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特性

ちょっとペースが戻ってきましたので早めの投稿。


読んでくださり感謝(*´・ω・*)


僕は目の前のディットの異常な現象を警戒しながら横目でリングさん対ヒルマさんとハレンちゃんの戦いを見ていた。


そして視覚に入ってきた光景に思わず叫んでまった。

同じくその光景を見ていた、いやその光景の中にいたヒルマさんも叫ぶ。



「「ハレン!!」ちゃん!!」


火に包まれ燃え上がり勢いよく吹き飛ばされるハレンちゃん。


ヒルマさんはリングさんの隙を作るためにリングさんに集中していた為になぜハレンちゃんがそんな状態になったのかは恐らく現状を把握してないだろう。


ヒルマさんは掴んで電気を流していたリングさんから手を放し後ろに飛びのく。

リングさんを警戒している為にハレンちゃんの所までいけずにそのままになる。


「ぐ・・はぁ・・し、痺れました。惜しかったですね」


「お前ぇ!ハレンに何をしたっ!」


ヒルマさんは珍しく感情をあらわにしてリングさんに向かって叫ぶ。


「言ったはずです、この武器は炎を操れると。私のこれは剣ですが・・こんな事も出来ます」


そう言うとリングさんがその場で剣を一振りした。


「くっ、そういうことか」


一度リングさんのそばから離れた場所に移動したのにまたヒルマさんはさらに後ろに下がることになった。


理由はリングさんの剣、剣の先端から炎が蛇のように伸び鞭のようにしなり・・ヒルマさんを襲ったのだ。


「先ほどは貴方の電気で痺れていましたが剣が上を向いていたので間に合いました」


そういうことだった、剣はヒルマさんの剣を交差していたがハレンちゃんの攻撃に辛うじて気づいたリングさんは剣先から炎を伸ばした、その炎はハレンちゃんに巻きつきそして包みそのままハレンちゃんを吹き飛ばしたのだ。


「言ったはずですよ。ネタばらしなんてしてないと」


「・・そうだったな」


「悪いですが行かせません!」


ヒルマさんはリングさんを警戒しながらハレンちゃんの所に走り寄ろうとする。

だが・・リングさんはまた剣を振るう、それは鞭のようにヒルマさんの行こうとする先の地面にしなり動きを止める。


「美紅!いけるか!?」


「はい!もちろんです」


自分がいけないとわかったヒルマさんは僕に必死に叫ぶ。


「美紅さんすいません、せっかく1体1になったので情けはかけれません」


「うわっ!」


「なんだとっ」


今度は剣先が二つに割れて僕のほうにも剣の鞭が飛んでくる。


「危なかった」


「美紅さん貴方は殿下を警戒しなくていいですか?そろそろあの状態も終わりですよ?」


「悪いですけどあんなのより仲間が大切なんですよ」


「・・・そうですか・・では、今度は貴方を入れて2対1ですか」


「美紅、なんとかハレンを頼む!」


「もちろんです」


僕とヒルマさんは焦っていた。

向こうではハレンちゃんが炎に包まれて倒れている。


「お二人には気の毒ですが・・あの子はもうダメだと思われます。私の魔剣の炎をまともに食らったあげく包まれましたので・・ですがこれは命のやり取りの勝負、恨んでください」


そんな事を言われても僕とヒルマさんがハレンちゃんがあんな状態になってるのに諦めるわけがない。



「ではさっきの恨みの一撃なのです」


「え?がはっ!!」


「え?」


「ハレンちゃん?」


リングさんが間抜けな声をあげた後、いきなり現れたハレンちゃんにお腹を思い切り蹴られて吹っ飛びそのまま岩の壁に叩きつけられた。


それを見ていた僕達もさっきまで炎に包まれて倒れていたハレンちゃんがいきなり現れた事に驚きを隠せず間抜けな声をあげてしまった。

何より驚くことは・・ハレンちゃんは炎に包まれたままだった。



「隙を作る為の死んだフリ成功なのです」



「・・え?ってハレンちゃん大丈夫なの!ま、まだ燃えてるよ!熱くないの!?」


「ハレン平気なのか!その炎を早く消せ!」


「美紅様ヒルマさんご心配おかけしましたがハレンは平気なのです」


いや!また燃えてるから!平気そうに見えないから!


