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お墓

早く投稿できてよかったです。


評価お願いします(*゜ω゜)

「貴方はインプもどきと10年近く一緒だったんですよね?」


「そうだが?ああ・・そういう事か!10年近い月日で私がそのインプに親近感が沸き、さらには仲間意識が芽生えていると思っているね。確かに長い年月は過ごしたがそんなものはない。どっちかと言うと途中からは研究対象だったしな」


「美紅こういうタイプの人間には何を言っても無駄だぞ」


「そうかもですね」


「話を聞くとインプもどきさんのお陰でこのダンジョンで安全に暮らせたのに酷い言い草なのです」


「ふむ、ではどうする?気に入らないなら私と戦うかね?戦っても無駄だと思うがね」


「そんな事はしませんよ。貴方に恩を感じて貴方のところまで侵入者を近づけまいとしていたインプもどきは同情しますけどね」


「そうか、だがそれもそのインプの意思だ。そもそもインプの名前さえ知らないしな」


「なんだ、真名を教えてもらえなかったのか?」


「聞いたことすらないな」


「たぶん感謝はしてても信用はされてなかったのです」


「そうかもな、だがどうでもいい。私にとってはそのインプは安全な場所を提供してくれた者だった。だからこちらも適当にいらない物を与えていた。ギフアンドテイクだな。それにそのインプが死ねばここも安全ではなくなるしな、インプが作ったダンジョンの仕掛けはあと少しで全て消えるだろう」


「貴方はどうするんですか?」


「そんな事が聞きたいのか?年月も経ったし、私の事も忘れられているだろう。近くの町にでも移って研究を続けるよ」


「貴方は忘れられてませんよ」


その声は今まで黙って聞いていたリングさんだった。


「それは君が国帰って私がここに居ると報告するのを前提で言ってるのかな?」


「違います。殿下・・ディット・ブガード・セルゲッティ・ナディガム様が探していたのは貴方じゃないですか?」


リングさんよくディットの長い名前覚えてるな、さすが仕えてるだけある。


「ディット?誰だ・・いやナディガムが入っているということは王族か?」


「現第4王位継承者です」


「ブガード・・そうか。それが私をなぜ探しているんだ?私は国捨てたと言ったろ」


「国に伝わる4つの鎧をご存知ですよね?」


「知らないな」


ここで僕は口を挟んだ。


「嘘ですね、返しが即答すぎます。それに貴方に一応報告したとインプもどきさんは言ってました」


「まったくだ」


「嘘つきなのです」


僕達3人に嘘と指摘されたシュッペルさんはため息を1つ吐き首を振る。

そしてこちらを一睨みすると話し始めた。


「まったく、話してもいいがそこの騎士、後悔するなよ?」


「ど、どういうことですか?」


「君みたいなタイプは話を聞いたあとで絶対後悔しそうだしな、いいのか?」


「だからどういうことですか!」


そのリングさんの問いにはヒルマさんが答えた。


「リングワット、つまりシュッペルが言いたいことはこうだ。話を聞いたあとにお前の信じている国への信頼が不信感に変わるかもしれないがいいかと聞いているんだよ」


「そういうことだ」


なら最初から難しく言わずにそう言ってあげてよ。


「構いません」


「なら話してやる。4つの鎧だったな?あれは私が作った」


「そんな!なぜあんな恐ろしい物を!」


「まだ序盤だぞ、そんな反応をされても困るな。続けるぞ?私は現王が嫌いだった、だから国を出て行くと面と向かって言ってやった。そうしたら私を殺すと脅してきた」


「王はそんなことは!」


「したんだよ。だが王は交換条件を出してきた。私が続けてきた研究の成果を使って国に新しい戦力を作れば出奔を許してやるとな。だから作ったんだよ、本意ではないがあの鎧をな」


