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大騒ぎ

更新遅れて申し訳ありません。


評価、ブックマークお待ちしております(*´・ω・*)

人が集まって輪を作っていた。


そこには檻があり中には見覚えのある魔物がいた。

ダンジョンで僕たちに魔物の大群を使って襲わせたインプもどき。


知っている冒険者の4人組、この町の組合を拠点にしているらしいブロンズの冒険者が車輪付きの檻を鎖で引いてその魔物を連行していた。


「美紅あれは・・」


「ですね、あの魔物です」


「どうやらあの人達が捕まえたようなのです」


「あの程度の奴らに捕まえれるような魔物だとは思えなかったのだが・・」


「でも実際捕まってますよ?」


「なのです」


「確かに・・」


「でもおかしいですね」


「「なにがだ?」なのです」」


「いないんですよ・・連れていた3人の新人の冒険者が」


「あ!確かになのです!」


「別行動じゃないか?・・いや・・奴らはダンジョンで仲間に入れるような発言をしていたな確か・・」


「ですね」


そうしてるうちにもブロンズの4人組は檻を引いて人込みを押しのけて町を進んでいく。


「本当にどいてくれ!珍しいのはわかるが俺たちは行かなきゃ行けないんだ!」


「そうだ!早く組合に報告しなきゃいけないんだ!」


何かわからないが非常に急いでいるようだった。


「美紅様!ヒルマさん少しこの場を離れて様子を見るのです!」


「どうしたのハレンちゃん?」


「どうかしたのか?」


「臭いです!あの人達の臭いなのです!」


「あの人達とはなんだ?」


「ヒルマさん!ディット達ですよ!お付のリングさんやゼーガスさんもこっちに近づいてきます!ハレンちゃんの言うとおり少し離れましょう!」


「そうだな、嫌な予感がする」


僕達は少し離れた場所まで移動した。

何故かと言うとディット達3人はまっすぐに人込みを押しのけてブロンズの4人組に近づいていったからだ。

明らかに見物とは違う雰囲気で・・。



「おい!クソ冒険者!」


「殿下!いきなりそのような物言いはダメです!」


「俺に指図をするな!クソをクソといって何が悪いんだ?」


「彼らはこの町での実力者のようです、前もそのような態度をした為に言い争ったあげくに」


「黙れクソ騎士、お前の俺に対する態度も飽き飽きだ」


「殿下・・」


「おいクソ冒険者共!」


完全に上から目線で人を人とも思わない態度でディットはブロンズの冒険者4人組に話しかける。


「なんだ?何か用ですか?王子様だっけ?」


上から物を言われてるにもかかわらずブロンズの4人組は嫌な顔もせずにニヤニヤしながら対応している。

なんというか・・してやったりという顔な気がする。


「俺様はお前らのような下等な奴らと長話はしたくないから率直に言わせてもらうぞ、その気持ち悪い魔物を俺様によこせ。以上だ」


いきなり無茶とも言える要求をされたにもかかわらずブロンズの4人組は互いに顔を見合わせている。

そしてやはりニヤニヤした笑みをこぼさずにこう言った。


「王子様、言ってる意味がわかりませんね。ここは貴方の国じゃないんですよ?なんでも思い通りになるとは思わないでください」


「その通りですよ、なのでお断りしますよ。これは俺らの獲物ですからね」


ニヤニヤはしているがこの対応は正論だと思う。

僕たちがこの4人組の立場でも同じ事を言ったと思う。


「お前たちは馬鹿か?ここが俺様の国ではないことなんてわかっているに決まってるだろ?そんな事は関係ない。俺様はお願いをしてるんじゃないんだぞ?命令をしてるんだよ。優しく言ってるうちにさっさとよこせ」


どうやらディットには正論は通じないようでそれでも檻の中の魔物を要求している。


「まったく1ヶ月前もそうだったな王子様よ、俺達が優しく諭してたのにダンジョンで文句つけてきやがって」


「確かダンジョンで何か情報や出来事があれば王子様に報告しろだったな?なんで俺らがそんな事をしなきゃならなんだ?俺らは国に所属してるわけじゃないんだぜ?俺らは冒険者だ。組合に所属してて国には縛られてない」