「ふざけるなハレン!炎に包まれながら平気といわれても納得できるか!」


ヒルマさんの言うとおりです。


「た、確かにそうですけどそれはあとで説明するのです。今はリングワットさんの対処なのです、丁度いいのでこのまま行くのです!」


「ハ、ハレンちゃん?」


「ど、どういうことだ?」


僕は当然として流石のヒルマさんもまったく意味がわからない。

炎に包まれたまま無事なハレンちゃん、そして丁度いいの意味もわからない。


「あとはお任せをなのです」


「ちょっとハレンちゃん!」


「とうっ!なのです」


ハレンちゃんは炎に包まれながら走り出す。

行き先は油断して強烈な一撃を食らって吹き飛んだリングさんの所。

リングさんは剣を杖にして今立ち上がろうとしていた。


「い、一体なにが・・」


「えいっ!なのです!」


リングさんの胸の部分にさらに一撃を叩き込むハレンちゃん


「ぐわっ・・貴方は一体!どうして私の炎の鞭を食らったのに?いえ、それ以前にその姿は!」


当然の疑問だった、リングさんの前には自分の魔剣の炎で包まれたハレンちゃんが何事もないように拳を繰り出してくる。


「種・・あかし・・は・・する・・気は・・ないのです!!」


言葉を言うたびにリングさんに炎の拳を何度も打ち込む、そして手数に対処が遅れるリングさんの白い立派だった鎧は段々とへこみ、熱と打撃で無残な物になっていくのがわかる。


「うわぁぁぁぁぁ!!」


後ろは壁、そしてハレンちゃんの間合い、懐に入られて完全に手数に対処できなくなったリングさんは叫ぶ。

そしてリングさんの魔剣からは今までで最大の火力が放出される。


それは螺旋状になり今度は完全に僕とヒルマさんも把握できるくらいにハレンちゃんに巻きつく。


「ハレン避けろっ!」


「ハレンちゃん」


「はあはあ・・これで・・」


「これで?なんなのです?」


「嘘・・・」


そこにはハレンちゃんがいた燃え盛り竜巻のように上に立ち昇る炎から飛び出して勢いよく炎から飛び出してリングさんに突進していく。


「があぁぁぁ」


目の前の驚愕の事実に反応できずハレンちゃんの一撃もモロに食らってリングさんは壁にめり込む形で崩れ落ちる。


ハレンちゃんの拳による一撃はリングさんの胸に直撃、後ろの岩の壁にヒビが入るほどの一撃によって決着がついた。


完全に・・リングさんは口から血を吐き崩れ落ちたのだった、意識はあるがこれではもう動けないだろう。


「勝ったのです!本当なら手加減しないところですがハレンも女性なのです、炎を宿したまま顔を殴れば同じ女性として流石に気の毒なのです。命をとらない事は美紅様の優しさだと思って下さいなのです」