「貴方はあんな危険な物を研究をしてるんですか?今でも?」


「馬鹿を言うな、私の研究は魔法だ。あとは魔道具だな、作れはしないがな」


「だがお前はあの鎧を作ったそうだろ?」


「そうだな、あの鎧は高尚なドワーフが作ったとされる城の秘宝の4つだ。勿論魔道具だ。それを私の研究で姿を変えることに成功した」


「生きていました、意志もあった、何をしたんですか?」


「そうだな、簡単に言うとダンジョン石をはめただけだ」


そんな馬鹿な。ダンジョン石をはめただけであんな風になるわけがない。


「あれがダンジョン石なら一体どんなダンジョン石をはめたんですか!!」


「そう怒鳴らないで欲しい、そうだな非常に上質なダンジョン石・・それぞれ色が違ったがな。国で一番いいダンジョン石を4つ用意した。それにある魔法を使った」


「ある魔法?」


「私のオリジナル・・でもないか。昔からある魔法なんだがな。使えるもの少ない魔法だ。融合魔法と言う物だ」


「聞いたことないな」


「そうだろうな、そしてその魔法を使ってダンジョン石をあるものと融合させた」


「ダンジョン石に魔法を込めたのではく?魔法を使って融合?」


「そうだ、ダンジョン石自体は空、何も込めずダンジョン石に(ちから)を融合させてダンジョン石を強化した。いや魔法を込める変わりに違ったものを込めた、といった感じになるのかな」


「だから一体何を融合させたのですか!」


「魔物だよ」


「「「なっ!」」」


僕以外の3人が驚く。

僕は何となく感じ取っていたのであまり反応しなかった。


「知能のある魔物ですね?」


「そっちの美紅君は察しがいいな。知能のある魔物が必要と言ったら王は国の最高戦力を使ってすぐに4匹捕獲してきたよ。そしてそれを無理矢理融合させた。そしてダンジョン石が壊れる前に素早く鎧にはめた。

そして出来たのがそれぞれ違う魔物の力を宿したあの鎧だよ」


「最低の研究だ」


「そう言われても仕方ないな、私もあんな物は作りたくなかったがな。王が希望する物を作るとああなった、ただそれだけだ」


僕は戦って気づいた事をついでに聞いてみることにした。


「でもあの鎧はリスクもありますよね?」


「美紅君はなにか知っているのか?」


「戦いました、さっきリングさんが言ったディットという王子が着ていました。おぞましい能力でした」


「どれを着ていた。色はなんだ?」


「銀です」


「銀・・銀・・思い出したよ、喋るスライムだった、捕食型のな。どんなに斬っても無駄で捕獲するのに相当な犠牲を出した奴だよ。瀕死のダメージを与えたのにそこらへんの植物でも虫でも命あるもの吸収して再生するやっかいな奴だったな」


「納得だな。まさにその通りの能力だった」


「謎が解けたのです」


「でもリスクの話がまだ出てません」


「リスクか、まず4つの鎧に共通するリスクが1つある。鎧の宿っている魔物との契約だ。契約は装備する者と魔物次第なので内容まではわからない。そして鎧によって別々のリスクだな。君達が戦ったスライムの鎧のリスクなら暴走する事とあの鎧は寄生者・・着ている者が傷ついたらそいつを修復、再生する代わりに何かを吸収して奪うことだな」


「それが・・ディットが度々言ってた寿命か」


「そしてゼーガスの片目も使っていた」


「最低の鎧なのです!」


「まったくだな」


そう最後に言ったのはシュッペルだった。


「貴方が言わないでください!貴方が作った鎧ですよ!」


「そうだな責められるべきは私とサマンだな」


「その通りです!責められるべきはあんな物を作った貴方とサマンです!え?」


「誰が私だけで作ったと言った。私は魔法の分野で魔物分野の研究をしていたのは現王サマンだ」


「王はそのようなことしません!」


「勝手にそう思うがいい。ちなみに構想を考えたのはサマンだな。出来るかどうかを煮詰めたのは私だがな。正直机上の空論だと思っていたのを成功してしまった物だ。私はあいつが王に選ばれる前ずっと一緒に研究していた。だがあいつと意見が割れてね。それであいつが王になると同時に去ったわけだ」


