優勝者
忙しくて文字数がちょっとずつ減ってる気がする。
小出しで投稿しようかな・・(*゜ω゜)
(本編2000文字ぐらい少ないので後書き物語を多めにしてみた!)
ハレンちゃんの拳から放たれた衝撃波で場外まで吹き飛ばされたセナス。
地面を擦るように自分自分を引きずって吹き飛ばされること10メートルほどで止まる。
ハレンちゃんの水球を破壊するために左手が放った一撃。
それで終わると思っていたセナス。
しかし次の一撃をすでに用意して完全に油断したセナスに対してのハレンちゃんの渾身の右手から放たれた衝撃波で場外まで吹き飛ばされた。
そしてそれを見た審判が叫ぶ。
「じょ、場外!蒼の選手の勝ち!!3勝目先取!この時点でゆ、優勝は蒼チームになります!!」
そしてこの審判の勝ち名乗りで僕達の3勝目、勝利への条件。
優勝が決まったのだ!
何が起きたかを理解出来ない人もいただろう。
しかし審判の宣言と同時に会場が沸く。
「「「「うわああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」」」
声にならない歓声。
騒音といっても過言ではない止まない拍手の嵐。
会場全体がこの大会の終わりを告げる合図のように騒ぎ立てる。
「会場の皆様ぁぁ!只今の試合の結果を持ちまして優勝チームが決定いたしました!!優勝は蒼チームになります!最大登録人数4名の大会を3人で勝ち抜いたチームが建国10周年の記念すべき大会において優勝を勝ち取りました!!最後は不思議な離れた場所からの拳による一撃で相手の選手を吹き飛ばすと言う結末!魔法でしょうか!いや何でもでもいいでしょう!素晴らしい物を見せていただきました!この素晴らしい勝者とそれを相手して惜しくも勝てなかった両チームに惜しみない祝福をお願いします!!!」
司会者のアナウンスに反応してさらに会場が盛り上がる。
VIP席らしい場所の豪華な衣装に身を包んだ王族、貴族っぽい人達まで立って拍手を送っていた。
「ハレンちゃん凄いよ!」
「美紅様、ハレンはやったのです!アマゾネス戦ではみっともない姿をお見せして、この前の試合では棄権などという選択をしてしまいましたがハレンはやっと美紅様のお役に立つことが出来たのです!」
どうやらハレンちゃんは自分だけ前の2つの試合で勝ち星がない事を結構気にしていたらしく、ちょっと潤んだ目をしてそんな事を言った。
「ハレンちゃん。僕は、ううん、ヒルマさんもそうだと思うけど別にハレンちゃんが役に立ってないなんて全然思ってなかったよ?この試合で勝っても負けても僕達は気にしないし責めもしなかったよ」
「それはわかっているのです。それでもハレンは美紅様のお役に立ちたかったのです」
「そっか、ありがとねハレンちゃん」
「やっと勝ったか子猫」
「・・・ヒルマさん台無しです」
絶対僕と同じ気持ちのはずなのに何故今その言葉を言っちゃうんですか・・。
「ふふん!ヒルマさん、今のハレンにはそんな嫌味は通じないのです。何故かと言うと優勝を決めたのはハレンだからなのです!あの常に不気味な笑いを絶やさないセナスという人を吹き飛ばし華麗に勝ちを決めた今のハレンにはそんなちっぽけな嫌味はまったく全然効かないのです」
よかった、せっかく優勝したのに喧嘩になるかと思ったし。
「そうか、だがハレン。あれを見ろ」
そう言われてハレンちゃんはヒルマさんの指差す方向を見た。
それに釣られるように僕もその方向を見る。
その視線の先はというと相手チームのいる場所。
ハレンちゃんに吹き飛ばされたセナスのいる場所だった。
「いや~負けちゃったか。まさかあんな技があるなんて世の中は広いね。楽しいという感情を知ったお陰で負けたと言うのに前とは違う感情が溢れかえってくるよ」
吹き飛ばされて起き上がったセナスは鎧に付いた土を落とすように手でパンパンと拭っていた。
その試合前と変わらない軽い口調、負けたと言うのに未だに消えない薄笑い。
そして何より無傷だった。
あの衝撃ならどこかしら傷を負ってもおかしくないはず、確かに鎧の胴の部分に衝撃波が当たって吹き飛ばされたけど鎧の部分を見れば凹みすらなく、土ぼこりを払った場所を見ると鎧は最初と同じく緑色に輝いていた。
