リングワット
戦闘回です
読んでくださっている方ありがとうございます(*´・ω・*)
僕達は現在リステインダンジョン13階、両開きの大扉に手前にいます。
その場には10名、僕達の他に3人。そして気を失っているのかブロンズの人が1名・・あとは3人の死体。
あとは白い騎士のリングワットさん、倒れているデッカイ兵士のゼーガスさん、その他1名の王族ディット。
なぜがその他大勢のディットが凄い殺気を放って僕を睨んでいる、何故だ!
「で?ヒルマさん、ハレンちゃん本当はどういう状況なんですか!?これ!」
「自分の思い通りに事が運ばなかったアホがキレているのが本当の理由だ美紅」
「な、なるほど。でも何で僕を狙ってるんですか!?来たばかりですよ!」
「たぶん美紅様のお言葉が一番ディットさんの琴線触れたのかと思うのです」
「な、なるほど。って納得できないんですけど。話し合い出来ないんですか?」
「無理だな」
ですよねー!
「無駄話は終わったか?ゴミ共」
無駄話で待っててくれてそちらが責めてこないなら1日でも2日でも無駄話してますが?
「まだ終わって!おわっ!」
「受けたか、なかなかいい反射神経だなゴミ」
まだ言い終わる前に僕に突進して斬りつけて来たので僕はとっさに剣を抜いてそれを防ぐ。
「ディット貴様!美紅に近づくな!」
「ヒルマさんお先になのです」
ヒルマさんとハレンちゃんが僕がディットに攻撃されたので反応してこちらに加勢に来てくれようとしている。
しかしそれは防がれた。
「大変申し訳ありませんが貴方達2人の相手は私がさせていただきます」
リングさんが2人の前に立って道をふさいだ。
「お前一人で私とハレンをか?見ていただろう、ハレンがそこに倒れているお前の部下を一瞬で倒したのを、そのハレンと私を止めれるのか?」
「わかりませんが私は国から命じられて殿下に付き従っております。殿下の意向に従うのが私の義務です」
「不本意でもか?」
「・・・それでもです」
「そうか、お前は話が通じると思っていたが宮仕えは大変だな。ハレンわかっているな」
「もちろんなのです。さっさとこの方を倒して美紅様をお助けにいくのです」
リングさん対ヒルマさん、ハレンちゃんの戦いが始まった。
僕はちらっと視線をヒルマさんとハレンちゃんの方に向ける。
凄いな、あの二人相手にリングさんは剣捌きで対処している。
ヤバイかも加勢は期待できないかな・・。
「あっちが気になるのか?」
「仲間ですので貴方より気になりますね」
そう話を振ってきながらディットは凄まじい剣撃で僕に攻撃仕掛けてきている。
僕はそれをなんとか剣で受け止める格好だ。
「なかなやるな」
そう言いながら完全にニヤニヤして楽しんでいる、本気を出していないのが丸見えの嫌な笑み。
「ちょっとだけ手加減して痛くせず殺してやるから1つだけお前に聞きたいことがある?」
「なんですか?結果が殺す時点で取引になってませんけど教えていいことなら教えますよ?」
「町でお前に会った時に俺様は不覚にも気を失ったんだがな、ムカつく事にあの時の記憶が曖昧なんだよ。
お前に話しかけたと思ったら俺は意識を失っていた。クソ騎士はあのクソ猿の魔物の毒のせいでしょうとかふざけた事を言ってたがな。あれをやったのは・・お前か?」
「僕ですね」
「地獄を見せてから殺す!!!!」
「ちょっ!取引は!?せめて手加減してくださいよ!」
「殺す時点で成立してないって言ったのはお前だろう!」
嘘つき!!
「言いましたけど王族は見本にならないと駄目でしょ」
「俺様は何をしてもいいんだよ」
「はぁ、こっちに来てから貴方みたいな馬鹿率が高すぎです」
「馬鹿だと・・」
「自覚してない馬鹿は迷惑ですよ」
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
「さっき聞きましたよ」
凄い簡単な会話のやり取りでブチキレたディットの剣が早さを増して力強く叩きつけられる。
めんどくさっ!この人!
「ちょっと興奮しすぎですって!」
「黙れっ!俺様にはお前らゴミと違って使命があるんだよ!それはお前達のようなクソが邪魔をしていいようなもんじゃねーんだよ!」
「使命?よくわからないどって」
ヤバイこの人本当に強い!
