甘やかしすぎ
豆腐メンタルなので色々恥ずかしい(*´・ω・*)
家に帰った僕は夕飯の支度をしている。
後ろでぐったりと気を抜いてくつろいだ妹が携帯をいじりながら話しかけてきた。
「ご飯何?」
「から揚げしようかと思う」
「わーい!大好き!早く作ってね」
「うん、もうちょっとだけ待ってね」
何でもない会話をしながら僕はご飯を作っていく。
この家でご飯を作るのは僕の義務だからだ、妹も料理は得意なのに。
「出来たよ~」
「わーい!いただきます!」
「どうぞーお食べください」
美味しい!と言いながら妹は僕の作ったご飯を食べてくれる、コレだけでも毎日作るかいがあるというものだ。
「ところで蒼はさ、高校では部活にはいらないの?中学では陸上短距離やってて結構早かったよね?」
「う~ん、陸上疲れるしめんどい、あと胸が大きくなったし走りにくい感じがするしやめた」
めんどくさいんだ、陸上が好きだったわけじゃないのね、あと兄でも異性の前で胸が大きくなったとかそう言った発言はもうすぐ16歳になる女の子としてどうなのかな。
「じゃあ、他の部活とかはいらないの?蒼なら何でもできそうだし何かやってみれば?」
「やだよ~、陸上は適当に選んでやってただけだしうちの学校部活入らなくてもいいんでししょ?興味沸くものものないよ~、あ!でも結構勧誘はあったよ?全部断ったけどね」
「全部断ったんだ・・蒼ってやれば何でもできるクセにやる気ないよね」
「全部に興味のない美紅に言われるとなんか腹立つんだけど?あたしはちゃんと興味のあることはあるし!」
「あることって何?」
「内緒」
内緒なら思わせぶりな返答はやめてほしい。
「ところで美紅は学校でどうなの?中学みたいに嫌な人とかいないの?」
「中学よりマシかな、やっぱり人間関係変わったのと蒼存在が大きい気がする、良い意味と悪い意味で」
「なにそれ?その意味をじっくり聞かせてもらっていい?」
もう食事を食べ終わって飲み物で一息つきながら可愛い顔をしてじと目でこっちを睨んでそんな質問を返してきた。
余計なこと言わなければよかったかも・・。
「良い方は蒼が可愛いおかげで人と触れ合う機会が増えた、悪い方は蒼に興味があるクラスメイトや学年の質問攻めにあうことかな」
ここで『可愛い』と言う単語を入れておくことで多少のご機嫌を取ることを忘れない僕。
「ふ~ん、でも触れ合っても友達作ってないんでしょ?悪いほうの事はあたしとしては迷惑かけてゴメンとしか言えないかも、でもそれは不可抗力なんだよね、あとあたしが可愛い!のも不可抗力」
なんか可愛いだけ強く発音した気がするけど気のせいだろう。
「で?あたしの事色々聞かれてなんて返してるの?」
「受付時間は終了しました」
「大変よろしい」
「ある程度の事なら蒼のこと答えても良いならもっと違うと思うけど嫌でしょ?」
「当たり前じゃん、聞きたいことあるなら自分で来ればいいのに、答えてあげるとは限らないけどね!それに美紅に聞く時点で落第決定」
「そーですか」
それならしょうがない、蒼に興味のある男性諸君は窓口は閉店いたしました。
「ちなみに蒼は彼氏とか興味ないの?」
「ない!!美紅は?彼女」
即答して同じ質問をすぐ返してきただと・・。
「僕に出来ると思う?異性以前に人間関係に興味が持てない深刻な問題を持ってる僕に彼女ができるとでも?」
「はあ、自分で言ってて悲しくてなってないのが重症だよね、しかも自己評価ができてる分タチが悪いし、
美紅はコミュ症ってわけじゃなく興味がないだけってのが余計にね」
「蒼も結構似てるとこあると思うけど・・外面だけいいけど」
僕は最期の外面の部分は声が小さくして答えた。
「かもね~でもあたし友達結構いるし!美紅と違って!外面いいお陰で!」
ぐっ・・聞こえてた。
確かに妹は友達が多い、家には連れてこないけど休日ずっと家に居る僕と違って友達と出かけることも多い。
てか友人と言える存在いなくてゴメンなさい!あ・・でも2人いるかも?あれはもう知り合いかな?まあいいや、僕だけが決めれることじゃないし。
「美紅が生涯ずっと1人っきりでもあたしがいるじゃん!最期もちゃんとあたし1人でみとってあげるよ!」
すっごい可愛い満面の笑顔でとんでもないセリフを言いやがった!