「どうやらハレンの一撃は効いてなかったようだな。いや場外まで吹き飛ばす程の一撃を受けて無事なほうおかしいと言っていいな。どうやってかあの衝撃波を受けて無傷でいる手段をとったのか、もしくはあの鎧が単に業物か・・だな」
「あの鎧を直接殴っていれば秘密が分かったかもですが、衝撃波で吹き飛ばしたのでなんとも言えないのです。でもあれで無傷とはハレンも驚いたのです。鎧ごしでも威力は貫通して普通なら悶絶もののはずなのです」
「へー・・・」
悶絶ものなんだ・・ハレンちゃん怒ってもあれを僕に撃たないでね。
そんな事を思っているとにこやかな笑顔をしたセナスがこちらに歩いてきた。
「優勝おめでとう君達、まさか負けるとは思ってなったよ。僕の敗因は遊びすぎた事だね。うん!人生初の敗北と言っていいけどこれを反省としてこれからの人生に役立てる事にするよ。そうだなー、もし今度君達の誰かと相対する事があれば約束させてよ、今度は遊ばずに全力でいかせてもらうよ」
セナスは笑顔でそんな事を言ってくる。
「貴方が最後まで本気を出していないのは今の貴方の状態をみればわかるのです。でも気付いてないかもしれないですが貴方の敗因は油断ではないのです」
「油断ではない?へー、じゃあ参考にしたいし教えてもらえるかな?」
「簡単なのです。貴方が弱かっただけなのです」
ハレンちゃんそんな事言ったらこの薄ら笑いも流石に怒るかと!
「僕が・・弱い?」
「そうなのです。油断なんてちゃんちゃらおかしいのです。本気を出しても出さなくても貴方は公式の試合で負けたのです。油断なんて言い訳なのです。今の試合は貴方が弱いからハレンが勝った事実はそれだけなのです」
「言うねー、まあ、敗者は黙すと言うしね。今回はこれ以上は何も言わないよ。でもさっきの言葉は忘れないでね。次会った時はよろしくね」
ハレンちゃんの物言いに流石に怒ると思ったけどセナスは最後まで薄笑いを浮かべながら手を振って自分の仲間の元に戻っていった。
「ヒルマ殿おおお!拙者も次に運命の邂逅をした時はああああああああああああああああああ」
「死んだんじゃないかハレン・・だがナイスだ。あと生きてたら何とかして奴に名前を勘違いしてる事を伝えておけよ」
セナスと交代でハレンちゃんの名前をヒルマさんと勘違いしている那夏希がドスドスハレンちゃんに向かって突進してきたのだけどあと数メートルのところで先ほどのセナスのように来た方向に吹き飛んでいった。
ハレンちゃんを見ると衝撃波を放った後の構えになっていた。
気の毒に・・あ・・悶絶してる・・しかも吐血してる。
「て、手加減はしたのです。あまりの恐ろしさについ・・・あと名前の方はほんとーーーにヒルマさんには悪いと思っているのです。でも訂正する事は不可能に近いのです。これも運命という奴なのです」
「ふざけるな!訂正する気がないだけだろ!確かに獣人好きのアイツに狙われてるのは私ではないが私の名前をアイツに叫ばれるたびに鳥肌が立つんだぞ!」
「ハレンなんて獣人ってだけであの人に変な目で見られているのです!名前ぐらい我慢して欲しいのです!仲間なら苦痛も分け合ってほしいのです!」
「あんな気持ちの悪い奴の変な思考に例え名前だけと言っても私を巻き込むな子猫!仲間というならその大切な仲間に危険が及ばないようにするべきだろ!」
「嫌なのです嫌なのです!ハレンはヒルマさんと一緒に危険に対処する所存なのです!」
「こんな時だけ私を巻き込むな!」
喧嘩はしないと思ったに始まってしまった・・。
でもこれは那夏希のせいか・・仕方ないね。
それにこれはなんか気のせいか楽しい喧嘩っぽいし止めないでおこう。
「それでは表彰式が行われますので優勝したチームから5位までのチームは壇上に集合してもらいますのでお越し下さい!同時に賞品の授与も行われますのでよろしくお願いします!」
「二人とも呼ばれてますので行きますよ」
まだ何かと言い合っているヒルマさんとハレンちゃんに声をかける。
「まったくこの子猫は!」
「名前ぐらいでしつこいのです!」