「王は平和主義者です!そんな研究はしません」


「あいつの本性は私と側近ぐらいしか知らんよ。そもそもそんな良い王がなんで息子に危ない鎧を与えるんだ?第4位継承者が持ってるということは他の鎧も別の候補が持っているんだろう?」


「それは危険だとは知らずに!」


「面白いな。知らないと思うか?」


「・・・・・・」


その言葉にリングさんは黙ってしまった。

僕はその隙をついて知りたいことを聞いて見た。


「うーん、貴方が鎧を作ったのはわかりました。リングさんも知らないと言ったのですが、ディットが貴方を探す理由は?」


「簡単だよ、鎧の強化だよ」


「やっぱりですか。出来るんですか?」


「知らんな、恐らく他の継承者より強くなりたくて製作者が私ということを突き止めて探していたのだろうがな。スライムの鎧か、恐らくリスクも軽減もなくなるようにしろ、と私に会ったらやらせるつもりなんだろうがな。正直に言おう、無理だ!」


「無理なんですか?」


「無理だ、あの鎧は・・いやあのダンジョン石融合の構想を教えてやろうか?人工女神の雫だよ」


「女神の雫を人の手で作ろうとしたんですか?」


「そうだ、本当に単純にな。上質なダンジョン石に魔法を込めるのではなく知能を持った魔物。単純に魔力を持った考えられる一番強い力を融合させる。しかしダンジョン石に取ってその力は不純物だ、すぐに壊れてしまう、壊れる前に魔道具にはめ込む、それで完成だ」


「10年間その続きの研究をしていたんじゃなかったんですか?」


「まさか!そんなくだらないことはしないよ。言ったろ?私はサマンの考えが気に入らなくて国を出たと。私はダンジョン石の発生と魔法の可能性について研究したかったんだ。今更あの鎧を強化しろなんて出来たとしてもやりたくないな」


「本当か?嘘ではないな?」


ヒルマさんが念を押して確認する。


「しつこいね、嘘はついてるつもりはないよ。嘘だったら私を殺すかね?抵抗はさせてもらうが・・赤い・・美紅君といったか、君とは戦ったら勝てるかわからないな。なにか嫌なものを感じる」


嫌なもの?失礼な言い方だ!


「美紅のどこが嫌なんだ!可愛いだろ!」


「そうなのです!」


ヒルマさん、ハレンちゃん相変わらず反応する場所がちがーう!


「外見じゃないよ。そうだな経験だな、私はこれでも君達の誰よりも恐らく戦闘経験があるからな」


確かに強そうだった。

こうして話していても隙があるように見えない。

圧迫感もある。


「別に殺そうとは思いません。ただ約束してください。これ以上あんな物を作らないと」


「そんなことか。約束しよう。私もあんなくだらないものは作りたくもない。あれはもう魔道具というよりあの鎧自体が魔物だ」


「もう一つだ、ディット・・ナディガムの誰が来ても協力をするな」


「私の命に関わる問題だ、それは当然しない。ただそちらの騎士団長のリングワット君次第でもあるだがな」


そう言われて下を向いていたリングさんが反応する。

尊敬し忠誠を誓っていた王が思っている王を違うといわれてまだ何かを考えていたようだった。


「・・私ですか?」


「君が私の事を仕える者や王に報告するかどうかも関係あるのだがね、まあ報告されても逃げるがね」


「美紅さん達との約束があるのでディット殿下には・・言いません」


その言葉にヒルマさんが反応する。


「待てリングワット、ディットにはとはどう言う事だ?他の奴には言うのか?」


「私がこの方を覚えていたのは昔の印象だけではありません。つい最近になって王が探すようにおふれをだしたのです。懐かしい・・会いたいと」


「ははははは、誰が会うか!何が懐かしいだ!アイツの事だ!準備でも出来たんだろうな、それで少し私をまた利用してようとしてるんだろうよ!」


不思議な単語に僕は疑問に思って聞いて見た。


「準備何のことですか?」


「知らんよ、私の知ってるサマンは普段は大人しいが平和主義者ではなかった。用意周到、完璧主義者、ちょっとでも何か歪みがあるとまったく動かない奴だ。おぞましい奴だったよ。私は一緒にいてそれがいつも気味悪かった、我慢できなかった」


