猫
三丁目のミケ一家との抗争を続けている俺達は、ブチさんをトップとして一丁目を中心として縄張りを構成していた。
額に第三の目みたく黒い点が付いているから、ブチさんといわれている。
ちなみに本人はどこぞの英雄の名前を名乗っていたが、俺は全然知らない。
まず、覚える必要性を感じなかった。
「んーーーっ」
背伸びをして、俺はいつもの見回りに出かけた。
いつも寄っている二丁目角の駄菓子屋に行くと、顔馴染みがすでに何人か来ていた。
「よう、やっぱりここにきてたか」
俺は、駄菓子屋のオババが出してくれる煮干しを食べながら、話をした。
俺が話しかけたのは、俺が生まれた時から一緒にいる一丁目ナンバー2のシロさんだった。
全身真っ白の彼は、その毛並みもさることながら、おしとやかな感じが全身から漂っていて、神様が生まれる時に性別を間違えたのではないかと全域で噂になっている。
「お久しぶり、元気で?」
「おかげさまで。そちらも元気そうでなにより」
「明日はなんだか嫌な予感がしててね。今日ぐらいまでが平和な日々なのかもよ」
「嫌な話だな。三丁目のミケ一家が攻めてくるのか?」
「さあね。ただ、体力を蓄えておかないといけないよ」
シロさんは俺にそう言いながら、煮干しをアギアギと食べ続けた。
30分ほど、駄菓子屋の前にいたが、俺たちはそこから移動することにした。
ちょうど近所に土管が放置されている空地があるからだ。
「よくアニメとかだとこんな空地あるよな」
「人間世界のことなんかよく知ってるよな。飼われたわけでもないのに」
「飼われてるやつから聞いたんだよ。そんなものさ」
「あら」
その時、麗しい女性が、土管の中から出てきた。
「お二人とも、元気そうね。夜になりつつあるというのに」
「そういうモモこそ。女性が夜一人で出歩くのは危険だぞ。猫攫いにあったらどうするんだ」
モモは、すぐ近所の飼い猫だが、元々外で暮らしていたこともあり、こうして外に出歩くことがよくあった。
「それで、明日ってどうなるの?」
「明日、ね」
シロさんとモモと俺は一緒に土管の中へ入った。
「明日の話なんか、明日すればいいだろうさ。いろんな噂はあるけどな、あくまで噂だ」
「どんな噂?」
「ミケ一家が攻めてくるっていう話さ。とにかく、明日になってみなきゃ、何も分からないけどな」
あくびを一つしてシロは、モモに噂の話をかいつまんで話した。
「そうなの…」
「まあ、ケンカに出るのは野郎どもだけで十分だ。女子供は手を出すんじゃないって、ブチさんが言ってたな」
シロさんは、そう言いながら、丸くなりだした。
「…明日は、雨でも降るのか」
ひげが妙に重たいと思いながら、俺は静まり返った土管の中で話した。
「かもね」
モモはニヤッと何か含みを持たせる声色で俺に話しかけた。
「じゃあ、俺も寝に行くよ」
俺は立ち上がり、体を小刻みにゆすらせて動けるように準備をした。
「大丈夫?」
外は湿気が高まってきているが、雨は降ってなかった。
「ああ、大丈夫」
モモが心配そうに俺を見る。
すこし向こうには、シロさんがゆっくりと寝ていた。
「何かあれば、帰ってくるさ」
俺はそう言って、雨がいつ降ってもおかしくない真夜中の外に、駆けて行った。