「・・・あの~」
「ああ、すまない美紅。しかしあのVIP席の前にある派手な壇上だろ?あまり気が進まないな。優勝賞品だけ貰ってさっさと帰れないものか・・」
「さすがに優勝してしまったのでそれは無理と言うものなのです」
「わかっている、気が進まないというだけだ」
「僕も気が進まないですけどそれを差し引いても優勝で貰える賞品は欲しかった品ですし仕方ないですよ。我慢して行きましょう」
僕達はそんな事を言いながら3人で指定させた場所まで向かう。
そこに行くと準優勝したはずのセナスはいなかった。
変わりにいたのは那夏希だけだった。
顔色が悪くお腹を押さえてゴホゴホ言っていた。
こんな状態の仲間を代表でよこすとは鬼かセナス・・まぁ他の2名は大怪我と意識がないだろうし仕方なさそうだけど・・。
僕の隣ではハレンちゃんが、うう・・と唸って僕に隠れるようにジリジリと那夏希から距離を取ろうと頑張っているがヒルマさんにせき止められていた。
平気だよハレンちゃん、流石のこの状態で飛びついてきたりは出来ないよ。
ていうか死ぬんじゃないかこのまま。
あとなんかアマゾネスさん達の視線が凄いんですけど・・特に僕がやらかしちゃったアマゾネスさんが。
アレは事故だ・・アレは事故だ。
「では入賞チームの皆様!5位から順に大会賞品と目録の授与をさせていただきます!授与をしてくださるのはこの方!我が国の国王!ワグル=モガル1世様です!」
観衆の拍手と共に国王が僕達の前に出てきて手を振ってそれに答えている。
そして5位から次々に賞品が渡されていった。
渡しているのは国王、近くで見ると太った・・ふくよかな初老の国王で穏やかな顔をしている。
アマゾネスさん達に3位の賞品を渡していた、流石に3位からは国王からの賞賛の賛辞みたいなものがあるようで何か御言葉を頂いている。
次に2位の那夏希の番になり賞品を受け渡していた。
・・・隣なのでお言葉が聞こえてきたが聞こえてきた会話がこれは賛辞ではないお言葉だった。
そなた顔色が悪いが平気か?確かそなたは不戦勝を勝ち取っていたのに何故傷負ってるのだ?等と言うものだった・・当然の疑問だよね!!実はハレンちゃんが吹き飛ばしたんです・・見てなかったのね国王様。
その国王の心配のお言葉に対して那夏希はというと・・・。
心配ご無用・・ゴホッ!!っと国王の豪華な服に血を飛ばしていた。
うわ・・貰った賞金で今すぐ弁償しなさい・・。
そんな被害を受けた国王はというと、ちょっと嫌な顔をしたが体を労わり静養するようにと優しい言葉を那夏希から即座に離れた。
絶対良い人だこの国王様!!
そして僕達の番が来た。
国王様が僕達の前に来て言う。
「優勝チームの者よ、素晴らしい試合だった。わた・・余も非常に興奮し楽しませてもらった。特に最後の試合は素晴らしかった。勿論その前の2つの試合も素晴らしかったが優勝を決めた試合のあの水の魔法を華麗に舞のように回避する姿に興奮して椅子から起き上がってしまったほどだ。建国から10年目・・この大会がどのようなモノになるかとても心配だったがそなた達や他の選手、参加者のお陰で国の者達や外から来た者達もきっと楽しみ満足してくれたと思っている。それを一番盛り上げてくれたそなた達に感謝をしたい」
国王は笑いながらそう言って感謝の御言葉を述べてくる。
言葉の端々からそれが本心だとわかる気がした。
僕達3人はその言葉に従い少しだけ頭を下げて感謝を告げるしぐさをした。
「おお、そうだ!そなた達優勝した者達にはぜひ今夜城で行われる大会の成功を祝う宴・・舞踏会に出席して欲しいな!」
「え・・」
僕はいきなりの事で思わず声が出てしまった。
その僕の声を聞いて不安に思ったのか国王はこう返してきた。
「も、もちろん強制ではない。余を始め国の重鎮や貴族、招いた近隣諸国の関係者もおるのでそなた達がこれを聞いて躊躇するのもわかるつもりだ。しかし大会優勝の者が出席すれば場も盛り上がると思っての余の今思いついた勝手な提案だ。断ってくれても別に何かをするつもりもないから安心してよい」
なるほど~って王様からの誘いとか断りにくいし!!
