登録(閑話)
閑話ですが、出来れば読んで頂けるとうれしいです。
一応繋がってるので、新キャラもいるので。
ではどうぞ(*゜ω゜)
「素晴らしい成長です奏様!まさかこんなに早く1本取られるんて思いもよりませんでした」
「ハァハァ、ありがとうございました」
「こちらこそ、勉強になりました」
そう言ったのはコウナンさん。
オーキラス大聖堂の大聖堂長付の偉い人だ。
オーキラスの元騎士団長で武勇に優れ潜在的な魔法の才能はなかったのに努力で魔法を開花させた人だ。
ボクは今訓練場で彼から剣術や武術の訓練相手をしてもらっていた。
「薙刀でしたか、形状を説明していただき鍛冶師に作らせたときは槍に似ていましたが、実際貴方が使ってこうして相手をさせていただくと槍相手とはまったく違った感覚で相手をせねばならない。まったく新鮮で驚きでいっぱいです」
「そう言っていただけるのは嬉しいですけど、本当に勉強になるのはこちらです。ボク達の世界では実戦なんて経験は絶対できませんでした。ですがコウナンさんにお相手していただいていると実戦でどれだけ戦ってきたかがわかります」
「褒めて頂いて嬉しいですが貴方の成長速度はすさまじいですよ。まさかこの国のダンジョンを攻略してしまうとは思いませんでした。主がいなくてもこの国のダンジョンは我が国の兵士育成の為結構な難易度に認定されているのにたった4人で攻略するとは頭が下がるばかりです」
「情報のお陰です。ダンジョンの構造、出る魔物、その魔物の詳細まで教えてもらっている時点で攻略したなんて言えません」
「謙遜する事はない。どうですか?何度目か忘れましたが奏様と慧様、木葉様に目里様でやはり王国軍に入隊いたしませんか?私が推薦させていただきますので」
「こちらも何度も断っていてすみませんがその気はありません。ボク達・・いえまだ目里君にはいい返事は頂いてませんがこの世界を見て回りたいと思ってますので」
「冒険者ですか?」
「はい、目里君の返事次第すぐに組合に登録するつもりです」
「惜しいですがお止めはしませんよ」
コウナンさんはそう言っているがちょっと残念そうな顔をしている。
ボク達姉妹、慧はボクより王国を出たがっている。元の世界でインドアだった妹からしたら別人のような感じだけど良い方に変わっていると思う。
副生徒会長だった木葉さんも『わたくしも一緒に行くことにきめましたわ』と言ってくれた。
木葉さんはどうやら聖女などと呼ばれてちやほやされるのが苦痛で出て行きたいような感じがある。
「ところであの3人は最近はどうなんですか?」
「あの3人ですか・・」
この話題になるとコウナンさんはちょっと疲れたような顔をした。
「すみません、コウナンさんには本当に感謝してもしきれないです」
「いや、そういうつもりでは、実はあの3人最近大人しくしてたと思ったら急に金を稼げる場所を教えろと言いまして」
「お金を?何故ですか?」
「・・・そのカジノにはまっておりまして」
「はぁぁぁ」
ボクは呆れてため息をつく。
「すみません。流石にそういった事までいちいち止める権利はなくて・・個人の責任ですし」
「いえ、いっそ破産でもして借金を背負ったほうが真面目に働くかもしれませんので。ん?もしかしてもう借金を!?」
「はい・・多額ではありませんが働いて返せる程度なので、実はもう借金自体は1カ月程で返済してまして、今はカジノで遊ぶお金が欲しいと言うので叱ってから肉体労働で稼げる城の修繕作業を紹介して働かせております」
「まさか真面目に働いているんですか?」
「ご心配なく、監督官が城の兵士なのでサボれません。それにギフトを使って暴れたりしたら給金が貰えずカジノで遊べないので」
欲望がかかれば真面目に働くのかあの馬鹿3人は・・・いっそこのままギャンブラーになってしまって欲しい。どうなろうとも。
「あいつらも真面目なら国軍に推薦できる実力を持っているのですが・・」
「お世話になっているこの国の為に言わせてもらえるなら国での雇用は止めてください。きっと災いの種になるだけですので」
「ははは、お厳しいですな」
訓練場の入り口から人影が現れた。
「・・お姉ちゃん今大丈夫?」
妹の慧だった。
「これは慧様、おはようございます」
「・・様はいらない」
「慧、それは私も何度も言ったが無理だそうだ」
「大変申し訳ありませんが『風』の方々には敬意を払えと言われているのでご勘弁を」
「・・ならいいです」
「で?何の用だ?」
「・・杖が届いた。自慢したいので見に来て」
「ははは、正直ですな。でもわかりますよ、自分の武器は他の人に見せびらかしたいものです。それが初めてならなお更です」