「言いたいことはそれだけか?」


そう言われたディットは腰の剣に手をかけた。


「お待ち下さい冒険者の方々、確か大地の旋風というチーム名でしたね。最初に会った時の無礼は謝りますのでこちらの願いを聞いていただけないでしょうか?」


「女騎士さん確かリングワットさんとか言ったかな?悪いけど命令だろうとお願いだろうと聞けないもんは聞けないんだよ。わかってるかわからないかは知らないけどね、知識を持つ魔物ってのは破格で売れたりするんだ。色々な使い道もある。貴重な存在なんだよ?いきなり来てよこせとかありえないでしょ」


「そうそう得にあんた等は勘弁な」


「そちらの言い値で買うと言ってもですか?」


「だから言ってるでしょ?無理だって!なんでわからないかな~!言い値だろうとこいつを捕まえたことは俺ら冒険者にとっては功績に入るんだってよ。だから組合に持って行くまで何があろうと渡せないって」


「・・・わかりました。殿下そう言う事らしいので一度引きましょう」


「うるせー!組合なんぞに持っていかれたら手が出せなくなるだろうが!ここで手に入れる!」


「いけません殿下こんな場所で騒ぎを起こしては!」


「問題ないだろ、冒険者や無法者の騒ぎなど良くあることだ・・そうだろ?ゴミ冒険者、ところで最近お前達と一緒に居た雑魚っぽい新参者の3人はどうした?あん?」


不吉なセリフを笑いながらディットは言った。


「お、お前達には関係ないだろ!?」


「関係ないか・・なんとなくわかったよ。お前達程度がそいつを捕獲できたわけがな」


「なに言ってるかわかんねーよ!」


「わからないのか本当に?」


「知らねーよ!」


「そうか・・ならいい!」


「いけません殿下!」


リングさんが止めるのも聞かずディットは剣を抜いて走り出す。


それに反応してブロンズ4人も剣や斧、杖を構えて戦闘体制にはいった。


ブロンズのリーダーっぽい剣士とディットの剣がぶつかると思った瞬間・・ディットが消えた。

のではなくディットはジャンプしてブロンズの4人組の頭を追い越して後ろにある檻の後ろ側に着地していた。


「フハハ、クソ騎士、これで別に俺はこいつ等とは争ってないわけだ。ただ剣を素振りしていたら目の前に檻があってそれを斬っちまったとかになるのかな?」


「殿下!」


「やめろ馬鹿!」


リングさんとブロンズの剣士が必死に止めたにもかかわらずディットは横一線に剣を振った。

シュパっと言う音が聞こえそうなほどに綺麗に鋼鉄の檻が斬られた。


「まったくゴミ共めお前達が言う事を聞かないからこんな場所で素振りをするハメになるんだ」


檻が上下に真っ二つ斬られる。


それを見ていた周囲に野次馬達が悲鳴をあげながら逃げていく。

それも当たり前だ、魔物が解き放たれるのだから・・。


「キャー」


「にげろ!魔物が暴れるぞ!」


「警備兵に知らせろ!」


「それより冒険者組合だろ!?」


「お前達馬鹿言ってないで逃げろ!捕まえた冒険者がいるんだ!またすぐ捕まえるだろ!」


物凄い騒ぎになり人の波が出来てあっという間にパニックになっている。


「フハハ、耳が痛いんじゃないか?捕まえた冒険者がすぐまた捕まえてくれるなんてな!」


「な、何が言いたい!」


「なんでもねーよゴミ冒険者、それより今から鬼ごっこの始まりだぜ?町で魔物を追いかけるな!早く捕まえないとお前達は強力な魔物を町に連れてきて解き放った最悪の犯罪者になっちまうぞ?」