剣の手数が半端ない、剣捌きはちゃんとした剣士の物であり怒りに任せていてもちゃんと僕の隙を狙って攻撃してくる。
「赤ゴミ、まだ剣を持って日が浅いだろ?反射神経だけで対処してるのがわかるぞ?」
ばれてるし、でも!
僕は当然のように身体向上のダンジョン石を使うこれで相手の間合いから離れてディットを速さで翻弄することができるはずだ。
そして後ろに移動して僕は背後からディットを攻撃した。
「ちっ、やっぱりか。珍しいもん持ってんじゃねーか」
まだ最速じゃないにしてもディットは反応したらしく僕の剣を防いだ。
こっちが舌打ちをしたいくらいだ。今ので決まったと思ったに!
「貧しいゴミのくせにどこで手に入れた、そこまで高性能の身体能力を上げる魔法を込めたダンジョン石なんかそうないぞ?そうだお前を殺したら俺様が貰ってやろう」
死ぬ気はないけど万が一そうなったら最後の力を振り絞ってダンジョン石を叩き割ろう・・。
このダンジョン石の後遺症は結構凄いからこれ以上のスピードはキツイんだけどな~。
一応ドルゴア戦でどこまで出来るかは立証済みだ。
「何か言ったらどうだ?」
「僕は基本的に貴方みたいな人と会話すら興味がないんですよ」
そう言いながら僕は最速の手前までスピードを上げた。
「ちっ!またか」
だから舌打ちはやめろ!まぁもう聞かなくていいかもだけど。
ディットの左側に移動したと見せかけてからフェイントをかけてサイド背後に回りそのままのスピードで逆の右側に回った、かろうじて反応していたディットはまったく別の方向を見ている。
反応できていないのが丸わかりだった。
そして僕はそのままディットの剣をもつ右、右肩を狙う。こいつに容赦する必要まったくないので右肩から切って切り落とそうとした・・が。
キーン!剣が剣を受け止める音がその場に走った。
「あぶねーあぶねー」
おかしいことが起こった。
ディットは完全に逆方向、明後日の方向を向いていた。のに剣を持つ右手が反応して僕の剣撃を受け止めている。
「嘘・・」
「フハハ、信じられないか?驚いただろ?でもなゴミには理解できない事ってよくあるんだぜ?」
正直ディットが何を言ってるのかわからなかった、確かに僕はディットの隙をつけたはずだった・・なのに。
「ぼーっとしてていいのか?」
はっ!ヤバイ!僕は考えていた事から意識を戻すとディットが体制を立て直して横一線僕を真っ二つにする為に剣を振るってるところだった。
『ロスト』
ディットの剣は空振りに終わる。
「あ?なんだまた早さで逃げやがったか?それにしては反応がなかったな、おかしいぞ?」
はぁはぁ・・危なかったギフトを使わなきゃ僕は真っ二つにされて死んでいた。
あいつの剣は前に町で見たように鉄の檻の柵も斬っていた、たぶん相当な業物だ。
そして僕はディットの背後に回りロストを解除した。
「ん?後ろか、おいおい、今のどうやって避けた?」
質問のされ方がおかしい?ダンジョン石を使った速さで避けたと思ってるならこんな聞き方はされないはずだ。
ロストを見られた?いや見られたのはわかるけど見てもこの力に気づけるかどうかは別のはずだ。
「何のことですか?普通の貴方の剣が遅かったんでさっきより早く逃げただけですが?」
「・・・口だけは達者だな。だが確かに何かおかしかったぞ」
気づいて・・はいない、だけど何か違和感を感じ取った?