「・・よくわかってる!」
慧はコウナンさんにグッっと親指を立てる。
「それでは丁度いいので訓練はここまでという事で」
「はい、ありがとうございました」
ボクはお辞儀をして訓練場を後にした。
そしてそのまま慧の部屋に向かう。
そこには木葉さんの姿もあった。
「奏ちゃん、おはようですわ」
「おはようございます、木葉さん。木葉さんも慧の杖自慢に呼ばれたんですか?」
「いやですわ。わたくしも自慢する側の人間ですわ」
「ああ、そういうことですか」
慧と木葉さんの2人はダンジョンに潜った時は聖堂から借りた武器を使っていた。
しかし何度かダンジョンに潜っているうちに魔物の素材を売ったりその素材で武器や魔法士のローブが作れる事を知ってからと言うもの2人で町へ出かけて店を回った。
2人とも攻撃タイプと補助タイプで分かれるが純粋な魔法士タイプという事もありこちらに来て気があったようだ。元々木葉さんは慧の事を気にいってよく話しかけていたが慧は人見知りしてあまり心を開いていなかったがダンジョンや今回の杖探しやローブ探しで一気に距離が縮まって仲良くなったみたいだった。
妹が美紅や蒼ちゃんやボク以外に話せる相手を見つけた事は良い事だと思っている。
「お姉ちゃん?」
「ああ、ゴメン。ちょっと考え事をしてしまってたんだ。さっそく杖を見せてくれるかな?」
「それではわたくしからお見せしましわ」
そう言って長方形の箱から出したのは白い60センチ程のロッド、他にも大きな箱からは綺麗な生地で縫われたローブでこちらも白色だった。黄色の線で少し模様染みたものがあった。
「凄い綺麗な杖とローブだね」
「ええ、ダンジョンで手に入れた鉱物で作ってもらった奴ですわ。ローブのほうは・・・」
「ローブの方は?」
何か木葉さんが言いよどんだと思ったら慧がボクの服の袖をクイっと引っ張ると耳打ちをしてきた。
「なるほど、ローブも自分で選ぼうと思ったのにほぼ強制で渡されたと」
「慧ちゃんお喋りですわ!」
「・・どうせ言うつもりだったでしょ?」
「そうですわ!せっかく黄色のローブで気に入ったのがあったので購入しようと思いましたのに聖堂職員全員からですと送られましたの。黄色のローブより良い素材で作られた上に黄色がお好きなようなのでせめてもの印に黄色で模様を刺繍しました、我々の給金を少しずつ出し合って聖女様に・・等と言われたら断れませんわ!!」
「ふ・・はははは、愛されてるね。木葉さん」
「絶対笑われると思ってましたわ!桃倉君も爆笑してましたし!」
「・・・でもこれすごい良い物」
「・・みたいですわね、胸にダンジョン石をはめる魔道具のローブ、土のダンジョン石まで貰って物理防御軽減の魔法を込めましたとか・・ありがたすぎて涙がでますわ」
「・・・愛されすぎだね」
「・・・さすが聖女」
「慧ちゃんその言い方はやめてと言ったはずですわ」
「慧」
「・・はーい」
叱られたというのに慧は笑顔で頷く。
本当にこの変わりようだけはこっちの世界に来てよかったと思う。
「それで慧は?」
「・・・これこれ」
今度は慧が箱を出す。
慧の箱は長く1メートル以上ある。ローブが入っている箱も出したきた。
「長いね・・赤いロッドか慧の身長に近いね」
「・・うん、私は普通に魔道具屋さんで買った」
「魔道具なのかい?」
「・・・うん、光の杖、目里君が拾ったのを譲ってくれたダンジョン石をはめれるタイプ」
「へー、前に言ってた魔法の力を強めれるって補助魔法でも込めたのかい?」
「・・うん、木葉ちゃんに込めてもらった」
「ありがとう木葉さん」
ボクがそうお礼を言うと木葉さんは照れたような顔でいえいえと手を横に振る。
「わたくしは出来る事をしたまでですわ」
「・・・改めてありがとう木葉ちゃん」
「まあ!」
「・・・うぐっ」
木葉さんは我慢が出来なかったらしく慧を抱き寄せて思いっきり抱きしめた。
前は引き剥がそうと必死にしていたがもう慣れたのかそのままにされている。
「こっちの青いローブは?」
「・・・ん?それは魔道具じゃない。拾った素材で作ってもらった。軽くて丈夫な素材らしい」
「これで二人とも準備は出来たってわけだね」
「・・・うん」
「そうなりますわね」
「あとは目里君か」
「そういえば目里ちゃんの返事はどうなってますの?」
「次に会うまでに返事をするって言ったけどどうなるかはわからないかな」
「・・・来て欲しい」
「そうだね、目里君がいてくれれば正直かなり楽になる。チーム構成としては完璧と言っていい。もちろん目里君の性格や人格的にもボク達3人と合うしね」