「何言ってやがる!お前がやったんだろうが!証人だってたくさんいる!」


「そうだ!お前が檻を壊さなきゃ!」


「はぁぁぁ???知らねーなそんな事ぉ!俺様は素振りしただけだぞ?それよりそんな事を言っていても良いのか?そろそろ檻の中の魔物が出るぞ?」


横一線に斬られた檻がスライドするように横にずれて天井が開くように檻が破壊された。

その瞬間を見てインプもどきが解き放たれた。


「ソラ!アオイソラ!オレニゲル!」


あまりうまいとは言えない言葉を叫びながらあのダンジョンの時と同じ様な物凄いジャンプ力を発揮して檻から飛び出した。


「くそくそ!!おい弓だ!足を狙え!魔法もだ!出来るだけ無傷で捕まえるんだ!」


「無理だろ!あの時だって!」


「あの時の事は言うな!無理でもやらなきゃ俺達は責任を取らされる!」


「くそ!あの王族ゆるさねーぞ!」


ブロンズ4人組は悪態を吐きながらジャンプして逃げるインプもどきを対処しようとしている。


「おいクソ騎士手を出すなよ?オレ様がやる。デカ兵士貴様もだ!」


「殿下侮ってはいけません!あのインプは・・!」


「黙れ!何度も取り逃がしているんだ!いい加減あの魔物の手口はわかってんだよ!」


ディット達はディット1人で対処するようだった。


「バカナニンゲンオレニゲル!オレモドル!」


「戻れると思うか?まったく近くで見ると気持ち悪すぎるだろ・・」


「ナッ!」


信じられないことに明らかに普通の人間の跳躍力では無理な距離、インプもどきは4メートルは飛んでいる、いやそれ以上は飛んでいるのにディットはインプもどきの目の前、まったく同じといっていい程のジャンプ力を発揮していた。


「なんだあのジャンプ力は!」


「クソこのまま撃つとあの王子にも当たるぞ!いいのか?」


「だ、ダメだ!あれでも王族だ、傷をつけるわけには・・」


「殿下!」


インプもどきとディットは空中で睨みあっていた。


「ふう、足の1本くらい斬って捕獲してやる。心配するないい薬がある。血ぐらい止めてやるさ」


そう言うとディットは右手で握っていた剣でインプもどきの左足を狙って振りぬこうとする。


「ニンゲンバカバカリ」


「あん?」



インプがそう言うとインプの全身から紫色の煙が一気に噴出される。



「な、なんだと!クソ魔物め!」


「殿下吸い込まないようにおそらく毒です!」


「そんなことはわかってる!ぐおっ!!!」


ディットがいきなり地面に向かって吹き飛んだ。


「アタッタアタッタ」


どうやら毒煙に紛れてインプもどきはディットのお腹を思いっきり蹴ったようだった。


「殿下平気ですか?」


「クソ!少し吸い込んだ、おい!デカ兵士解毒薬をよこせ!早くしろ役立たず!」


ゼーベルさんは呼ばれると荷物の中を探り解毒薬を探り出した。


「ぐおお!苦しい助けてくれ!」


「俺達にも薬を!」


煙がはれるとブロンズ冒険者4人は煙を吸ったらしくのたうちまわって苦しんでいた。


「おそらく麻痺や吐き気を催す毒ですか。命に別状はないようですが時間が経つにつれ治りも遅くなる毒ですね」


「クソあの猿野郎どこいきやがった!おいクソ騎士あとの始末はしておけ!俺様は追いかける!」


「殿下!冷静にあの煙で奴を見失いましたしここは我等3人で!」


リングさんが呼び止めるもの聞かずにディットは解毒薬を持って走り出してしまった。


「・・まったく殿下は・・ゼーガスまだ解毒薬はありますか?あるならそこの冒険者の方々にも分けてあげて下さい。その際にこの騒ぎに関しては我々だけを責めないという交渉も忘れずに!私は殿下を追ってみます」


