母様はとってもいい義理の母です。わたくしも尊敬しておりますし間違いありませんわ」
ちょっとフリスさんを、母親をディスりだしたし!それってフォローになってなくない!?
それにそれ尊敬してる人の言い方違うよ!
「誰がキツイ性格だい!あたしは優しいだろうがアルナ!今は黙って聞いておいてあげるよ。だがあとで話があるので覚えておきな」
「わかりましたお母様、ですがわたくし間違ったことは言っておりませんのでそこは覚えておいて下さい」
この子・・強い。
そして全然黙ってないですフリスさん。
「別にフリスさんはちょっと強引だけど嫌いではないんですけど・・一応お世話になりましたし。優しいのも知ってますよ?というかそこまで酷い事思ったことは・・」
「じゃあお父様ですか?お父様についてはわたくしいう事は1つしかありません。優しさだけがとりえの肥満です。太っている以外害はないので義理の父親になった場合多少暑いかも知れませんが我慢して下さい。以上です」
ひどっ!!この国の頂点に対してひどっ!!
「えっとアルナ・・姫様?さんでいいのかな?それとも年下だしちゃん呼びしていい?国王であるお父さんに対してその言い方は無いんじゃないかな・・流石に」
「わたくしの呼び方はお好きに。ですがもし兄様とご結婚されるならお姉様になられるので呼び捨てで結構です。それと自分のお父様の事をなんて言おうが美紅さんには関係ありません。今貴方が言うべき事は1つです。お兄様の妻になりますというお返事だけですわ。貴方のように可愛く強い方が未来のこの国の未来の国王になるお兄様の近くにいていただければお父様もお母様も私もこんなに安心な事はありませんもの。お母様が貴方を薦めた理由が今はっきりと理解できましたわ」
理由とかはよくわからないけど言わなきゃダメだこの親子・・。
「「すいません」」が僕は」
僕が再度丁寧に断ろうとした時だった。
僕の言葉と重なってそれは声をかけてきた。
それに気付いて僕は途中で言葉を止めてしまった。
「お邪魔をしてすいません。フリス后妃様ですよね?死んでくれますか?」
いつ現れたのかわからなかった、突然現れたようにも感じられた。
でもソレは僕の横を優雅に、とても自然に通りすぎてそれは行動に移っていた。
ソレの手には銀色に光る刃物が握られていた。
それを見た僕はもう体が動いていた。
フリスさんは何を言われたかもわからずにその場で固まっていた。
それはノーバン王子やアルナ姫にも言える事で二人もあまりに自然で意外な出来事に動けずにいた。
しかし僕はドレスの下に装備していた腕輪の魔道具を発動させていた。
そして・・フリスさんとそれの間にはいり、ソレの腕を掴んだ。
「ん~、これは予想外だな。まさか君だったなんて。そんなドレスなんて着てるから全然わからなかったよ。ついでに言うとなんで反応できたのかな?」
ソレは笑った。
そして今はっきりと見えた。
掴んだ瞬間だった、見えたというより把握できたのだ。
今までは何故かはっきりと把握できずにいた。
ぼやけるとも違う、その場に居たのにとても自然すぎた。
そして完全に把握できた姿は緑色、顔確認する。
そこにはあの終始薄笑いを浮かべていた決勝最後の相手。
セナスが立っていた。
「あー、暗殺失敗♪」
楽しそうに・・。
やってしまったのだ!これも全部この体のせいだ!全然力を入れたつもりはないのにリザードマンの冒険者とやらを吹き飛ばした上に全滅させてしまったのだ!
い、一応死人は出てないし、それに向こうから仕掛けてきたしもしかして我は被害者という事で何とかなるんじゃ・・。
「こっちだ!物凄い物音がしたぞ!」
「喧嘩か!?殺し合いか!?」
「どっちにしろ衛兵を呼べ!事によっては物騒な種族同士の争いかも知れん!」
なっ!もう人が来るだと!?ヤバイのだ!理由を話せばわかってもらえるのか?そもそも我はまだ人との会話が苦手・・ずっとボッチだったし・・うぅ。
どうしようどうしよう!しかし理由を話しても信用してくれるのか?してくれても拘束とかされそうだし・・ええい!こうなったら仕方ない!