「僕がおかしい人なら貴方は可笑しい人ですよ」
ロストは出来るだけ見せたくない、確かに消えれば見えないけど消える前は丸わかりだ。
しかもリングワットさんもちらちら2人の相手をしながらこちらを見ているのがわかる。例えロストを発動して1撃でディットを倒せたとしても目撃者がいる時点であまり使うべきじゃない。
ディットは何か・・どういう理由か知らないけど違和感を持っている。なんで違和感を感じ取ったかはわからないけどロストの事もディットは確信をもってわかってない、なら方法は1つ。
僕は最大速度まで上げる。
そしてディットの視線からはずれてるように動き回る。
「またそれか、クソが!馬鹿の一つ覚えみたいに走り回りやがって!」
何とでも言ってくれ。
でもわかる、やっぱりディットは反応できてない。
確かにこの人は強い、剣捌きはたぶんヒルマさんにも劣らない、でもやはり僕の動きには付いてきてない。まだゴルゴアの方がこの動きには反応していたくらいだ。
今だ!今度は僕はディットの背後から剣を突き刺すように、ディットの心臓目掛けて突きを放つ。
「おっと、今度は後ろか」
「嘘でしょ・・」
まただ・・また剣で受け止められた。キーンと剣がぶつかりディットは僕の突きを受け止めていた。
だが、受け止め方が異常だった。
ディットはこちらを見ていない、右手だけ後ろに回して剣を受け止めている。
こんなのは曲芸の類だ、殺気とかを感じ取って反応した?でもそんな感じじゃなかった。
「赤ゴミ~、お前みたいのが俺様に対してここまで責めさせてやっただけありがたいと思えよ。さっさと抵抗せず首を差し出せ、痛めつけて殺してやる」
さっきとまったく同じ、ディット反応できてないのに反応した感じ。
矛盾してるけどたぶんそれしかないと思う。
「何ですか?その鎧」
「はあ?何のことだ?」
「言いたくないのはわかります、2回も僕の速さにまったく反応できてない上に鎧の力に助けられて命拾いしたんですもんね」
「切り刻まれたいのか!これも俺様の力だ!」
はいアホ確定、単純、馬鹿すぎ。
「やっぱりその鎧の力ですか。よくわからないですけどその鎧が僕の速さに対処してるみたいですね。勝手に動いてくれるんですか?便利ですね」
「クソ!ゴミのくせによくわかったな」
貴方が単純な挑発に乗って教えてくれたんですけど・・。
「ということは、あのインプもどきを見つけたような力とか捕まえた時の吸い込むような力とかは全部その鎧の力ですか?」
「俺様の力にきま」
「ってるわけないですよね、思いっきり嘘つこうとしないでください、王族なら素直に鎧の力だ!とか言ったほうが潔いですよ?どう考えても貴方にそんな力があるとは思えないので」
あ・・地雷踏んだかな?
「・・・お前名前はなんだ?」
「え?美紅ですけど?」
「そうか・・美紅か。俺様が王になったあかつきには俺の自伝にお前の名前を書いてやろう。俺様が王になる前に掃除したゴミの代表としてな」
本に載るのはいいけど載り方が不本意なので遠慮します。
「えっと、その前にですけどいいです?」
「・・・なんだ?」
「王になれるの?」
「美紅さん!それ以上殿下を挑発してはなりませんっ!」
リングさん貴方ヒルマさんとハレンちゃんの攻撃を受けて凌いでるのにこっちの会話聞いてたの?結構余裕あるのね。
でもそれって捕らえ方よってこっちの味方をしてるのでそれ以上言わないほうが・・。
「クソクソクソ!」
「え?」
なんかディットの様子がおかしいんだけど!
ぎ、銀の鎧が形をさらに変えていってる!?
なんか泡が立つみたいにぼこぼこ色んな場所がはじけるように形が変わり、ディットを包み込んでいっている。きもっ!!!
「美紅!今のうちに攻撃しろ!さっきディットはあの状態のときは動かなかった!たぶん動けないだ!」
つ、つまり変身してる隙に攻撃をしろってことですね!アニメで言うところの空気を読まない卑怯な攻撃を僕にやれということですねヒルマさん。
ふっ・・考えるまでもないです!やります!