「抱きつくと怒りますけど」
「・・それは木葉ちゃんが悪い」
「そうだね」
「ヒドイですわ!」
どうやら木葉さんは自分より小さい子を見ると抱きつく癖があるようだった。
「どうだろう、今から目里君の部屋に行ってみないかい?」
「・・・賛成」
「いいですわよ」
ボク達3人は最後のメンバーに目星をつけている目里君の部屋に向かう。
コンコン。
部屋の前に来て扉をノックすると中から返事があった。
「誰?」
「目里君、ボクだ、慧と木葉さんもいる。入っていいかい?」
「ちょ、ちょっと待ってください」
いきなりきたのが不味かっただろうか?何か中からゴソゴソと音が聞こえたかと思うと暫くして静かになる。
そして声が返ってきた。
「どうぞ」
「お邪魔するよ目里君」
「・・・お邪魔します」
「お邪魔しますわ」
中に入るとそこには線が細くちょっと垂れ目だか可愛いといっていい子がいた。
目里 静流君。
こっちの世界に一緒に来た12人のうちの一人で中学3年生、15歳。
「好きなところに座って下さい」
「って言われても・・」
「・・散らかりすぎ」
「なんでこんな紙くずがいっぱい落ちてますの?」
「字の練習をしてたんです。オレ頭悪いんで・・」
「目里君は頭悪くなんてないよ。ちょっと天然で不器用でやり方が悪いだけだよ。慧、今度教えてあげたらどうだい」
「・・お姉ちゃん教えるのはいいけど、それはフォローになってない。目里君絶句してる」
「奏ちゃんは正直すぎるのが欠点ですわね」
「ご、ゴメン、気を使ったつもりではいたんだ」
「気にしないでください。本当の事ですし」
しまった、こっちが気を使ってもらっている。
何か会話を変えないと・・でもそれは逃げてるだけな気がする。
「・・・目里君、今度一緒に勉強してくれる?」
「え?オレ足引っ張るかもしれないですよ?良いんですか慧さん」
「・・うん」
「ありがとうございます」
ナイスだ慧!いい妹を持ったよ。
「あの、皆さんでオレに会いに来たという事は例の件でしょうか?」
「その通りなんだ、急かしたくないんだけどそろそろ結論がでたかなって思ってね」
「その事なんですが本当に俺なんかでいいですか?俺は皆さんより年下ですし足を引っ張るのも目に見えてますし」
「そんな事ないですわ!目里君はしっかりした良い子です。それにこちらの世界では15歳で成人と聞きました。わたくし達はもうこちらで生きていくのですから大人の枠組にはいりますわ!」
「そうなんですけど、いきなり大人になったといわれても実感ないですし、それに3人みたいにオレは器用じゃないですし、そんな簡単に気持ちの整理がつかないというか・・結構優柔不断なんですよ」
「じゃあ目里君はどうしたいんだい?」
「それもまだ何も決めれないというか・・何というか」
「じゃあ、ボク達と一緒に来て旅をしながら決めないかい?誘うときに言ったと思うけど冒険者は常に命の危険があるらしい。それはダンジョンに一緒に潜ったときもそうだったけど、国を出たら自分達の事は自分でしないといけない。だからこそ気づく事も学ぶ事ある思う。目里君もそこで成長しながら自分のやりたい事を見つけないかい?もちろん何か見つかった時は言ってくれれば君を止めようなんて思わない」
「そんなのでいいんですか?そんな気持ちで皆さんに付いて行ったら中途半端なんじゃ」
「・・そんな事ないよ」
「そうですわ、わたくしもやりたい事なんてまったくないですし。ここだけの話、聖女なんて呼ばれているのが窮屈で逃げたい気持ちが一番なのですわ。中途半端以前の問題なのはわたくしですわ」
「あの、それは知ってました」
「ええええ」
ゴメン、木葉さんボクも知ってるよ。
そして横で頷いてる慧も知ってる。
「そうですか・・知ってましたの」
気づかれてないと思ってたのがちょっと意外で可愛い人だ。
「・・・一緒にいこう」
慧が目里君の手を握りながら目をはっきりと見て真剣にお願いする。
「わかりました。未熟者ですがよろしくおねがいします」
「よかった!これから宜しく目里君!」
ボクは慧と目里君が手を握り合っている所に自分の手を重ねる。
そうすると木葉さんも手を重ねてきた。
「よろしくですわ、目里君。そ、それでこれからは目里ちゃんって呼びたいんですけど・・」
「いえ、それは勘弁してください。なんかくすぐったいので」
ガーンと音がした気がする。
断られた木葉さんが落ち込んでいる。
最初にどう目里君を呼ぼうが3人で聞いたところ『ちゃん』付けは嫌らしく君で呼んで欲しいといわれてそのままにしていたが木葉さんは君ではなく、ちゃんで呼びたいと最後まで反抗していたしね。