「それで・・あのリングさん王様に報告するのですか?」


「美紅さん申し訳ありません、恩がある貴方には悪いですがそうするかもしれません」


「悪いと思ってるならするな」


「するななのです」


僕の後ろでヒルマさんとハレンちゃんが小さい声で何か言っている、それ聞こえてないと思うよ?


「そこまでは強要できないので判断は任せますよ」


「ありがとうございます」


リングさんは腰を曲げてお礼を言ってくる。


「美紅の優しさに甘えやがって」


「甘えやがって!なのです」


また何か後ろで言ってる、てか仲良いな!二人とも!


「シュッペルさんはそれでいいですよね?」


「構わんよ、どうせここはもうダメだ。10年も暮らしたので名残惜しいがね。リングワット君が報告してもその頃には私は消えているだろうしな、報告して私が見つからなかったら下手したら嘘の報告をしたのと勘違いされるんじゃないか?しかも王だけに報告してディット殿下に報告しなかったことがディットにバレたら不味いことになるんじゃないのか」


「うっ・・」


「シュッペルさんリングさんを脅かさないでください」


「私は本当の事しか言ってない。可能性はある」


「なんでも正しいことを言えば良いという訳でもないんですよ」


「ふんっ!」


僕の言い返しが気に入らなかったのかシュッペルさんはそっぽを向いてしまった。


「それで!もういいかね?私もここを移動する準備がある!インプがいなくなった今恐らくダンジョンは荒れる。統率が取る者がいないわけだからな」


「そうですね、じゃあもう1つ。貴方が作ったあと3つの鎧の事を教えて下さい」


「口でかね?どこかに昔まとめた資料がある、どうせ整理して出て行くつもりだ、それをやるからそれで勘弁してくれたまえ」


「ええ、それでいいですよ」


「わ、私も最後に1つ聞きたいです!」


「なんだねリングワット君」


「あ、貴方は王の何が気に入らなくて出て行ったのですか?」


「何度も言わせないでもらいたいんだがね」


「確信部分は聞いてません!」


「・・・記念館はまだ残っているかね?」


「記念館?まだありますけどなんですか?」


「そこの1階の資料室を調べたまえ」


「答えになってません!」


「答えだよ。全てを人に頼るな、あとは自分で探したまえ」


「・・わかりました。ありがとうございます」


「ではもういいかね?そろそろ準備させてもらう」


「あ・・待ってください、この奥には何があるんですか?」


「奥?行き止まりだよ。ここが最下層だと言っただろ」


「そうですか、じゃあお墓を作ってもいいですよね?」


「なるほど、好きにしたまえ」


「そうします」


そう言うと僕はインプもどきを腕に抱きながら奥に向かう。

そこには行き止まりにはなっていたが丁度良いスペースがあった。

僕はそこに穴を掘りお墓を作る事にした。


後ろには手伝うと言ってついて来てくれたヒルマさん、ハレンちゃん、リングさんが居た。

そして穴を掘っていく。

ハレンちゃんがいたので恐ろしく早く深い穴が掘れた。


「ありがとうみんな」


そして僕はインプもどきを穴に横たわせた。


「いいか?美紅」


「はい」


そう言うとみんなで蓋をするように埋めていった。