「わかりました」


ゼーガスさんは頷くのを確認してリングさんもディットが走っていった方向に走り出す。



そして僕達はその一部始終をある程度離れた見やすい建物の屋根に登って見物していた。


見やすいと言っても人の家の屋根に登っていいのかな~って思ってみてたりして・・。


「とんでもないことになりましたね」


「ああ、私達には関係ないと言ってもさすがにこの町全体がパニックになるだろうな」


「それにしてもあのディットという人なんで反対方向に追いかけたのです?」


「たぶん煙で見えなかったのと怒りで冷静な判断が出来てなかったからじゃないかな?」


「そうだろうな。あのインプもどきはディットを蹴った反動を利用してあの方向に飛び去ったと判断して追いかけたんだろうな」


「でも実際は蹴ったあとに近くの家の壁をもう一度蹴って全然違う方向に逃げているのです」


「プライドが高い奴の典型的なタイプだな。怒りで冷静な判断をなくす馬鹿だ。あのリングとかいう騎士の言う事を聞けばいいのに自分は正しいと思っているタイプだ」


「そうですね、それよりもしかしてハレンちゃんインプもどきの場所とかわかってる?」


「はいなのです。ただ結構凄い速さで移動してるのでこのままだとハレンの鼻の範囲から外れるのです」


凄いさすがハレンちゃん!


「どうする美紅?私達も鬼ごっこに参戦するか?」


「ん~・・どうしましょ?でも捕まえるのに成功した場合ディットに見つかったら因縁つけられません?」


「なるだろうな」


「でもなのです。このまま捕まえないと町の人達が困るのです、あのインプもどきは町の出口にもダンジョンの方向にも向かってないのです」


「珍しいな?ハレンがやる気なのは。どうかしたのか?」


「平和な町で関係ない人達が巻き込まれるのは嫌のです」


たぶん自分の村の事を思ったのだろう、ハレンちゃんはちょっと下を向きながら返事をした。


「すまないな、ちょっと無神経だった」


「気にしないでいいのです、夕食のデザートで手を打つのです」


「そこは普通何も求めないだろうが!!」


「ハレンは優しいのでデザートを求めるのです」


「太るぞ子猫!」


この二人・・決断するなら早めと言ってのにこんな時まで・・。


「ハレンちゃんには僕のデザートあげるからどうするかいい加減決めましょう」


「食べかけがいいのです!」


なぜ残飯を求める・・。


「美紅!私の発言でこんな子猫にそんなご褒美をあげる必要はないぞ!」


食べかけはご褒美じゃないよ?


「わかりましたから・・ハレンちゃんにはデザート多めに頼みましょうそれでいいですね?」


「それなら私は別にいいな、子猫が太るだけだ」


「・・・全然ご褒美じゃなくなったのです」


いや好物をたくさん食べれるってご褒美でしょ?


「では多数決をとりまーす!追いかけると追いかけないの2択でーす。僕は追いかける方を選びます」


「美紅に賛成だ」


「美紅様に賛成で」


「追いかける3票で決定します!」


あれ・・?これって多数決じゃなくない?ほぼ僕の意見で決まったような・・?気のせいだよね?


「じゃあどうしましょう?」


「ハレンが案内するのでお二人は付いてきてなのです」


「りょうかーい」


「わかった!いけ子猫!」


「猫じゃないのです!」


虎と言う事を主張するとハレンちゃんは走りだした。


屋根から屋根を伝って・・。


「美紅・・あれは猫だろう・・」


「ゴメンね・・ハレンちゃん僕も猫だと思う。そしてハレンちゃん・・付いていけないよ、そんなスピード」


ハレンちゃんは建物の屋根を凄いスピードで進んでいく。

姿がどんどん小さくなる。


「ヒルマさん僕に構わず先行ってください。そうすれば僕はヒルマさんを追いかけるので、ハレンちゃんを見失ったら終わりですし」


「まったくあの子猫は!!!見失わないで精一杯だ!すまない美紅先に行かせてもらう」


「全然どうぞ!」


ハレンちゃんがどんどん見えなくなっていく。

僕達がついて行ってないの気づかないのかな?