「それじゃ、目里君。君は装備は準備してないよね?」
「実はしてます」
「え?驚いたな、てっきりボクはまだかと」
「オレもコウナンさんに剣の稽古をつけてもらってましたし、それでコウナンさんが暇な日に一緒に剣と鎧を買いに付き合ってもらったんです」
「そうだったのか。良いのは見つかったのかい?」
目里君は人と距離をとるタイプだが面倒見の良いコウナンさんんは懐いていた。
目里君はぽつりと洩らしたことがある、パパにちょっと似てるんです。との事だった。
「コウナンさん凄いです。色々アドバイスをくれて、結構町の武器屋に顔が広いみたいでいいのが安く買えました」
「・・・どんなの?」
「みたいですわ」
目里君は珍しく顔を赤らめると部屋の奥にから剣と鎧と盾を持ってきた。
「へー、いいじゃないか。鎧はシルバーのフルアーマタイプ、剣は・・凄いなこれは」
「・・・大きい」
「これ・・持てますの?」
目里君の剣はバスターソード目里君の身長とほぼ同じ、背中に背負うタイプで鞘がついていない。
「平気です、ゴーレムコンゴという魔物硬皮で出来てるらしくそこら辺のの金属よりもいい素材らしいです。なんか商人組合から流れてきたらしくてこんな綺麗な状態で素材が出回る事なんて滅多にないっていったました。まぁ、それだけ高い剣だったんですけどコウナンさんのお陰でギリギリ買えて助かりました」
「盾もシルバーか。この裏についてるのは・・魔道具かい?」
「はい、ダンジョン石はないですけどね」
「でもここまでしっかり揃えてるなんて実はほぼ一緒に来てくれることを決めてたとはですの?」
「そうですね、3人が積極的にオレなんかを誘ってくれたので、あ!もちろんさっきの皆さんの言葉で完全に心を決めました。でもオレはこっちに来て剣術は楽しかったんで万が一3人と行けなくてもこの国で兵士にでもなろうと思い始めてたんで」
「なるほどね、でももう兵士にはさせないよ」
「わかってます、皆さんは装備は万全なんですか?」
そう聞かれたボク達は笑って、目里君に装備を見せた。
この部屋に来る前に慧と木葉さんはローブに着替えていたし、杖も持ってきていた。
これがそうだよ、っと2人とも自慢するように仲良く目里君に見せている。
「あの、奏さんのは?」
「ああ、ボクのは武器は知ってると思うが、特注した薙刀型の魔道具だ。鎧も魔道具を作ってもらった。丁度拾ったダンジョン石があったのでボクもコウナンさんに紹介してもらったドワーフの工房で作ってもらってね。先日届いたばかりだよ」
「薙刀は知ってますけど、鎧も見てみたいので今度見せてください」
「もちろん、でもすぐ見れるよ」
「どういうことですか?」
「もちろんこれから着るからだよ。目里君には悪いと思ったけど3人でもう決めてたんだ。目里君に良い返事を貰ったらみんなで装備を着て冒険者組合に行こうってね」
「・・来てくれるよね?」
「一緒にいきましょう」
「わかりました」
「よし、行こうか。目里君?どうかしたのか?」
「えーと・・着替えるのですみませんが出て行ってもらえますか?」
ボク達3人は目を合わすと慌てて出て行く。
そしてドアの向こうから叫ぶ。
「目里君、聖堂の西の裏口で待っている。準備が出来たら来てくれ」
部屋の中から、わかりましたっと声が返ってくるのを確認してからボクも鎧を着るために部屋に戻る。
慧と木葉さんはもう準備が出来ていたのでそのまま向かっていった。
全員準備を整えたボク達は聖堂の裏口から出てそのまま繁華街を通り、この町の冒険者組合に向かっていった。裏口から出たのは理由もあった。
「何度来ても凄いですね、オレやっぱりまだここは緊張します」
目里君がそう言うのも無理はない、世界各地に支部を置く大聖堂、冒険者組合、商人組合、そしてあと1つ、その4つの大組織がこの国には本部の1つがある。というより大聖堂がある国にはどの組織も本部を置いている。その証拠にこの建物は他に類を見ない4階建てだった。
「わたしくもですわ、何度かダンジョンの素材を売る為に来ましたけどあまりいい思い出がありませんもの」
木葉さんの場合は別の理由だと思うけど・・今のローブのフード丸被りだし。
「入ろうか」
組合の扉を潜ると1階は受付が何箇所もあり、素材の買取、依頼内容の貼られた掲示板。相談窓口がある。
2階は全て酒場のような寄り合い所になっており、3階は依頼人と交渉できる会議室が個室でいくつもある。4階は組合の人間だけ入れる本部になっている。