そして僕は形を変えようとしている銀の鎧に包まれて腕を抱え込んでいるディット目掛けて突っ込んだ。
狙うのは左胸、心臓だ。
ズブッ・・っと剣には刺した感触があった。
剣先を見るとディットの体に届いていない。
届く以前の問題だった、ディットの鎧の胸当て、心臓部分だけ鎧が膨れ上がって剣を包むように掴んでいる。
驚くことに・・膨れ上がり剣を包み掴んでいる部分は手の形をしていた。
「ヒルマさん、あれはなんなのです!?」
「私にも変わらないことはいっぱいあるといっただろ!私に聞くなハレン!」
ヒルマさん達は戦闘を一時やめてリングワットさんまでこちらを見つめているようだ。
とりあえず僕は危険を感じたので刺さっている剣を引き抜いた。
「結構あっさり抜けたし」
でも刺した部分は傷はなくそのまま元の形になり引っ込んでまたボコボコと形を変えだした。
「ヒ、ヒルマさん、変身してるうちにやっちゃえ作戦は失敗です。たぶんですけどあの鎧ディットとは別に意思というか勝手に動いていると思います」
僕のその言葉を聞いたヒルマさんは目の前のリングさんに怒鳴り問いかける形になった。
「おい、リングワット。言え!あれはなんだ!」
「それは・・」
「さっきお前は美紅にディットを挑発するなと言っていただろう!それはアレが理由だろ!」
「そうでですが・・でも」
「お前が仕えるべき者もあるだろうがアレの状態の者がお前の仕えるべき者なのか?美紅が言ってるようにもし鎧に意思があるというならあれはディットとは別に動いている。それともアレは完全にディットの意思で動かしているとでも言うのか?」
「ハ、ハレンにはそうは思えないのです。凄く嫌な感じがするのです」
ハレンちゃんがちょっと怯えている。たぶん獣人なので危険感知も僕達より上なのかもしれない。
「リングさんアレは放置しておいていい物なんですか?言える程度で教えて欲しいんですけど。貴方はディットが僕達と戦うのを躊躇していたましたし」
「しかしアレは・・」
「美紅無駄だ、こいつには中途半端なんだ。国や主君に忠誠を誓う者というものは自分の意思を殺さないといきていけないんだ」
「ヒルマさんそれは言いすぎかと・・それに忠告もしてくれてますし、殺しきれてないと思いますし」
「私も言いたくないがそうだろ。実際このリングワットと戦っていたがこいつは私とハレンに対して敵意を向けてこなかった。普通はディットの忠誠を完全に誓ってるなら私達二人をすぐに殺してディットに加勢に行った筈だ。何の敵意のかけらも向けず時間だけ稼ごうとしていた。だから私とハレンもそれに気づいてあまり本気を出せなかった。何かを考えがあるのかもと逆に考えてしまっていた」
「あのリングワットさん、ハレンは思うのですけどあの状態はディットさんも危険なのではないのです?あの状態になったらディットさんの臭いは完全に包まれて消えたのです。まったく新しい臭いになろうとしてるのです」
「それでも私は・・」
「馬鹿が・・美紅お前がこのリングワットという奴はいい奴だと思っていることは知っている。だがこいつは駄目だ。悪いがもう何を考えていても手加減はしないぞ」
「美紅様、ハレンもなのです。あの状態は危ない気がするのです。この人が何も言わずにハレン達を止める為に時間だけ稼ぐならもう容赦している時間が無駄なのです」
「ぐっ」
それを聞いたリングさんは拳を握り締めて唇を噛みしめて悔しそうな表情になる。
「ヒルマさん、ハレンちゃん。思うとおりにしてください。僕もこのままこの鎧とディットがどうなるかわかりませんがなんとかします」
「了解した美紅」
「わかったのです」
「待ってください!!」
「悪いがもう喋るなリングワット。お前はどうしていいかわからずに結局流れに任せようとしている。美紅は優しいからな。お前がもしかしたらいい奴かもしれないと思っている。だからお前が喋ると美紅の覚悟が鈍る。それともそれが狙いか?」
「わ、私は騎士です。そんな卑怯なことは!」
「ならお覚悟をなのです」
ハレンちゃんが走る。
そしてリングワットさんに向かって真正面から拳を振り上げて殴りにかかった。
「くっ」
リングさんはまだ躊躇している感じだったがハレンちゃんの特攻に対して剣で対処する。