まぁたぶんだけどハレンちゃん絶対楽しんでる、あの子にとってはこういった立体移動はアスレチックみたいなものだからね。




「見つけたのです!美紅様!ヒルマさん!あれ・・?」


そこは狭い裏路地だった。

インプお腹が減っていたのか恐らく食堂の残飯を出すゴミ捨て場だろうか?そこを漁っていた。


「うぅ・・臭いのです・・あとどうやらハレンは美紅様とヒルマさんを置き去りに走っていたようなのです・・大失敗なのです」


「アーー!オマエミタコトアルゾ!エート・・ワスレタ!」


「ハレンと申します、一応貴方を捕まえに来た者なのです。お見知りおきをなのです」


「マタオレヲツカマエルノカ?」


「はいなのです、でも安心していいのです。ハレン達はさっき貴方を捕まえてた人やあの檻を壊した人達みたいな対応はしないと約束するのです。美紅様はお優しいのです」


「ニンゲンハコワイニンゲンハコワイ」


「ハレンも外は怖いと思ってたのです」


「ナニイッテル?ココソトダゾ?オマエバカカ?」


「なっ!ハレンは馬鹿じゃないのです!屈辱なのです!慰めたのに屈辱なのです!もういいのです、捕まえるのです!」


「ヤッパリオマエワルモノ」


「そう思われても仕方ないのです。でもハレン達にも事情があるのです、それに貴方もハレン達に魔物の大群を仕向けたのでおあいこと思って欲しいのです」


「アレハシカタナカッタ!オレニゲル!バイバイ!」


インプもどきは檻から脱出した時と同じ様なジャンプを発揮する。

違うのは斜めに飛んだことだ。

明らかに逃げるためのジャンプ。



「バイバイニンゲン!サヨナラニンゲン!」


「こんにちはなのです」


「ナッ!ニンゲンナノニナンンデオレトオナジトコマデトベルヤツガイッパイ!?」


「ハレンはさっきの人とはちょっと違うのです」


「クラエ!」


「出させないのです!それにその煙をもう一度出すと目印になってさっき貴方を襲ったディットとかいう人が来ちゃうのです」


「エ?」


それを聞いたインプもどきは動きを止める。

どうやら考えているようだった。


「隙ありなのです」


「キエタ!」


「消えてないのです、違うのです。ハレンは脚力で空中を蹴って移動しただけなのです」


「ウ、ウシロ?」


「正解なのです」


ハレンはくるりと回ってアクロバットのように蹴りをインプの頭に食らわせる。

それを食らったインプは物凄い勢いでさっきまで漁っていたゴミ捨て場に吹っ飛んでいった。


「ギャヘッ」


ドガーンと音がしたと思うとゴミ捨て場に突っ込んで目を回したインプが倒れこむ。


「やったのです!ハレンの勝ちなのです!」


ハレンは重さを感じさせない完璧な着地をすると両手をあげて勝ちポーズをする。


「子猫早すぎだ!まったく!」


「ヒルマさん遅いのです、もう終わったのです」


「少しだが見えていた。それよりすぐにこいつを縛って移動するぞ!騒ぎで人が来る可能性がある」


「わかったのです、美紅様は?」


「お前が置いていっただろうが!!」


「うっ・・ゴメンなのです」


「まったく・・」


「縄だ。縛れ!」


「はいなのです」



そうしてインプもどきを縄でぐるぐる巻きにしていると美紅が追いついてきた。



「はぁはぁ・・ゴメンね遅れて」


「美紅様ゴメンなのです!ハレンが調子に乗ったから美紅様を~~!」


「うわっ!」


追いついた途端にハレンちゃんが物凄い勢いで抱きついてきた。


「ゴメンなのですゴメンなのです!くんくん!」


「こら子猫どさくさに紛れて美紅に抱きついて匂いを嗅ぐな!そして手伝え!こいつ結構重いんだ!」


「力仕事はヒルマさんの役目なのです、くんくん」


「そんなわけあるか!子猫が一番馬鹿力だろ!」


「ハ、ハレンはか弱いのです!」


「どの口がそれを言うんだ・・お前はその辺の岩なら普通に破壊できるだろ・・」


「ふ、普通女の子なのです」


ゴメンねハレンちゃん・・それ普通じゃないから・・それが普通の女の子なら僕は自信を無くしてるよ?