優しいセリフを言うハレンちゃん。

なんで僕の周りの女の子はいちいちカッコイイんだろう。


「わ、私の負けです。貴方は何者なのですか?なぜ私の炎が効かなかったのですか?」


ハレンちゃんが手加減したようなので命には別状はないだろうがそれでも致命的なダメージを追ったリングさんは負けを認めながら疑問を口にする。


「敗者にそれを聞く権利はないのです。リングワットさん、貴方が今から言うことは意識があるうちに約束を守ることだけなのです」


またカッコイイセリフを言うハレンちゃん、僕が女の子だったら惚れてるかも。


「ぐ・・そうですね。私は敗者ですね。これで人生2度目の負けです、お約束は守らせていただきます。騎士として」


「なら出来るだけお早く、先ほども言ったですが意識を保つのが辛いはずです、体は正直。休んで回復を求めるはずなのです」


その言葉言ったハレンちゃんを見るといつの間にかハレンちゃんを包んでいた炎は消えていた。


「まったく・・勝負に手加減されたあげく・・お優しいお気遣い感謝します。ではお話します」


そしてリングさんはディットのあの状態について知っていることを語ってゆく。


「あ、あれは我が国・・ナディガムの王家の王位後継者に配られた鎧です」


「配られた?他の後継者にもか?」


「・・そうです。あれは生きています、信じて頂きたいのですが・・私は所詮ただの国に仕える騎士に過ぎませんのでどういう仕組みかはわかりません、ですがあの鎧は間違いなく生きています。着用者の意思とか別に動くこともあれば、着用者の手助けもする・・そして暴走もするのです」


「な・・なんですかその鎧は・・呪いの鎧ですか・・」


「ははは・・美紅さんうまい事を仰られますね。でもその通りかもしれません。前に1度殿下が激怒してあの鎧を使って・・4軍の騎士団長を・・惨殺しました」


「なんだと・・」


「何かわからないけど怖い鎧なのです」


「あの状態が終わった後の殿下は怒りの矛先を倒すまで止まりませんでした、止めようとした兵士も殺されました・・私はあの鎧の正体は本当に知らないのです。知ってる事は殿下の怒りであの鎧は反応する事とそれの危険度・・そしてあれが我が国の秘宝の鎧だということ・・あとはあれと同じような鎧があと3つあると言うことです」


「あと3つも・・」


「後継者は4人いるということか」


「なるほどなのです」


「す、すいません。そろそろ・・意識を保てそうにないです。ですが最後に・・貴方達3人はお強いですが・・お逃げください。まだ間に合うならお逃げください・・どうか・・」


そう言うとそれを最後にリングさんはガクっと下を向いた。

どうやら意識を失ったようだ。


「えっと・・逃げます?」


「美紅、その判断もしなきゃいけないがそれよりもだ、ハレンお前どうなってる!あれはどうやったんだ!美紅も私も本当に心配したんだぞ!わかってるのか!」


「も、申し訳ないのです。でも隙を作るために仕方なく死んだフリを」


「仕方なくじゃない!どうやったか知らないがあんなことが出来るなら言っておけ!お前にもしものことがあった場合美紅や私はお前の里の人達になんて言えばいいと思っているんだ!」


「ご、ごめんなさいなのです」


「ヒ、ヒルマさんちょっと落ち着いてくださいって、ハレンちゃん泣きそうですし」


「美紅悪いがこれは甘やかしてはいない。本当に心配したんだからな」


「ヒルマさん・・ハレンをそこまで・・」


「ち、違うぞ、お前があのまま死んだ場合美紅が悲しむと思っただけだ」


ヒルマさんがハレンちゃんに対してデレてる?もしかして貴重なシーンじゃ。


「それでハレンちゃんあれは何だったの?無事だったからいいけど本当に心配したんだよ」


「あ、はいなのです。えっとなのです。あれはハレンの特性なのです」


「特性?」


「思い出して頂けると嬉しいのです。希少種の種族とはいえキャッブさんは先祖返りで幻獣種だったのです。そして炎を宿して戦える言う特性を持っていたのです。実は全員じゃないですけど幻獣種はそういった特別な力を宿してる者がいるのです」


「つまりハレンちゃんも?」


「はいなのです、ハレンの特性は白の一族ということでお婆様はさらに貴重な特性かもしれないと・・過去に現れた事のない特性かもしれないと教わったのです。文献にもなかったそうなのです」


「それがさっきの現象か?でもなぜ言わなかった」


やっぱりまだちょっと怒った感じなヒルマさんがハレンちゃんにそう言った、でもそれは心配の裏返しなんだろうと思った。


「き、切り札だったのです。何度が言おうと思ったのです、でもヒルマさんも精霊魔法を切り札と言ってたので・・それを聞いてカッコイイな・・とハレンもそうしようと思ったのです」