中に入るとやはり賑わっており多少目線が集まったがすぐに離された。
4人ですぐに受付に向かう。
3つある受付のうち素材を売る際に何度か対応してくれた受付嬢を選ぶ。
20台半ばの綺麗な女性だった。
「まぁ、貴方方は、本日も素材の買取ですか?」
「今日は違います、今日は登録に来ました。対応してくれるかな」
「まぁ、やっと決めてくれたのですね。わかりました、3階へどうぞ」
「3階?ここでは駄目なのかい?」
「そっちの後ろの方もいますし3階で対応した方がいいですよね?説明もありますし」
「なるほど、ではそうしてくれるかな?」
「はい、ご案内します」
さすがこっちの正体を知っているだけあって機転を利かせた対応だった。
ボク達は案内に従って3階の会議室に向かう。
「お入り下さい」
そして会議室に入る。
中には向かい合うテーブルを挟んで椅子がありボク達は並んで座った。
「では本日は当冒険者組合への登録申請ありがとうございます。対応させていただくヘーニャと言います。
」
「そういえば名前を聞くのは初めてでしたね。ボク達は・・」
「ご紹介は結構ですよ、どうせこちらの紙に全員のお名前と専門職を書いてもらうだけの簡単な作業ですので」
そう言ってヘーニャさんは登録用紙なるものをテーブルに置いた。
「書くだけでよろしいのですの?」
「はい、名前だけで結構ですよ。不思議ですか?」
「いえ、もっと面倒な作業だと思っていましたので」
「ランクが上がっていけば面倒な作業が増える事の方が多いですね。最初に正直に言っておきます、組合所属の冒険者は星の数ほどいます。登録が簡単なのは登録してもすぐに消えてしまう冒険者が多いのでそんなに難しく書いても意味がないからです」
「・・・そんな」
「ふふふ、怖くなりましたか?」
「意地が悪い言い方だけどとても親切だね」
「ありがとうございます」
「さあ、書こうか」
ボクがそう言うと慧、木葉さん、目里君の順に書いていく。
「剣士2名、魔法士2名ですか。理想的なチームですね」
「でしょう?」
「はい、これで登録は完了ですがチーム名も登録しておきます?」
「チーム名?」
「ご説明したします。冒険者は自分で依頼表から依頼を受けたりします。しかし名声が上がれば名指しで依頼がきたりします。その際にチーム名があればチームの名を依頼人に覚えていただく事が簡単になります。そしてもちろん偉業を成した時にその名が広まるのです」
これには慧が反応した。
「・・・決めなかった場合は?」
「そういった場合でも後から決める事も出来ますが、ただまったく決めたりしないと周囲が勝手に決めてそれが広まってしまうという事もあります」
「それはちょっと嫌かな・・」
ボクの呟きに3人も頷く。
「では決められますか?」
「そうだね、すぐには決められないから他にも説明があるなら先にしてくれないか?」
「はい、冒険者にはランクがあります。下から、アイアン、クロム、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナです。もちろん貴方方は新人なのでアイアンから始めていただきます」
「ランクの判断は冒険者がつけているあのバッヂ?」
「そうですね、出来るだけ見える場所につけて頂きたいですね。そのランクの金属で出来た素材なのでそれで判断します」
「オレ達はアイアンってわけ?」
「はい、ランクはそうなります。そしてランクを上げる方法は地道に依頼をこなして行くと昇進試験があります。しかし一気にランクを上げる方法も当然あります、例としては・・そうですねダンジョンの攻略者に
なったりする事」
「それだけ?」
「他にも多々ありますが、そうですね基本はランクによって依頼は分別されていますが自体により臨機応変と言う事もあるでしょう。つまり偶然の偉業ですね。それを成せば組合の上層部が判断してランクアップも可能です」
「・・・やってみたい」
「で、できたらいいですわね」
「頑張って下さい」
「他には何かある?」
「あとはランク関係では・・そうですね。貴方達なら教えても大丈夫でしょう。本当はもっと上に言ったら自然に知る事になるのですが」
「どういうこと?」
「ランクは公表している最高ランクはプラチナですが実はもっと上があります」
「・・・何ランク?」
「それはご自分達でお確かめ下さい。研鑽を積んでいけばいずれわかると思います。意外と普通に噂話とかで知っちゃうかもしれませんし」
「ここまで言っておいてずるいですわ」