「逃げる!!!」
逃亡する決意を決めた我は背中から翼を生やした。
何もなかった背中から青い大きな翼が出現する。
そして風を起こすように2枚の翼をバサバサとはためかせて上空へと逃亡する。
「うわ~ん!我は卑怯者なのだ!確かにやりすぎたかもしれないが話せばわかってくれるかもしれないのに逃亡を選択してしまったのだ~!」
そして我は涙を流しながら空へと逃げた。
・・そして今は国の外にいます。
国へ入る検問の反対側の荒野でポツンと座ってます。
「お腹が空いたのだ・・荷物は宿だけど鍵も持ってるし、数日は泊まると言ってあるし、前払いでお金も払ってあるし、きっと安全だとおもうけど・・別に荷物も我に辿りつくものも持ってないし取られてもいいけど・・ってそんな心配をしている場合ではないのだ!もしかしたらあのリザードマン達が気が付いていて我の事を話して我を悪役にしていた場合はどうすれば!我犯罪者にされるかもしれない!?転生して使命をもらって一応ご主人様の役に立たないといけないのに犯罪者になってしまうのだ!犯罪者になったらご主人様に捨てられる可能性もあるかもしれないのだ!どうしよ~うわ~ん!」
住んでた山脈でボッチドラゴンをしていて、転生で新たな人生からすぐ荒野でボッチ神竜をしているとこっちに近づいてくる気配を感じた。
しかし身を隠そうと思えば隠くせれたが、先ほど逃亡という選択をしたせいか逃げる気がしなかった。
そしてその者は我に気付いたらしく馴れ馴れしく声をかけてきた。
「こんな国の反対側の何もない荒野でポツンと座って何をやっているのかね?」
髪に白髪の混ざった細めの男だった。
たぶん人種、亜人ではないと思う。
この国付近は亜人ばかりなのですぐにわかる。
というか逆に人種は目立つのだ。
「・・・人生?という物について我なりに考えてきたのだ。その人生をこれからどうしようかとか、また野良として生きていこうかな~とか、元住んでた場所に戻ってこの姿で生きていけるのかな~とかそんなことを考えていたのだ」
「こっちから声をかけておいてすまないがお嬢さん、君の言ってる事はさっぱりわからない。ある事があってから一応無関心はいけないと思い話しかけてみたのだがね」
「聞かれたから答えただけなのだ。それに意味がわかるとは思っていないしいいのだ。よく考えれば人生を嘆くより先に我にはもっと身近な・・先に考えることがあったのだ。国に戻ったらどうなるんだろうとか・・」
「国に?この先のモノニアムにかね?」
「モノニアムになのだ」
男は気難しそうな顔をして聞いてきた。
「よくわからないが声をかけてしまったんだ。事情を話したまえ。もちろん初対面の者には言えない事など腐るほどあるだろうがね。私も言えない事が腐るほどある。しかしそれゆえに言える事もあるはずだ。コレも縁だと思い話だけでも聞こう。何かできるかもしれない」
どうやら男は話を聞いてくれるらしい。
ボッチにならなくてすみそうなのだ。
しばらくは・・。
「お気遣い感謝するのだ、理屈屋っぽい雰囲気の御仁。そうだ、話を聞いてもらう側なのだから先にに名乗らせてもらうのだ。それが礼儀だし、我の名前はソウ。短い名だが実はとっても気に入っている。内緒だぞ?なにせ初めて貰った物だからな!」
「理屈屋か当たっているかもしれないな。しかしまたよくわからないな、誰に内緒にすればいいんだね?まぁ私はお喋りじゃないし、そもそも私も友達も知り合いも皆無だから言う相手がいないよ」
この御仁もボッチ?野良なのか?
だが我は野良歴、ボッチ歴数百年だぞ?絶対先輩だぞ?
「そうなのか?まぁ今のは相談内容じゃないので別にいいのだ、黙ってさえくれれば。ところで御仁の名前を教えて欲しいのだ」
「そうだったな。こっちから話しかけたのにそっちに先に名乗らせたままにしては置けないな。私の名前はシュッペル=ドレング。元軍人で今はそうだな・・ちょっと人生を反省する出来事があって少しぐらい他人に関心を持って生きていこうと決意したしがない研究者だ」
「・・・我もそうかもしれないが、御仁。お前の言っていう事もさっぱりだぞ?」
シュッペル=ドレングさんここで再登場でした(*´・ω・*)覚えてる?