おじいちゃん
"`ァ,、ァ(*´Д`*)"`ァ,、ァ
あたしは真っ暗な世界からすぐに緑の世界にいた。
あたしは自分で言うのもなんだけど理解は早いほうだと思う。
難しいことも説明されてもすぐに納得できるし受け入れてしまう性格。
この性格のせいで自分は冷めていると思ってるし、他人に興味が持てない。
ドライって言葉が私にはあってるし、それがわかっていたのでそんな感じを家の外では出さないように生活をしてきた。
でもそれが出来たのはお兄ちゃんのお陰だと思っている。
不器用で私と同じで家族以外にあまり興味がなく、なおかつそれを隠すことをしないお兄ちゃん。
そのお兄ちゃんの状況をよく見ていたので私は外では他人とは一定の距離を保ち興味を多少持てるように努力して仲良くしてきた。
それでも本当の意味でみんなと友達になっていたかは私にはわからない、楽しく笑っていたこともたくさんあったけどもしかして私は心から笑っていたのかな?と思ってしまうこともあった。
お兄ちゃんに『もっと興味をもったほうがいい』と何度も言う私。
実はお兄ちゃんに言うと同時に自分にも言い聞かしていたんだと思う。
嫌な子だった、でもそれを言っても兄は笑いながら「そうだね」と返してくれる優しいお兄ちゃん。
小さい頃から言われてきた。
自分達兄弟は似ていない。
あたしのほうが優秀だ、可愛い、綺麗だ。
普通なら言われると嬉しい言葉だけどあたしには一つだけ実は嫌な言葉あった。
『似ていない』
わかってない。
わかっていないのに軽々しく言わないでほしい。
わかってるのはパパやママぐらいだと思う。
何もわかってない他人に言われるのがすごく嫌だった。
お兄ちゃんのお陰で、お兄ちゃんを見てきたのであたしがいる。
外見なんて関係ない。
あたしは小さい頃から思ってる。
あたし達兄弟は『似ている』と・・。
なぜか今そんなことを考えてしまっていると不思議に思いながら意識の外からふいに声がかけられた。
「またせたかのぅ」
緑の世界に一人ファンキーなおじいちゃんがいきなり目の前にいた。
なんでハーフパンツにアロハシャツなんだろう。
白髪のオールバック・・高そうなアクセ満載だし・・。
「なんじゃ?じっと見つめて悪いがワシは心に決めた相手がおるでのぅ、ホレてもだめじゃぞ?」
決めた!あたしこのおじいちゃんから興味をなくそうと思う!
「いきなり派手な格好したおじいちゃんが出てきたら見ちゃっただけだし」
「そうかそうか、もっと見なさい、よく見て男を見る目を養いなさい」
男嫌いとか人間不信になれってことでいいのかな?
「それよりもさ、今の状況とか知りたいんだけどここどこ?あたしどうなったの?おじいちゃん誰?あと何か飲みたいかも」
「これこれ、一度に何個も質問するでない、しかもついでにお茶だせみたいな要求しおって」
そう言うとなぜが目の前にアイスコーヒーが出てきた、まず質問の答えより飲み物くれるんだ・・案外優しいかも・・ちょっとあたしの中でおじいちゃんの評価が上がったよ!
「ありがと!おじいちゃん!」
「お礼を言うのはいいことじゃな、あと呼び方をお兄さんしてもよいぞ」
うん!アイスコーヒーも美味しい!評価上がった発言撤回!