「僕が運びますよ、一番遅く来ちゃって役に立ってませんし。それに男ですから」


「美紅様にこんな重いものを運ばせるわけには行かないのです、このインプもどきさんはハレンとヒルマさんで運ぶのです」


「そうだな、美紅に運ばせるくらいなら私達で運ぶ」


「・・・ソウデスカ」


二人ともやめて!その優しさは優しさじゃないから!女の子二人にお姫様みたいに扱われるのは男としてなんか辛いから!マジで!


「ヒルマさんそれでどこに運ぶのです?」


「誰にも見つからずに町の外だろうな。布がある、こいつの体型なら全部包めるからな。ハレンの足の速さと嗅覚で人の少ない経路を選んで行動だ」


「なるほどなのです」


「じゃあ、それでいきましょう」


「待て・・誰か来る。音がするぞ、ハレンわかるか?」


「ここはゴミの臭いが強すぎて・・たぶんディットとか言う人なのです」


「あいつか、どうする美紅」


「僕はたぶん二人よりも持久力がないのでついていけないと思うのでそのインプもどきは任せていいですか?ここに残ってディットの対処をさせてもらいます」


「美紅様そんなのはヒルマさんに任せてハレンと一緒に!」


「なんで私なんだ!」


「二人とも喧嘩そこまでで!今はそんな場合じゃないですよ!急いで行ってください。あの殿下はやっかいですから!」


「わかった、町の外でこいつを何とかできるような場所を見つけてみる。待ち合わせ場所は町の入り口だ美紅」


「美紅様ご武運を!」


「またね、ご飯でも買って追いつくよ」


そうしてヒルマさんとハレンちゃんはやはり屋根を伝って走って行く。

あの速さならたぶん見つからずに待ちの外までいけるだろう。



そして・・やっかいなのがすぐに現れた。



「見たことある奴だな?おい赤い奴、ここで何があった?言え」


この人のせいで王族って全部こんな態度なのかな~って思っちゃうよ、まったく。


「いきなり来て不思議なことを聞くんですね」


「明らかに何かあっただろうがこの有様は!汚ねー猿みたいな魔物を見ただろ!何か隠してやがるな!」


やだ・・無駄に感がいいかも。


「知りませんよ、僕もさっき来たばかりでここで何があったか見てません」


嘘はまったくついてない僕が着た時にすでにハレンちゃんがインプもどきを捕まえてたしね。


「殿下ここでしたか!み、美紅さん!?」


「あ、こんにちはリングさん」


「こ、こんにちは!ってここで何を!?」


「え?別に何も?近くを歩いていたらここで何か大きな音がしたので来てみたらそちらのディット・・さん?に絡まれただけです」


「殿下?」


「クソ騎士、こいつは何かを知ってる。俺様の感がそう言ってる」


「感って・・それって証拠になりませんよ?」


「覚えとけ愚民、俺様の意見は全部が正しいんだよ」


「わかりました。覚えておきますので行って良いですか?」


「物分りがいいな。だが駄目だ。さあ何があったか言え」


「だから何も見てないって言ったじゃないですか」


「クソ赤・・さっき俺様は正しいって理解したって言ったよな?」


「覚えるとは言いましたがそれを信じるとは言ってませんよ?」


それに愚民とかクソ赤とか・・この人の呼び方いきなりかえるのやめてよね。


「お前が信じる信じないじゃねーんだよ。真理だ」


「殿下!美紅さんもその辺でおやめに!」


「クソ騎士何度も言わせるなよ?てめーは黙ってろ。お前もわかってるはずだ、あのクソ猿の魔物は必要だってな」


「・・それはそうですが」


必要?今重要な事を聞いた気がする。


「クソ赤、今すぐ知ってることを吐け。じゃなきゃ力づくで聞き出す」


「物騒ですね」


「殿下おやめ下さい!この美紅さんは冒険者組合にも所属してないのです、ただのダンジョンでお金を稼ぐ旅人で一般市民と変わらないのですよ!?」


「あ?なんでそんな事知ってやがる?フハハ、まあいい。ならこいつを多少痛めつけても冒険者組合は出てこないわけだ。褒めてやるクソ騎士、いい情報だ」


リングさんわざとじゃないにしても個人情報は大切にお願いします・・。


「やめましょう?争って良いことないですよ?」


「なんだ怖いのか?お前も女だが腰に剣を帯びている時点で剣士だろう?俺は差別はしない派だ」


女じゃないし!そして貴方が差別しない派ってのは雰囲気でわかるし!