「非常に光栄なお誘いですがお断りさせていただきますワグル=モガル国王様」
え?って断ってるし!ヒルマさん!?
隣から非常に丁寧な言葉使いで即座にお断りの返事をした。
「そうか残念だ・・理由を来てもよいか・・」
「私どもは旅をして暮らしているものです。そういった場に出た事がなく恐らく場違いでしょう。作法もマナーも知りません。優勝したチームとはいえ失礼をしてしまえば恐らくお誘いいただいた国王様のお顔に泥を塗る事にもなりません。それが理由でございます」
おー!こうやって断るのか~。
ヒルマさんは普段は不遜な言葉使いだけど最初に会った時もそうだったけどちゃんとした場とか時と場合を考えているというか本当にこういう時は凄いし頼りになるな~。
「なるほどな、しかし余はそんな小さな事は別に気にしたりはせんぞ?それでもダメか?」
あれ?国王様も粘ってる?
「ちっ」
え?ヒルマさん今舌打ちした?もしかしてこんなに丁寧に断ってるのにしつこく誘ってくるよ的な舌打ち!?
小さかったから流石に国王には聞こえてないと思うけど僕にはしっかり聞こえてるからね!
悪いけどある町の住人のせいで舌打ちに対しては僕は非常に敏感なんだよ・・。
「国王様、そちらの者が言ったように私達は所詮は国王達のような方々とは生きている世界が違います。国王様が気にしなくとも、もし舞踏会とやらで私達が失礼をしてしまった場合には私達が気にします。ならば最初から出席しない方がいいと思われるのです。それに私達3人にも目的があります。優勝しておいてなんですが何より3人とも正直に言いますが目立つのを嫌う性格をしておりますのでそこをご理解いただけると嬉しく思います」
「そうか、余も良かれと思って誘ったのだが理由はわかった」
国王様は少し残念そうな顔をしたがわかってくれたようだった。
良かった良かった!ってそんな場合じゃないよ!僕とヒルマさんはそれを聞いて絶句した表情になっていたのだ。
こ、国王様の事よりこっちはもっと驚いた事が起きたんだよ!今の最後のヒルマさん並に丁寧な言葉使いで断った人が驚きだよ!知らない国王様は普通に聞いてたけど僕は驚いて何度も目を擦っちゃったし!
隣のヒルマさんに至っては国王の前にいるのに国王そっちのけでその人物のほうを見て固まっているし!
ヒルマさんの舌打ちの後にお断りの言葉を言ったのは誰であろう・・ハレンちゃんです・・。
ハレンちゃん!?ハレンちゃんだよね!?偽者じゃないよね!?
ハレンちゃんといえば語尾に絶対『なのです』が付くはずなのに!
公式の場のヒルマさん並に丁寧でちゃんとした言葉使いだったよ?ていうかそんな風に喋れたの!?
もしかして今までわざと語尾つけてたの!?キャラ付け!?
いやでもそんな起用な子じゃないと思うし・・。
ハレンちゃんと出会ってから匂いを嗅ぐクセとか、戦うときの凄さとか、意外と力持ちとか色々あったけど今のちゃんとしてた言葉の使い方が一番驚いたよ!