「お・じ・い・ちゃ・ん!質問の答え!」
「そんな強調せんでも・・まあええわい、まずここはわしがお前さんのために急遽作った場所じゃ」
「あたしのために??」
「そうじゃ、緑は目に優しいだらのぅ、そんな気遣いを忘れないワシも優しいいい男なんじゃよ」
なんかこのおじいちゃん自分が大好きっぽい感じがする。
「そっか、気遣ってくれてありがと」
「ええわいええわい、あと次じゃがお前さんの状況じゃな、簡単に言うと死んでおる」
「そっか、じゃあおじいちゃん誰?」
「ずいぶん簡単に死んだことを受け入れたのぅ、もっとショックを受けるじゃろ普通」
「この場所に目の前の不思議なおじいちゃんでもうこの状況でそうかな~って思ってたしね、もしかしておじいちゃんは死んだ人の案内をする人とか神様関係?」
「鋭い娘じゃのぅ、当たりじゃ!わしは神じゃな、ただしこの世界の神じゃないがな」
死んだ事実は相当ショックだけど時間がたって思い出してきたせいか冷静になっていく自分がいた。
でもそんな冷静な自分が嫌だった。
それでもあたしは知りたい情報を矢継ぎ早に聞いて整理していく。
「ここの神様じゃないの?」
「違うな、この世界にはちょっと用事で来たんじゃよ、用事が終わって帰ろうとしてた時にお前さんの魂が偶然わしが通り過ぎたときに引っ付いてきてのぅ、わしもびっくりしたが仕方ないのでお前さんの魂と海にを漂っておった肉体を拾ったわけじゃ」
どうやらあたしの魂はこのおじいちゃんにひかかったらしい、轢かれなくてよかった~。
「あれ?魂ってことは今のあたしの状態って魂?」
「理解が早いのぅ、その通りじゃな、わしの作った場所のお陰で生前の姿になってるだけじゃよ」
「そうなんだ、でもさっきあたしの体も拾ってくれたって言ったよね?なんで?もしかして神様だし生き返らせてくれるとか?」
あたしはもしかしたらという期待を込めて笑顔を作っておじいちゃんに言ってみた。
「そんな可愛い笑顔で言われたら生き返らせてあげたいところじゃが無理じゃな、わしはこの世界には許可がないと干渉できん」
「許可とれば??」
「即答で軽く言うな!今回だってこの世界に干渉させてもらうためにわしがどれだけ苦労したか!これ以上は相当な理由がない限り無理じゃ!あのクソババアに借りなど作らん!」
なにやらこのおじいちゃん神様は用事のために相当ストレスを溜めているようでもしかしてあたしの生き返れるかも!の希望は通らないみたいかな。
「じゃあ、なんで体拾ってくれたの?」
「あんな海で漂ってちゃ誰にも見つけてもらえんじゃろ?せめて人が見つけてもらえる場所においてやろうと思っての」
「・・・ありがとうございます」
あたしは少し涙が出そうになり、素直にお礼を言った。
「ほっほっほっほ、お礼もいいが抱きついて嬉しさを表現してもいいぞ?」
「ゴメンなさい」
「即答はつらいのぅ・・いいじゃわし彼女おるし」
彼女いるなら冗談でも抱きいてとか言わないでね?それにしても魂で抱きついたらすり抜けるような?あ・・でもあたしこの人にひっついたし神様なら触れるのかな?抱きつかないけど。
「それであたしってこれからどうなるの?」
「そこじゃ、わしも自分の世界じゃない魂にひっつかれるの初めてでな、わしにひっついたせいでこっちの魂を管理するものが認識できなくなったかもしれないと思ってのぅ、責任をとってお前さんを送らなきゃならんと思っておる」
「送るって天国?地獄?それとも存在がなくなるの?生まれ変わるの?」
「一気に聞くのぅ・・それはこっちの奴が決めるのでわからんわぃ、わしは事情を話してそこに連れて行くだけじゃよ」
そっか~出来ればこっちの世界でどうにかなるなら生まれ変わりたいな・・それ以外は嫌だな・・できるだけ早く生まれ変わりたいかも。
「私の拾ってくれた体ってどんな状態?」
「ん?多少水を吸っておったが元の綺麗な状態にしておいたよ、サービスじゃ」
「本当に!ありがとう!でもあんまりあちこち触らないでね!」