「・・・ありがとう」
一応お礼を言っておくけどさりげなく僕のこれからの人生ずっと1人と宣言された。
しかも最期をみとってくれるという優しさが胸に刺さる・・あれ?おかしいよ?これ僕が先に逝く前提の言葉だよね?泣かないよ?
「そいえば生徒会も勧誘があったし」
「それ簡単に言う凄くない?でも全部ってことはそれも断ったの?」
「うん、すぐに」
うちの妹はブレません。
「でも断ったら残念そうな感じはしてたけど、すぐに他の候補も検討つけてたみたいですぐにそっちの子を勧誘してたし、その子も入ったみたいだよ」
「へー、蒼の次にしてもその子も凄いね、その子も目を付けられてたってことでしょ?」
「たぶんね~、でもそのあとその子にすっごい睨まれたし、笑顔で返したらすぐ目をそらしてたけど」
その時の妹の笑顔が見たい、たぶんいつもの外面用の笑顔じゃなく本当の意味での笑顔だったんだろうね!妹スマイル貰って生徒会に入った子ご愁傷様!
「ところで美紅、奏ちゃんに会ったよ」
奏とは僕の近所に住んでいた幼馴染の女の子で名前は奏 来希少し前に引っ越したけど引越し先もそう遠くなく、高校も一緒になって今年は同じクラスになった。
「へー、今年は同じクラスだけど実は高校に入ってから話したのって数える程度なんだよね」
「なにそれ?あたしは中学だったから仕方ないとして引っ越すまで家だって近くて同じ学校で幼馴染なのに会話ないとかありえないでしょ」
「話すこともないしね、向こうも高校になってからは目を合わせても無言だよ?」
「それでいいの?」
「え?別に?でもなんでそんなこと聞くの?なにか言われたの?」
「別に何も言われてないけど美紅の話もちょっとだけしかでなかったし、でも逆に少ししか美紅の話に触れないように奏ちゃんがしてる感じがしたから変に思っただけかな」
なんて鋭い妹だ、容姿だけじゃなくて感までいいとか・・神様与えるものって平等じゃなくていいんでしょうか?
幼馴染の奏は中学の時に僕がイジメられてて最初は庇ってくれたんだけど、どうも僕自身も抵抗しないことが男らしくないという理由で気に入らなかったらしく、それからというものあんまり会話もなく愛想をつかされた感じで疎遠になってしまった。
一応庇ってくれたことに対して何度もお礼を言ったけど、その度にいくじなしは話しかけないでと言われたのでそのままにしておいたのだ。
この幼馴染は実は妹とは違った意味で人気があるので正直近寄りがたい、ていうかある時期から障壁が出来て近寄らせてくれないのでどうでもよくなってしまったのだ。
「奏ちゃんすごく綺麗になってたけどさ、周りのあれ何?さすがに怖すぎでしょ?中学のときよりかなり酷いよ」
「あーあれね、あれは奏のファンというか取り巻きというかなんというか・・」
奏 来希という人間は昔から女にモテる、男から見てもカッコよく小さい頃から武術を習っていたせいもあって精神的にも肉体的に強く、容姿も○塚系なので男子よりも女子に人気があるのだ。
高校になってそれが顕著になり、なんか常に本人は気にしてないらしいけどファンが取り巻きと化している状態、彼女に話しかけようとする異性はまず無言の障壁に阻まれる始末。
「すごいよね、あたしだったらアレは我慢できないかも」
「噂だけど本人は気にしてないらしいよ?慕って来てくれてるらしいから邪険にできないとか聞いたよ」
「えぇ・・昔から変な変とこ優しかったけどあれは勘違いされちゃうと思うけどな~」
「僕もそうだとは思うけど他人が気にすることじゃないしね」
もしどうしても話さなければいけないことがない限り学校内であの障壁を突破してまで彼女と会話するほど僕は無謀じゃない、一人の時もあるだろうけど滅多にないと言うのが事実で実際彼女が一人で居るというのをあんまり見たことがない。
「僕のことがちょっと会話に出たって言ったけどどんなこと話したの?」
「え!興味あるの!?聞きたいの!?」
すごい食いついてきた・・どうしよう別に興味ないけど適当に聞き返したって言ったらどうなるのかな・・。
「うん、ちょっとだけ興味あるかも」
無難に答えておいた。
「ど~しようかな~!一応女の子同士の会話の内容だし!どうしてもって言うならちょっとだけ教えてあげても良いけど~?」
やっべ・・うざい・・可愛い妹じゃなかったら「ア・・イイデス」で即答してるところだ。
「じゃあ、言ってもいいと蒼が判断する部分だけちょっと教えて?」
ここ兄として妹の事を思って妥協した返答をしておく!