「・・・・・・・・・」


ヒルマさんは黙ってしまった、ああ・・これもうハレンちゃんの勝ちだヒルマさん何も言えないね。


「うぅ・・ゴメンなのです」


「そ、それは仕方ないな!切り札なら言えないのは当然だ!」


「え?許してくれるのです?」


「勿論だ!切り札なら仕方ない!」


「ヒルマさん・・テンションで乗り切ろうとしてません?」


「気のせいだ美紅!美紅も覚えておけ、切り札はあまり見せるものではない!」


「ハーイ」


「はいなのです」


なんか納得はいかないけどいっか、僕も隠し事あるし。

ハレンちゃんは凄い素直に返事してるけど・・。


「それで炎が効かないって特性なの?」


「え?違うのです」


「違うのか?実際炎が効いてなかっただろう?」


「ハレンの特性は『白銀の衣』なのです!お婆様が付けた名前なのです!」


えっへんと胸を張るハレンちゃん。でもね・・


「名前だけ言われてもわからないよ」


「その通りだ」


「あ・・えっとなのです、『白銀の衣』は魔法自体を弾きそのまま着込む事が出来るのです」


「「はぁぁぁ??」」


僕とヒルマさんの驚きの声が重なる。


「な、なんだそれはハレンには魔法は効かないのか?」


「ち、違うのです。弱点も勿論あるのです」


「で、でも凄いじゃないハレンちゃん」


「えへへなのです。美紅様にそう言ってもらえると嬉しいのです」


「調子乗るな子猫」


「ヒルマさん、ハレンは褒められたからって嫉妬はよくないのです」


「なんだとっ!」


「楽しソうだナごミども」


後ろからおぞましい声が聞こえる。

片言であって片言ではないような声。


「しまった・・忘れていたな」


「なのです」


「もしかして逃げながら話せばよかったのでは?」


「「・・・・・・・」」


僕の意見にヒルマさんとハレンちゃんは無言になる。



「何トかいえゴミどモ」



先ほどから会話に入ってきたのはディット、だった者。


姿はどう表現したらいいか・・銀の物体。

丁度スライムが人間の形をとったらこんな感じになるんだろうなーみたいな感じだ。

鎧の原型はまったくなく、ディットの肌の出ている部分がない。


人がスライムを被った、という表現が一番正しいかもしれない。

なにより凹凸がまったくない。


「貴方は誰ですか?」


「俺サマはでぃット様だ」


「嘘をつくな。言葉がもうたどたどしい時点でお前はディットであってディットじゃないだろ」


「クくク、久しブりに出てきテ面白イ奴ラニ会えテ嬉シいナ」


「そうですか、僕達は嬉しくないのでさよならしていいですか?」


「ダメだ、宿主トノ契ヤクがある」


契約?


「契約ってなんなのです?」


「・・言えナイな。ダが今回ノ願いはソコの赤い奴、オ前の死ダ」


「却下です、その宿主がディットさんならそれは出来なかったと伝えて貴方は元の立派な鎧に戻って下さい」


そして二度と出てこないで下さい。


「ハハハは、本当ニ面白いナ、前にデテキタ時は興奮シテ会話などスル気がなかっタが楽シイな」


「満足したならどこかにいけ、私達は忙しいんだ」


「ソウ言うな、ソコの赤い奴ハ最後の会話カモしれないノだぞ?」


不吉なことを・・最後になってたまるか。


「戦うしかないのです?」


「ソウだ」


「僕が狙いなんですよね?なら僕がお相手します」


「待て美紅、こんなわけのわからない物に正々堂々とやる必要はない。3人で行くぞ」


「オれ様はそれでもイイゾ?」


「僕は死ぬ気はないですけど貴方の狙いは僕なんですよね?僕以外は殺さないんですよね?」


「ソウだな、だがカカってクルなラ別だ。楽しんで殺ス」


「ヒルマさんなら僕だけで」


「駄目だ美紅」


「それは駄目です美紅様」


嬉しいけど二人ともさっきまで戦ったのに。


「でも!」


「言ってただろ。リングワットがあそこまで警戒していたんだぞ。1人は絶対に駄目だ」


「美紅様お手伝いさせて下さい」


「わ、わかりました」


「モウいいか?コッちも時間がないんだ。殺さセロ」


時間がない?どうこう事だ?