「楽しみはあとに取っておくものです。頑張って下さい。あとは決まり事ですね。基本組合内での冒険者同士の争いは禁止、しかし理由によっては譲れない場合もあるでしょう。そういった場合は組合立会いの下に試合を申請できます」
「組合内では・・か」
「はい、ダンジョンや依頼途中の冒険者同士のいさかいは余程のことがない限り組合は取り合いません」
「無責任ではありませんこと?」
「そうですね、そう思いますがそんな事まで責任を取っていたらやっていけませんから」
「入会させる気はあるのかい?」
「ありますとも、ですが納得できない場合は仕方ありません」
結構はっきり物を言う人だ。
「他には?」
「あとはあまり大事な事はありませんね、こちらをどうぞ。組合規則の書いた紙です」
そう言って先ほどの説明や細かい規則の書いた紙を渡してくる。
「わかりました、ボク達はここで登録しないなんて選択はしません。登録します」
「ありがとうございます」
「忘れてました、この町を出ても問題ないですよね?」
「勿論です、登録されたらバッヂを差し上げますのでそれは偽造が難しい証明みたいなのものです。組合支部は各地にあります、バッヂを見せていただければその組合で冒険者業を続けていただけます」
「わかりました」
そしてボクは皆の顔を見て言う。
「さて、みんな、チーム名はどうする?」
「うーん、わたしくは何でもいいですわ」
「オレもです、決めてください。優柔不断で決めれないですし」
「・・・聖女と愉快な仲間たち・・ぷっ」
「慧ちゃんそれは却下ですわ!」
「落ち着いて慧の冗談だよ、さすがにそれはしないから」
「オレはそれでもいいですよ?」
「目里君まで!」
「・・冗談、赤の団でお願いします」
「慧・・」
「赤の団?それが慧ちゃんの希望ですの?」
「・・うん、これがダメなら聖女と愉快な仲間達になる」
「赤の団でいいですわ!赤の団最高ですわ!」
「オレもそれでいいです」
「というわけだ、それで登録お願いできるかな」
「わかりました、4名でチーム名は『赤の団』ですね。ではこちらをどうぞ」
渡してきたのはアイアンで出来た小さなバッヂが4つ。
それをボク達はそれぞれ受け取った。
「では本日は当冒険者組合に登録ありがとうございました。貴方達の冒険に幸のあらんことを」
「ありがとうございます」
そしてボク達は席を立って会議室を組合を後にしようとした時ヘーニャさん最後に・・。
「それにしても2日連続で『風』の方々の登録とは驚きました」
何だって!?
「待ってください!2日連続ってどういう事ですか!?」
ボクは少し声を荒げて問い詰める。
「その顔だと知らなかったようですね、男の子3人が昨日登録して行きました。大変でしたよ、大声で自分達は『風』だ。登録に来てやった!と叫ぶものですから。説明の時も何度もわからないもっとちゃんと説明しろと言ってきたらしいですし。対応したのが私でなくて助かりました」
完全にあの3人だ!どういうことだ・・ギャンブル中毒ってさっき聞いたばかりなのに。
「名前は鶴川、仙田、人志じゃないですか?」
「守秘義務がありますが、丸わかりなので教えます。その通りです」
「・・・あの馬鹿共」
「なんて事なんですの」
「あの人達か・・」
「で?あの3人はどうしてるかわかりますか?」
「確か今朝早く来たみたいで依頼書を持って受けて出て行ったとか?」
「はぁ・・どういうつもりなのか」
頭が痛くなってきた。
「教えてくれてありがとう。ボク達も依頼を受けたいけど今日のは登録だけのつもりなのでまた来ます」
「そうですか、ではまたお越し下さい」
ボク達は組合をでると・・。
「はぁ・・戻ろう」
「確認の為ですわね?」
「・・・本当に捨てたい」
「オレはあんまり接点ないけどあの人達苦手です」
「・・・素直に嫌いと言っていいよ」
「嫌いです」
「目里君って素直でいい子ですわ」
そんな会話をしながら大聖堂に戻りコウナンさんに会う。
そこにはバーザルさんもいた。
事情を話したらコウナンさんから出た言葉はこうだった。
「その事ですか」
「知ってたんですか?」
「実は聞いたのは奏様と別れた後なんです、あの後に城から元部下がきて、あの3人が来てないと言われました、部屋にもいないのでおかしいと思いました。今朝早く出て行ったと。どこに行ったかと思えばあいつらの武器や鎧もなくもしかしたらと思い心当たりがないか元部下に聞いたんです。あいつ等はもっと金が稼げる仕事はないか?と城の兵士に聞いていたらしく、冒険者ならもっと稼げると冗談でいったらしいのです」
「それで本気にして昨日の仕事の後に登録していた・・と」
「・・・本能で動きすぎ」
「獣ですわ」