「教えてあげよう!!」
上から目線だ。
「奏ちゃんはね、美紅になんか謝りたいらしいよ?何を?っ聞いたらそれはボクと美紅の問題だから言えないゴメンって言われた!あとあたしが可愛くなりすぎで抱きしめたいって言われた!」
妹よ・・それはもしかしてだけど自分が判断していいといった部分じゃなくて僕の話の出た内容のほぼ確信部分じゃないかな?あとやっぱり『可愛い』の部分が口調が強いよ、しかも絶対それ言われた後の奏の障壁親衛隊の反応が怖いよ・・よくその場で平気でいられたね?やっぱりこの妹は僕なんかと全然違う。
「謝りたい?謝って貰う様な事したかな?全然記憶にないんだけど?むしろこっちが謝らなきゃいけない事なら過去にいっぱいあった気もするけど?なんのことだろ?」
「私に聞かれてもわからないし!美紅の場合興味のないことすぐ忘れちゃうしね!謝らなきゃいけないこといっぱいあるってのは納得だけど!」
こっちが謝らなきゃいけないこといっぱいってのは納得なのね・・否定してくれないのね・・。
「まあ、何のことかわからないし考えてもしかたないしね」
「美紅って本当に適当だよね」
「褒め言葉です」
「褒めてないんだけど・・あ!美紅!飲み物おかわり!」
褒める場所ないのはわかるけど、少しでも探す努力をしてちょっとは褒めてほしい。
そして妹よ・・冷蔵庫はそっちのが近い!飲み物はすぐそこだ!
「ジュースでいい?」
1秒で反応して飲み物を取りに向かう僕。
「いっい~!」
僕達は新しく始まった学校生活と環境の変化や話に他愛もない会話をしながら兄弟仲良く会話をして食事終えたのだった。
「あ・・美っ紅美紅~♪」
「わざとらしく名前を2回連続で呼ばないでよ、どこかのボー○カロイド思い出しちゃうし」
「あはは、あのね明日ね、友達と朝から出かけるの」
「ふーん、いってらっしゃい?」
「起こして♡」
首を少し傾けながら目をまっすぐ見て笑顔でお願いしてくる。
くそ可愛い・・お願いの仕方があざとい。
妹は朝が弱い、自称低血圧らしい。
遅刻したくない時とか大事なことがある日は全部僕や親が起こしたものだ。
「いいよ?何時?」
「えっとね、支度もあるし7時には起こしてほしいかな」
「わかったよ、7時ね」
「よろしく~!お風呂入って寝るね!おやすみさな~い!」
「おやすみなさい」
そうして翌朝、僕は多少起きるのに抵抗されたけど約束の朝7時に妹を起こした。
「いってきま~す!夕方には帰るからご飯の用意と掃除と洗濯よろしくね!」
「はいはい、いってらっしゃいませ」
「なんか夫婦の会話みたいだね」
「普通男女逆だけどね」
「養ってやるよ!」
「よろしく!!」
「いい返事すぎてヒクし・・いってくるね」
そして妹は新しく高校で出会った友達と親睦を深めるために家を出た。
そして夕方になっても、夜になっても、次の日の朝になっても妹は帰って来なかった。
次回からちょっと重くなるかもしれませんがお付き合いください(*´・ω・*)