「お前が消えろ」


「ヒルマさん流石なのです」


「・・・うわ」


ヒルマさんが魔法を放つ。

ただそれは雷撃ではない、恐らく精霊魔法だ。

10個近い鉄針と飛ばしそれが銀の物体のあちこちに刺さる。


「ハハ、いい不意打チダが、こんなノは痛くもカユくもなイぞ?」


「心配するな痛いのこれからだ」


ヒルマさんの両手を広げると手の部分が雷で放電する、そして手のひらで増大した雷撃をそのまま銀の物体に向けて放つ。


「ハハ、こんなノハ簡単に避け」


「・・れるわけないな。さっきお前に刺した鉄針は避雷針だ」


銀の物体が避けた方向に雷撃は曲がり、思いっきり出力を上げた雷が直撃する。



「グああアあアああ」



そして銀の物体は叫び声をあげた。


「おー!!」


「これは終わったんじゃないのです?」


「銀は伝導率がいいですしね、雷はクリティカルヒットなはずです」


「鉄針を刺しているからな暫くあの電撃は帯電する」


目の前の人型の銀の物体は電気で光り輝いている。


「ぐああアアアあははハハハ!どうダ?イケてたか?」


電撃が収まると同時にそれは笑いながらこちらを見てきた。


「・・残念だな。効いてなかったようだ」


「おかしいですね、雷は効くと思ったんですが・・アイツっていうかあの鎧の素材は何で出来てるんですかね?」


「わからないな。そもそもぐにゃぐにゃボコボコと流動する物体なんて始めて見たからな」


「気持ち悪いことは確かなのです」


ディットだった銀の物体は自分の体を一通り見回してから帯電していた電気が消えていくのを見ていた。

そして驚くことに刺さっていた鉄針も勝手に抜け落ちていく。


「マエより動キやすいな、じゃア俺サマもうごクぞ」


銀の物体は前ならえの様に両手を前に突き出した。


「来るぞ美紅」


「はい!なっ!」


「避けてなのです!美紅様!」


「うわっ!うわぁ」


手を前にかざした状態から何をすると思えばいきなりしてきたことは(つぶて)による攻撃。

手の先から無数の銀の塊が止め処なく僕に向かって飛んできた。


「嘘でしょ!ほんとに!」


「美紅様!」


僕は驚いてダンジョン石を使って早さを増すことに寄って避けた、のだが。

見ると銀の物体はそのまま僕に照準をつけて追いかけるように礫を飛ばしてくる。

僕に当たらなかった礫は地面や壁に思いっきり貫通してめり込んでいる。

元の世界で言うところのガトリングガンに似ていた。


「ちょっと待ってください!あれ反則ですよ!」


「ハハははハ!逃ゲロ逃げロ!」


面白がってやがる!なんかムカつく!こっちは逃げるので精一杯だったのに。


「いい加減にしろよ」


「おット」


攻撃が止んだ、と思ったらヒルマさんが剣で銀の物体の腕の部分を斬りつけていた。


「なんだこれは・・?」


「無駄だゾ?俺にハその程度の攻撃は効ガない」


普通ならあの腕を上げた無防備の状態で勢いよく斬られたら両腕ごと真っ二つな筈だ、しかしそうはならずに剣は止まっている、というかグニャっと言う感じで刃先が少しだけめり込んで止まっていた。


「・・何なんだお前は」


「ディっと様だ」


そう言うと攻撃されて刺さっていた剣ごと振り払われる。

そしてヒルマさんも吹き飛ぶように後ろに下がる。


「おや?そんナニ強くしたカ?剣が折れてルゾ?」


「ヒルマさん剣が折れ・・大丈夫なのです?」


「勘違いするなハレン、これは今のあいつの打撃のせいじゃない。剣の寿命だ、先ほどのリングワットの戦いで剣に雷を伝導させただろ、あれで剣に負担がかかったんだ。だからあれはあまりやりたくなかったんだ・・しかしこの状況で折れるのはちょっと不味いな」