「オレが飼ってたハムスターのが賢いかな?」
「こんな事ならあいつらを国営管理のダンジョンに入るのを禁止にしなければ良かったです」
「それは正しい判断ですわ!」
「・・・コウナンさん悪くない」
あの3人組はダンジョンに数回入るとすぐにダンジョンに入るのを禁止された。
理由はダンジョンで訓練中の兵士、普通に入ってきた冒険者とのいさかいによる争い、喧嘩。
さらに仙田君のカーペットによりダンジョン階層を水浸しにする始末。
つまり迷惑行為で禁止。ダンジョンでの収入がダメになった。
「な、何か対処をしましょうか?」
バーザルさんが困り顔で聞いてくる。
「コウナンさんどう思いますか?」
「私は正直に言いますと冒険者登録した時点であの3人は冒険者です。聖堂預かりから外れるのが決まり、なのでこのままにしておいていいと思われます」
「コウナン!」
バーザルさんはちょっと無責任と思っているようだ。
しかし・・。
「ボクも賛成ですボク達も今登録してきました。前に言ったようにボク達も覚悟が出来ましたので出発したいと思います」
「そうですか・・ついに」
「旅のご無事を祈っております」
「ありがとうございます、と言うわけなのであの3人は決まりの通りに聖堂から追い出して下さい。もうあの3人もこちらの事はわかっているはずです。居ないうちに荷物も外に出しましょう。戻ってきても入れないでください」
「わ、わかりました」
「そうしましょう」
「そしてあの3人が問題を起こしても国、聖堂では助けなくてもいいです。例え貴重な存在である『風』であってもです。何が犯罪のような問題を起こしたりしたら責任はしっかり取らせてください。この国の法律に従って・・です」
「よろしいのですか?」
ボク達4人とも揃って頷く。
「これは残った『風』の総意と思ってください。ボク達はここで出て行きますが残りの『風』はきっと桃倉先輩がいれば大丈夫と思いますので」
「って勝手に任せないでくれるかい!」
いきなりドアが開いたと思うとどこから聞いていたのか桃倉先輩が入ってきた。
「桃倉君どこから聞いてましたの?」
「あの3人を追放する辺りからだよ!それより出て行くのは知ってたけど何も言わずに出て行くつもりだったんじゃないだろうね!?」
「明日の朝出て行くつもりだよ」
「早いよ!」
「あとで言うつもりでしたわ」
「それでも早いよ!」
「・・桃倉先輩ガンバレ」
「えっと、オレも応援してます」
「はぁ・・わかったよ!僕もこっちでやる事も見つかったし頑張るよ!言っておくけどあの3人に関しては力が及ばなかったら無視して切り捨てるからね!」
「それでいいよ、というよりもう切り捨てるし」
「あの3人はお金目的で組合に入っただけですけどこうなるとは思ってなかったでしょうね」
「・・後ろ立てをなくした」
「オレより馬鹿ですね」
「目里君は馬鹿ではありませんわ!」
「では、さっそくあの3人の対処をします。荷物を聖堂の入り口に出し、職員に説明し対応、そしてこの対応を宰相様へ言って国に法としておふれを出してもらいましょう。そうすればあの3人が自分達は『風』だと言っても国の者は特別視はしなくなります」
そう言うとバーザルさんは部屋を出て行った。
「あの馬鹿3人が帰って来た時の対処は私にお任せを、荷物を持たせて追い出します。安宿くらい紹介してやりましょう」
「完全に国から孤立か」
「・・・自業自得」
「ですわね」
「そういえば桃倉先輩」
「なんだい?目里君から話し掛けてくるなんて珍しいね?」
「貴族や大商人のお嬢さんから20人以上も求婚されてるって本当ですか?」
「なんでそれを!?」
「いや、ちょっと羨ましい話だったんで」
「本当ですの?」
「・・・逆玉選び放題?」
「凄いね桃倉先輩」
「ああ・・そうさ、舞踏会にでて僕のギフトを披露してからそういう話というか実際会って求婚されてるよ」
「桃倉君、それで気に入った方はいらっしゃいましたの?」
「いる以前の問題だよ!なんで求婚しに来るのが全員父親や母親なんだよ!うちの婿に!って婿入りなんてしたくないよ!」
「・・・完全にギフト狙い」
「桃倉君自信を見られてないな」
「先輩可哀想」
「だから僕は決めたよ、絶対婿入りはしない。僕はこの力でのし上がる!実は商人組合に登録したんだよ。ここに残った『風』の皆も誘ってね、全員生産系さ、商人や技術職として生きていくよ。そして自分も儲けて自分でお嫁さんを探すんだ!」
「つまり見つけた目的は恋人探しかい?」
「いけないかい?」
「いや、凄いよ」