「美紅さん逃げて下さい!」


「え?」


「黙れクソ騎士!」


「殿下は前王国騎士団第4軍の将軍を倒されるほどの剣士なのです!それに普通の方とは違う力も・・」


「黙れと言っているクソ騎士命令だ!!」


「うっ!」


大声で威圧されて貴重な情報を言おうとしていたリングさんが黙殺される。


「ちっ!今クソ騎士が少し言ったとおりだ。俺様は王国の将軍級だ、今のうちに知ってることを話せ。さっきの無礼は許してやる」


「だから~何も知らないし、見てないって言ってるじゃないですか」


「美紅さん・・」


「わかった。言いたくなるようになるまで遊んでや・・」


「殿下??」


バタッと前方にディットが倒れた。


「凄い、ハレンちゃんに教わったとおりだ・・首の後ろって本当に急所があるんだ・・まさか漫画であるような技ができるだなんて」


ここを正確に丁度いい力で叩くと脳が揺れて昏倒して意識を奪えるのです!えっへん!

とハレンちゃんからご教授を受けていた技だ!


「み、美紅さんいつの間に私達の後ろに?」


「ゴメンなさいリングさん、ヤられる前にヤっちゃいました」


「あ?え?ああ・・殿下!?美紅さん貴方一体・・」


僕は身体能力向上のダンジョン石を最大出力で発動そして油断している相手をすれ違い様に剣の柄で急所を叩く!


それで今あの状態でーす!


「僕のことよりディットさんを見てあげたほうがいいと思いますよ?」


「そうでした!殿下!殿下!」


「リングさんゴメンなさい、僕行っていいですか?」


「え?あ・・はいどうぞ」


「え?いいんですか!?一応リングさんも騎士なので殿下の仇とか来るかと思ったんですけど!」


「正当な理由があるならそうしてますけど今回は殿下が明らかに悪いですから」


「なるほど、リングさんってやっぱり良い人ですね」


「え?そんな・・」


なぜかリングさんは顔を伏せる。


「それでは失礼します」


「あの美紅さん本当にここで何があったかは・・」


「見てませんよ、何があったかは」


その後は知ってるけどね!


「そうですか、殿下には私が説明しておくのでお逃げ下さい」


「ご迷惑をお掛けします」


「それはこっちのセリフです」


「では、またです」」





僕は人を殴っておいて不謹慎だけどまさかの技が成功して気分よくヒルマさんとハレンちゃんの後を追いかけた。



蒼「カナじいこれでいいの?」


カナじい「そうじゃ、覚えが早いのぅ。あとは頼んだぞ」


蒼「わかったけどさ。何かわかったらすぐ言ってよ?」


ナカじい「もちろんじゃ。私が動けん以上お主が頼りじゃ」


蒼「がんばるよ!」


カナじい「これがここの鍵じゃ。ここはわしが中から開けるかその鍵でしかあかん」


蒼「いいの?これってフレアナに一度預けた鍵でしょ?そして裏切られた。そんなのをあたしに渡して」


カナじい「そうじゃの、わしは一度信用して裏切られたのぅ」


蒼「でしょ、なのにあたしに渡してもいいの?大事なんでしょ?」


カナじい「そうじゃのぅ、信用して裏切られてかと言って今後誰も信用せんなんて話にはならんじゃろ?」


蒼「おー!なんかカッコイイかも!」


カナじい「もっと褒めておくれ」


蒼「閉めるね」


カナじい「あっさり終わらすでないわぃ!」


蒼「えー、なんかウザかったから」


カナじい「まったく、だが・・あとは頼んだぞぃ」


蒼「カナじいも頑張ってね」


カナじい「お互いにな」


頑張れ?(*´・ω・*)

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