「あの、これなどどうでしょう?」


「いいですね、ありがとうございますリングさん」


リングさんが持ってきたのは丁度いい形の墓石だった。

それを埋めた場所に立てる。


「名前を知ってれば書けたんですけどね」


「それは仕方ない」


「お花でもあれば良かったのです」


「そうですね」


本当にそうだ、掘って埋めて適当な石を置くだけ。

命の恩人のお墓なのに簡素すぎる。

そう思っていると横でヒルマさんが手を合わせながら呟いていた。


「美紅を庇って死んだ勇気に尊敬と感謝を・・」


そしてハレンちゃんも続いていた。


「何度か敵同士になったですが、最後の貴方様の行動は素晴らしいものなのです、ありがとうなのです」


その横ではリングさんも拝んでいた。


「私は何も言える立場ではありませんが貴方のした行動はもっとも尊いことです。安らかにお眠り下さい」


3人ともそれぞれの最後の言葉を送っているようだった。


「ハレン行くぞ、リングワットもだ」


「はい」


「美紅様行くのです」


「ハレン空気を読め!行くぞ」


「え?は、はいなのです」


「ゴメンね、あとで行くから先に戻る準備をよろしく」


そう言うと僕以外の3人はシュッペルさんの部屋の方に気を利かせて戻っていった。


そして僕はしゃがんで両手を合わせて拝む。


「終わったかね?」


「そっちは終わったんですか?」


「収納の指輪を持っているからね。必要な物を詰めるだけだ。いらない物は置いていってもどうせ魔物が食い散らかしたり壊して跡形もなくなるだろうさ」


「危険な物を置いていかないでくださいね」


「気をつけるよ」


「僕一度気をきかせましょうか?」


「君は不思議な子だな」


「貴方は嘘が下手すぎますね」


「・・そうか」


「そうです、僕だけじゃなくてヒルマさんとハレンちゃんも気づいてましたよ。リングさんは気づいてなさそうでしたけど」


「そうか・・すまないな。こういうことに慣れてないものでな」


「兵士だったんでしょ?死は日常とか言わないんですか?」


「酷い事を言うのだな、確かにそうだが・・10年近くもお互いの損得なしに過ごしたんだ・・私は研究さえしてれば他はどうでもいいと思える人間だと自分では思っていた。このインプが話せるようになっても無視ばかりしていたが・・正直寂しくなかったのは事実だよ」


「もっといっぱい話してやればよかったと後悔してるんですか」


「君は結構酷い奴だな」


「さっき心にもない酷い事を言った人に言われなくないです」


「・・・そうだな、その通りだ。私はこのインプが死んで悲しいのだな」


「普通の感情ですよ、さっきの鎧の話を聞いてわかったんですけど、過去に知能のある魔物を使って実験をしてしまったという負い目があり、逃げた場所でも知能が高く喋る魔物と生活する事になった。それでどうしていいかわからなかっただけでしょ?」


「君は事実だとしてもっとオブラートに包んで相手に伝えれないのかね?」


「研究者なら・・結果が真実なら受け入れて下さい」


「そうだな、私はどうしたら良いかわからなかった・・言葉と教えようとしたのも、女神の雫を奪わなかったのもそうだな。鎧で犠牲にした魔物への贖罪だ。でも他にどうすればよかったんだ!!」