が・・ハレンちゃんは横になぎ払った剣を体制を縮めて避けそのままリングさんの懐に入ると振り上げた拳をリングさんのボディに叩き込んだ。
「うあっ」
ガンッ!という音がする。
ハレンちゃんの拳がリングさんの鎧を殴った音。
見た目に似合わないハレンちゃんの凄い一撃、リングさんが吹き飛ぶと思ったのだがリングさんは殴られる瞬間少し後ろに下がっていた、ハレンちゃんの1撃の威力を後ろに下がることで弱めることに成功してよろけるだけに留めていた。
しかし・・。
いつの間にかそのよろける先にまで移動していたヒルマさんが体制を崩すリングさんの左側から剣での攻撃を繰り出した。
リングさんはよろけながらもそれに気づきヒルマさんの一撃に対処するために自分の前に剣を持っていき片手に倒れるのを防ぎヒルマさんの一撃も受け止めて防いだ。
「やるな」
「舐めないでください!」
ヒルマさんはそのまま受け止められている剣を押し込んでリングさんを完全に倒れさせようとしていた。
「舐めてないぞ?そんなセリフを吐く前にもっと回りを見ろ」
「はっ!なのです」
そう言われてリングさんはヒルマさんの剣を受け止めながら視線だけ地面に着いている左手のほうを見る。
そこにはしゃがんで低い大勢で両手を付いてそれを中心にして回し蹴りを放っていた。
そしてその回し蹴りは地面に手をついていたリングさんの左手を払っていた。
かろうじて体制を保つための柱の役割をしていたリングさんはそのままさらに剣で押し込まれていたヒルマさんによって地面に叩きつけられる。
「よくやったハレン!」
「あぐっ」
リングさんは地面に頭部と背中を強くぶつけ唸る、だがさすがというべきか払われた左手をすぐに片手で持っていた剣を両手に変えて力をいれてヒルマさんの一撃に対処するべく動いていた。
「悪あがきをするな」
「うぐ・・そ、そうでしょうか」
「何?くっ!」
剣を結んでいたヒルマさんは後ろに飛びのく。
どうやらリングさんは倒れる体制を利用してヒルマさんに蹴りを放っていたようだ、それを後ろに飛ぶことでヒルマさんは避けたのだ。
その短い時間で3人はそれだけの攻防をやってのけていた。
「やっぱりこの方相当やるのです」
「そうだな、だが2対1だ。卑怯とは全然思わないがな」
「ヒルマ・・さんとハレン・・さんと仰いましたか?」
「ん?そうだが今更名前なんてどうでもいいだろ?」
「もう殺し合いなのです」
「・・そうですね、でも呼んでおきたかったんです。先ほどの貴方達が言ったことはまったく正論で当たってます。でも私はこの任務は実は納得して来ています」
「矛盾してないか?」
「そうですね、してます。任務自体・・殿下の護衛、世話という部分は納得してます」
「ああ、そういうことか」
「どういうことなのです?」
「こいつはな任務には納得しているがディットの気まぐれな行動には納得できない部分があるがそれでも自分は国忠誠を誓った身だから何もできないといいたんだ。そうだろ?」
「凄いですね、まったくその通りです」
「言い訳でもしたいのか?」
「それも正解です。だから私は流れに身を任せて覚悟を決めさせてもらいます」
「はあ・・馬鹿だな。別に私達にそれを言う必要はない。お前はただ口に出すことによって自分を納得させようとしているだけだ!!ただの自己満足だ!!」
「っ!」
「図星・・なのです?」
「まったく・・不器用だな」
「・・それでも私は騎士なんです!」
そう宣言するとリングさんが動く。
「来るぞ!」
「はいなのです」
しかしリングさんが動いた先は違った。
素早く移動したのはゼーガスさんの倒れている場所、ヒルマさんとハレンちゃんの動きを警戒しながらそこにあったゼーガスさんが持っていた荷物に手を突っ込むと何かを出した。
「どうやら待ってくれてたみたいですね」
「待ってたわけじゃない、警戒してたんだ」
「そうですか」
「そうなのです」
「では、ナディガム第3軍騎士団長リングワット=ケイワズ、本気でお相手いたします」
「まったく騎士の礼儀だろうがそれも自分自身に言い聞かせてるようにしか聞こえないぞ・・」
「ヒルマさんでもハレンはこの人の気持ちもわかるのです」
「そうだな、おいリングワット。時間が惜しいので悪いがこのまま2対1でいかせてもらうが悪く思うなよ」
「戦場でそのような不満を言うものは騎士ではありません。どうぞ」