「大丈夫なのです。ハレンがその分サポートするのです、まずは」


「次はオマエか?でも俺ハ赤イのをやらナキャいけないんだがナ」


そう言って片手を僕に向けた。

そしてまたガトリングガンのような礫で僕に攻撃が始まった。


「またですかっ!」


「やめるのです」


今度はハレンちゃんが僕が逃げている隙に攻撃を仕掛ける。

ハレンちゃんは手から爪を伸ばすと突きのように手刀で突き出している左腕の肩の部分を刺した。


「っ!」


「さっき見テたろ、俺にはソノ程度は効かなイ」


「ハレン大丈夫か?」


「平気でなのです、でもわかったことがあるのです」


「なんだ?」


「あの人はグニャグニャですが中身はやっぱりあるのです。たぶんディットさんがしっかりと人の形を残しているのです。攻撃が届く前にあのグニャグニャに止められているのでダメージは通らないのだと思うのです」


「そうなのか?なぜわかったんだ?」


「ほんの少しなのです。ほんの少しだけ触ったのです。見て欲しいのです」


「そういうことか」


ハレンちゃんは攻撃した左手のこちらに向ける。

そして中指の尖った爪の先をよく見ると・・血が付着していた。


「何が攻撃は効かないだ、しっかり通るじゃないか」


「そうみたいなのです、ただ確かにあの物体の言うとおり打撃も剣撃も通りにくいのです。衝撃を吸収する感じなのです」


ハレンちゃんがそう証明し説明していると僕に対する攻撃がいつの間にか止まっていた。


「オイおいオイオい!くソクソクソ!余計なコトしやがっテ!宿主の意識ガ少し目覚めちまっタジャねーか!・・なんダト?分ってるヨ!早くシロ?少しハ楽しマセ・・ワカッタよ!ダカら楽しみニシテロよ!あああ!契約ハ契約だ!クソ!」


「な、なんか独り言を言い出したのです」


「たぶんだけど断片の単語でわかる通りハレンちゃんの爪が中身のディットの肉体まで通ってその痛みでディットから何か言われてるんじゃないかな?」


「言われてるとしたとしてもこっちにとってはいい事じゃないのは確かだな」


「そうですね、完全に急かしてる感じですし」


「ど、どうするのです。またボコボコグニャグニャしてるのです」


「美紅、お前が狙われているのはわかるが恐らくコイツに攻撃が通じるのは美紅の持つ剣だけだ。美紅の魔道具の剣の切れ味ならコイツに効くはずだ。ハレンの爪でも行けそうだが美紅の剣のほうが確実だろう」


「美紅様、ヒルマさんは剣が折れて魔法しか出来ない役立たずなのでハレンがサポートいたしますのでやっちゃうのです」


「おい子猫!ここぞとばかり美紅に対する私の株を落とす行為をやめろ!」


「何の事はわからないですけど行くのです!」


「わかった行くよ、ハレンちゃん」


僕とハレンちゃんは銀の物体に突っ込んで行く。

後ろでヒルマさんから「こ、子猫め」と呟くように聞こえたけど今は何も言ってあげれなかった。


まずハレンちゃんが先に先ほどと同じ様に爪を伸ばした手刀を繰り出す、先ほどの突きのような一撃だけではなく振り抜くような感じの手刀も混ぜ物凄い手数の攻撃が銀の物体を襲う。