あんなに冷静に話してた人とは思えないほどの絶叫。

いや、これが本音だからの絶叫なんだろう。


「なんで聞かなかったんですか?」


「何?」


「インプもどきに何がしたいかをです」


「・・・・・」


今更と思ったんだろう、シュッペルさんは黙る。


「僕を庇った理由教えましょうか?」


「命を助けた恩返しとかじゃないのかね?義理堅かったからな」


「違います、僕は、僕達は2度命を助けたというか見逃しました」


「その借りではないと?」


「はい、僕はこのダンジョンの情報が欲しくてこのインプもどきと勝負をしました。たわいもない当てっこですよ、好きなものを当てる問題の出し合いです」


「それがどうかしたのかね」


「それが理由です、それが楽しかったので助けてくれたそうです。あとはそうですね?僕と話すのが楽しかったそうです」


「まさかたったそれだけで?命を賭けて身代わりに?」


「はい、たったそれだけです」


「そうか・・」


「わかりましたか?」


「ああ・・ありがとう」


シュッペルさんはそのまま膝を着くと地面に頭をこすり付けて泣き崩れた。

まるで謝るように土下座するように。


「僕はやっぱり席を外しますね。お先にお別れをどうぞ」


僕はその場を去ってシュッペルさんに譲る。


「私は・・私は・・遊んであげればよかっただけか・・」


去る瞬間にそんな言葉が聞こえた。



「美紅もういいのか?」


「もう一度戻るつもりです。ちょっとシュッペルさんに譲りました」


「泣いているのです?」


「ハレンも気づいていたのか、あの研究者は嘘が下手だ」


「え?嘘?ですかシュッペル様がですか?どの部分がですか!?」


やっぱりリングさんだけ気づいてなかったのね。


「インプが死んでも自分には関係ない、悲しくもないという部分だ」


「嘘が下手なのです。目が泳ぎまくりでよくあれでバレてないと思ったのです。あれで気づかない方がおかしいのです」


「ハレンちゃん!」


横で気づかなかったリングさんがショック受けてるから!


「で、でもヒルマさんがこういう人間に何を言っても無駄だぞと言ってたじゃないですか!私はてっきり冷徹な人間に何を言っても無駄と言ってると思ってました・・」


「あれは違うぞ、嘘が下手なくせに自分の感情を隠している人間に本音を出さそうとしても無駄だという意味だ、シュッペルみたいのは何を言っても大勢の前では本音をいうタイプではない」


「・・そうですか」


ガクっと力を抜いたように落ち込んだ。


そこから自分が鈍いと気づいたリングさんを慰めたり他愛もない会話を4人でしていた。

そうしているとシュッペルさんが戻ってきた。


「もういいですか?まだ待ちますよ?」


「なんか君の事が嫌いになりそうだよ。君の優しさが私には痛いよ」


「それはお前に思い当たる事があるだけだろ」


「嘘をつくからなのです」


ヒルマさんとハレンちゃんが完全に追い討ちをかける。


「・・・くっ!こ、これが渡すと言った他の鎧の資料だ。私の準備は出来ている!準備が出来たら呼びたまえ!ここから7階の空洞にいける魔方陣がある。あと数回なら使えるだろう」


「あそこにか、それは楽だな」


「便利なのです」


「わかりました。またちょっと行って来ます」


僕はそう言うとお墓に戻っていった。

そしてお墓の前にしゃがんで最後の言葉を言う。


「シュッペルさんの本音は聞けたかな?あの人見た感じ素直じゃない感じだったしね」


僕は思ってる事をインプもどきのお墓に向かって話しかける。


「最後に話した時に君の名前を知りたかったな。そうすれば書けたしね、僕ねこっちの世界の人間じゃないんだよ?『風』って言うんだってさ、変な力を持ってるしね。消えれるんだよ、凄いでしょ?この体だって・・あっとこれは内緒だった。ゴメンね」


僕は友達にでも話しているような感じで語りかけ続けた。


「君とは違う形で会えたらもしかしたら友達になれたかもね、僕は基本他人に興味が持たないようにしてるけど助けてくれたからそう思えるのかな?僕は君ともうちょっと話したかったよ、あとね、シュッペルさんの話を聞いて気になってるんだ。君は雫に何を願ったの?それは叶ったの?翼を無くしてまで何を手に入れたかったの?結構気にになってるんだよ?」


当然お墓の中のインプもどきからは返事が返ってこないそれでも僕は続ける。


「君の願いが叶っていると良いな。叶ってなかったら作った女神には責任取ってもらわないとね。あはは、そんな事無理だよね。僕の世界はね、この世界と違って結構平和だから命の恩人なんて物が自分に出来ることは思ってなかったからさ・・どうして良いかわからないや」