そんな言葉使いをしたハレンちゃんを改めて見るといつもと全然変わらない感じで立っていた。
そして・・固まっていたヒルマさんが動いた。
ポカッっと音がしたと思う。
「痛いのです!いきなり何をするのですヒルマさん!」
観衆に注目されていて目の前にこの国で一番偉い国王様がいるのに・・ハレンちゃんの頭を叩いたのだった。
何故叩いたとは僕は聞かない、だってちょっとだけ気持ちがわかるから。
「すまないハレン。どうやら本物のよいうだ・・偽者かと思ってな」
「意味がわからないのです!こんな場所でふざけないで欲しいのです!」
「ふざけているのはお前だろ・・なんだ今の言葉使いは・・普段のお前は語尾に『なのです』といつもつけてるだろ?あれはわざとつけてたのか?ちゃんと喋れるならそう言え・・美紅も驚いていたぞ。私なんか石になると思ったぞ」
「失礼なのです!ハレンはわざと語尾をつけれるほど起用ではないのです!ハレンの言葉使いは幼少の頃から使っているのでもう治らないのです!それにさっきの国王様に使った言葉使いはこういった立場の偉い方にはさっきみたいな言葉使いを使えとお婆様から習ったので使ってみただけなのです!もしかしてハレンがこういった場でもマナーも守れない頭の弱い子とでも思ってたのです!?」
「すまないハレン・・私は思っていた。美紅もだろ?」
なっ!ヒルマさん正直に言いすぎ!そしてこっちになんで振るの!?答えにくい事をマジで振らないでよ!
「み、美紅様も!?」
ほら~ハレンちゃん僕までそう思ってたの?見たいな顔してこっち見てるし!
どうやって返そう、確かに僕はハレンちゃんの語尾はクセなんだなって理解していたと思うし、似合ってるので別に気にしてなかった。でもヒルマさんの言う通りなのも確かかも・・ハレンちゃんはどんな時でもこの喋り方で行くのだと思っていたし、まさか偉い人や目上の人にはちゃんとした喋り方が出来るとは思ってなかったかも・・。
いや本当になんて答えよう!これは間違えると傷つけちゃう気がしてきた!
「えーと、嘘はつきたくないし正直に言うね。確かに僕もヒルマさんと同じだったかも・・でもね」
「ガーンなのです!美紅様まで!?」
「ほら見ろ子猫!」
「ハ、ハレンちゃん最後まで聞いて!でもね、今の喋り方を聞いて流石ハスさんだと思ったよ。孫の将来を考えてちゃんとこう言った事を教えておくと言うのは凄いと思うし、教えられた事をちゃんと時と場合を考えて使ってるハレンちゃんも凄いと思ったし」
「そんな風に思っていただけて光栄なのです美紅様!そうなのですお婆様は凄いのです!」
「美紅、そんなフォローは子猫に必要ないぞ?素直にこういった場での言葉遣いができるとは思わなかったといってやれ」
ヒルマさん相変わらず一言余計ですよ!
「そ、そなた達そろそろいいかの?」
はっ!しまった!思いっきり国王様の存在を忘れてこっちで喋っていた!なんて失礼な事をしてしまったんだ。
「す、すいません。無礼な態度をとってしまいました」
「いや気にしなくてもいいぞ。聞いてて楽しかったしな。余は別に言葉遣いなど屁にも思っておらんしな。そもそも・・いやいいか。とりあえずはそなた達の考えはわかったしな。残念だが了承する事にしよう」
「ありがとうございます」
どうやら大会の晩餐会兼舞踏会には出席しなくても良くなりそうだ、助かった~。
「国王、駄目ですよ。国王足るものもっと威厳を持ってください。確かにそちらの方々の理由はもっともですがそんなに簡単に折れてはこの国が舐められます。ここはわたくしにお任せを」
いきなり前に出てきてそんな事を言ってきたのはずっと国王の後ろに控えてきた女の人だった。
やはり高貴な人が着るような豪華なドレスを着ていて顔はベールで隠れていた。
だけど何となくだけど声を聞いた感じ年齢は結構いっている感じがした。
その女性に対して国王は、うむ、しかし、と言った感じで困った顔をしていた。
「まずは優勝おめでとうございます。そして先ほど国王は貴方達の言い分を聞いて了承してしまいましたが舞踏会にはぜひ出席してもらいたいのです」
いきなり目の前に出てきた女性は国王には理解してもらったはずなのに話を蒸し返すような不遜な態度で
こちらに向かって提案してきた。
しかしこれにはさっきと一緒でヒルマさんが答えた。
「ご婦人、気を悪くしないで頂きたいが先ほど国王様にも仰った通りの理由でお断りさせていただく所存でございます。どうぞご理解を」
「それはしっかり聞いていましたよ。しかし国王と私の見解は違います。それに見た感じ貴方達の代表者はそちらの小さな赤い方でしょう?そちらの方は後ろで何も言わずにいますよ?断るなら代表である貴方が言うのが筋ではないですか?」