「メンドくサい!!」


銀の物体はそれに対処すべく両手をあげて防御する。


「さ、先ほど違って中身に当たっている感触がないのです。全部柔らかいものに衝撃を吸収されてる感じなのです。恐らく防御に徹してるせいなのです!あっ・・」


「捕まエタ!刺しコロス!」


その言葉の通りに片手はいきなり形を変える、槍に刃先のような形に。

ハレンちゃんはと言うと放った右手の手刀が・・手錠ののような感じに奴の腕に埋まり掴まっている。


「美紅!ハレンを!」


「もちろんです」


僕はハレンちゃんの後ろから飛び出すとハレンちゃんを掴んでいる場所に向かって剣を振り抜く。


「無駄ムダ!」


「残念、この剣は魔道具で切れ味に特化したスラビーさん特性のダンジョン石の魔剣らしいで!」


「ハァあアアアアアあ?」


僕はそのまま銀色の腕を・・そのまま切り裂いた。


そしてゴトっと切断された腕が地面に落ちる。

そしてハレンちゃんを掴んでいた腕と手錠の部分は本体から離れた途端に溶けるようにドロっとハレンちゃんから離れた。


斬られた腕の部分からは血は一切出ていない。銀色の物体が包んで傷をふさいでいるのかろうか。

落ちた腕の部分も銀の物体に包まれてまったく血が出ていない。


「き、気持ち悪いのです」


「よくやった美紅!やはり美紅の剣なら奴に通じるぞ!」


「そ、そうみたいですね。やっぱり斬ってみてわかりました、最初はなんか変な感触でしたけど中身は生き物を斬った感触でした」


「馬鹿ヤロう馬鹿野郎ヤリヤガッた!俺様だケのウチにあっさり殺されればいいのニ・・これじゃ俺サま・・俺の意識トまざって・・」


「また独り言を言ってるのです」


「どうせまた中身のディットだろ。腕を斬られてキレているのだろうな」


「ど、どうなんでしょうか」


・・・静かになった。

あれだけグニャグニャと流動を続けていた銀の鎧が急に収まる。

今は完全につるつるした何処も突起がないマネキンのような銀色の物体に変わった。

顔には相変わらず目も鼻も口もないが元の形はディットだろうと言うのがわかる。

そして喋った・・・。


「やってくれたなーーー!ゴミ共ぉぉぉぉ!俺様の寿命を削りやがって!タダじゃすまさねーぞ!!」


言葉使いでわかる、これはディットだ。


「美紅どけ!!」


ヒルマさんが雷撃を放つ!洞窟内だというのにこれまでで一番の威力だった。


「効くか馬鹿が」


それに反応したディットは雷撃を食らいながらヒルマさんに突っ込んだ。


「き、効いてないのか!?飲み込んで?吸収されているみたいな感じだ!」


「刺し殺す!!」


ディットは残った片手を前に突き出す。

まだ距離があるにもかかわらずそれはヒルマさんを襲った。


腕が伸びた。

銀色の長い槍のように物凄い速さでヒルマさんの頭を狙う。

魔法を使っていたのが裏目に出た、自分の放ち続けていた雷撃の中からの一撃だったので雷の光の中から放たれた一撃、光で視覚を奪われて反応が遅れたのだ。


「ヒルマさんっ!」


「うっ!」


「大丈夫なのです?ヒルマさん?」


「馬鹿かハレンこっちのセリフだ」


「うぅ・・酷い言われようなのです」


ヒルマさんの頭を貫く寸前で横からハレンちゃんがヒルマさんに飛びつき槍の攻撃を避けれたのだ、しかし・・。


「お前が怪我したら意味ないだろ!」


「でもハレンがああしなかったらヒルマさんが危なかったのです」


「・・・すまない」


「素直にそうやって言えば・・痛っ・・いのです」


「・・本当にすまない。美紅回復の石をくれ!ハレンが背中を斬られた!すぐに傷をふさげばなんとかなる!」


「わかりました」


「やらせるかっ!!!」


それを阻止しようと今度は僕に向かって腕を伸ばた槍の一撃を繰り出し来る。


「ちっ!ムカつく剣だ!ゴミのクセに!ゴミのクセに!」


僕は剣を構えてそれを刃で受け止める。

銀の槍は真ん中から真っ二つになって僕を中心に二つに分かれていく。


僕はその片方を切り裂く。

そして隙を見て・・。


「ヒルマさん!」


回復のダンジョン石を投げた。


「助かった美紅!ハレンしっかりしろよ!」