「そうですわ、もしかしたら桃倉君は『風』の中で今現在一番しっかりとした目的を持って進んでいるかもしわませんわね」
「・・・うんうん」
「オレも応援してます」
「あ、ありがとう。そんなに褒められると嬉しいな」
「でもそういうわけだ。ボク達は明日の朝この首都を出る、いずれは国境を越えて違う国や町に行く予定だ。この世界でも手紙はあるから生きてたらみんなで近況を書いて送るよ」
「そうですわね」
「それなら商人組合を使ってくれ、『桃酒商店』宛てに頼むよ」
「それが商人組合にみんなで登録した商店名かい?」
「ああ!いい名前だろう?」
「・・・いい名前」
「いいと思う」
「あの~、それって元の世界の桃倉君の実家の酒店のそのままの名前じゃありませんこと?」
「いいだろう別に!実家を継げなかったからこっちの世界で僕の実家の名前を流行らせてやるんだ!」
「いい野望だね」
「・・・ということは桃倉先輩達も聖堂を出て行くの?組合登録したってことは」
「そうなるね、いつまでもお世話になっていられないしね。数日後にここをでて5人で借家借りる予定さ」
「頑張って下さいませ、元生徒会長」
「任せてよ!よし今夜は最後の夜だ、みんなを呼んでパーティーをしようよ。バーザルさんも賛成してくれるさ!」
「いいよ、賛成だ」
「・・賛成」
「いいですわね」
「オレもいいですよ」
「よし、今夜はお酒も飲もう!僕の能力の見せ所だ!こっちは15で成人だ!誰も文句は言わせない!」
その言葉に全員が笑って賛成する。
桃倉君は元の世界で生徒会長をしていた。
正直頼りないと思っていたが今は全然違うと思う。
「オレもお酒飲んでいいのかな?」
「いいに決まってますわ」
そしてボク達の大聖堂最後の夜は深夜まで賑やかな宴会が続いた。
そしてボク達4人は実はあんまりお酒に手をつけずにちょっとの仮眠を取ったあとにそのまま日が昇る前に首都オーキラスを出発した。冒険者として。
その数時間後、僕たちより1日先輩の冒険者3人組は見事簡単な依頼をこなして大聖堂に帰ってきた。
そして入り口にあった自分達の荷物を見た後にその事を伝える為にいたコウナンさんに事情を説明されて逆ギレした。
そしてそのあと荷物と一緒に気絶した3人組は裏路地に捨てられたのは言うまでもない。
気絶した3人の近くにお酒が入った3つのカップが置かれていた。
桃倉先輩が配合した自信作のお酒、最後の餞別だった。
しかし人志君の寝相が悪くてこぼれたらしい。
あたしは変な場所にいた。
強いドラゴンがいる場所という曖昧な感じで祭壇に願うとここに飛ばされた。
非常に暗い場所、大きな岩や物凄い暴風が吹き荒れる場所だった。
景色がいいなー、あっちに見えるのは山?
山と思っていた黒い何かが動く。
おおー、ドラゴンだ!これがドラゴン大きすぎるし、結構エグイ容姿をしてる
「誰だ?お前は?」
おぉ、喋ったし。喋るドラゴンがいるのは聞いてたけどやっぱり緊張するな。
「ドラゴンさん始めまして、私は現在の女神スィーニーと申します」
「め、女神が何のようだ!?」
あれ・・なんか動揺してる?そんな図体で怯えられても困るんですけど。
「貴方に頼みが会って参りました」
「た、頼みだと?我を討伐に来たというわけではないのだな?」
え?このドラゴン悪い事でもしたのかな?いきなり殺しにきたと勘違いするって物騒だな。
「そんな事はしません、今回ここに来たのは貴方の一部が欲しいのです」
「い、一部だと?まさか心臓の琴線をよこせと?ダメだ!そんな事をされれば再生までに何百年もかかる上に無防備になるし死ぬと動議だ。その間に他の生物に襲われたらどうする!」
討伐じゃないと言ってるのに何故心臓を貰いにきたと勘違いする・・やっぱり悪いドラゴンなのか?強いドラゴンは間違いないだろうけど動揺しすぎでしょ。にしても心臓取っても生きていられるのね?
「心臓はいりません、貴方の一部で魔力が強い物を頂きたいのです。もちろんこちらもお礼はいたします」
「女神がお礼だと?だ、騙されんぞ!我は二度と女神に心は開かんと決めたのだ!」
・・・二度と?このドラゴン女神に会うの初めてじゃないの?てか心開かないって私の前に会った女神に何をされたのさ!?
「怯える必要はありません。私は純粋に貴方に頼むためにここに来たのです」
「い、いや騙されんぞ!そう言って今度こそ我を殺すつもりだな!?女神など信用できるか!か、帰え・・帰ってください!」
ドラウマ抱えすぎでしょ!最後に至ってはその図体で敬語だし!なんて初対面なのにここまで嫌われないといけないの?説得が難しいんだけど~~。
何をされたドラゴンさん(*´・ω・*)