え?そうなの?確かに大会には僕が代表ってなってるけどこういったことも僕が出なきゃいけないの?いやでも慣れてないし・・ヒルマさんは別格として、さらにハスさんに学んでちゃんとこういった場の言葉使いができるとわかったハレンちゃん、僕なんかこういった場ではそれ以下だよ?そもそも国王様とかはいたけど、国も違ったし僕の小さな世界には接する機会もなかったし・・どうしよう・・。
「確かに代表者は美紅なっているな。言ってやれ美紅。別に緊張する事も畏まった言葉使いもする必要もない。そちらの方は筋を通せといっているだけだ。筋さえ通せば多少の無礼は水に流すくらいの度量はあるだろうからな。国王のそばに控えているくらいだからそれなりの地位の者がな」
えー・・・いやでも~まぁいいか、言わなきゃこの話終わりそうにないし。
うまく喋れなくてもさっさとお断りしようと思い僕は前に出た。
「えっと、仲間の二人がそちらに言いました理由で晩餐会の出席は断り・・・・・・」
しかし最後まで僕は喋ることができなかった。
目の前の女性が僕が最後まで喋る前にいきなり僕の顔のすぐ近くまで来て耳打ちをして小さな声で呟いたからだ。
「あたしの別荘の住み心地はどうだい小娘。あそこは最高だろ?感謝に思っておるならつべこべ言わず出ろ。二度と会わんと思っておったのにこんな場で会うことになったのも何かの縁だろ。別にとって食いはせないよ。目立ちたくないなどとふざけた理由で将来役に立つかもしれん出会いを棒に振るのは愚か者のすることだよ?」
別荘・・?ってこの声は聞いたことが!
「あ、貴方は・・いやご夫人はまさか・・」
「そうですか出席して下さるのですね。しつこくお誘いした甲斐がありました。国王お喜びくださいな、今私に耳打ちして出席させていただきますと仰られました」
「そ、そうか!流石じゃ。では夜に城に来てくれ。下の者には話を通しておくのでな」
「いや!僕は何も・・!」
「私も楽しみに待ってますよ。そうだぜひ私の新しいペットも見せたいですね。きっとそのペットも貴方達に会いたいと思っている事でしょうし」
「うっ・・」
「み、美紅様どうしてご出席する事にしたのです!?」
ハレンちゃんは当然断ると思っていたらしく横で驚いていた。
この状況だヒルマさんも何か言うと思ったがそうではなかった。
「ハレン・・あとでくわしく話すから何も聞かないでおいてあげろ」
「へ?わ、わかったのです」
「では、こちらが招待状になりますので城の門番に見せていただければ通れます。待って!!ますよ」
・・・ご夫人は最後の待ってますを強調するように語尾を強めて言うとその場から笑って去っていった。
その後、僕達は貰った優勝賞品を確認してとりあえずここから去ろうとした。
「あの~二人共、今ちょっと確認したんですけど賞品である物品はなんか豪華な箱に入ってますけど、なんか2つ程おかしいものがついてるんですけど・・」
「何のことだ?」
「紙なのです??」
「はい、そうなんです。なんか他の賞品と違って小さな箱でここでも開けれそうだったんでつい開けちゃったんですけど、なんか紙が2枚別々に入ってるんですけどなんでしょう」
「読んで見たらどうなのです?」
「いや、ここではやめたほうがいいな。人目がありすぎる。思い出すと優勝賞品には2つ程シークレット的な物があると言っていた、それがそうなのだろう。もっと落ち着いた場所で確かめるべきだ。それより二人共、今考えるべきは晩餐会だ」
「あぁ・・そうですね・・そうでしたね」
「あ!それなのです!どうしてご参加を?」
「とりあえず移動するぞ、それにハレンお前は臭いで気付くと思ったのだがな」
「臭いなのです?あの方からは色んな臭いがしたのです。香水がいっぱい使われててちょっとキツイ臭いだったのです。そういうヒルマさんは美紅様とあの方の会話を盗み聞きしたのです?」
「盗み聞きとか言うな!耳がいいから聞こえただけだ!」
「まぁまぁ、とりあえず移動しましょう。優勝しちゃったし大会も終わりってことでここにいるとなんか囲まれそうで、それにヒルマさんが聞いてくれててよかったです。すぐになぜそうなったのか理解してくれましたし」
「私は美紅の考えている事を1番わかっていると自負している」
「ハレンは自負などではなく本当にわかっているのです」
「・・・負け猫め」
「今にゃんと言ったのです!!!!」
「にゃんにもいってないぞ」
興奮するとにゃがつくハレンちゃんのクセをいちいち強調するように返すとは、ヒルマさんはハレンちゃんをからかう時は本当にうまいと言うか全力な気がする。
もしかして一番ハレンちゃんを好きなのはヒルマさんじゃないのかな・・?