「死ぬみたいな言い方はやめて欲しいのです。痛くて動けないだけなのです」


「だったら喋るな!」


これでハレンちゃんは平気だろう、あのダンジョン石は応急処理ぐらいならすぐできるほどだ。


「ゴミがゴミの心配する暇があるのか?」


「どう言う事ですか?」


僕は言っている意味がわからずに目の前の姿が変わったディットを警戒する。


「こういうことだ」


「美紅後ろだ!!」


「う、後ろ?」


僕は後ろを振り向いた。

それに気づいた時にはダンジョン石を使った速さでもギリギリ避けれるか、回避できてももしかしたら深手を負ってしまうかもしれない・・つまり遅いとわかったのだ。


それは銀の槍、しかしディット本人の片手から放たれた物ではなく・・僕が切り落とした腕が伸びて僕に向かって伸びてきたいのだ。


そして僕に向かって刺さった。


「ふ・・ふあははははは、やったか?避けようとせず刺さりやがった!そうだなゴミぃあきらめは良いことだなゴミぃ」


ディットから見た僕はただ僕は首だけ後ろを向いて突っ立っているように見えている。

恐らく背中にディットの斬られた腕の攻撃、槍の一撃が刺さっていると思ったのだろう。


僕は確かに不意をつかれた。

ダメージを少しでも減らそうと避けようと思い行動しようとした。

確かに避けれるか避けれないかは一か八かだった。

でも後ろを向いてそれをしようとしたらそれが僕に向かって来た。



ディットは僕の体で見えてはいない。

もしかしたら今言ってる声は聞こえたかもしれない、僕の背中を狙った槍は僕に刺さる前に・・




「マニアッタマニアッタ!カリハカエシタ・・デモ・・アトフタツノヤクソクハ・・キケナイカモ・・」




そこには僕の変わりにディットの落ちた腕の槍に貫かれている・・逃げたはずのインプもどきがそこにはいた。



「強き願い、信仰により参りました。面をあげなさい」


あたしがそう言うと目の前で膝を突きお辞儀をしたままの一人の男が顔を上げる。

凄い肉体のマッチョな人だった。聖堂の聖服がパンパンに膨らんでいる。


「まさかこの様に早く我が願いが届き女神様がこの様な辺境の支部に光臨してくださるとは思いませんでした」


うん、見た目は凄いけど聖堂の人だけあって人格もしっかりしてそうだ。


「前置きはよい。そなたの願いは雫についてでしたね」


「はい、女神様が作られし雫についてぜひ知りたく存じます」


「結論から言いましょう。教える事はできません」


あたしはこの言葉でその男は落ち込んでそうですか・・とあきらめるのだろうなと思った。

しかしこの男はちょっと違った。


「そうですか、ではちょっと私の話を聞いてくださいますか?それで判断していただけたら嬉しいかと」


え・・正直暇じゃないんですけど?確かに願いを聞くのが女神の仕事でもあるし、でもそれを出来るかできないかも決めるのを女神次第なわけで・・願い以外の事柄とか・・帰って甘いものも食べなきゃいけないし。

でも目が凄い真剣なんだよね~、まぁ教える願いも叶えれなかったしいっか。


「わかりました、そなたの願いには答えれなかったのもあります、話してごらんなさい」


「ありがたき幸せ、時にスィーニー様」


「なんですか?早く話しなさい」


「話をするに至って少し砕けた話し方になってしまうかもしれませんがよろしいでしょうか?」


「構いません。女神を敬い信仰するという事は心で行うもの。言葉遣いなどそれに比べれば軽い物です。私はそのような事ぐらいでそなた達人間を軽視したりはしません」


「寛大なお言葉感謝いたしますわ」


え?いたしますわ?わ??


「では、何故私が女神様達がお造りになられた女神の雫についてどうしても聞きたいかをお話させていただきますわ」


いや待って!話の内容よりさ!ますわって!わのが気になるから!

まさかオストピアがそういう場所って知ってたよ!でも貴方一番ここで偉い人でしょ?

一番偉い人まで男じゃなくて漢だったってオチ!?


再登場女神の前でもブレないスラビーさん( ゜д゜ )


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