「触っとらんわい!わしは紳士じゃ!」
「へー、それじゃ私の体はどうにかして家族に届くようにそこまでサービスしてくれる?」
「図々しい娘じゃのぅ、まあええわいそれくら・・ぐ・・ぐほぐおおおおおおおぉぉぉぉ」
「え!!!??」
いきなり目の前のおじちゃんが胸の辺りを抑えて苦しみ出した。
おじいちゃんなんだからなにか持病を抱えていたのだろうか?と思ったけど今現在色々お世話になってるしこれからお世話になる人が苦しんでるのにそんな事を考えている場合ではない。
私はすぐにそばに駆け寄った。
蹲って胸を押さえるおじいちゃんの背中をさすってみる、どうやら魂だけでも本当に触れるらしいことは確認できた。
「だ・・大丈夫?いきなりどうしたの?どこが苦しいの?どうしよう!あたしに出来ることあったら言って!」
「ぐぅぅぅはぁはぁ・・ううぐくくくぅぅ」
さっきよりは声も小さくなったもののそれでも苦しそうに胸を押さえるおじいちゃん。
どうしよう、さすがに神様のことはわからないし・・。
「「おじいちゃん、ほんと大丈夫?横になったほうがよくないかな?」
「はぁは・・ぐ・・はあ・・持ってかれた・・まさかあやつ・こん・な・ことが・・うぅ」
「え?何?何か盗られたの?」
苦しんだと思ったら今度はわけのわからないことを言い出した、持っていかれた?
「はあはあ・・大丈夫じゃ・・娘さん・・もう痛みはないわい・・ただちょっと・・やっかいなことになったわい」
「え?何が??あたしどうすればいいの?痛くはないの?本当に平気?我慢とかしてない?」
「心配してくれて感謝するがちとやらなければいかんことが出来たようじゃ・・お前さんここで待っててくれるか・・心配せんでもここはわしの世界じゃから魂だけの状態でも問題ない」
本当にこのおじいちゃん大丈夫かな、さっきまであんなに苦しんでたのに。
わけがわからないけど、あたしにできることはないということは今はないことがわかった。
「いいけど平気?どのくらいここにいればいいの?」
「もう平気じゃよ、そうじゃな具体的にはわからん、ただそう遅くないうちに戻るから安心せい」
「わかった、でも何処行くか知らないけど辛くなったら休んでね」
「優しい娘じゃのぅ、今は胸に染みるわい・・すまんが待っていておくれ」
そう言っておじいちゃんは急いで踵を返してどこか向かおうとする。
見送ろうとしたあたしは重大なことに気づいた。
「あ!!」
「なんじゃい?言い忘れたことでもあるのか?」
「うん!ここご飯とかどうすればいい?」
「お前さん魂じゃぞ!食わんでももう死ぬことないわい!」
「でもさっきアイスコーヒー飲めたし、味も感じれたし食べれるんでしょ?」
「そりゃわしが作った場所だからじゃ!」
「うん、だからここにいる間はできるし待つなら食べたいなって」
「・・急がねばならんのに!この娘いい神経しとるわ!ほれ!」
そう言っておじいちゃんはテニスボールぐらいの宝石のような青い玉を投げてきた。
「なにこれ?」
「それを握って食べたいものや飲みたいものを念じて言えばでてくるわい!もう行くぞわしは」
「マジで!!贅沢し放題じゃん!アイス6段重ね!うわマジでた!あ・・でも味指定しなかったせいで全部バニラ・・コレ意味ないよ・・ただの量が多い不安定なバニラアイスだよぉ」
「おーい、もうわしもういくぞ~」
「うん!おじいちゃんいってらっしゃい!無理しないでね!もぐもぐ」
見送りの言葉とともにおじいちゃんは何処に出口があったのかそこに何もなかったように消えていた。
あたしはこれからどうなるのだろう、どうすればいいのだろう、どのくらい待てばいいのだろう、おじいちゃんがいなくなった緑の部屋で色々なことが頭の中でぐちゃぐちゃ・・・にならなかった。
「いえーい!!バケツプリン!!!!!!」
この宝石すごい!!最高!!あたしの頭は食べたいと思っていたものでいっぱいだった!魂だけなら太らないはず!!!!
ここからが本番だ!( ー`дー´)キリッ