「絶対言ったのです!それにハレンは優勝を決めたのです!」
「ソウダナ」
「何でそんな棒読みで言うのですか!」
「気のせいだ」
「さて・・帰るか」
僕は二人を置いてさっさとここから離れた。
しかし二人はそれに気づいてすぐに付いてきてくれた。
喧嘩しながら・・・。
「つまりあの国王様と一緒にいたお方はモブキャットレースで出会ったフリスさんだったのです?」
僕達は早足で移動しながら先ほどの事をハレンちゃんに説明していた。
「そうだ、間違いない。ハレンが臭いを忘れない子猫のように私も1度聞いた声を忘れる事はない。多少声を高くして話していて口調も違ったが美紅を脅すように耳打ちした内容で確信した。あれはフリスさんだ」
「たぶん間違いないと思うよ。別荘の事も言ってたし。それに最後にペットに会わせたいとか言ってた時点でそれはあのレースの後買い取ったモブキャットだよ」
「つ、つまりフリスさんはこの国の偉いお方だったのです?」
「だったんだよ」
「あの衣装、王と一緒に行動している時点でそうだろ。どういう立場かは知らないが普段はあんなレース場でギャンブルをしている人ではないということだ」
「ゴメンね、いきなりすぎて断れなくて・・何よりこの国の滞在場所の別送を貸してくれてお世話になった人だし」
「だがこっちもレースで助けたし、貸し借りはないようなものだがな」
「でも別荘をお貸しいただけなかったらハレン達は初日からキャンプ生活だったのです。それに美紅様はお優しいので断れなかったのです」
「そういう事にしておいてくれると嬉しいかな。でもお城の晩餐会か・・二人共平気?」
「悪いが私はそういう場の経験はない。それに姿を晒したくないのし普通に鎧は脱がないで行くぞ」
「ハレンも村の外の世界のそういった行事はまったくなのです。格好もどうしてよいかさっぱりなのです」
「だよねー」
「格好なんて何でも構わないよ、そんな小さい事は気にしないし言わせないしね」
「そうなんですか?ってフリスさん!?」
「なぜ貴方がここにいるのだ?」
「国王があんたらを誘う話を切り出して大事な事を言うのを忘れた~とか言い出したからね。それじゃ丁度いいので私が来たわけさ。いいストレス解消だよ」
「はぁ?半分以上意味がわからないんですけど・・」
「これからしっかり話してやるからあんた達に貸した別荘まで行くよ。さっさと歩きな」
本当にこの人さっきと同一人物なのかな・・完全にどこにでもいそうなおばさん化してるんだけど。
それから僕達はぶつぶつと急かされながらいきなり現れたフリスさんと一緒にフリスさんから貸してもらっている別荘に帰ることになった。
何この状況?
拝啓、我の故郷の山脈の生物の皆様お元気ですか?(生まれた時から孤独で親も兄弟もいないけど)
我は今生まれた時からお世話になった姿を変えられて人の世界とやらに送り込まれました。
最初に会った女神に酷い目にあわされて、二度と会わないと思っていた女神に、違う女神でしたがある意味酷い目にあわされた感じです。
ですが孤独からは開放されてご主人様という存在が出来ました。
そしてそのご主人の命令、本人はお願いと言っておりましたが使命を果たすために初めての世界を経験しております。
「だからリザードマンではないと言っておろう!あんなのと一緒にするな!」
「いやねーちゃん、その尻尾を見せられてリザードマンじゃないって言われてもなー。一応種族教えてもらわないとここは泊められねーんだよ。部屋割りの問題でな。敵対している種族とか隣にしてみろや、喧嘩ぐらいならいいとしても殺し合いを始めちまう奴等もいるんでな」
この宿屋の親父め、我をあんなトカゲの亜人と一緒にいおって。
確かに我は今人型で尻尾だけ出しておるが隠してなければ立派な羽もあるのだぞ!まったく!