あんまり皆を待たせるのも悪い。

それに主であるこのインプもどきがいなくなった、時間もない。


「それじゃ、行くね。庇ってくれて本当にありがとうございました」


そしてその場から僕は去ろうとしてある事を思い出した。


「あ・・忘れてたよ!これを返しておくね」


そう言って僕が出したのは氷のダンジョン石、インプもどきを信じる保険といって渡されたものだ。約束を守ったら返せと言われたいた物だ、返さないといけない。


「って思ったけどやっぱりこれは預かっておくよ、悪く思わないでね。これは保険、担保って君が言ったよね?返して欲しかったら取りに来てよ・・・ああ君の死を否定できたらもっと喋りたかったな~!バイバイ!名前知りたかったな~」



今度こそ僕は名残惜しむように誰に言ったかわからない声をだしてその場を離れた。


戻ると4人は光る魔方陣の前にいた。


「お待たせしました」


「美紅時間がないそうだ、すぐにこの魔方陣に入ってくれ」


「あ・・はい」


「では行くぞ」


「お願いします」


「ん?」


ヒルマさんがなぜが少し止まった。


「どうかしました?ヒルマさん」


「いや、何でもない。気のせいだ」


「お腹でも空いたのです?」


「お前と一緒にするなハレン」


「お二人とも喧嘩は・・」


そして僕達は紫の光に包まれた。


次の瞬間もうそこはあの初めてインプもどきと会った空洞だった。


「このまますぐに入り口に向かいましょう」


僕がそう言うと全員頷く。

多少魔物が出たが7階程度で苦労はしなかった。

そして1時間もかからずにすぐに入り口に着いた。


「では私はここで失礼させてもらうよ」


「リステインには来ないんですか?」


「久しぶりに人の町には行きたいがそこにディット殿下というのがいるかも知れないのだろう?行けるわけないないじゃないか」


「じゃあどうするんだ?またどこかのダンジョンにでも潜って暮らすのか?」


「それもいいがね、さすがにここの様な快適な暮らしができるダンジョンはないだろう、それにそれに君達とはいえどこへ行くかは教えられないよ。私は一応追われているのでね」


「なるほどなのです」


「リングワット君、私の事を報告するのは構わないがこれだけははっきり言っておこう。脅してはないぞ?よく考えて話すことだ」


「わかりました」


「それでは、美紅君また会おう」


「おい!なぜ美紅だけ会おうと言うんだ!?会わせないぞ?気に入ったのか!?」


「美紅様を守るのです!」


「勘違いしないでもらいたい、気に入ったの半分、苦手半分と言ったところか。それに私は妻がいたよ。さらばだ」


そう言うとシュッペルさんは道などない森を進んで姿を消した。

あとですね、また言うのを忘れましたが僕は男です。貴方に妻いたとしても関係ありません。


「さあ、僕達も町へ戻りましょう!」


「それなんだがな美紅」


「何ですか?」


「美紅が墓参りしてる時にハレンと話し合ったんだがここでキャンプしないか?」


「え?何故ですか?疲れてるのはわかりますけどベットで休んだほうがよくないです?」


「美紅様、ハレン達は魔方陣で一気に来たのです。最下層で過ごした時間を計算に入れてもたぶん逃げたディット達と大差ない時間なのです」


「なるほど、つまり町に戻るとディットと鉢合わせするかもしれないと」


それは嫌だ、次会ったら容赦しないと言ってやったけど・・ゼーガスさんとも関わらせないとか約束したけど、半日程度でまた再開は違う気がする。


「あのディットの事だ、体が直ってなくても襲ってくるかもしれない。奴が町を出るのを確認してから戻ろう」


「いいですよ、賛成です」


「それじゃキャンプの準備なのです」


でも肝心な事がある。


「リングさんは戻るんですか?」


「あの・・私もご一緒して良いでしょうか?」


「「ダメだ!」なのです」


断るの早っ!!