無駄に男らしい。こっちの世界の女の人ってカッコイイ人多いな。
「ヒルマさん」
「なんだハレン?」
「ハレンが先にいっていいですか?」
「珍しいな?戦いたいのか?でもどうせさっきも言ったが2対1でいくんだぞ?」
「わかっているのです、ハレンが仕掛けるのでヒルマさんはサポートをお願いするのです」
「別にいいが気をつけろよ、あとその代わりデザートをよこせ」
「それは嫌なのです」
そう言うとハレンちゃんはリングさんに向かっていく。
「子猫!そこはわかりましただろ!」
もうハレンちゃんは聞いてないようにそこにはいなかった、っと思ったが。
「うわっ!なぜ戻ってくる子猫、やっぱりデザートを渡す気になったのか?」
「ち、違うのです!あれなのです!あれ!」
「あれ?」
ヒルマさんがそうハレンちゃんに言われて前を見る。
そしてあれが何かわかる。
「魔剣か」
「魔剣なのです?」
「そうだ、魔法剣が正しい言い方だがな。あれは美紅の剣と同じ魔道具の剣だ。ああいうのを知ってるものは略して魔剣という。あれは炎タイプか」
「突っ込んだらいきなり剣が炎を吐き出したので驚いたのです。しかもさっきと剣の大きさが全然違うのです」
そうなのだ、リングさんの剣は彼女の体の大きさ、腰にさげていた普通の彼女にあった大きさだった。
だが今は明らかに倍以上。というか持ってる柄の部分は変わっていないが刀身が比べ物にならないぐらいに膨張していた。わかりやすく言えば炎のバスタードソードといった感じだ。
「先ほども思いましたがヒルマさんは物知りですね。そうです、これは火のダンジョン石をはめ込めるタイプの魔道具です。ですが私の剣は他とは一味違いますよ、出力も、込めた魔法も、自由に炎を操れる武器と思ってください」
「褒めてもらって悪いが良いのか?種明かしをして」
「そんな事をしたつもりはありません」
そう言うリングさんの顔の表情はまったく変わっていなかった。本人は本当に種明かしても親切でもなく言ったのだろうという事がわかる。
「ハレン悪いがさっきサポートをすると言ったがあんなのが出ては話が変わる。あれでは剣を交わすのも危険だ、まず遠慮距離での対処をさせてもらう」
「・・仕方ないのです」
「さて、魔剣持ちの騎士殿をどうやってこれを防ぐのかな」
そう言うとヒルマさんの手から直線状の雷撃が繰り出された。
ボシュっと言う音がした。
リングさんは炎の剣と前に突き出すとまた刀身の炎が太くなり雷を吸収するように炎によって雷は防がれた。
「貴方は魔法剣士でしたか。でもその程度は聞きませんよ」
「そのようだな」
「ヒルマさんどうするのです?」
「そうだな、ハレンお前がサポートに回れ。本当はもっと強い魔法をリングワットにぶつけて焦がしてやってもいいがここのスペースは狭すぎる。あまり使いたくない方法だがやはり接近戦しかないな」
「わ、わかったのです」
「何か納得いかないのか?」
「別に~なのです」
「??よくわからないがやるぞ」
ヒルマさんは剣を構える。そして・・。
バリバリっと音がした。
今度はヒルマさんの剣が雷に変わったのだ。
刀身に雷を宿らせて放電している、ダンジョン石ではなく魔法士だからこそ自然に出来る芸当。
「おーなのです」
「これはあまりしたくなかったがな。これならあの剣の対処も出来ると思う。ハレンは私がリングワットと切り結んでる隙をつけ」
「了解なのです」
そしてヒルマさんはリングさんと激突した。
炎の魔剣と雷の魔法を伝導させた剣がぶつかる。
そして剣士同士の剣のぶつかり合い。
何度も剣がぶつかり鈍い金属音が響く、だがそれよりも凄いのは互いの剣から飛び散るもの、火花と放電。
「す、凄いですね、私のこの魔剣とここまで切り結ぶ方は久しぶりです。貴方は魔法だけでなく剣技も一流ですよ」
「上から目線の発言だな?騎士団長ともなるとやはり同等の相手がいなくてつまらない日々とか思うのか?」
「それは・・ちょっとありますね、でもこのまま切り結んでいたら貴方の方が体力が尽きると思いますが手はあるのですか?」
「なんだそれは?暑さと炎の熱で空気量が少なくなって体力の消耗が私のほう酷いとかそういうことを言いたいのか?」
「本当に凄いです。仰るとおりです」