「じゃあ、ねーちゃんはなんの亜人なんだ?新種か?なわけねーか!!がははははは」
がはははははじゃないわ!ご主人様にこの国での使命を命じられて来たものまさか人の世界はここまで面倒だとは思わなかった。
ここ亜人国モノニアムは様々な亜人が集まり生活する国、もちろん人もいないわけではないが人は珍しい部類に入るらしい。
それにしても種族申告制とはやっかいな・・国に入るときですら聞かれなかったのに宿屋できかれるとは盲点だった。
って我って種族なんて言えば?たしかご主人は竜神とか言ってたな?そのまま言えばいいのか?この親父の言うとおり新種なんじゃ・・。あぁまったくやっかいな体だ!そもそもご主人様のせいだ!
『ソウちゃんならできる!昔からできる子だから!臨機応変にね!』
やる事説明してそれだけ!?
てか昔からって何!?我とご主人様は会って数日だし!いい加減すぎる!
ご主人様姿を変えてくれるって言ってたよね?絶対忘れただろ!
ああああ、なんて言えば泊めてもらえるのか・・。
「ねーちゃん、悪いがその尻尾が本物ってのはわかるが種族ぐらい言えないような輩を泊めるわけには・・」
「リ、リザードマンのハーフじゃ、ほれ、仕方ないから顔を見せるわ」
我は深々とかぶっていたフードを取って店主の親父に顔を見せた。
「おおー、まさかハーフリザードか!?絶滅したと思ってたんだがな・・そっかー言いにくい理由がわかったぜ。あんたも色々あったんだろうな・・ぐすっ・・よしわかった!あんたの部屋は出来るだけ大人しい部族や空いてる部屋の近くにしてやるよ!」
「あ、ありがとう」
適当に言ったのにいけたのか?リザードマンのハーフなんているんだな・・しかも同情されておるし。
「人とリザードマンが大昔交わり出来た少数部族か・・昔話に聞いた程度だが本当にいたんだな。悪しき存在とか言われて純粋なリザードマンや人に1残らず狩られ絶滅した悲劇の種族って聞いたぜ」
なんか凄い悲惨な過去の持つ種族名乗っちゃったぁぁぁ!!
「親父よ、この事は・・」
「もちろん内緒だ!俺はコレでも宿屋の店主だぜ?珍しい客なんか腐る見てる、客の個人情報なんて絶対漏らすもんかよ!」
「そ、そうか感謝する」
「ああ、色々あると思うが・・頑張って生きろよ・・ねーちゃん・・ぐすっ・・ほらよ部屋の鍵だ」
同情泣きされてるんだがぁぁぁ!なんか複雑すぎるぅぅぅ!
そして我はなんとかこの国での滞在場所を確保できて部屋に向かった。
「ああああぁぁぁ、ご主人恨むぞぉぉぉ!我は嘘は嫌いなのだ!ついた分だけ何かが積もる感じがするし!あの店主には悪いことをした・・いや、ドラゴンですって言ったら絶対怖がられるし・・そもそももう我ドラゴン違うし・・竜神だし・・世にも珍しい新種で珍種だし・・はぁ」
いい、苦情はこれで生きて変えれたらご主人様にいっぱい言おう。
正直我あのご主人あんまり嫌いじゃないし、また好きにもなれないけど・・散々されたし。
これからやる事を考えると今の事など些細な事だと思うしな。
まったく、我の人生どうなっちゃっておるんじゃ・・。
というか女神であるご主人様よ。
命令が抽象的すぎ!確かに色々細かく人の世界の事を教えてくれたけど肝心な事とか大雑把すぎ!
なんじゃ一体最後のアレは!!!
『モノニアムに変なのがいるって報告がね、結構届いてるの。あたし手が放せないからそれをソウちゃんに担当して欲しいの。ソウちゃんは使徒だから直接下界に干渉可なので楽勝でしょ!うん!がんばれ!』
だってさ~。
「変なのってなんじゃあああああぁぁぁぁぁ!!!!」
さあ?(*´・ω・*)