「決まっているだろ、リングワットお前は従者なのだろ?仕える者がいる場所に戻るのは当然だろ」


「うっ!」


「ヒルマさんまず理由を聞きましょう。まぁ聞かなくてもわかるんですけど、ていうかヒルマさんも薄々わかってるでしょ?いくら倒れていたからって自分を置いていった人の下にすぐに戻りたくないですよ、それにあんな話を聞いたあとですし」


「・・申し訳ありません、それが理由です」


「わかりました、気まずいって気持ちはわからなくもないですしいいですよ」


「何から何まで本当に美紅さんには感謝いたします。私に出来る事があるなら必ず恩は返しますので言ってください」


「き、気にしないでください」


後ろの二人がなぜが睨んでるし。


「ほら!なら薪を拾って来い」


「水もなのです!」


「え?あ・・はい」


ハレンちゃんとヒルマさんが僕とリングさんの間に入ってリングさんに命令する。


「いや・・薪は助かるけど水はあるでしょ?」


「向こうに泉があるのです、新鮮な水が飲みたいのです。料理にも使えるのです。ハレンはテントを作らなきゃいけないのです」


「私もやる事があるのでな」


「でも二つもリングさんに頼むのは・・」


「いいんです、お世話になるんですからこれぐらいさせて下さい」


「わかりました、お願いします。料理は僕が作るので」


「美紅さんが作るんですか?男の方なのに?」


「そうですけど?ダメですか?」


「いえ、楽しみです」


「お口に合えばいいですが」


僕がそう言うとリングさんは笑いながら行ってきますと言って。水汲みと薪を集めに向かった。


「ちっ」


「ち・・なのです」


後ろでは機嫌の悪い二人が舌打ちをしていた。

舌打ちしないでとかもう言わないから少しリングさんに優しくしようね?あからさますぎ・・。



オーキラス大聖堂。

ここに来るのは2回目前回は『風』来訪のお告げのみに数分だけ一方的に喋っただけなのだ。

あたし眩い光と共にそこに出現する。

そこには2名いた、前回いた大聖堂長と見たことない軍人?兵士っぽい人。


「あ、あえて光栄ございます。ほ、本日はお日柄もよく女神様に至りましてはど、どのようなご用件でこのような場所に光臨されたのでしょうか」


すっごい緊張してるだけどこの大聖堂長、大聖堂って数個しかないのにこの様な場所扱いとか・・あと外雨って知ってるからね?


「緊張せずともよろしいですよ、私は確認に来ただけです。預けた『風』はどうなったかを大聖堂長である貴方の口から直接報告して欲しいのです」


「は、はい。光栄です」


「ではお願いします」


「は、はい、まずは4名ほど冒険者になりました。何か目的があるようでした、この4人至っては心配しておりません。素晴らしい人格の者たちでした。そして5名はこの国に残りこの国の為や世界の文化の発展に貢献するために商売をするという素晴らしい行動にでております」


おー!確実に冒険者なったのは奏ちゃんだな、長い付き合いでわかる。でも4人?あとで名前も聞いておこう、詳細に。


「12人こちらに送ったはずですが?あと3名は?」


「あ、あと3名につきましては・・問題がありまして、聖堂を追い出せれる形になり、しかもちょっと国でも騒ぎを起こしたあげく国外対処という形に・・申し訳ありません!」


確実にあの3人組だ・・一体何をしたら国外対処になる。


「謝る事はありません、『風』は流れるまま、どうなろうとも貴方に責任は一切ありません。むしろ大聖堂長として『風』の管理、世話を立派にこなした事への感謝を」


「も、もったないお言葉でございます!」


涙を流して地面に頭をこすり付けてお辞儀をする大聖堂長・・この人面白いな。

そしてあたしは冒険者と国に残った者の詳細を聞いた。


「それでは私はこれで、また会うこともありましょう。これからも大聖堂長としての勤めをしっかりと果たしなさい」


「ご、ご期待に沿えるようにします!」


あたしは光とともに消えたのだった。

やっぱり奏ちゃんと慧ちゃんは冒険者になったか・・ちょっと危険だ。色んな意味で!



どんな意味で??(*´・ω・*)

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