「お前だってそれは言えることだぞ?それに私は魔法士なので耐性があるが私の剣がお前にかすりでもしたら感電して痺れるので条件は同等だろ」
「そうですね、でも私も自分の剣の事に関しては対処済みです。自分の剣で暑がるような未熟者ではないですよ。ちゃんと訓練でこの状態でも普通に戦えるようになってます、ちなみに貴方の雷に対しては対処は思いつきませんが剣術で負けなければいい話です」
「そうか、そっちこそ凄い自信だな」
そして二人は互いの隙を探して一層剣撃の威力が強まる、飛び散る雷と炎の量も並ではなくなる。
「もしかしてその青いフルアーマ・・魔道具の鎧ですか?」
「さあな?」
ヒルマさんの鎧は水と氷のダンジョン石がはめれる魔道具、今は水のダンジョン石がはめれらている。恐らく自分の炎がなかなか影響しないと思ったリングさんが疑問を口にしたのだ。
「まったく・・貴方達3人は何者ですか?殿下は自分以外の人達を蔑むクセがあって他人の実力を読まず軽視する事がありますが私に言わせると貴方達は正直ただの旅人に思えません。私にも知り合いの上位冒険者がいますが貴方達ならゴールドと言われても信じれます」
「旅人だよ」
「正直には答えてもらえませんか」
「お前が言うな。お前は自分の意思で発言しないくせに余計な事を聞くのだな」
「ぐっ」
思い出したくないことを言われた為にリングさんの顔色が曇る。
「そうだ、こうしよう。お前が負けたらあのディットの現象について話せ」
「そ、それは」
「騎士だろ?勝負の結果の約束だ。それが例え理不尽な2対1でもだ。戦場ではよくあるな」
「・・・いいでしょう。約束します。騎士として!!」
「よし、ならちょっと本気を出そう」
「え?」
ヒルマさんの剣がさらに早くなる、驚きながらもリングさんは対処する。
しかし本気を出すと言ったヒルマさんの新たな手がリングさんに襲い掛かる。
「ぐあああ」
「悪く思うな」
二人とも両手で剣を握って打ち合っていた、そのはずだった。
しかし一瞬の隙をついてヒルマさんは剣を片手に持ち、自由になった手でリングさんの肘に部分を掴みそのまま・・放電。
リングさんの体に電撃がそのまま流される。
「ハレン!」
ヒルマさんのハレンちゃんに対する合図が洞窟内響く。
そしてその合図を待っていたかのようにハレンちゃんは二人の頭の上にいた。
二人の周りには火と熱と雷が飛び散っている。
身の軽さを利用した一番安全と思われる真上からの、ヒルマさんが隙を作ると信じて待っていたのだろうと思われる絶妙のタイミング。
「よくやったのですヒルマさん!」
・・・ハレンちゃんまで上から目線のお言葉。
「お前まで上から目線の発言をするな!」
そして今だヒルマさんに掴まれて放電して無防備になった状態のリングさんの頭上にハレンちゃん空中で1回転して遠心力で威力を増した蹴りが放たれる。
しかし・・次にヒルマさんが見た光景は炎に包まれて吹き飛ぶハレンちゃんの姿だった。
「ハレン!!!!」
洞窟内には先ほどの合図とは違うヒルマさんがハレンちゃんの名前を叫ぶ声が響いた。
面白い馬の人だったし。
ちょっと息抜きになったかも。
そんな事を思っていると祭壇に反応があった。
これは地上と女神を信仰している神殿や聖堂が女神の力を必要としている者がいるとここにある祭壇に反応がある。
しかし全ての神殿の反応を拾うわけではなく、本気で祈った者、つまり本物と判断した者しか拾ったりはしない。願った者の強い望みや願いの内容を読み取ることも出来たりする。
実は結構反応はあるがそれをカナじいやあたし、つまり女神が判断して次の光臨先を決めているというわけだ。
「結構しょうもない理由もあるんだけよねこれ・・こんなこと本気で願うなよ!!っていう奴が」
カナじいがいない今判断はあたしに一任されている。
「というわけで、適当に・・ってわけにもいかないか!」
何個か読み取っていると気になるものがあった。
「雫・・について教えて欲しい?」
教えろと言われても教えれないんだけど?あれ一応こっち側の極秘だし。
場所は・・オストピア?
「これって確かこっちに来た時面白いって思った場所だ」
なんだっけ?重大な事思い出したような?
「あ!!面白そうな場所だから美紅を送り込んだ場所だ!」
決定決定!ここ行ってみよう!!
まさか願った者って・・(*´・ω・*)