ブラックチョコレート
ブラックチョコレート
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人生なにが起きるか分からない。
私は人生をそう思っている
奇跡を信じたことがない私だけれど、でも今回は信じたくなる。神様、仏様。に願ってしまう。
彼に恋心を抱いてしまったのは、確か。あの日だった。
隣の席。
高校の入学式、一年一組の教室。彼は笑みを零し私の顔を三秒ぐらい見つめそして黙って落ちた消しゴムを拾って置いてくれた彼の優しさを知った日。私はいうまでもなく、惚れた。一目惚れだった。
彼は優しかった。
たった、そんな理由で私は惚れてしまった。
恋愛経験はない。
恋はあまりしてこなかった。
そう。そんなスカスカな恋愛感を持っている私は彼に途轍もなく思いを寄せてしまった。
二年間、彼と同じクラス。
私は高校二年生。けれど、あと二ヶ月で三年生。クラスわけで一緒ではなくなるかもしれない。
私の思いはもう弾けそう。爆発寸前だった。
だから決めた。
二月十四日。
放課後。チョコレート片手にもって私は待っている。
彼の下駄箱に送った誘いの手紙。
放課後。二年一組に来てください。
私はいまさら葛藤する。
読んでくれているかな。いや、読んでくれていないで捨てているかもしれない。・・・いや、読んで来てくれる。絶対来てくれる。けれど。なにかの用事だったら、来ないかも。どうしよう。そんなときはどうしよう。なら、十八時まで私はその時間帯まで待つ。けれど彼は、帰宅部、そう確か帰宅部だった。じゃ、今頃来てもいい時間帯だよね。いやでも、彼は彼なりに忙しいのだ。うん。そうだよ。絶対そうだよ・・・・・・。
そして、五分後。
葛藤は二年二組のドアが開いた瞬間終わりを告げた。
私は・・・・笑みを零す彼を見た。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
二人だけしかいない空間、私と彼は気まずそうに黙っている。
彼は笑みを零しているけれど、でもそれは気まずい空気を誤魔化してくれているのだろう。
なんて私の為に気を使ってくれる優しい人。
・・・・そして。
「あの」
私は声を掛けた。
「うん。何?」
彼は早口だった。
「これ、受け取ってください」
私は紙袋を彼に渡した。中はもちろん。
手作りチョコレート。
「・・・・あ、ありがとう」
彼は言う。
そして、私は顔を真っ赤かにし紙袋を渡す続きざまに言った。
「私と付き合ってください」
・・・・・・・。
彼は黙ったまま、私を見ている。
そして。
・・・・彼は応えた。
「ごめん」
ブスとは付き合えない。